2017年7月21日金曜日

0042 ララバイ・タウン

書 名 「ララバイ・タウン」
原 題 「Lullaby Town」1992年
著 者  ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 扶桑社 1994年7月

 C&P3作目。シリーズ初読。
 トレンチコートの似合う無口で渋い男が出てくるのがハードボイルドだと思ってたらどうやら違うらしい。ロサンゼルスの陽光のもと、マスタードのシミ付きミッキー柄スウェットシャツでコールが登場、過剰な軽口が体言止めで畳みかけてくる。
 仕事の依頼は、ハリウッドの有名映画監督(たぶん、スピルバーグと同じくらい?)ピーター・アラン・ネルソンの、無名時代の妻と子供の捜索。ピーターは甘やかされた芸術家肌の有名人にありがちな抑制の効かない男で、今回は10年も逢っていない息子の事を思い出し「父親」になりたくなったらしい。
 仕事を引き受け、足取りを追い、案外簡単にピーターのかつての妻と息子の居場所に辿り着く。それでは簡単すぎるな、と思っていたら、その元妻カレンが、務めている銀行で、ニューヨークのマフィアのマネーロンダリングに関与していることが判ってくる。
 マフィアのしがらみからなんとか彼女を引きだそうとしているうちに、ピーターが乱入して事態を引っかき回し、結局カレンもピーターもまとめて助ける羽目になる。
 コールは、女性や子供や社会的弱者に対してフェアで、しかもとことん優しい。これは損得抜き。そして彼らを脅かす敵には容赦無い。
 コールは、不遇な中から自分で自分を育てたタイプの人間で、彼の強さも弱さも、そこに由来する。そのゆらぎが最大の魅力で、つい引き寄せられる。
 コールとパイクはニューヨークで上等の宿をとり、美術館に出かけ、美味い食事をする。それで少しは人生が楽になると知っている。コールを支えるパイクがこれまた良い。
「おれが行くまで生きているように。」

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