2023年7月1日土曜日

0437 ウィンター・キル (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「ウィンター・キル」
原 題 「Winter Kill」2015年
著 者 ジョシュ・ラニヨン    
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2021年2月
文 庫 350ページ
初 読 2023年6月30日
ISBN-10 4403560466
ISBN-13 978-4403560460
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114655233

 主人公のFBI特別捜査官、アダム・ダーリング・・・・「フェア」シリーズの主人公の1人、タッカーのロサンゼルス時代の元恋人。そして、そのアダムのバディのJ・Jは、「殺しのアート」シリーズ主人公であるFBIロス支局のジェイソンのバディとしても登場している。後ろの方では、クワンティコの天才分析官のサム(「殺しのアート」シリーズのジェイソンの恋人)が登場。ジョシュ・ラニヨンの一連のFBIシリーズに連なる一作。
 そのFBIロス支局のアダムは、ある誘拐事件捜査の失敗以来、腫れ物あつかいされて半端な仕事を淡々とこなす日々。現在FBIが追いかける連続殺人犯「ロードサイド・リッパー」関連の事件を黙々と調査しているが、隣州オレゴンの田舎町の保安官から、発見された死体の捜査協力依頼を受け、調査に訪れる。空港に出迎えた保安官補ロブと、その瞬間から視線がビビビっとなって、3回視線が絡むころには、お互いにゲイであることを確信。そしてロブときたら、夜、アダムが泊まるキャビンの扉を閉じた瞬間にすっぽんぽんになって、肉弾戦!(笑)。
 これまでに読んだジョシュ・ラニヨンの中でも一番、直裁。あんたら、もうちょっと、お互いを知り合う努力ってしないんだ。しないんだね? ロブはともかく、アダムって超慎重派に見えるのに。

 その時は、一夜限りの関係だったが、季節が巡ってふたたび殺人事件が発生。保安官は今度はアダムを名指しで捜査協力を依頼し、アダムはふたたびニアバイを訪れ、ロブと再開する。

 小さな街で、住民はみな、知り合い同士。保安官事務所の仕事といえば、事故の処理やら酔っ払いの相手やら。そんな田舎町で起こった、2〜30年前の2件の失踪・殺人と、最近連続して起こった女性暴行未遂。そして地元で愛されていた女性の惨殺死体。そこに、冷静なアダムと、熱血なロブ、ベテラン保安官などのキャラクターが加わる。さすがのM/Mミステリー作家ジョシュ・ラニヨンで、捜査ものとしても、捜査官の群像ものとしてもそれなりに面白く仕上がっているが、そこに、タッカーとの破綻の傷も癒えきらない超慎重派のアダムと、性格も考え方もまったく違うロブとの恋愛が絡む。

 オレゴンとカルフォルニアは隣州とはいえ、そこは広大な合衆国、直通便の本数も少なく、忙しい捜査官の身で長距離恋愛は難しい。おまけにサム・ケネディにスカウトされて、クワンティコに異動したら、更に距離は遠くなる。しかしそこは、現役でロス支局のジェイソンと遠距離恋愛進行中のむっつりスケベなサムがいるではないか。なにかアドバイスでもしてやったら〜?と一人にやにや。(無論、サムはそういう性格ではない。)アダムの元恋人のタッカーはその隣のシアトル支部でラブラブしてるし、どうも、ジョシュ・ラニヨンを読んでいると、FBIにはゲイカップルしかいないんじゃないかって気がしてくるんだけど・・・・・

2023年6月の読書メーター(上半期雑感)


 6月が終わり、ということは、2023年の上半期がこれで終わった訳です。ついでながら、年齢がまたひとつ、増えてもいる。静かにその事実に脅かされる。今年読んだ本がまだ三十数冊。
 今年こそ読み切りたいと願っている数々の翻訳のシリーズ物、死屍累々の積ん読本。
 読みたい本の冊数と、読書速度を掛けて、残りの読書寿命(推定)で割る。もう、退職届け書いたほうがいいのでないか?ああ、でもでもまだローンが!!!!・・・・・絶望。
 と、まあ、そんな芝居がかった仕草はさておき、今月は11冊は読めたわけだし、多忙な中で捗ったほうなんですがね。

 1年ほど前から積んでいた、モノクローム・ロマンス文庫の紙本は、これでだいたい既読棚に移動。残るは一冊。(でも電子本はまだ、数冊ストックしている。)
 その他は、ガブリエル・アロンシリーズの新刊。もうそろそろシリーズ〆に入りそう。これも積んでいた自衛隊系のお話2冊。満を持しての機龍警察。巷で大評判の『世界でいちばん透きとおった物語』は、紙本をこよなく愛する我が読み友さん方なら、難なく見破るかな、とは思う。アイデア勝負の一発勝負で、二冊目はない。面白くはあったけどね。私は単純にストーリーや人物で読ませてくれる本が、やっぱり好きだな。
 そういう点では、《カササギの魔法》シリーズは大当たりでした。
 主役のひとり、クレーン伯ルシアン・ヴォードリーのキャラが立ちまくってて、うっとり。
 あちこちのレビューを見ると、翻訳よりも原文を推している方がちらほら見受けられるので、ぜひ原文でも読んでみたいもの、と夢想。ルシアンの性格や言葉遣いが違っているとかいないとか。上流階級のキングズ・イングリッシュと、ロンドンの下町言葉での身分や性格の書き分けなど、自分が読んで果たして雰囲気がつかめるものかは判らないのですが。
 
6月の読書メーター
読んだ本の数:10
読んだページ数:4681
ナイス数:819

カササギの飛翔 カササギの魔法シリーズ3 (モノクローム・ロマンス文庫)カササギの飛翔 カササギの魔法シリーズ3 (モノクローム・ロマンス文庫)感想
ベッドの上でのS風味と日頃の献身のギャップがひどいとはいえ(笑)、クレーンの揺るぎない大きな愛に癒される3冊目。仕事に忙殺されるスティーヴンに替えのきかない仕事はないと力説するクレーンのセリフが耳に痛いです。スティーヴンの超過労働の原因は審犯機構を潰そうという協議会の悪意で、その裏にはクレーンの力を付け狙う魔導士が。カササギ王の指輪が盗まれ、濡れ衣が着せられ、警察官が殺されてスティーヴンは対応に忙殺され、二人の関係までささくれるが、事態を収拾するのは実際的なクレーンの決断力と判断力。
読了日:06月28日 著者:KJ・チャールズ

カササギの魔法シリーズ2 捕らわれの心 (モノクローム・ロマンス文庫)カササギの魔法シリーズ2 捕らわれの心 (モノクローム・ロマンス文庫)感想
この2人この巻では冒頭から恋人同士なので、それはもう遠慮なく愛し合ってます。恋人をベッドの支柱に縛り付けて変態的にいたすことが、なぜ彼の中で崇拝することと同義になるのかよくわからないですけど。(^o^) クレーンはそれは細やかにスティーヴンを溺愛してます。今回とてもストレスフルで、緊張で細かく肩を震わせ気味なスティーヴンを細やかにフォローするクレーンは紛れもない紳士。で、今回もカササギ王の力を狙う輩がクレーンを狙いますが、そこはきっちりスティーヴンが防衛。でもこのお話、終始一貫してクレーンの恋文ですね。
読了日:06月26日 著者:KJ・チャールズ

カササギの魔法シリーズ1 カササギの王 (モノクローム・ロマンス文庫)カササギの魔法シリーズ1 カササギの王 (モノクローム・ロマンス文庫)感想
〈海外作品読書会参加〉基本ゴシックロマン調。英国の古い屋敷を舞台とした黒魔術物なんだけど要所要所で地崩れするみたいにゲイロマンスに雪崩れ込む。一瞬地軸がずれたみたいにくらっとして面白い。魔力絡みの本筋はもっとドラマチックに盛り上がってもよかった。なんだかドタバタしているうちに終わってしまって、もっと楽しみたかったのでちょっと残念。あっちの方は散々お預けを食らってラストで大いに盛り上がる。カササギが飛び回るおまけの短編も面白い。『カササギ殺人事件』でも出てきたカササギ数え歌が呪文替わりでかなり格好良かった。
読了日:06月24日 著者:KJ・チャールズ

謀略のカンバス (ハーパーBOOKS)謀略のカンバス (ハーパーBOOKS)感想
〈CNC犯罪小説クラブ参加〉2022年春。イスラエルの諜報組織《オフィス》長官を退任し、21歳から長期の中断を挟んで長年にわたって従事した暗殺と諜報からガブリエルは身を引いた。古巣のヴェネツィアに家族と居を構え、キアラはティアボロの美術修復会社の経営を引継ぎ、子ども達は地元の小学校に通うことに。キアラの世話が行き届いた落ち着いた生活で長年の苦悩が少しづつ薄れ、彼が本来の笑顔やユーモアを取り戻しつつあるころ、旧友のイシャーウッドが、ある絵画売買絡みのトラブルに巻き込まれる。
読了日:06月21日 著者:ダニエル シルヴァ

DEVIL MAY CARE <矢代俊一シリーズ20>DEVIL MAY CARE <矢代俊一シリーズ20>感想
『毒を喰らわば皿まで企画』その20。俊一の陵辱ビデオの上映会が裏で行われ、写真が出回っているという。野々村から知らされて、事態の収拾もできずオロオロする俊一。そんなお姫様を守る男たち、嫉妬する野々村。その他諸々。醜悪です。報告は以上です。最後まで読んでも完結はしないんだし、もうやめてもいいか、と思い始めた。これ以上寄付する気になれん。まあ、ラストのライブシーンはそう悪くもないのだけど、だからといって別に良くもない。
読了日:06月20日 著者:栗本薫

機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)機龍警察〔完全版〕 (ハヤカワ文庫JA)感想
予想以上にユーリが青くて甘くて熱くて、可愛くってしょうがない。もっとクールなキャラだと勝手に思い込んでいた。大丈夫なのかユーリ!?こんなんでやっていけるのか、ユーリ!!と冒頭から心配で心配で(爆)ハートを掴まれたっていうよりは、弱みを握られた感じに近い。私は傷ついた男に弱い。そして周囲の特捜部の男達も男前。あらゆるタイプの『格好いい』をぎゅっと詰め込み、そこにヒューマノイド形のメカが加わり近未来SF風味を加えた傭兵アクションものと日本の警察ものの融合というニッチにもニッチを極めた異色な小説。私向き。
読了日:06月15日 著者:月村 了衛

丹地陽子作品集丹地陽子作品集感想
本当に素敵。私が本を書いたら(←ありえない)この方に装画をお願いしたい!と妄想した。いろいろなテイストがあるけどどれもこれも綺麗で。本と猫のモチーフがとてもとても好みです。猫の意志的な目がイイ! そしてそんなに月曜日がイヤなのか(笑) 見たことがある絵が・・・と思ったら、たくさん書籍の装画をされているのだ。ル・グウィンの『闇の左手』の表紙絵も収録されてた。
読了日:06月13日 著者:丹地 陽子

世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)世界でいちばん透きとおった物語 (新潮文庫 す 31-2)感想
なにしろネタバレ厳禁なので(笑)、「読みました」とだけご報告を。これを読んだ読み友さんとはバックステージで語りたいですね。ブログの方にも、レヴューは書きずらいな。1点、大いに不満がありますが、面白い読書体験でした。
読了日:06月13日 著者:杉井 光

深山の桜 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)深山の桜 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)感想
自衛隊、憲法、差別、日本が抱える重い課題が目一杯詰め込まれていた。南スーダンの自衛隊PKO部隊の宿営地の中で起こった盗難事件。中央警務隊から捜査のために派遣された植木の登場で特殊な状況下での探偵物のように話が進むが、むろんそれだけで終わるはずもなく、どこに連れて行かれるのか判らない。それぞれが抱える苦しさ、不安定な立場を一兵卒に強いる日本という国の卑怯。憲法改正すべきとは考えないが、自衛隊の困難をこのまま放置で良いわけがない。民族や血統ではなく同じ赤い血が流れていること。単純なことが一番難難しい。
読了日:06月10日 著者:神家 正成

空飛ぶ広報室空飛ぶ広報室感想
普段は縁のない航空自衛隊。しかも幕僚。ブルーインパルスの夢を絶たれた元パイロットの空井が配属されたのは幕僚部広報室だった。個性的な面々に揉まれ、見守られ、広報官としての立場から自衛隊を支えていくことに意味を見いだしていく空井。人と真摯に関わることにも、真面目に取り組む姿に好感度高し。恋あり友情あり、そして広報イベントあり。ブルーに乗れなくても、ブルーを飛ばすことはできる。そして向かえた3.11。ブルーインパルスの基地でもあった松島は津波に攫われる。自衛隊の奮闘や中の人の想いもこみこみでぜひ読んでほしい。
読了日:06月03日 著者:有川 浩

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