2024年9月13日金曜日

0500 帝都一の下宿屋

書 名 「帝都一の下宿屋」
著 者 三木 笙子       
出 版 東京創元社 2018年8月
単行本 241ページ
初 読 2024年9月12日
ISBN-10 448802792X
ISBN-13 978-4488027926
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123046596
 2018年8月に出版された本である。
 三木笙子さんの本は、だいたい新刊が出ればすぐ買うので、なんと6年も寝かせてしまったことになる。申し訳ないことだ。
 短編連作であるが、明治の東京の下宿屋を舞台に、穏やかな人間模様が描かれる。ブロマンス、というほどの熱量はないが、とても優しい。ミステリではあるが、凶悪だったり、阿漕に過ぎる人間は出てこず、大概人も死なない。
 私にとっては、この本も心の包帯系である。

紙に文字を書いただけの、何の役にも立たない作り話が、この心を温めてくれる。

 「それを読んだとき、心の中に灯りがともるような」小説こそ、まさに三木笙子さんが目指すものなのだろうなあ、と思う。
 下宿屋静修館に起居する居候の面々の中には、かの里見高広もいる。
 こちらは、「世界記憶コンクール」から始まる帝都探偵絵巻の主人公の片割れ。こちらの物語もオススメなのだが、読んだのは読メを始めるだいぶ前だったので、レビューは書いていない。こちらも、いずれ既読本に加えたい。
 私はミステリはさほど得意ではないので、謎解きはさっぱりなのだが、三木さんの本は、ミステリの体裁ながら、さほど謎解きには力を置いていない。やはり、謎を眺める人間の描き方が、楚々として控えめで、それでいて芯があってうつくしい。
 明治の街や職業をよく考証しているのもよい。この時代の空気や人の体温や気持ちをことさら優しく感じる物語である。
 ちなみに、装画はyocoさんだった。これまた素敵なんだよなあ。帯も白く美しく、「本好き」の心をくすぐる一冊だ。

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