2023年6月13日火曜日

0430 世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫)

書 名 「世界でいちばん透きとおった物語」
著 者 杉井 光
出 版 新潮社 2023年4月
文 庫 240ページ
初 読 2023年6月11日
ISBN-10 4101802629
ISBN-13 978-4101802626

 なにしろ「ネタバレ厳禁」なので、ぜひ読み友さんと、個別に裏で「どこで何に気づいたか」を検証したい(笑)。紙本をこよなく愛する人であれば、かなり早い段階で気づくはずだ。
 個人的には、Amazonの広告は煽りすぎ。
 広告による先入観のせいで、つい穿った読み方をしてしまい、素直に読書を楽しめなくなったのが残念。

この本を読む人には、あまり帯や煽りにつられず、普通に読書を楽しんでもらいたい。
 表現の自由度が相当広い日本語であれば、そして短歌などの字数の制約がある中で事物や心情を表現してきた日本人であればこそ、これはアリだと思った。また、文章に波のようなおおらかな抑揚が生まれていて、すらすらと読める気持ちよさがあった。
 1点、大いに不満があるのは、「殺人」の解釈ですかね。ああた、20年前はそんなに昔ではありません。著者がお若いのかな?と思ったらそうでもなさそう。曾野綾子「神の汚れた手」あたりを読んで勉強していただけると嬉しいです。せっかくの構成が中身で台無しになりかねません。勿体ない。

 また、杉井光さんは、どきっとするような日本語表現を使われる。美しいと思いました。いくつか抜粋。
「僕にとって・・・・・、うっすらとした軽蔑と分厚い無関心越しに遠く眺めるだけで済む。」————“うっすらとした”と“分厚い”の対比の使い方が面白い。
「こんなにも薫り高く穏やかで暖かい死の予感に満ちた場所では、嘘は口に出した端から腐っていきそうだ。」————ちょっと私には思いつけない表現で、凄く印象的。
「足の爪が割れそうなほど寒い二月末の夜に」————足の爪が割れそうな寒さ、って私には想像が付かないのだけど、これも素敵な表現だと思いました。
 あとですね。
 この本をよんだら、猛烈に京極夏彦氏の著書を読みたくなりました。いままで、あの分厚さに圧倒されて、敬遠していたのですが・・・・・

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