2026年7月18日土曜日

0599 アルファは飢えても主を摘まず(下) (ピスタッシュ・ノヴェルス)

書 名 「アルファは飢えても主を摘まず(下) 」
著 者 佐伊   
出 版 新書館 2026年7月
単行本 352ページ
初 読 2026年7月17日
ISBN-10 4403221602
ISBN-13 978-4403221606
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136632547

 6月に上巻が刊行されてから、一ヶ月。寝ても覚めても、この話のことを考えていた。ていうか、ヴァルトルたちが脳内を闊歩していた。幸いにして、前日譚の『泣かぬオメガが身を焦がす』(ヴァルトルの親のメソルトの話)が、毎日夜9時に連載更新されていたから、それでだいぶ心が慰められた。・・・・話の中身のハードさったら、慰められるどころではないのだけど。あのメソルトにしてこの子あり。

 それにしても、昨夜17日に更新された、『泣かぬオメガ・・・』の開戦第12話は、本当にしんどい内容だった。(メソルトの立場が辛すぎる。そして、18日に更新された13話はもっとしんどかった。(T-T)  あのイワンゴ海戦にブライス聖騎士団が派遣された、その決定に、ここまでメソルトが関わっていたとは。メソルトやハリオの心中はいかばかりだったろう。ホント、レンドがどこまでも憎らしい。)

 自分の仕事はめちゃくちゃ忙しかったにもかかわらず、そんな感じで脳内のリソースのかなりの部分をこの作品世界に持っていかれたまま毎日を過ごし、それでも下巻発売が待ちきれず、Webサイトで、この『アルファは飢えても主を摘まず』下巻部分をほぼ2巡した。(睡眠時間は押して知るべし。もともと不眠症気味だからいいのよ。)もはや、紙本出版の際に加筆修正した箇所を当てられるんじゃないかってくらい読み込んだ。そして、絶対に今日には配本されて店頭に並ぶはず!と思い定めた7月17日。今度こそ、紙本特典もGetすべく、オシゴト終了後に紀伊國屋書店新宿本店へ! 速攻で入手しましたとも。・・・・・上巻も合わせて(汗)

 だって、特典ペーパーがやっぱり読みたかったんだもん。もん。もん・・・・

 ここは声を大にして言うが、絶対に『泣かぬオメガ』も紙本出版してほしい!!そして、あちこちに小出しされてる掌編なんかもまとめて、番外編集を出してほしい!! いや、それよりも続きやスピンオフを書いてほしい!

 で、さて、下巻である。
 国王エイドのベッドで寝落ち(気絶)→覚醒→背汗、のやらかしからスタートだ。
 でも、本編は、繰り返すが直近の2巡も含め、すでに連載版を4巡はしているので、とにかく番外編にGO!!
 
 本編ではほとんど語られない(BLなのに(笑))、エイドとヴァルトルのいちゃいちゃシーンからたっぷりと。それにしても、メソルト(母)とハリオ(父)の“愛の巣”でイチャつくヴァルトルはやっぱり相当のKY(笑)。いや、仕方ないんだけど。他に場所もないし。設定したのはメソルトだし。にしても、憮然とした当のメソルトと、いそいそと手伝うハリオにニヤニヤしてしまう。
 そして、舞台は法廷へ。
 マルコス家絡みの裁判は、ほとんどがマルコス側が被告なのに、ヴァルトルのマルコ殺害の裁判だけは、マルコス側が原告でヴァルトル側が被告なんで、マルコス側も、起死回生の一手をここに打ち込んでくる。それを迎え撃つヴァルトル弁護団。証人尋問でのエイドの静かな告白。そしてヴァルトルの更に静かな告白。・・・胸に染み渡る・・・・感涙。

 正直ね、この一ヶ月、ずーっといろいろなパターンを妄想してたのですよ。ずーっと脳内にヴァルトルやメソルトが闊歩してたし。

 個人的に一番ハマった妄想は、ルーオン家の名誉回復とルーオン侯爵家の復興っていうネタ(もちろん私の捏造)。
 マルコス追求の立役者の一人であるクロード准将や、前サロバ公シャイロからの嘆願で、新国王アゼルが決断して、罪人として葬られていたルーオン元侯爵(ハリオ父)とアンリ(ハリオ兄)を、ルーオン一族の墓地に改葬して、ルーオン侯爵家を再興。だけど、ハリオは今更上流貴族として宮廷に戻りたいとは思わないだろうし、下級貴族であることに意地と誇りを持ってるだろうメソルトは尚更。なら、やっぱりヴァルトルか? ヴァルトルをルーオン侯爵にして、そこに退位したエイドが降嫁する、なんて妄想がたいそう捗った。(笑)

 ハリオは多分、メソルトとヴァルトルがいて色々と報われているんだろうけど、わたし的にはもっと名誉回復させてあげたい人、の筆頭。あとは、アゼルとラウルの愛の往復書簡集とか。

 海軍諜報部大佐のクロードは、いつからヴァルトルがハリオの息子だと知っていただろう?とか。「お前、ヴァルトル・オーゼックスだろう?」って言ってたけど、ハリオがメソルトに匿われて一人息子を育てていたことは多分知っているよね?どこにも書いてないけど。だとしたら、自分は負傷して引き揚げ船に乗せられて、ヴァルトルが後に残っておそらく死んだに違いない、と思ったとき、どれほど嘆き・恨んだだろう・・・とか。

 金髪くりくりのミッシャはその血筋の良さと能力の高さから、次期かその次くらいの大首座候補だろうけど、ウォルトが修道院に入ったら、やっぱりそうなるかな。ミッシャとウォルトが師弟関係になったら面白そう・・・・とか、いや、エイドが退位して、ヴァルトルと結ばれた後なら、エイドがウォルトを養子にする、っていう道だってあるかもしれない・・・とか。あ、でも、正統下巻番外編を読み終えた今となっては、存続がどうなるかも未定なサロバ公家は、いったんシャイロ様が公爵に返り咲いて、その後はウォルトに継がせるっていうのも良いのでは。。。など。

 脳内二次創作モード全開である。(書けないけど!)ここまでドはまりできる小説は年に1作出会えるかどうか、なので、本当に嬉しい。

 繰り返すが、前日譚の『泣かぬオメガ・・・』の出版も正座して待ってます!よろしくお願いします、新書館様。

2026年7月12日日曜日

0598 引きこもりオメガ公爵の円満なる離婚計画 (ディアプラス文庫)

書 名 「引きこもりオメガ公爵の円満なる離婚計画 」
著 者 仁茂田もに   
出 版 新書館 2026年7月
文 庫 224ページ
初 読 2026年7月11日
ISBN-10 4403526497
ISBN-13 978-4403526497
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/136513095 


 最近では「アップされたら、即読み」「出たら即買い」作家さんの仁茂田もにさん新刊。今BL作家さんで追いかけてるのは、仁茂田もにさん、佐伊さん、野原耳子さん、墨尽さん・・・で、それ以外にも商業出版にのってない(たぶん・・・)御方が数名。文学フリマとか、J庭とか、コミケとかに足を向ければ、もっと世界(入手手段)が広がるんだろうけど、そこまでの気力体力がない(なんせ歳が・・・)。仁茂田もにさんの作品では、『王と正妃』が別格で好き・・・なのだけど、紙本で出版してくれないかしら。出版社様。
 こういうしっとりした熟年の純愛も良いと思うのよ。需用あるよね?きっと。子育てが一段落したあとに、夫と再び恋愛をやり直すって良いよね。・・・・・っていうか、これでは『王と正妃』の感想になってしまう。そうではなくて。

 このお話は、もっと若い2人の超絶すれ違い。まあ、王(主人公の伯父)のやらかしがヒドいよ。コレさえなければ、そして主人公のシェリルがあと一歩だけ踏み出せて、きちんとジャンと話すことができれば・・・・・こんなことにはならなかったはずなんだけど、ただの身分差恋愛で済んだはずなんだけど、そこはそれ、そういうキャラだし、そういうお話なので(^^;)

 不器用・言葉足らずで勘違い先行型のジャン(α)と臆病・引きこもり・言葉が出ないシェリル(Ω)の組み合わせであれば、ただの身分差恋愛であるはずのところが、永遠にボタンの掛け違いが発生して、ついに離婚話にまで・・・・若い2人の5年は長いよ。可哀想に・・・

 とはいえ、淡い初恋から、ずーっと両片思いなので、とにかくあーあ、と思いながらももだもだを愉しんでいれば、おのずとちゃんと収まるべきところに収まります。安心仕様。なんの不安もなく読めるのが有り難いときもあるんですよ。それに絵が美しいです。


 先週、金曜日(この本の発売日)は、すごく大きな仕事があって、ここ一ヶ月の間、体調不良とも付き合いながら、アレ(仕事)が終わったら、その足で書店・・・・その足で書店・・・・この仕事が終わったら、新刊が読める・・・・新刊が読めるときには、この仕事が終わってるハズ!! と、念じていました。そして、来週は、佐伊さんの『アルファは飢えても主を摘まず』の下巻の発売日。仁茂田もにさんと、佐伊さんの新刊をワンツーで読める(泣)そのためにもこの仕事を無事に終わらせなければ!!! そう自分に念じていたんですよ。 もはや生きる原動力です。

2026年7月4日土曜日

2026年6月の読書メーター

6月の読書メーター
読んだ本の数:12
読んだページ数:3212
ナイス数:533

恋する狼 狼を狩る法則 (モノクローム・ロマンス文庫)恋する狼 狼を狩る法則 (モノクローム・ロマンス文庫)感想
電書しか出てない中編です。シリーズ4作目。ラングレーのシリーズは、これしか出ていないのがとても残念。群れのボス(だけど姑息な小物)のアルファにレイプされそうになったオメガを助けたのは、町に入ってきたよそ者のアルファ。前ボスの協力もあって、群れのボスを追い出し、町の平穏もとりもどすし、メイトだったオメガも獲得。だけどこのメイトがなかなかのドジっ子で(笑)
読了日:06月30日 著者:J・L・ラングレー

アルファは飢えても主を摘まず(上) (ピスタッシュ・ノヴェルス)アルファは飢えても主を摘まず(上) (ピスタッシュ・ノヴェルス)感想
『竜王の婚姻』『君を転生させないために』『精霊の宿る国』の佐伊さんの新作紙本。『なろう』ですでに読了済みながら、こんなに出版が待ち遠しい本も久方ぶりだ。オメガバース設定のBLだが、中近世くらいの架空歴史ファンタジーとして非常に緻密に描かれていて、かなり骨太な物語になっている。そこに、隠れオメガの国王エイドの深い苦悩や、まやかしの宗教裁判で有罪となって還俗させられてしまった修道騎士ヴァルトルがエイドに寄せる敬意と愛、ヴァルトルの庇護者であるメソルトの困難な立場、王太后の思惑など複雑な人間関係が絡みに絡む。
読了日:06月30日 著者:佐伊

ルーン文字:古代ヨーロッパの魔術文字 (アルケミスト双書)ルーン文字:古代ヨーロッパの魔術文字 (アルケミスト双書)感想
サイモン・フェキシマルの秘密事件簿を読んだついでに入手。ファンタジーを読むなら必須のルーン文字の基礎知識導入に。ルーン文字って一つ一つが概念を表象してるのか、っていうのが私の新知識でした。
読了日:06月29日 著者:ポール ジョンソン


サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 (モノクローム・ロマンス文庫)サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 (モノクローム・ロマンス文庫)感想
19世紀末の英国が舞台のゴシックロマン+M/M。霊能者のサイモン・フェキシマルとその相棒ロバート。19世紀後半の神秘主義の流行や、諸々の作品群へのオマージュに溢れてる。当時のオカルトにある程度知識があったならば、面白さはたぶん倍増する。耳なし芳一みたいに、躰の上を経文ならぬルーン文字の呪文がのたくっているサイモンと、自身の幽霊事件がきっかけで彼に出会った新聞記者のロバート。2人の出会いの物語から、いくつものおどろおどろしい事件を経て、2人の結びつきは深まる。2人の密やかで深い愛情と、ヴィクトリア朝時代の19世紀初めのジョージアン時代(ジョージ3世4世の時代〜1830年)には男性同士の同性愛は死刑、貴族も逃れられず公爵が1人縛首に、1950年頃迄英米では犯罪で刑務所行き。女性同士はお咎め無しだけど保守的な人達からはバッシングあったろう。gayという言葉は本来joyと同じ「楽しい」という意味の言葉。1960年頃までの洋書ではjoyの代わりに使われている(ル=グインの小説とか)。聖書の教えに反する事は罪というキリスト教会の影響力が強かったんだ。宗教とは距離を置きたいなあと思っちゃう理由の一つ。
読了日:06月25日 著者:KJ・チャールズ

どうやら誰かの回帰に巻き込まれたようです (1) (バーズコミックス エメリナコレクション)どうやら誰かの回帰に巻き込まれたようです (1) (バーズコミックス エメリナコレクション)感想
単話版をシーモアで追いかけている。絵柄が,骨格がきちんとしているタイプの絵で私好み。戦争狂でほぼ城を不在にしていた夫国王を補佐して15年に渡り内政を担った王妃。やっと戦争が終わった。明日からは平和になる!ってタイミングで20年時が巻き戻ってしまった!悲劇である。巻き戻したのは誰の願いか?巻き込まれたのは誰と誰か?まだまだ謎である。
読了日:06月24日 著者:亀井高秀

狼の見る夢は (モノクローム・ロマンス文庫)狼の見る夢は (モノクローム・ロマンス文庫)感想
『狼の遠い目覚め』で登場したジェイクの探偵事務所のマットと、キートンの兄オーブリー。マットがジョージア州立大学に入学、オーブリーの自宅のゲストルームに居候することに。マットとオーブリーは初対面で“メイト”であることを悟るけど、オーブリーはゲイであることが許されない保守的な南部で一族代々のホテルチェーンを経営し、いずれ結婚して子どもを作って、家を継ぐことが自分の務めと信じていて。メイトとの熱く手放しがたい恋、だけどカムアウトできない苦悩。オーブリーの独り相撲って言っちゃえばそれまでだけど。
読了日:06月18日 著者:J.L.ラングレー

アジア・中東の装飾と文様アジア・中東の装飾と文様感想
正倉院から始まり、シルクロードを横断して、様々な衣装や装飾に残る意匠を追っていく。まさに私の好みにドンピシャな本だった。
読了日:06月18日 著者:海野 弘




イスラム芸術の幾何学:天上の図形を描く (アルケミスト双書)イスラム芸術の幾何学:天上の図形を描く (アルケミスト双書)感想
イスラム紋様というか、アラビア紋様というか、モスクや王宮建築のタイル装飾とか、遠く極東に渡った正倉院紋様なんかも好きで、勉強のために入手。
読了日:06月17日 著者:ダウド サットン



狼を狩る法則 (モノクローム・ロマンス文庫)狼を狩る法則 (モノクローム・ロマンス文庫)感想
最初に「遠い目覚め」の方を読了してしまったのだが、こちらが一巻目。米国発M/M小説。(BLつうよりゲイ・ロマンス)そして、人狼。ニューメキシコのネイティブアメリカン居留地に程近いエリアに住む獣医のチェイ(アパッチ、黒狼)と、そこに運び込まれた白人で白狼のキートン。ストレートだと確信していたチェイに対してキートンはゲイ。そんな2人がメイト(伴侶=運命的なパートナー)だった。最初の諍いから急接近して、ひたすら恋狂う狼。全編ゲイSEX描写全開だけど、明るく健康な大人の恋愛って感じで、カラッとしていて好感度高し。
読了日:06月13日 著者:J・L・ラングレー

狼の遠き目覚め (モノクローム・ロマンス文庫)狼の遠き目覚め (モノクローム・ロマンス文庫)感想
「狼を狩る法則」ではかなり嫌なヤツだったレミであるが、これが実は本当に健気だった。閉鎖的な居留地で権力を握る父親の暴力に晒されながらも、年の離れた弟を守りつづけていたレミ。レミがオメガ(調和者=群れのリーダーを支える者)であることが分かり、そのメイトであるジェイクが独立した群れを持つことに。同性愛嫌悪の父親に対する恐怖からゲイであることを受け入れられないレミが、ジェイクに支えられてどんどん開花していく。カラッとしていた一巻目に対してこの巻はレミがしっとり美しい。SM描写もあるけれどごくソフト。
読了日:06月12日 著者:J.L.ラングレー

ダンシング・ゼネレーションsenior 2 (マーガレットコミックス)ダンシング・ゼネレーションsenior 2 (マーガレットコミックス)感想
この主人公、私よりちょっと年下で、まあ、同世代なんだけど、けっこうな老け顔で、泣いたり落ち込んだり浮上したり忙しいし、これ、更年期の情緒不安定さを描きたいのか??ぜんぜん感情移入できん。でもまあ、こういう人もいるんだろうなーとは思う。なんというか、とてもメンドクサイ人だ。自分の、迷う余裕もうしなってる今の忙しさは、ひょっとしたら悪くないのかも?とか思ったり。大体この年になると親の介護も始まったりして、ほんとダンスしている場合じゃなくなることも・・・・ねぇ
読了日:06月07日 著者:槇村 さとる

軍人婿さんと大根嫁さん 9 (芳文社コミックス/FUZコミックス)軍人婿さんと大根嫁さん 9 (芳文社コミックス/FUZコミックス)感想
人の心の底に沈む無残と、日々の営みの中の労いと優しさと愛情がいっそう切ない9巻です。死に別れた愛馬が戻ってきたような、ハナちゃんちの仔馬。旦那サマが好きなのは柿なのかハナちゃんなのか?そしてまだ18歳の娘っ子のハナちゃんにはなんと赤ちゃんが!!?? 時代が切ない。だけど目が離せません。
読了日:06月07日 著者:コマkoma

読書メーター

2026年6月30日火曜日

0597 アルファは飢えても主を摘まず(上) (ピスタッシュ・ノヴェルス)

書 名 「アルファは飢えても主を摘まず(上) 」
著 者 佐伊    
出 版 新書館  2026年6月
単行本 352ページ
初 読 2026年6月22日
ISBN-10 4403221599
ISBN-13 978-4403221590
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136178111


 『竜王の婚姻』『君を転生させないために』『精霊の宿る国』の佐伊さんの、新作(紙本)。
 『小説家になろう』サイトですでに読了済みながら、紙本で出版されるのを知った時から、出版の日を心待ちにしていた。
 公式には6月22日発行となっていたが、22日が月曜日だったため、前週金曜日には配本になってるかも!と思って新宿のブックファーストに行ったが、探すも探すも「在庫無し」の表示。どうしても待ちきれず、そのままAmazonをポチった。(今にして思えば、最初から紀伊國屋書店本店に行けば良かった。だけど、紀伊國屋書店の閉店時間は夜9時。ブクファは10時半で、その時点で紀伊國屋は閉まっていたのだ。)Amazon以外の店舗で購入したら、特典の掌編を読めるんだぞ?!とは思ったんだけど、ガマン出来なかった。
 ネットでは通読しているんだし、本が届くのが一日後になってもイイや、明日あさってはどうしてもリアル本屋に足を向ける時間がないんだし、と思って紙本をポチったのに、やっぱり今すぐ読みたい欲が抑えられず、Kindle版も購入。。(以下、7月17日に加筆。その後、やっぱり特典の掌編読みたさに、シーモア版も購入。その後、下巻の出版を待つ間の焦燥感に駆られて、数ページでも良いから読みたい!と初回購入特典の割引をアテに、Honto版も入手した・・・・で下巻が発売された7月17日に、今度はちゃんと特典折り込みも目当てに新宿紀伊國屋書店本店に突撃して、下巻と並んでいる上巻(折り込み入り)を手にして数分、硬直したまま逡巡した挙げ句にレジにGO。結局、上巻については紙本2冊、電子3冊を買ってしまった愚かな(?)私は、今後、ラノベ・BL系はAmazonで購入してはいけないことを身をもって学習した。)

 さて、この作品。
 オメガバース設定のBLではあるが王朝内部の政治抗争や、宗教(教会)との利害の対立、隣国との紛争・・・・が綿密に描かれて、近世後半くらいの西洋風歴史ファンタジーとして、非常に非常に骨太な物語になっている。(最初は修道騎士とか出てくるので中世後期から近世初期くらいのイメージだったんだけど、小銃から大砲まで火器が発達していたり,海軍が艦隊戦やってそうだったり、議会制や裁判制度が発達してたり、修道騎士が時代遅れだと揶揄されてたりしたので、もう少し後ろかな、と脳内で時代を修正した。)
 そこに、オメガバースならではの性差別と、それに起因する各人の立場の複雑さや苦渋や危うさが緻密に織り込まれてくる。この構成力がさすがの佐伊さん。凄い!政治情勢の緻密な書込だけでも読み応えマシマシ。
 隠れオメガの国王エイドの深い深い苦悩や、まやかしの宗教裁判で姦淫の罪に問われて、還俗させられてしまった修道騎士ヴァルトルがエイドに寄せる親愛と、敬意と、純愛。ヴァルトルの叔父であるメソルトの困難な立場、メソルトとハリオとヴァルトルの関係、王太后の思惑、修道騎士の兄弟愛・・・・とキャラ立ちしている上に複雑な人間関係が絡みに絡み、非情に濃厚。その上、所々に織り込まれる、ヴァルトルの修道騎士としての戦闘能力の高さに高揚する。
 それに、王侯貴族ものの作品にありがちな、王族・貴族の絢爛な生活の表面ではなく、それを裏で支える宮廷の働き手側の目線で話が進んでいくのもちょっと異色で面白い。なんか、表はゴージャスなお店のバックヤードに迷い込んだ気分だ。
 
 「素手で殺せます」とか「素手で行います」(刺客を殺す)とか、なにかと物騒で、直裁で、周囲の思惑に忖度することなく、我が道を突っ走るヴァルトルの造形がまた、良い。そのヴァルトルがハリオにだけ向けるちょっと甘えた言辞。ヴァルトルの台詞の書き分けがまた、素晴らしい。ヴァルトルの庇護者であるメソルトが、難しい立場にいるにも関わらずなかなかに軽やかな言動で、誰に対してもあまり変わらないのとは対称的。ヴァルトルと聖騎士団の仲間の関係性は胸熱だし、とにかく美味しいところだらけ、というか美味しいところしかない。個人的にはアゼルも大のお気に入りだし、アゼルとラウルの恋物語も、ぜひ書いていただけないか・・・・など。

 物語は紆余曲折あるが、上巻は、メソルトの血を吐くような告白がクライマックス。
 国王エイドに忠誠を捧げるヴァルトルには、(もう最後までネット上で読んじゃってはいるんだけど)これ以上、ヴァルトルに苦難が降りかかりませんように!と願いたくなる。下巻は7月中旬発行ってことで、ただひたすら待ち遠しい。

 書き下ろしの短編は、本編をネットで読了して、是が非にも読みたかった、あの、イワンゴの攻防戦。からのヴァルトルの宗教裁判。幕間に登場するエイドの心病んだ描写に胸が痛む。まさに「前夜」の物語。
 一点だけ今だに気になっているのは、ヴァルトルの愛馬(初代“暁”)がどうなったのか。
 イワンゴ砦の中に入るには海中からの侵入だったのだから、馬は連れて行けなかったんじゃないかと思ったのだ。ヴァルトルの回想の中では、愛馬もイワンゴで死んだことになってるのだけど、優れた騎士と愛馬の別れは、すごく気になる。これも、番外編でどこかに書いていただけないものか・・・・
 でもそれはさておき、何よりも読みたかった邂逅前夜の物語でした。
 紙本出版ありがとうございます。


0596 サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 」
原 題 THE SECRET CASEBOOK OF SIMON FEXIMAL」2015年
著 者 KJ・チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2021年12月
文 庫 363ページ
初 読 2026年6月27日
ISBN-10 4403560482
ISBN-13 978-4403560484
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136178079

 19世紀末から20世紀初頭のイギリス(主にロンドン)を舞台にした、ゴシックロマン+M/M。霊能者のサイモン・フェキシマルとその相棒で著述家のロバートの物語。19世紀後半のオカルトに覚えがあれば、面白さはたぶん倍増する。当時の神秘主義の流行や、諸々の作品群へのオマージュに溢れてる。

 耳なし芳一みたいに、躰の上を経文ならぬルーン文字の呪文がのたくっているサイモンと、自身の幽霊事件がきっかけで彼に出会って恋をした新聞記者のロバート。2人の出会いの物語から、かずかずのおどろおどろしい事件、2人の関係が恋愛の上でも、仕事の上でも、そして霊的な結びつきの上でも深まる。密やかに愛情深い関係を築き、しかし、第一次世界大戦が始まる。霊能者たちももれなく戦争の道具として利用され、遂に2人も行方不明となった由。しかし、2人のこれまで語られなかった冒険と、秘められ、大切に温められてきた愛を綴った、ロバートの手によるサイモンの事件簿の原稿を手にした、ロバートの長年の友人である編集者のヘンリーは、2人が密かに南欧あたりの人里離れたコテージに居を移し、満ち足りた愛の生活を営んでいることを夢想する。

 同性愛即犯罪だった生きにくい時代と、戦争の世紀に突入した世相が、汚水の悪臭漂うロンドン下町の埃っぽく薄暗い汚さ、ゴシックロマンの濃厚な闇と交じりあって、2人の人生に苦難の色を添えている。その中にあって、不器用で実直で有能なサイモンと、直情で陽気で行動力のあるロバートのパートナーシップは最高。暗い世相の中でキラキラと光るような、2人の気持ちを愛おしく感じる。

2026年6月20日土曜日

0595 狼の見る夢は (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼の見る夢は」
原 題 「With Abandon」2011年
著 者 J.L.ラングレー    
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2015年6月
文 庫 481ページ
初 読 2026年6月14日
ISBN-10 4403560229
ISBN-13 978-4403560224
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136022876

 『狼の遠い目覚め』で登場した、ジェイクの探偵事務所の事務員バイトのマットと、キートンの兄オーブリー。
 マットがジョージア州立大学に入学して、オーブリーの自宅のゲストルームに居候することになる。マットとオーブリーは初対面で“メイト”であることを悟るけど、オーブリーはゲイであることが許されない超保守的な南部で一族代々のホテルチェーンを経営し、代々続く家系や財産や、群れの“アルファ”までも継承しなければならない身で。“跡取り”は必須、いずれ結婚して子どもを作って、家を継ぐことが自分の務めと信じている。当然、ゲイだなんて、親にも打ち明けられないし、母親には結婚して子供を作ることを求められるし。
 メイトとの熱く手放しがたい恋、だけどとてもじゃないがカミングアウトなんてできない長男の責任感と苦悩。所詮、オーブリーの独り相撲って言ってしまったら身もフタもない話なんだけど、オーブリーの悩みは真剣。そこはお気楽な次男(キートン)がさっさとカミングアウトして、家を出てしまったりしたものだから、いっそう雁字搦めになってしまっていて。
 もちろんM/Mなだけに、あっちこっちSEXまみれ(笑)なんだけど、自分の生き方に悩む、しごく真面目なゲイ小説であった。

 マットについては、ヘンテコな色使いの服を着る天然、って感じの初出だったが、実は赤緑色盲で、マットなりに悩んでいたり、ちょっとヌケた感じだと思っていたのが、純真無垢で、努力家で家族思いの長男だったりと、相当イメージアップした。
 あとは、無理やり人狼化させられちゃったカーソンがかなり憐れではある。これからどうなるのかは相当気になるものの、カーソンとボスキーの恋物語を読みたいとは思えない(笑)。さすがにボスキーは強引すぎるだろ。この件に関しては、終始一貫してカーソンがかわいそう。
 マットの兄弟たちはこれからも苦労が多いだろうけど、長兄マットや次兄のローガンがしっかりしているし、ジェイク以下、群れの大人達も頼りになるし。レミ贔屓の私は、一番下のエディとダレンは、レミとジェイクが養子にして育てたらいいんじゃないか、と密かに思っているのだけど。(レミとエディの組み合わせサイコー!)

2026年6月14日日曜日

0594 狼の遠き目覚め (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼の遠き目覚め」
原 題 「With Caution」2008年
著 者 J.L.ラングレー
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2014年5月
文 庫 436ページ
初 読 2026年6月12日
ISBN-10 4403560172
ISBN-13 978-4403560170
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/135897720

 「狼を狩る法則」ではかなり嫌みな登場の仕方をしたあげくに、人狼に襲われて死にかけて、ジェイクとチェイの血によって人狼となったレミは、実は、16歳年の離れた弟のスターリングを父親の暴力から守り、父親代わりになって育ててきた良い奴だった。天真爛漫に育ったスターリングを見れば、傷を負ったレミが、どれだけ努力奮闘してスターリングを守ってきたか、分かろうというもの。とにかくレミが健気すぎて心が痛い。心からスターリングを愛してきたレミは、子供の遊び相手も上手で、読んでいる途中から、だんだんレミの印象が性別を超越してきた(笑)。同性愛嫌悪のように見えた言動も、父親から自分と弟を守るために創り上げた鎧のようなもの。メイトであるジェイクが側にいることで感じる安心感で、少しづつレミが安らいでいく様子に絆される。

 そのレミが、群の集会で他の“アルファタイプ”の狼たちに襲われそうになったことで、“オメガ”であることが判明、メイトがオメガであることが分かったジェイクは、これまでの群から独立して、新たな群を率いることになる。

 レミとジェイクがパートナーとして親密さを増して高まっていくこと、アルファに従属的で闘争力は弱いが、その共感力で群の連帯を強めるオメガとして、レミの能力が開花していくのと、レミが虐待親と対決し過去の傷を乗り越えていくという、レミの成長三本立てのストーリーである。

 アルファ気質で支配欲のあるジェイクがSMの性癖があるとか、ちょっとうへぇ、と思わないでもなかったけど、SMといっても、父親から惨い身体的虐待を受けてきたレミに対しては、ジェイクもそんなに大胆なことはできず、描写はごくソフトでした。

 結局、レミとスターリングは両親を喪うことにはなるのだけど、そもそも機能不全家族だったし、レミとスターリングには、群という新たな家族ができ、おまけにスターリングが、ジェイクの副官(ベータ)のリースのメイトなのが分かったり、その上、スターリング三形態の人狼ってことは、優秀で力のある個体であることは間違いなさそうなので、幸せな将来の予感がたっぷりでよかったです。

0593 狼を狩る法則 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼を狩る法則」
原 題 「Without Reservations」2006年
著 者 J.L.ラングレー
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2013年10月
文 庫 414ページ
初 読 2026年6月13日
ISBN-10 4403560148
ISBN-13 978-4403560149
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/135915673

 最初に「遠い目覚め」の方を読了してしまったのだが、こちらが1巻目。米国発M/M小説。冬斗亜紀さん翻訳(好き)。
 日本でいうBLカテゴリで、表紙イラストもそんな感じであるが、(いつもつい書いてしまうのだが、ボーイズラブってよりも、ゲイ・ラブロマンス。私の感覚が古いんだろうが、BLっていうとどうしても「少年愛」寄りな語感を感じてしまって。M/Mはもっとオス臭いっていうか、ガチムチ寄りっていうか、大人の恋愛寄り(当社比)。) そして、人狼(ワーウルフ)物でもある。
 人狼の群れを統率する概念として、アルファ、ベータ、オメガが出てくるが、これは狼の群れのヒエラルキーの話。いわゆるオメガバースはこちらが本家。アルファが群れのボス。ベータは副官。オメガは群れの調和者で、集団の維持の要になる、という設定。

 もっとも、この狼のヒエラルキーは、かつて人工での集団飼育下で観察されたもので、現在では、自然界における狼の群れは家族単位で構成されており、父(リーダー)、母、子供達で構成され、それほど厳格なヒエラルキーはないことが分かっているそう。この作品における「オメガ」の設定は、かつての狼ヒエラルキー概念における「最弱者」(集団のガス抜き役)と、現在の狼の群れの概念の「母親」(母性)がミックスされたような感じかと。 「人狼もの」の設定はいろいろあるらしくて、読み比べてみると楽しそうな気がする。

 さて、作品の舞台はニューメキシコ。
 ネイティブアメリカン(アパッチ)の居留地に程近いエリアに住む獣医のチェイことチェイトン・ウィンストン(ネイティブアメリカン)の元に、怪我をした白狼が運び込まれるところから。チェイは人狼で、このエリアの人狼の群れに属している。(おもにネイティブアメリカンで構成されているよう。そこに運び込まれた白人で白狼のキートン。
 チェイは、この白狼が自分の“メイト”(=伴侶。運命の恋人)であることを直感するのだが。
 なんとこの白狼が雄だった。自分はストレートだと確信していたチェイは大混乱。そしてストレートだった恋人に手酷く裏切られた過去のある生粋のゲイのキートンも、チェイを誤解して、断固拒絶・・・・・からの、急接近。運命には逆らえない♥️
 ほぼ最初から最後まで、全編ゲイSEX描写が全開だけど、とにかく明るく、前向きで健康な大人の恋愛って感じであるので、思うほどイヤラシくない。

 まあ、男女の恋愛ものだと、どうしてもジェンダーを感じて、自分的に陰にこもった感じになっちゃうので、男/男のほうが、他者的に(あるいみ無責任に)楽しめる、という個人的な感覚の問題もある。
 
 キートンが命を狙われたり、最初はホントに嫌なヤツだったレミが、瀕死の重傷を負って人狼の仲間になったり、とか物語の起伏も面白いし、人間だと、チビでやせっぽちで童顔のキートンが、狼としては最強だったりとか、登場人物もキャラ立ちしていて良き。読んでいて楽しかった。

 子供の頃、最初に買ってもらった本格的な読み物としての本が『おおかみ王ロボ』と『名犬ラッシー』(ポプラ社)で、依頼、オオカミの物語には特別な憧憬を感じる。人狼ものってなんだか特別なロマンがあるわ。そこに人種や同性愛、虐待、差別なんかの人間としての葛藤も加わって、物語としても面白い。

2026年6月3日水曜日

2026年5月の読書メーター

 4月からの人事異動ですこしポジションが変わって、難易度はともかく、多忙。もともと多忙だけど、心安まる暇がない(T-T)
 2月半ばに引き込んだ怪しい喉風邪が4月頭にやっと治ったと思ったら、5月1日に再び喉に異変・・・・からのまるまる一ヶ月、ずーーーーっと喉風邪。なんだか「謎風邪」とやら流行しているそうなんですね。まさにソレ。
 仕事を休めるほどの発熱はないけど、ずーーーっと不調を引きずり、怠さも続くし、なんなら週末になるたびに発熱し、月曜日には熱が下がる社畜体質。いやはや。

 あまりにもやばやばな案件をどうにかボヤ程度に済ませることができたのは幸いとして、この巻、まともな読書はできず、活字への渇望は、アルファポリスやらpixivやらで満たし、せめて読了登録ぐらいは・・・と思っていたら、ついにこんなことに・・・・(汗)

 登録本、ほぼ全部がBL+ラノベ・・・(大汗)
 『アポロ18号の殺人』の下巻にはついに手が伸びなかった。(読もうとは努力したんだけど)
 ひたすら愛と癒やしと幸せな気分を求めてお気軽読書に走ってしまった5月であった。

5月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:3296
ナイス数:391

【全1-8セット】拝啓、地獄の王の花嫁候補に選ばれまして【イラスト付】 (ブルームーンノベルズ)【全1-8セット】拝啓、地獄の王の花嫁候補に選ばれまして【イラスト付】 (ブルームーンノベルズ)感想
ここ一週間くらい、墨尽さんの作品に埋没していた。文章がとても情景的で良い。主人公のボケが絶妙。地獄の主(獄主=閻魔大王的な)の数千年に一度の花嫁選びになぜがノミネートされた主人公(死後)。花嫁選びなだけに昼間っからイチャイチャが止まらない。綺麗な魂なのになにかの間違いで地獄に落とされ、あろうことか地獄の花嫁候補に並べられた聡一朗。咎人だらけの地獄のなかで紅一点ならぬ清一点で、無差別に発揮される清らかなやさしさに、地獄を統べる鬼たちがかたっぱしから骨抜きに。そこは獄主すら例外ではなく。
読了日:05月30日 著者:墨尽

眠れる淫花はアルファ王の愛に咲く【イラストあり・電子限定ショートストーリーつき】 (ショコラ文庫)眠れる淫花はアルファ王の愛に咲く【イラストあり・電子限定ショートストーリーつき】 (ショコラ文庫)感想
王道ハーレクインのBL版。愛されるべき主人公(Ω)が、微妙にすれ違いつつも、求められ、結婚し、愛されて、愛し合う。なにも考える必要なし。主人公の純情万歳!愛って麗しい。
読了日:05月30日 著者:高月紅葉


静かな朝食 孤島の兄弟静かな朝食 孤島の兄弟感想
野原耳子さんの純文学的作品。仲が良かったはずの隣人に両親を殺された兄弟。年の離れた兄は弟を守り育て、弟も高校生になった。かつては高校野球部のエースだった兄は変わってしまった。その兄が背負っている罪は? 兄と弟の静かな理解と赦しと再生がリリカルに胸に染みます。
読了日:05月30日 著者:野原耳子

Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない3 (アンダルシュノベルズ)Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない3 (アンダルシュノベルズ)感想
出るとは思ってなかった3巻目。ご褒美みたいで嬉しい。廃嫡されたオメガの第一王子の嫁ぎ先は砂漠の王国。現王太子妃であるアデルと侍従長のユーリス,護衛のギルベルトがヴィルヘルムの招待で、彼が嫁いだ砂漠の獣人国を訪問。今まであまり露出がなかったヴィルヘルムの物語であることもご褒美感がある。ユーリスのたおやかな強さも、剛健一途なギルも堪能した。
読了日:05月19日 著者:仁茂田もに

捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです4捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです4感想
4巻が発刊されているのに気付かず、本日入手。オンラインで読了済みも、紙本を手にするのは嬉しい♪ メルフィーナのエンカー地方経営に、ちょっと曲者の執政官2人が参戦。それと、武闘会とか、村の拡張とか、村の作物の販路拡大とか・・・・そして、セドリックがお家の事情でカーライル家の爵位を継承するために、公爵家から離れなくてはならなくなる。愛馬リゲルとの別れもちょっと切ない。再会の時を待とう。
読了日:05月09日 著者:カレヤタミエ

死んだはずのお師匠様は、総愛に啼く (2) (アンダルシュノベルズ)死んだはずのお師匠様は、総愛に啼く (2) (アンダルシュノベルズ)感想
最近BL本を読了登録するのにほとんど抵抗がなくなってきた。完全に表紙買いの2巻目。中華(和風混じり)BL?っていうには性的描写は少なめ? ただただ、若返りした主人公が、周囲から愛でられる話。疲れて荒んだ心に染みいる潤いや良し。
読了日:05月09日 著者:墨尽


死んだはずのお師匠様は、総愛に啼く (アンダルシュノベルズ)死んだはずのお師匠様は、総愛に啼く (アンダルシュノベルズ)感想
色がめっちゃ綺麗な表紙買い、Kindle→紙本。和風混じりの中華系BLではあるが、主人公が病弱を極めてるため、溺愛描写過多、性的描写はほぼ皆無。ただただ主人公が回りの人に猫っかわいがりされる本。主人公の強さと心の傷も見え隠れするところに、心がくすぐられる。疲れて枯れ果てつつある心に潤いをありがとう。
読了日:05月09日 著者:墨尽

アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF)アポロ18号の殺人 上 (ハヤカワ文庫SF)感想
苦節●年。やっと上巻を読了。実在のアポロ計画は17号まで。この本は実在しなかったアポロ18号が対ソ連の純軍事ミッションを担っていたとの仮想の上に、あり得たかもしれない陰謀を描く。錯綜する状況はまだ全容が見えていないが、最初の殺人の犯人は・・・。宇宙船のハッチの縁を掴んでいた手のシーンはほとんどホラー。発射前にステーキを喰ったチャドのやらかしがヒドい。どうしてもソ連側が陳腐に描かれるのは、米国小説の宿命か? さて上巻は打ち上げ前のトラブルから宇宙へ。そしてソ連軍事衛星への接近。想定外の事態だらけのまま月へ。
読了日:05月06日 著者:クリス・ハドフィールド

今更愛を告げられましても契約結婚は終わりでしょう?<電子限定かきおろし付>【イラスト入り】 (ビーボーイノベルズ)今更愛を告げられましても契約結婚は終わりでしょう?<電子限定かきおろし付>【イラスト入り】 (ビーボーイノベルズ)感想
『トカゲではない。彼はマルクスさんだ』 読書量の水増し・・・って訳でもないか。実際読んでるし。オメガバース、虐げられた長子(異母兄)、愛のない契約結婚・・・でコレ系ライトノベル役満って感じではあるが、主人公がぼーっとしているし、草喰ってるし。昆虫を捕まえるし。なにしろ主人公の愛するパートナーがカナヘビの「マルクスさん」。あまりに意外性のあるキャラに、勇猛果敢な公爵様が振り回されているのが面白い。ちゃんと、主人公が公爵邸を出て海辺の暖かい街で「マルクスさん」と二人暮らしを始めるのもよし。ほんわか心が暖まる。
読了日:05月02日 著者:SKYTRICK

番外編集 俺の妹は悪女だったらしい番外編集 俺の妹は悪女だったらしい感想
4月の読書量があんまりだったので、水増し・・・・ってわけじゃないが、耳子さんのKindle新刊は、『俺の妹は・・・』番外編集。あらかたなろうサイトで読了済みであるが、ラストの一作は書き下ろし?そう来たかーーーー!!! てっきりダイアナの相手はロキだと思い込んでいたからな。なるほど〜〜!幸せになれよ〜〜!
読了日:05月02日 著者:野原耳子

読書メーター

2026年5月6日水曜日

0591〜92 アポロ18号の殺人 上・下

書 名 「アポロ18号の殺人」
原 題 「THE APOLLO MURDERS」2021年
著 者 クリス・ハドフィールド   
翻訳者 中原 尚哉   
出 版 早川書房 2022年8月
文 庫 上巻:384ページ  下巻:‎ 384ページ
初 読 2026年5月5日
ISBN-10 上巻:4150123756   下巻:4150123764
ISBN-13 上巻:978-4150123758 下巻:978-4150123765
読書メーター 上巻:https://bookmeter.com/reviews/135145196
       下巻:


 上巻を読むのにあまりにも時間が掛かりすぎたために、伏線をほとんど忘却する、という事態に。人様のレビューを読んで、あわてて再チェック。
 3人の正規クルーと3人のバックアップの中に、ソ連側のスリーパーが存在した。それは誰なのか。
 アポロ18号の打ち上げ1ヶ月前にして、船長であるトムが訓練機の操縦ミスで墜落死。果たして事故なのか(んなワケない。)では、犯人は誰なのか。
 打ち上げは、バックアップクルーの中からチャドが繰り上げになって続行。
 そのチャドの、打ち上げ前の最後の食事でステーキを喰うやらかしがヒドい。

 そして無人だと思っていたソ連側偵察衛星は実は有人で、しかも、アポロ18号の悪意ある接近を待ち構えていた。なんなら手に手に武器を持って。

 自己過信強めの(よくある)アメリカ側の迂闊と、ソ連側の野蛮が宇宙空間で計算ずくの遭遇を果たすが、その結末は想像を超えた。だけど、その直接的な原因が、いかにもアメリカ野郎が考えたソ連のやらかしっぽくてかるく失笑。

 アポロ宇宙船のハッチの縁に掛かった人間の手(手袋)は、ほぼ、ホラー映画のノリである。

 そして乗り込んで来たのはソ連の女性宇宙飛行士。

 なにしろ著者が宇宙飛行士ってことで、微に入り細にわたる細かい描写を丁寧に読んでいくと全体がスローモーションみたいになってしまい、致命的に自分の文字を追うスピードと物語のペースが合わない。これが、読書に着手して3回も中断、放置になった理由。宇宙船が打ち上がったあたりからやっと面白くなってきて、読書スピードを上げることに成功し、上巻を(そして大気圏を)脱出。なんというか、やっと一段目のロケットの切り離しに成功した気分である。
 上巻ラストで、ついに件のスリーパーが誰なのか、そして、なぜイラリオン修道士が冒頭から登場していたのかがつながり、あろうことかアポロ18号に乗り組む生者3人のうち、2人までもが“ソ連側”であることが判明。だがこの2人とて、手に手をとって協力する様子ではない。だがしかし、本当に彼が“スリーパー”なのか?わかりやすすぎやしないか。もしや“スリーパー”は別にいて、さらにストーリーが錯綜する可能性すら残っている。しかし、この2人がこれからどう動くのか。そして、地上に置き去りな主人公のカジミエラス・ゼメキスはどう動くのか。個人的には、隻眼のカズは超好みである。

 そして、ここからが下巻。





2026年5月3日日曜日

2026年4月の読書メーター

先の記事にも書いたように、まったく読書が捗らなかった4月。
まったく活字を読んでいないわけではなく、なろうやpixivのお気に入りの連載なんかは毎日チェックしていたし、なんならBLなんかも読んではいた。4月に想定外の人事異動を喰らって、職場で文字通り仁王立ちの日々。だって、立たないと、新人まで目が届かないんだもん。手抜き厳禁な仕事まで引き取って、八面六臂って感じである。もうちょっと本が読みたいな〜。なんなら早期退職したいな〜、と願う日々。


4月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:866
ナイス数:166

ダ・ヴィンチの密命 (ハーパーBOOKS)ダ・ヴィンチの密命 (ハーパーBOOKS)感想
多分ガブリエル73歳。背中の痛みは慢性化しているし、髪はついに全体的にグレーになった模様。だが、子供達はまだ小学生で、アイリーンは過激な環境保護主義者に、ラファエルはこの巻でついに絵を描くことに目覚めた!めでたい。今作はヴァチカンから盗み出されたダ・ヴィンチの未発見の真作を巡る事件で、教皇ドナーティと共闘。巻末のノートは必読で、ヴァチカンに蔓延る金満主義が単なる創作でないことが分かる。もはやシルヴァはイスラエルには目を向けないことにしたのかな?作中時間は、ちょうどイスラエルがガザに侵攻を開始した頃である。
読了日:04月05日 著者:ダニエル シルヴァ

フラジャイル(31) (アフタヌーンKC)フラジャイル(31) (アフタヌーンKC)感想
岸センセーもアメリカへ。岸センセーの牙城病理がほんわかガーリーな空間になってしまった! そして、米孤軍奮闘する日本軍(?)は、彼の地で新しい世界を見せることができるのか!? ちょっと次巻がたのしみです。
読了日:04月05日 著者:恵 三朗

軍人婿さんと大根嫁さん 8 (芳文社コミックス/FUZコミックス)軍人婿さんと大根嫁さん 8 (芳文社コミックス/FUZコミックス)感想
誉さんの少年時代の思い出が切ない。だけど、それがかわいい嫁さんの膝枕での思い出話であって良かった。異母弟初登場だが、こちらも良い人。思い合う兄弟で良かった。ラストがちょっと不穏な空気。これから時代はいよいよきな臭くなっていくようだ。
読了日:04月05日 著者:コマkoma

読書メーター

2026年4月29日水曜日

日々雑感 


 ぜんぜん読書がすすまん。
 それもこれも、「アポロ18号の殺人」のおかげ。
 大好きな、中原尚哉さんの翻訳なのに!である。
 どうにも、文章のリズムと自分の読書速度が合わん。
 いかにも業界の人っぽく緻密に細分化して描かれた航空機や宇宙船の操作手順は、それなりの早いスピードで読まないと、まるでスローモーションのような描写になってしまう。そして私の文字を追うペースは遅い! そんなで、なかなか読書スピードが上がらず、物語に乗りきれず、数行読んでは失速し、数ページ読んでは中断し。

 実は、この本に取り組むの三回目だ。今回は、ついにアポロ18号が離陸するところまでは到達した。物語はこれから。ここまで約1ヶ月。今月の読書量はほぼ0冊。

 そして、新年度である。
 体制が変わり、新人が入り、業務が変わり、仕事が追いかけてくる。というか襲いかかってくる。毎日が仁王立ちの日々。ときおり、お守りの破魔矢を握りしめ、振りかざし、「悪霊よ去れ!」と念じる。念の為、ごく真面目で無宗教な職場であることを申し添える。

 ゴールデンウィークもちっとも心安まらないけど、とりあえず好きなことの一つくらいは取り組みたいもの。

2026年4月6日月曜日

0590 ダ・ヴィンチの密命 ガブリエル・アロンシリーズ

書 名 「ダ・ヴィンチの密命」
原 題 「AN INSIDE JOB」2025年
著 者 ダニエル・シルヴァ    
翻訳者 山本 やよい    
出 版 ハーパーコリンズ・ジャパン 2026年3月
文 庫 576ページ
初 読 2026年3月25日
ISBN-10 4302115939
ISBN-13 978-4302115938
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/134486452

 この巻は、時期を推測する記述が乏しいが、事件の端緒となった水死体の発見・・・・・ヴェネツィアの運河に浮かんでいたところを、ガブリエルが発見・・・・が秋とのこと。前作のコーンウォールの事件が2023年の始めだったので、おそらくは、2023年秋〜翌年にかけての事件だと思う。
 
 冒頭、ガブリエルとキアラは、双子が通う公立小学校の校長室に呼び出されている。
 双子の片割れ、過激な環境保護主義者に育ちつつあるアイリーンが全校生徒をそそのかし、授業をボイコットして地球温暖化に反対するデモを企画している!とのことで、保護者が呼び出されたのだ。デモ行進のチラシを校内に張り出したアイリーンに、ガブリエルは教育的指導を行う。曰く「こちらの手の内を敵に知らせるなど、もってのほかだ」
 アイリーンの行動を大目に見る代わりに、校長先生は、小学校の生徒に美術の指導を行うことをガブリエルに要求。願ったり叶ったりのガブリエルは、しかつめらしく承諾。(本当は、美術教師をやってみたかったらしい)
 ・・・そんな、いささか大胆ながら、微笑ましい子育てをしつつ、やはり事件から絡んでくるのがガブリエルの新しい日常のようで、正体不明の女性の遺体の身元捜索から、新たに発見されたダ・ヴィンチの若い女性の肖像画の盗難事件へと話は進む。

 今回のモチーフとなった絵は、有名な右の素描で、作中では〈若き女性の頭部〉と言われているもの。〈岩窟の聖母〉に登場している大天使のための素描と言われていて、例えば〈モナリザ〉のような単独の肖像画は存在していない。この素描を元にした、若い女性の肖像画が、平凡な聖母子像の宗教画の下に隠されていたのを、イギリスからヴァチカンに研修にきていた若い修復師の女性が発見した。そしてその女性が水死体で発見される。発見したのはガブリエル。死んだ女性が働いていたのは、ヴァチカンの美術修復部。なぜ彼女は殺され、そして盗まれた絵はどこに行ってしまったのか。そして、事件はヴァチカンの深部の金満汚染へと繋がっていく。
 今回は、久しぶりの教皇ドナーティとガブリエルのタッグ。この二人の絡みが好きな人には良い一作である。
 そしてボーナスは、ついに双子の片割れラファエルが絵を描くことに目覚めたことかな。
 

2026年4月5日日曜日

美術修復師ガブリエル・アロン シリーズ

ガブリエル・アロンについての考察はこちら(年表付きです。)

『告解』でガブリエルが手がけている
祭壇画 サン・ザッカリア教会

1【報復という名の芸術】(The Kill Artist 2000年)
1999年。 1,991年1月にガブリエルがウィーンで幼い息子を失ってから9年近くが過ぎていた。シャムロンに逢うのは事件のあとテルアビブで〈オフィス〉の仕事を辞めると伝えた時以来。ガブリエルが隠棲していたのは、イギリス、コーンウォールの海辺のコテージ。かつてはガブリエル専属の支援者(サイアン)だったイシャーウッドとは、本当の画商と絵画修復師の関係となっていた。そんなイシャーウッドからガブリエルの居場所を聞き出して、シャムロンが新たな「復讐」を携えてやってくる。それは、ウィーンでガブリエルの車に爆弾を仕掛け、彼から家族を奪った男への報復だった。
  
2000年頃? この作中で彼は50歳。スイス在住のある資産家が、ガブリエルに接触を図る。その男が秘匿していたのは、かつてナチスがユダヤ人から略奪しした絵画の数々だった。この絵画を巡り、ナチの残党との死闘が始まる。スイスが未だ隠し持つ、かつてのユダヤ人の財産。ヨーロッパ諸国とナチスとの関係は、歴史の暗部となって未だ各国にわだかまっている。ナチスはユダヤ人の財産を奪った、というアロンに対して、ユダヤ人はパレスチナ人から土地を奪った。動産より不動産の方が罪が重い、と論じるスイス人。ユダヤ人とユダヤ人国家にまつわる問題は一筋縄でいくものではないが、だからといってナチスの罪が薄れるわけではない。それに協力した人間の罪も、である。

2001年冬 ガブリエル51歳になったばかり。ベネツィアのサン・ザッカリア教会で祭壇画の修復を手がけていると、シャムロンからの呼び出しが。かつての盟友がドイツで殺害された。調査を始めると、今度はガブリエルが何者かに追跡される。親友だったベンジャミンが追っていたのは、第二次対戦時のナチスとヴァチカンの関係だった。法王庁とローマ・カトリックの権威を至上とするヴァチカンの秘密組織が、ガブリエルと彼が掴んだ証拠を抹殺しようとする。時を同じくして新教皇は、ユダヤ人との和解のための一歩を踏み出そうとしていた。教皇にも危険が迫り、ガブリエルは新教皇を守るために接触を図る。 
 
『さらば死都ウィーン』で
修復を手がけている祭壇画
サン・ジョヴァンニ・クリソストモ教会
ジョバンニ・ベッリーニ作
『聖クリストフォロス,聖ヒエロニムスと
ツールーズの聖ルイス


時期的には2002年か2003年、またしても冬。雪のちらつくウイーンは、ガブリエルにとっては不吉の象徴。親友であり、戦友のエリ・ラヴォンがウイーンで運営していた戦争犯罪調査事務所が爆破される。スタッフは死亡、エリは重体。ガブリエルは追跡調査を開始するが、すぐに命を狙われることになる。エリが追っていたのは、身分を偽装してオーストリアで社会的にも大成功を収めていた元SS将校。その男の成功の原資となったのはユダヤ人から略奪された資産であり、また、その男はガブリエルの母とも因縁があった。ガブリエルは、ヤド・ヴァシェムに残された母の証言書を読み、初めて母の苦難と向き合うことに。

5(Prince of Fire 2005年)未訳
ガブリエルに関する秘密文書が暴露され、ヴェネツィアにいられなくなったガブリエルはキアラを伴いやむを得ずイスラエルに帰国する。キアラとの生活を準備するが、イギリスの病院に入院させていたリーアが誘拐されて・・・・・。紆余曲折ありキアラが1人でヴェネツィアに去る。
 
6(The Messenger 2006年)未訳
ローマ法王パウロ7世がテロの標的に。ガブリエルが法王を守る。法王の計らい(?)でベネツィアにキアラを訪れ、関係復活。『教皇のスパイ』で触れているエピソードがこれ。
 
7(The Secret Servant 2007年)未訳

8(Moscow Rules 2008年)未訳
ガブリエルがモスクワに潜入。 
 
9(The Defector 2009年)未訳

10(The Rembrandt Affair 2010年)未訳

11(Portrait of a Spy 2011年)未訳
サウジアラビアに潜入。サウジ人女性ナディアを救出しようとするが、2人とも砂漠で殺されそうになる。結局ナディアが死に、ガブリエルは重傷。その後サウジ秘密警察に捕らえられ、過酷な尋問を受けて傷を悪化さる。米国CIAの介入で解放されるが、女性の死に責任を感じて深刻なPTSDを患い、イギリス・コーンウォールでキアラとアリに見守られて静養する。このときガブリエルを案じたサラ・バンクロフトの依頼でナディアの肖像画を描き、この絵を契機に精神的に復調するのだが、この絵がMoMA美術館のナディアコレクションの入り口に展示されている。これが、『過去からの密使』の下敷きとなっているエピソード。
12 (The Fallen Angel 2012年)未訳

13 (The English Girl 2013年)未訳

 2014年春〜秋  ガブリエル64歳。キアラは妊娠中。ガブリエルは、カラビニエリの美術班、フェラーリ将軍の依頼により盗難にあったカラヴァッジョの《キリストの降誕》を探すため、盗難絵画のコレクターを釣る餌として、ゴッホの《ひまわり》を盗み出す。しかし、《ひまわり》の盗品売買の相手を追跡するうち、盗難絵画がシリアの独裁者の隠し財産の形成に利用されていることが分かり、事態は一転する。ガブリエル個人の請負仕事が、オフィスの大プロジェクトに展開。標的はシリアの独裁者の財産である。一連の事件終了後、ゴッホ美術館に盗まれた《ひまわり》が戻ってくるが、なぜか手入れをされて盗難前より状態が良くなっていた、ということだ。 

 2014年秋〜冬  亡者のゲームの三日後から。 
 キアラの妊娠後期から出産まで。ガブリエルがロシアの策略で爆弾テロの標的にされる。
 怪我の詳細の記載はないが全身打撲くらいはありそう。 一週間程度で復活している。ロシアが手先に利用したのは、英国人暗殺者との因縁も深い、IRA爆弾テロ犯だった。そしてこの男は、ガブリエルの家族を犠牲にしたウイーンの爆弾テロにも深い関わりが。MI6からの請負仕事だった事件が、復讐の色を濃厚に帯び、事態は逼迫する。今回は絵画修復のシーンはないが、事件終了後、出産間近なキアラが待つエルサレムに帰還し、自宅の子供部屋の壁にダニの顔を模した天使の絵を描いて涙ぐむガブリエルの姿が切ない。

 2015年4月〜12月 ※2015年のISISの戦闘についてと、気候変動抑制に関する協定(パリ協定 2015年12月12日)が結ばれたことについて言及している。 ISISによるユダヤ人の組織を狙った大規模な爆弾テロがパリで起こり、ガブリエルはISISに潜入させる工作員とするため、フランス系ユダヤ人の女医ナタリーをリクルートする。前半はじっくりとスパイを養成するガブリエル。自分の子供時代のことを明かしながら、ナタリーとの信頼関係を築く。
 そして、潜入、テロ計画の始動。標的は、フランス大統領訪米中の合衆国だった。イスラエル、ヨルダン、フランス、イギリス、合衆国それぞれの諜報機関の長たちの協力関係も面白い。 この回でもガブリエルは爆弾テロの現場にいて被害にあう。 

 2016年2月〜11月 サラディンとの決戦。
 上巻冒頭で、エルサレムをイスラエルの首都と認め、「米国大使館」をテルアビブからエルサレムに移設する、 と発言した新しい米大統領の就任の話題があるが、トランプ就任は2017年1月なので、現実とは1年ずれた格好か。
 訪問していたフランス秘密情報部のビルが自動車爆弾で爆破される。間の悪い時に間の悪い場所に居合わせるのがガブリエルの得意技。このときの怪我は爆風とがれきの下敷きになって、肋骨数カ所を骨折、腰椎2か所にひび、重度の脳震盪で一週間ほどダウン。だが復讐の炎が痛みをおしてガブリエルを突き動かす。そして、サラディンをおびき出す作戦が始動。  
 サラディンの収入源である麻薬取引をヨーロッパ側で仕切る男を攻略し、サラディンに繋がる細い道をこじ開ける。米国からの横やりを排除しつつ、CIA、MI6、フランス治安総局と協働し、作戦を遂行。このあたりのガブリエルの政治力も見物。さりげなく出てくるウージ・ナヴォトもなかなか渋い。そしてサハラでサラディンを追いつめるが、サラディンは欧米のどこかに潜伏しているテロリストに攻撃を命じた後だった。

18【赤の女 上】【赤の女 下】(The Other Woman 2018年)
 2017年1月頃? 前作の爆弾テロの際の負傷の後遺症?で痛む腰をさすりながらのガブリエル登場である。おかげで若作りのガブリエルもだいぶ歳相応に見えてきた。良い記憶のあまりないウィーンでの作戦。例によって陣頭指揮を執っていたが、目の前で亡命させる予定だったロシアのスパイが殺害されてしまう。その上その場にガブリエルが居合わせたことを隠し撮り写真でマスコミにリークされて窮地に立たされる。
 怒り心頭、恨み骨髄のガブリエルはそこから怒濤の諜報戦に突入するが、判明したのは、宿敵を絡め取ろうとするロシアの策謀が二重三重に張り巡らされていたこと、そしてある伝説の二重スパイの存在だった。 

 12歳の少女(サウジ皇太子の娘)が誘拐され、その父である皇太子が、敵であるはずのガブリエルに捜索と奪還を依頼する。中東との融和の糸口になれば、という思いと、ただ、何の罪もない少女を助けたいという思いで、捜索に協力するガブリエルだが、目の前で少女は爆殺されてしまう。少女の殺害とその父の失脚の裏にロシアの影を見たガブリエルは、復讐の反撃に出る。 
 戦いはガブリエルの勝利に終わるが、少女を助けることができなかった悔恨がガブリエルを苦しめる。サウジ皇太子によるカショギ記者謀殺事件をモチーフに、ロシア、イギリスを絡めたシルヴァ風の一流のエスピオナージ 。

2019年11月。長官に就任して以来、腰を負傷して自宅で療養した数日以外は一日も休まず働いていたガブリエルを見かねて、キアラが休暇を手配する。(なんと首相にまで手を回して!)旅行カバンを用意していたキアラに、「出て行くのかい?」と真顔で尋ねるガブリエル! 休暇の行き先はキアラの両親が暮らすヴェネツィア、仕事ひとすじで余暇の過ごし方など知らないガブリエルの為に、修復する絵まで用意する周到ぶり。そこに、ガブリエルの庇護者でもあった教皇パウロ7世崩御のニュースが。この時点で、彼の任期は2年と1ヶ月。 

21【報復のカルテット】(The Cellist 2021年)
 2020年3月〜2021年4月。世界はcovid(新型コロナウイルス)に支配されている。 
 アロン家は人が多く、ロックダウン中のエルサレム市街の自宅から、故郷のイズレエル谷のラマト・ダヴィドに程近いナハラルに仮住まいしてコロナを避けている。双子たちは田舎暮らしで逞しく成長中。ガブリエルは新しく入手したガルフストリームに現金を詰め込み、人工呼吸器や検査薬や、医療用防護衣を世界中で買い付けて、国内の病院に配布。政治家への転身の準備か・・・との世間の噂も。そんな噂は歯牙にもかけず、ガブリエルはオフィスで諜報戦の陣頭指揮も執っている。そんな折、ガブリエルと旧知のイギリス在住のロシア人富豪が毒殺され、ガブリエルはおなじみMI6のケラーと動き出した。

22【謀略のカンバス】(Portrait of an Unknown Woman 2022年)
 2021年12月〜。ガブリエルはついにオフィス長官を引退し、長年にわたる諜報の世界から身を引いた。カラビニエリのフェラーリ将軍の庇護のある古巣ヴェネツィアに家族と居を構え、キアラはティアボロの美術修復会社の経営に参画し、子ども達は地元の小学校に通っている。キアラの配慮の行き届いた落ち着いた生活で長年の疲労や苦悩が少しづつ薄れ、彼が本来の笑顔やユーモアを取り戻しつつあるころ、旧友のイシャーウッドが、ある絵画売買絡みのトラブルに巻き込まれる。穏やかな日常に少々退屈しつつあったガブリエルは、キアラの赦しをえて調査にのりだす。
2022年秋〜。ベネツィアで絵画修復に携わり、悠々自適・・・のはずのガブリエルは、またもフェラーリ将軍の訪問を受け、ある名画の鑑定を依頼される。しかし、有名なゴッホの盗難名画の横には、空の額縁とキャンバスを失った木枠があり。そのサイズから、ガブリエルはその絵が、これも盗まれたフェルメールだと直感する。フェラーリからの依頼を受け、絵画の追跡に乗り出すも、ロシアの暗殺者、南アフリカの核開発、そして宿敵ウラジーミル・ウラジーミロヴィッチの手先だった男・・・と、話は転がる雪だるまのよう膨らんでいく。 

前作の直後から。2023年1月〜。コーンウォールで「斧男」といわれる連続殺人犯によると思われる殺人事件があり、かつてのティモシー・ピール少年(現在ではデヴォン&コーンウォール警察の刑事部の巡査部長になっている)が捜査に当たることに。ティモシーはある種の直感から、たまたまロンドンに滞在していたガブリエルに連絡を取る。そこから、巨匠絵画のブラックマーケットをめぐる怒濤と流転の展開に。イギリス政界を脅かす陰謀を、ガブリエルが執念で暴く。
 

今作は、時期を推測できる記述が少なかったが、事件の端緒となった、ガブリエルが女性の他殺体をヴェネツィアの運河で発見したのが秋。多分、コーンウォールの事件の後なので、2023年か24年と思われる。ヴァチカンから盗まれた、これまで未発見だったダ・ヴィンチの真作と思しき、若い女性の絵(おそらくは、ダヴィンチの世に知られた習作「若い女性の頭部」と同じ女性・構図の作品)を巡り、ヴァチカンに巣くう金の亡者と、イタリアマフィアの癒着を暴く。ガブリエルと教皇ドナーティの絡みが好きな人には満足な一作。