2018年4月28日土曜日

0102−3 石の猿 上・下

書 名 「石の猿 上」「石の猿 下」
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
翻訳者 池田真紀子氏
出 版 文春文庫 2007年11月
初 読 2018/04/28

 
 
 今作は、中国人不法移民と蛇頭の暗殺者が相手。
 中国人コミュニティの独特な雰囲気はきっと日本の華僑社会にも相通じるんだろうなあ、と思いながら読む。中国の文化や中国人のモノの考え方が分かって面白い。まったく真新しいというものでもないけど。
 ちょっと蛇頭が移民船に同乗した流れがストーリーとして弱いかな、と思ったのだけど、ディーバーの場合、こういうちょっとした違和感は実は伏線やら引っかけの場合が多いからな。下巻への引きは相変わらず天下一品。こんな終わり方をされたら、続きは明日読もう、とか無理!
 リーがどんどん危険に近づいていくところが心臓に悪い。あああ良い奴だったのに。
 最初から怪しいと思っていた奴がやっぱりだけど、あれ、こんなにページ残ってるのにいいの?まだ5分の1はあるぞ。いやこれはまだ一回や二回はひっくり返されるぞ、と大いに警戒する(笑)。
 まだあるぞ。くるぞくるぞ〜。。。。。いやいや、これ以上のネタバレはすまい。
 ディーヴァーにしては思いの外、ストレートな筋立てだったと思った。大どんでん返しというよりは、この前読んだ短編集みたいな小技が効いていた。最初の違和感がやっぱりだった。少し、ディーヴァーになれて来たような気がして嬉しい。

2018年4月23日月曜日

0100−1 エンプティー・チェア 上・下

書 名 「エンプティー・チェア 上」「エンプティー・チェア 下」 
著 者 ジェフリー・ディーヴァー 
翻訳者 池田真紀子氏 
出 版 文春文庫 2006年11月 
初 読 2018/04/23 
 
 

 上巻は、都会派ライムにしては意外にも泥臭く土臭いのでどうにも興が乗らず、1年越しの細切れ読書となっていたこの本。どうしてもバーニング・ワイヤーまで読みたくて頑張った。サックスったら思い切った事するな〜、ってところで下巻へ。
 だがしかし!いや〜面白いじゃないか!全2作(やや記憶が遠いが)と較べて、肉弾戦、銃撃戦のスリル。そしてなんとライムvsサックスの頭脳戦。追いつめられれば追い詰められるほど、よけいな思いがそぎ落とされてあらわになるライムの愛。
 ライムとサックスそれぞれの相手に対する劣等感から生じたすれ違いは、こんな風に追い詰められなければ乗り越えられなかったのかな。
 それに昆虫少年が、どんどん普通の少年になり、それからどんどん超優秀な少年に変貌(本人が変わったのではなく、見ている方の見方が変わっていくのだけど)が面白かった。
 残りのページの厚さで展開が読めないのがディーヴァーではあるが、ラストはちょっとあざとくないかい?と思わないでも。 
 その前のどんでん返しは途中で、あ、これライムがよくやるやつだ、と気づき、オサレな黒人が出てきたときには、あ、こいつアレだ、と気づき。でも結構最後の方まで、某氏が悪者だと思い込まされていた。いやあ、やっぱりライム、面白いわ〜。

2018年4月22日日曜日

0098−9 宿命の地 1919年三部作 2 上・下

書 名 「宿命の地 上」「宿命の地 下」 1919年三部作 3  
著 者 ロバート・ゴダード 
翻訳者 北田 絵里子 
出 版 講談社文庫 2017年5月 
初 読 2018/04/22


 さて、最終章であるが。
 都合のよい展開に、余りにも軽い読み口。次々にそれぞれの思惑で人物が絡んでは死んでいく。でもその動機は判で押したように「復讐」。主人公の主体的行動は悉く失敗し、偶然と幸運だけが物語を進行させる。人物像に深みがなくて、全部同じような人に思えてくる。一方の主役レンマーの動機がやはり薄い。結局自分を信じる者同士のぶつかり合い以上じゃないし、見方を変えたらワールドワイドな痴話喧嘩。やたらと壮大だけど中身は薄い。キュッと一冊にまとまっていたら多分ジェットコースターみたいで面白かったと思う。

2018年4月19日木曜日

0096−7 灰色の密命 1919年三部作 2 上・下

書 名 「灰色の密命 上」「灰色の密命 下」 1919年三部作 2  
著 者 ロバート・ゴダード 
翻訳者 北田 絵里子 
出 版 講談社文庫 2017年3月 
初 読 2018/04/19


 焦点の大物スパイ、レンナーがどれほど凄いのか、何を狙っているのか、ということが相変わらずよく分からない。彼のスパイ網を網羅するファイルの存在が今回の焦点。ファイルを巡って争奪戦とパリでの策動が同時進行で進んでいく。
 面白いけど、諜報物になりきれない冒険活劇だなあと。
 1919年という舞台装置に、自分が勝手に大河ドラマ的歴史的壮大さを期待しすぎていたようだ。導入部の長い手紙は不要では。あんな解説的な手紙を上司にしかも暗号で送るのか?とやや興醒めする。マックスが貴族のぼんぼんで世間知らずで詰めが甘いんだよなあ。ヴィクターやジェントリーらの職業人達や、先に読んでる二人のマックス(『鷲は舞いおりた』と『栄光の旗のもとに』)のせいで、つくづく自分の採点が辛くなってるな〜とは思う。こちらのマックスは、退役パイロットで貴族の次男坊で、ただの巻き込まれ型だからね。

 下巻になって、やっと本当に面白くなってきた。マックスは相変わらずどこかのほほんとしている。(本人は相当頑張ってるんだけど、あの状況下でサムと酒飲みに行くなよ)。
 モラハンとアップルビーおじさんのプロフェッショナルが私好み。職業人は好きだ♪
 そしてジョージ叔父が以外やタフさを見せたと思ったら、なんと母ウィニフレッド無双!ときた。

 なんて言おうか、お母ちゃんが全部知ってるんじゃないの?それでもあえて突っ張るかマックス?
 レンナーの陰謀もやっとその片鱗を見せ、父ヘンリーが為そうとしていた事も少し明らかに。すべての秘密は日本にあり。登場する20世紀初頭の日本人たちがうまく表現されていると思う、でも実際はどうだったんだろうか、と思いながら、やっと大河ドラマチックになってきたとうまうま。
 終盤マックスがレンナーに翻弄されて、危機一髪!というところで第三部に続く。これが劇場公開映画だったらバカヤローと叫ぶところだが、ちゃんと第三部も用意してあるからさっさとGO!

2018年4月8日日曜日

0094−5 謀略の都 1919年三部作 1 上・下

書 名 「謀略の都 上」「謀略の都 下」 1919年三部作 1
著 者 ロバート・ゴダード 
翻訳者 北田 絵里子 
出 版 講談社文庫 2017年1月 
初 読 2018/04/08 


 元英陸軍航空隊中尉のマックス(マクステッド)が、パリで変死した父の死因を追う。
 第一次大戦の戦後処理パリ講和会議の最中、醜聞にも政治問題にもなり得る外交官の死は、各国の思惑から闇に葬られようとするが、真実を求めるマックスは真相究明に立ち向かう。
 彼の前に立ち現れてきたのは、大戦を跨いで暗躍するドイツスパイの足跡。

 読みやすい文体ですんなり時代に入り込める。戦後の混乱期であっても華やかさを感じさせるパリ、往年の名画を彷彿とさせる表紙の男のシルエット。格好いいとはこういうことさ、と誰かの台詞が浮かんでくる。 面白かった。ただ、何というかタイトル眺めて妄想していたよりずっと普通(?)の冒険ものだった。

 上巻からずっと出てくるアップルビーおじさんが何だかとっても良い人である。はっちゃけマックスをまるで息子のように心配しつつ見守っているなあ、と思っていたら、本当に戦死した息子に見立てていたと知り、ちょっとホロリとさせられた。マックス父も、だたの老いらくの恋呆けではない何かがまだ隠されているようだし、まだまだ第一部。とっとと続きを読むべし。謎の大スパイ・レンナーに、なんとなく普通っぽい、というか、かつて読んだアルセーヌ・ルパンを思い出させる俗っぽい “いい人感” が漂うのと、主人公も状況を理解しないうちに、ドタバタと勝手に自体が収束していくので、最後が解説っぽくなってしまっているのが、ちょっと中途半端なで残念な感じもする。まあ、まだ途中だし、今後に期待しよう。