著 者 王谷 晶
出 版 河出書房新社 2023年5月
文 庫 208ページ
初 読 2025年10月19日
ISBN-10 4309419658
ISBN-13 978-4309419657
読書メーター
任侠ではない、「暴力団」って感じのヤクザもの。そのヤクザの組長宅に、一匹狼の、やたらと喧嘩が強くて暴力が大好きな大柄な女が、自分の意志とは関係なく引きずり込まれる。
年代を特定するヒントが少ないなかで、なんとなく現代だと思って話を読んでいくと、途中で、え?となる。徹頭徹尾、血生臭さと腐臭と汚臭が漂うバイオレンスだが、あまり深くはない。ちょっとした叙述トリックがあり、途中でちょっと戸惑うものの、理解してしまえばなんということもない。最初の方で感じた芳子のつれあいの言葉遣いの、違和感というほどでもないひっかかりは、ちゃんと帳尻があう。
なにしろあっという間に読めるので、血生臭いのが大丈夫ならちょっと読んで見てもよいのでは、とオススメしたい。しかし、ラストはちょっとファンタジーっぽすぎるかなあ。全編血生臭さと腐臭がただようが、その実メルヘンだと思った。
個人的には、柳がどうなったのかが気になる。ヤクザの若頭補佐をつとめようという男が、ちょっと甘すぎるんじゃないか、とは思って、そこにもかるくひっかかった。
韓国釜山と下関を結ぶ国際フェリー就航が1970年。柳は家族を連れて韓国に渡ることができたんだろうか。

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