2017年9月2日土曜日

0052 The Last Detective (Cole and Pike Book 9)

書 名 「The Last Detective (Cole and Pike Book 9)」  2003年 
著 者 Robert Crais 
初 読 2017/09/02 

 『L.A.Requiem』に続くC&Pの9作目。
 冒頭から惜しげも無くコールの過去が明かされるこの話、コールの過去をほじくり返していたぶる作者クレイスが相当な鬼畜っぷりだ。メンタルやられっぱなしのコールが読んでいて可哀想すぎて、胃のあたりがきゅーっとなってくる。
 でもヴェトナムでコールと同じ小隊に属し作戦中に戦死した親友の父がコールを労ってくれたり、陸軍基地で働いていた海兵隊の退役軍曹がコールに良くしてくれたりで、少し気持ちが救われたりもする。このアメとムチ感がまた、クレイスらしく感情を揺さぶってくる鬼畜っぷりだ。また、事件担当の少年課刑事としてキャロル・スターキーと鑑識のチェンが登場。
 なお、作中でマイクル・コナリーのボッシュが友情出演している。ちなみに、コールのほうは、ボッシュシリーズの『暗く聖なる夜(下巻)』に友情出演している。どこかよそのレビューでも書いたけど、この二人は住まいも近いのだ。コールは、ウッドロー・ウィルソン・ドライブのマルホランド・ドライブからハリウッド側の南斜面に下ったあたりに居を構え、ボッシュは同じウッドロー・ウィルソン・ドライブの、マルホランド・ドライブ(尾根)を挟んで反対側の、スタジオシティを望む北側斜面に住む。ボッシュの家の前はコールのランニングコースで、かつてロス大地震のあと、シャツを脱いで自宅前で瓦礫の片付けをしていたボッシュを、通りかかったコールが黙って手伝った、というエピソードがこの本で紹介されている。
 その時ボッシュが上半身裸だったので肩の入れ墨があるのが分かり、コールはもともとロス市警で見かけていた刑事がヴェトナム帰りだということに気づき、密かな敬意を抱いていたのだ、と。
 ちなみに、ボッシュは1968年から、コールは1970年からヴェトナムで従軍している。ふたりとも陸軍。ボッシュは第一作にあるとおりトンネル兵だった。コールはこれまで邦訳本で「特殊部隊」と書かれていたので、グリーンベレーか?と思っていたが、この作品でレンジャー部隊だったことが判明。以下、邦訳シリーズ読者向けにあらすじ公開につき、ネタバレ御免。嫌な方はスルー推奨。

 5日間の予定でコールの家に泊まりに来ていたベンは、こっそりコールの私室に忍び込んで宝物探しをする。
 コールの私室には古いSF映画とホラー映画の素晴らしいコレクションがあって、コールはいつでもベンに観せてくれたが、ベンはもっと凄い何かを見つけたかったのだ。ベンはクロゼットの上段に隠してあった箱を発見する。 中にはメダルケース5個と連隊記章、色褪せた写真が入っていた。これだ!とベンは興奮するが、そこでコールに見つかってしまう。
 こっそり私物を漁ったことを反省しつつも好奇心を抑えられず、ベンはコールを質問攻めにする。
 シルバースター勲章が2個とパープルハート勲章(名誉戦傷章)があった。写真の人物の肩にはRANGERのタトゥー。コールはレンジャーとは兵士の一種だとベンに説明する。レンジャーは何をするの?と尋ねるベンに腕立て伏せをするのさ、とはぐらかすコールは言葉すくなだった。
 コールはベンにシルバースターのうちの一つを与える。
 この数日後、ベンが誘拐された。

 ベンを探し回るコールの元に1回目の脅迫電話が掛かってくる。犯人は「5−2」「これは報復だ」と告げる。5−2はコールが所属した偵察隊のナンバーだが、この小隊はコールを除いて全員戦死していた。
 事件の連絡を受け、ルーシーの元夫であるリチャードが乗り込んでくる。彼はコールを口を極めて非難する。コールは穏やかに受け流す一方、家の周囲でベンが連れ去られた痕跡を調査した。調べるにつれ、かつての自分と同じような戦闘経験を持つ人間の犯人像が見えてきて不安を強めたコールは、パイクに応援を求める。2回目の脅迫電話。犯人は「これは報復だ。彼は26人の民間人を虐殺した。仲間は口裏を合わせたが、コールは彼らを信用せず、殺した」と告げる。
 リチャードはコールの過去を調べ上げ、彼が少年時代、暴行傷害・自動車窃盗などの罪で刑務所に入る代わりに従軍したのだ、とルーシーに暴露。コールは秘密にしていたわけではない、とルーシーに言う。ただ不遇だっただけだ、と。ルーシーはコールを信じる、と言うもののベンのことで追いつめられており、コールの心情に配慮する余裕はなかった。
 ベンをコールに預けたのは間違いだった、とルーシーは言い、コールに捜索から手を引くよう求める。「君とベンは僕の家族なんだ」と訴えるコールに「いいえ、貴方は私達の家族じゃない」とルーシーは答える。ひとり、車の運転席で涙を流したコールを遠くから見守っていたのは、パイクだけだった。
 
 犯人が自分の陸軍の人事記録を入手したのではないかとコールは疑う。人事記録は秘匿されているので、入手する方法は限られている。その履歴から、意外な線が浮かび上がってきた。スターキーとジョンの捜査で実行犯が割り出され、やがて事件の全容が見えたてきたが。。。。

 謎解きは『容疑者』レベルのあっさり感。それよりも回想シーンで4人の戦友を失う戦闘シーン(コールが親友アボットの遺体を守り抜く)、母がコールの名前をエルヴィスに変えた出来事や、戦友に父の事を聞かれ「知らない」と答えるシーン、アボットを生きて連れ帰れなかったことを詫びるコールにアボットの父が、いや、連れて帰ってきてくれた、とコールを労るシーンとか、これでもか、と心を揺さぶられる。ちなみにアボット家にはエルヴィスという名前の孫がいるらしく、すこしだけほっこりする。

 コールは死闘の末、ベンを取り戻す。しかし、ベンのために静かで安心できる環境を取り戻すことを最優先したルーシーは、ベンと共にルイジアナに去ったのだ。
 
C&Pのペーパーバックは何種類も出ているが、このシリーズの表紙が一番好き♪

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