ラベル L・デビッド・マルケ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル L・デビッド・マルケ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年12月12日日曜日

「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」メモ

もっとも幸せな瞬間は、未来にある

リーダーシップとは、人が持つ価値と潜在能力を明確に伝え、本人がその存在に気付いて刺激をうけられるようにすることである。

◆著者マルケ氏の、人間(部下やそれ以外の人々)に対する優しさと公平さ
・会社に貢献する気持ちも、仕事に対する思い入れややりがいも失った社員は、組織の利益をむしばみ同僚のやる気をそぐ。確かに利益の損失も甚大だが、私の感覚としては、彼らが失った喜びや幸福巻の喪失の大きさは、その比ではないように思う。p.9 

・誰もが自分の仕事に満足している世界を思い浮かべてみてほしい。そこは、誰もが自分の知力を存分に発揮し、自分を高めたいという意欲に満ち溢れた世界だ。人間という種に授けられた認知の力を存分に使い、目の前に問題が現れるたびに解決していく姿がそこにはある。p.15

・乗員の稼ぎを増やすためにできることと言えば、昇進のチャンスを最大限に生かせるようにしてやることぐらいしかない。私はそのためにできることを必死でやった。p.228

・もう12月だが、評価表の提出期限は9月15日だった。昇進審議会が開かれても、彼のファイルが不完全であれば、昇進のチャンスはゼロになる。上等兵曹の評価ですらこの扱いなら、かれより立場の低い水兵はどんな扱いを受けているというのだ?p.49
①部下の昇進やキャリア形成に対する上司としての責任。
②人事にもとめられる公平性。
③業務手順を守ることが、組織としての信頼性を高める。
 
◆行動を変える/意識を変える
・問題解決の責任を各自に負わせることで、自分は欠かせない存在だと各自が意識するようになる。(ただし、責任転嫁ではなく、最終責任は上司が負う覚悟が必要だとは思う。)
・優れた成果をあげることよりもミスを犯さないことにエネルギーを注いでいないか?
・ミスについて深く理解することが優れた仕事につながる。ミスが起きた場合には、なぜ起きたのか原因を深く追求し、ミスを排除するために必要な措置を理解する。これは責任追及のために行うのではなく、これから先同様のミスを起こさないようにするために行う。
・決断を下す者が情報のある場所へ降りていく。
・これまでとは違う行動をとらせることから始める。そうすれば新しい考え方は後からついてくる。
・立場が下の者は、最初から「完璧」なものを上の者に見せようとする。そういう思いはそれまでの努力を無駄にしてしまいかねず、効率を悪くする。早めに見せて、目指すものとのズレが無いか確認をする。上の者の意志や、助言は早い段階で確認することで早めに小刻みに軌道修正をはかったほうが効率が良い。
・(上の者が)「早めに短く言葉を交わす」というのは、部下に命令するという意味ではなく、一足早く進み具合を報告をする機会を作っているのだ。そうすることで、引き続き部下の責任で問題解決にあたってもらえる。それに、そういう機会を通じて、成し遂げたいことを部下にはっきりと理解させることもできる。それで何時間もの時間を無駄にせずにすむ。

権限を委譲する/委ねるリーダーシップ
・権限の委譲の背後にはトップダウン構造が潜んでいる。その行為の中核には、部下に権限を「譲ってやる」という考え方があり、リーダーには部下に権限を委譲できる権力や能力があると暗示している。

●「視認責任」の導入
 現場で行われる活動の一つ一つを中間職のリーダーがその場に立ち会って自分の目で確認し
上官への説明責任を果たすしくみを作る。
●具体的な決定権限を下ろす。(休暇に関する稟議の決定権者を下ろすことによって、関連する諸々の服務関連の把握を現場の長がおこなうように変更)
●計画書に現場の責任者の記名欄を設け、全ての活動に現場で権限と責任を持つものを表示。

自発性を高める言葉の力
・「これから〜をします」という言い方の導入。指示待ちにせず、自分の責任において為すべきことを考え、進言し、上司の承認を取る。
 【上司に従うだけの言い方】      【権限が自分にある言い方】
   ●〜の許可をお願いしたいのですが    ●これから〜をします
   ●〜できればと考えています       ●私の計画では〜
   ●何をすべきか教えてください      ●〜をするつもりです
   ●どうすべきだとお考えですか      ●〜をしましょう
   ●何ができるでしょうか 

・部下の当事者意識や責任者意識を損なわせるメッセージを無意識に発していないか。

委ねるために(委ねられるために)技能(技術)を高める
・権限を下に委譲するにつれ、あらゆるレベルの乗員に技術的な知識があることが重要になる
・物事を判断する力を高めたいなら、判断の基となる確かな技術的知識が必要になる。p.177
常に学ぶ
・私は、「いつどこでも学ぶ者でいる」と意識するようになったことで、精神的に安定し、ものの見方が広がった。p.185

繰り返し伝える
・大事なメッセージは、しつこいほど繰り返し伝える必要がある
・すぐに受け入れられる人もいれば、受け入れに時間がかかる人もいる

目標設定/目標を正しく共有/信頼
・目標を定めるときには、成果が測れるかどうかを意識するとよい。p.243
・将来のビジョンを同僚や部下とともに描くときには、具体的で成果が数値でわかる目標を定めることが重要。
・部下の目標について話し合うときは、相手が抱える問題に親身になって相談にのる必要がある。個人的に支援する姿勢を示せば、部下のことを考えて行動し、彼らが達成したいことをつねに頭に描いているのだと分かってもらえる。

行動指針/判断の基準
・たとえば、査定をするときや報告を書くときは、行動指針にある言葉を積極的に使わせた。「M軍曹は、勇気と積極性を持って報告し・・・」p.236
・行動指針を判断の基準とすることは、組織の正しい理解につながる。p.237

委ねる(委ねられる)ために必要なもの。知識と技術。そして学び続ける。
・本当に必要なのは、命令系統からの解放、すなわち自由である。自由というのは、人が生まれ持った才能やエネルギー、創造性を認め、それを存分に発揮させることを意味する。
・自ら判断して行動出来る環境が整い、高い技能と正しい理解が備わったとき、自由が生まれる。自由な状態で仕事をしているとわかれば、権限を委譲する必要はなくなる。というよりも、上の立場の人間の力を頼りにしなくなったのだから、権限を委譲するということ自体ができなくなるのだ。p.275 

・決断を下すうえで、彼らに何が必要になるかを理解する。何かと接するときは、的確な専門的知識、組織の目標に対する深い理解、決断を下す権限、状況に応じた決断を下す責任が必要になる、と覚えておくとよい。p.266

・私は組織にはそれぞれ個性があり、一つとして同じものはないのだと知った。組織で働く人の育った環境も、権限を許容するレベルも、自由に対する感じ方も、人によって異なる。p.279

・結局のところ、誰よりも支配しないといけない相手は自分自身である。p.280 

委ねるリーダーシップ
 【部下に命じる構造の打開策の成功例】
●作業を細かく見るのではなく、作業をする人を細かく観察した。
●報告の数や確認する箇所は増やさず、むしろ減らした。
●リーダーシップを振りかざして命令に従うだけの「フォロワーシップ」を助長させず、自分が一歩下がることであらゆるレベルでリーダーシップを発揮させた。 p.262 

2021年12月4日土曜日

0310 米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方

===============================
書 名 「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」 
原 題 「Turn the Ship Around!」2012年
著 者 L・デビッド・マルケ 
翻訳者 花塚 恵 
出 版 東洋経済新報社 2014年6月 
単行本 285ページ 
初 読 2021年12月15日    
ISBN-10 4492045325 
ISBN-13 978-4492045329 
読書メーター   https://bookmeter.com/reviews/102854935
===============================
 自分が仕事ができていると感じているときの充足感、自分がきちんと業務にひいては社会にコミットしている、と思えたときの健全な満足感は、人が仕事をして、それによって長い人生を生きていく上でとても大切で、必要なものだ。

 この本は、組織を構成する一人ひとりがそのような状態になることを、リーダーとしてどうやって意識的に作っていくことができるかを、潜水艦というある意味特殊で閉鎖された環境のなかで実践したことの、記録、というか報告のようなもの。
 潜水艦で、という環境が面白い。
 原子力潜水艦は、一度出航したら何ヶ月も母港に戻らず、浮上すらしないまま長時間の航海が可能で、100名程度の乗員は、狭い艦内で、極めて緊密な関係のなかで缶詰になる。
そのため、組織運営に不確定な要素をもたらす外的な刺激はかなり単純化されていると思える。
・業務は高度に組織化されていて、出来・不出来は一目瞭然。
・ついでにいうと、そのような環境で長時間能力を維持することを求められる乗員は、海軍でも「エリート」に属し、精神的にも安定して強靱で、他者との協調性が高く、意欲的な人物が選抜されているとみてよい。

 そのようなエリート集団であっても、軍組織という上意下達、上官には絶対服従、しかも艦内(艦長の権限は極めて強大)という環境で、専制的でダメなトップのもとでは腐ってしまうのだ。自分の仕事が評価されない。自分が組織の中で役に立っていると思えない。自分が十分に能力を発揮できていない、という思いは、簡単に人間を腐らせ、本来の能力まで奪ってしまう。
 この本は、そのような状態に陥っていた米攻撃型原子力潜水艦〈サンタフェ〉(ロサンゼルス級)の艦長に任じられた著者のマルケ(当時大佐)が、部下に権限を委譲するなかで、部下一人ひとりの責任と判断を尊重し、部下のやる気と充足感を高め、その結果一隻の潜水艦の能力を飛躍的に向上させた実践を簡潔にまとめたものである。
 組織のメンバーが有機的に結びつき、エネルギーが正しく流れるときの無駄のない業務の進行と、それに関わるメンバーの健全な人間関係は、ひとことで言ってしまえばとても“気持ちの良い”ものだ。それを、自分の部下に味あわせることは、いわば組織の上に立つものの責務ではないだろうか。今の自分にそれができているだろうか。という反省も浮かんでくるが、これもまた、健全な反省であるべきだ。
 この本(最強組織の方)を、単に読み物として楽しむもよし、我が身にあてはめて、工夫のヒントとするもよし、何回でも手にとって楽しめそうな、珍しくも有用なハウツー本、ビジネス本だと思う。

 ちょっと脱線するが、H・ポール・ホンジンガーの『栄光の旗のもとに』は、まさに〈サンタフェ〉と同じ状況で新艦長に引き継がれた駆逐艦〈カンバーランド〉を、新任艦長が乗員の自信を回復して最優秀艦に育てる話でもある。この「最強組織」が2012年刊、「栄光の」が2012年に書かれ、2013年に刊行されたのは偶然かな? 真っ黒な円筒型のステルス宇宙艦は、駆逐艦とはいえど、ほぼ潜水艦のようなもの。全長、艦内の構造、乗員数も原潜と似たりよったりだ。リーダーシップを試行して、結果を確認するのに丁度良い規模と環境である、とも言える。


 これは余談。表紙の写真は、ロサンゼルス級原潜〈サンタフェ〉ではない。S112ってどこの艦だろう?国旗はギリシャに見えるけど。せめて米原潜の写真が使えればよかったのにねえ。
 さらに余談。各見開きページの左上のイラスト表示の潜水艦の艦影が第二次世界大戦の頃の姿だ。現代の潜水艦はもっと丸い。
 このあたりのビジュアルにもっと凝ってくれたらよかったのに。。。。。(ちょっと残念。)