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2024年7月31日水曜日

0494 警視庁公安J アーバン・ウォー

書 名 「警視庁公安J アーバン・ウォー」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2024年3月
文 庫 448ページ
初 読 2024年7月22日
ISBN-10  4198949247
ISBN-13 978-4198949242
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/122126263   
 分室に新たなメンバーが加わった(正確には加わる)らしい。ダブル・ジェイ事件で、重傷を負った剣持警部補。警部補は、警視庁公安三課の人間で、しかもオズのメンバーだったが、かつての事件で純也を知ることになり、それから密かに分室の協力者となっていた。そして純也の依頼でメイと組んで動いていたところで犯人からの暴行を受け負傷・・・・というのがダブル・ジェイ事件までの流れ。入院まですることになって、純也に強力していたことが公安にもオズにもバレ、閑職に回され庁内で行き場をうしなっていたところを、純也が分室に引き込んだ。新たな公安ネームは「カブ」。愛車のホンダ・スーパーカブに由来するよし。
 セリはいまだ、長崎で入院中。
 さて、そんな新体制のJ分室に、陸自の異端児が仕事を持ち込む。自衛隊絡みで不審な事故死が重なっている。どうにも、ダブル・ジェイ事件以降の特務班絡みのよう。それならば、とJ分室が始動する。

 で。さて。
 裏表紙のあらすじがイマイチ。他の読み友さんも指摘のとおり、本文ちゃんと読まずに書いてるだろ。徳間書店。職務怠慢じゃないか?
 被害者の特性は「防衛大学校の卒業生」だけではないし、このシリーズで「別班」の名称が用いられたことはない。なんの本の話をしているんだ(汗)

 ストーリーに関していえば、今作がシリーズ中で一番読みやすかった。鎌形という政治家に、そんな大胆なことをする胆力があるのか、とは思うのだが。(個人的に日本の「政治家」はまったく評価していないので。)総理大臣の小日向がある意味スーパーマンなのは、設定上(純也の父である以上)しょうがないとは思うのだが・・・。朝比奈の動機も薄いっちゃあ薄いよな。なんだよ命の純化って。そんな中身のない言葉遊びのような観念が、人を動かしうるのだろうか。とはいえ、このシリーズは総じてどの話もこと「動機」についてはけっこう無理筋だし、そこにこだわると、このシリーズは読めない。ただただ、純也のスーパーマンぶりを楽しむ本。その中ではかなり面白かったと思う。

2024年7月21日日曜日

0492 警視庁公安J クリスタル・カノン

書 名 「警視庁公安J クリスタル・カノン」 
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2022年2月
文 庫  464ページ
初 読 2024年7月15日
ISBN-10 4198947171
ISBN-13 978-4198947170

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/121940438

 今作は、今までで一番読みやすかったように思う。
 私がついに鈴峯サンの文体に慣れたのか、著者の語り口が全体的にナチュラルになったのか。おもわず「〇〇にして△△」の頻出回数を作品ごとに数えようとしてしまったよ。・・・・途中で止めたけど。
 ここ数作、ワンパタ化していたストーリー構成も、若干す変化があったのも良かった。ほれ、案件があって、師団長が出て来て、和知も出て来て、KOBIXミュージアムやらで葬式とか大規模な会食があって、フランス人のおじさんがアレコレ好きなことを言い、最後に純也が超絶技巧を発揮して終了みたいな。

 で、ブラックチェインの再来である。
 嘘泣きする全道安の白々しさよ。そして劉春凛があまりにもおバカであった。あのブログはあんまりだろう? 愚かすぎる。それに惚れ込むクラウディア・ノーノ。愛は盲目だな。
 そして、氏家が明した真実。うわあ。ブラックチェインで感じていた違和感が伏線としてちゃんと回収されましたよ! 氏家氏には、不死鳥の如く復活してほしい。純也があんななだけに、氏家氏のある意味日本人的な秘めた人間性の温かさはとても好ましいのです。
わりかし貧乏くじを引きがちなセリさんは、今回もかなり酷い目にあったが、ちゃんと純也が救出。無事で良かった。これ以上分室初期メンバーが減ると純也のメンタルもヤバそうだから、セリさんとメイさんには今後も頑張ってほしいもの。
ところでタイトルの意味がイマイチわからないのだけど、音楽会ネタで「カノン」なのか?
クリスタルは?

2024年7月13日土曜日

0491 警視庁公安J ダブルジェイ

書 名 「警視庁公安J ダブルジェイ 」 
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2020年6月
文 庫  480ページ
初 読 2024年7月14日
ISBN-10 4198945640
ISBN-13 978-4198945640

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/121837952

 冒頭から師団長が活躍しそうな前振りが滾っていたのに、ちょっと肩透かしを喰らったかも? しかし、現実世界でニュースで報じられ、これって大丈夫なのか?いや、そんな訳ないだろ? と不安が過った「駆けつけ警護」「共同防護」、南スーダン国連平和維持活動・・・は、やはり小説世界においても格好のネタであったらしい。むしろ小説だからこそ、リアルの片鱗に触れることができるのかもしれん。なお、いよいよこの巻から、QシリーズやKシリーズも読まないとちょっと置いてけぼりの感がある。 絆はすっかり純也の子分扱いのようだ。

 それにしても、相変わらず荒唐無稽なのは承知とはいえ、全体的にストーリーが荒くはないか? かなり無理筋に見える部分があって、なんだかなあ????って感じで、突き抜けて楽しむことができなかったのが残念ではある。
 一番の「なんだかな」は、例の「Jファイル」の中身を3人それぞれ捨ててしまっていたこと。あまりにも軽い。曲がりなりにも超高度な訓練を施された殺人部隊のファイルだよ。送り出してポイできるような官僚がいるんだろうか? また、そのファイルを官僚3人だけが持っていたという設定もとってもザル・・・・・日本の官僚組織ってたぶんそんなんじゃない・・・・と思う・・・・ような・・気がする。とにかく違和感アリアリである。

 単に荒唐無稽なだけなら、割切って楽しめるんだけどな。ううむ。

これがウワサの?
ハイパーデッキ
sig750  アサルトライフル
当然、普通の日本人が国内で持ってちゃダメ
悪いフランス人オヤジからのプレゼントだろうか?
 あとね、さすがに富士演習場で、スタンドまで見晴らせる状況で高所作業車からのライフル狙撃はないだろう。双眼鏡やら単眼鏡持った自衛官や観客がどれだけいると思ってるんだ。

 民間人に対しては護るべき存在としてとことん優しく、兵士に対しては、その矜持のありようも含め、自分に対すると同等に厳しい純也ではあるが、その生死を峻別する物差しは那辺にあるのか、というのも気になる。

 あと、今作では、セリさんが彼女と出来ちゃえばいいのに!と念じながら読んだのだが、残念ながら、願いは通じなかったもよう。

 あの状況で、自分が盗聴されていたにもかかわらず、その盗聴器を分室の備品だから、と回収してくる師団長は、相変わらず良い味出している。好きだ♪


 とにかく、事件が起きて、分室が始動し、張り込みやら潜入やら、そうこうしているうちにKOBIXミュージアムで大規模イベントやって、フランス人のオヤジが好き勝手なことを言いちらかし、ラストは純也が超絶技巧を発揮って、ストーリーの流れがいつもおんなじ・・・・・これはきっとマンネリを楽しむ作品なんだろうな、と思ってる。

2024年7月7日日曜日

0490 警視庁公安J シャドウ・ドクター

書 名 「警視庁公安J オリエンタル・ゲリラ 」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2018年11月
文 庫  442ページ
初 読 2024年7月6日
ISBN-10 4198944091
ISBN-13 978-4198944094
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121709215

 前作が70年安保・大学紛争から、その後の左派過激派ゲリラにつながる物語とすれば、こちらは東南アジアのベトナム戦争、カンボジア紛争からかなり強引に引っ張ってきた話。
 そもそも純也のキャラクターが荒唐無稽過ぎるのを楽しめるかどうかが勝負なこのシリーズではあるのだけど、カンボジア紛争のクメール・ルージュから、ブラックチェインに繋ぐのもえらく力業だ。おまけに犬塚の息子、啓太の心臓まで絡める。それってどうなのさ。
 ちょっと安直だとは感じたよね。犬塚の人格を貶めてないか?と感じてしまったよ。人の金の八千万円でダーディーな臓器を「買った」犬塚・・・・ってちょっと受け入れ難い。
 息子の命のために「自分の」人生は棒にふっても構わないと決めた犬塚ではあるが、息子の体内に“殺された”臓器を入れることまで良しとするとは思えない。途中まで、犬塚は「知らなかった」ことが前提の物語だと思っていた。だけど、犬塚がアングラの臓器コーディネーターと知ってかつヤクザと関係していたって話では、前提条件が変わってしまう。
 そんなわけで、この巻は、ワタシ的にはとてもいただけない出来でありました。

 だが、まあラストの数ページで「持っていかれた」感はある。

 そこで登場するのか!
 「ホヤ」のくだりは伏線だとは思ったけど、日本の国内にグルメなフランス人を満足させるフレッシュチーズがどうしても思い浮かばなかったため、半信半疑だったのよ。
 純也があまりにもつれないので、ついに近くにまで出没したか。
 そして、爽やかなフレグランスを残して風の如く去って行くあたり、ああ、この流れでまた、ワタシは次巻に引っ張っていかれるのね、とここでも著者、鈴峯サンの「力業」を感じたのだった。

2024年5月31日金曜日

0487 警視庁公安J オリエンタル・ゲリラ (徳間文庫)

書 名 「警視庁公安J オリエンタル・ゲリラ 」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2017年11月
文 庫  551ページ
初 読 2024年5月29日
ISBN-10 4198942145
ISBN-13 978-4198942762
読書メーター


 セリフで遊びすぎていて読者の側に置いてきぼり感があるのはいつものことなのだが、なかなかストーリーに入り込めないところが難だ。
 あと、女性の形容がステレオタイプでつまらんよ〜。なんだよ、熟女って、美魔女って。(~_~;)
それはせめてアラフィフの女性に使って欲しいよな、などと思いながら読んでいるからか、なかなか進まない。どうにもペースに乗れず、つい、軽く楽しく幸せに読める読書に関心が流れて流れて、読了までになかなか時間がかかってしまった。

 甘粕製薬の御曹司の双子、1人は出来が良く、東大ストレート合格、もう1人がどっちかっていうと頭は悪いが行動力があるタイプ。悪くいえば粗暴。そして海外で1人が事故死、となればこれはもう、入れ替わりのフラグでしかない。
 で、ネタバレであるが、「腹腹時計」である。ひょっとしてローは「狼」だろう? メッシは滅私だろうなあ、と思っていた。そのうちに話中でネタバレされるけど。
 70年代の熱と、それ以降の暴力と殺人の狂気に興味関心はあれど、知識はまるでなかったので、いちいちwikiで調べながら読んでいるうちに、三菱重工爆破事件、法政大学、東アジア反日武装戦線、Lクラス・・・ と繋がって「腹腹時計」に辿りついてしまった。なるほど教科書は、爆弾作成の教本だったと。ハラハラ時計は時限爆弾。滅私が付く爆弾は自爆テロの指南だった。

 70年安保から続く組織内の殺人とテロリズムをどのように「総括」するのか。彼らの「社会主義」とはいったいなんだったのか。それに対する意見は人それぞれだとは思うが、純也の言い放つ「ただの犯罪者」というのはまさにその通りだと思う。当時のあの昂りを同時代人は青春と思うか、暗黒史と考えるかは、それこそその人が生きた時間や場所や、たまたまその時に立った場所のほんの偶然、運命のイタズラにすぎない。しかし、もう若くないんだと長髪を切って七三に整え、有名企業に就職したり、官僚になったりして、若き情熱の日々を懐かしむようなことはやはり、勘弁して欲しいと思ってしまう。しかしそれよりも、いい歳になってもそこから抜け出せず「階級闘争」を続けているような人間は、もっと勘弁してほしい。そういう人間には、そうそうお目にかかれるものではないのだけど、もし会ったなら、つい、クシャクシャっと丸めてポイと捨てたくなってしまうだろう。 その点については、なんだか作者と同じ価値観を持っているような気がする。あのような時代に何かの象徴的な文字を当てるとしたら、「未熟」とするだろう。未熟の上に、より良い社会は建たない。人も社会も成熟しなければ。

 で、もって、ローの正体については、流石に騙された。なるほどねえ。
 そして、その事実を、純也は知り、飲み込み受け止めていくのか。
 母の死の原因となったもの、自分のかつての小日向和臣の次男としての「まっとうな」人生を破壊したものの真実、そして、純也が殺害せざるを得なかった存在のこと。
 この、底冷えするような冷徹が純也のキャラクターではあるけれど、この寄せ付けなさゆえに、この話にのめり込めないんだよなあ。と少し残念ではある。純也がほんの少しだけ、甘さを見せる造形だったら、多分私の嗜好にクリーンヒットしたので。

2024年4月12日金曜日

0476 警視庁公安J ブラックチェイン (徳間文庫)

書 名 「警視庁公安J ブラックチェイン 」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2017年3月
文 庫  551ページ
初 読 2024年4月11日
ISBN-10 4198942145
ISBN-13 978-4198942144
読書メーター  https://bookmeter.com/reviews/120045580


 警視庁公安J。3冊目にして最大の悲劇がJ分室を襲う。・・・と、鈴峯節を真似てみたが、〜にして、という使い方はこっちのほうが正しいような気がするな。ってのはさておき、そう、これは有ってはならない。そんなことって!!と驚愕すること必至の第3巻。無情です。何が起こったのかは、ええ、どうぞ読んで下さい。
 今作は沢山の死者と自殺者が出るが、純也の「助ける」と「見送る」の境界線が那辺にあるのか、いまいちよくわからない。それと、今回も思ったのは純也はやはり父親似であること。この親子は良く似ている。似ているからこそ相容れないのか。主人公の存在にどこまで説得力を持たせられるか、が読んでいて興醒めするかしないかの境目。この作品の場合は、かなりの力業だけど、なんとかギリギリ、純也のリアリティを保っている。純也だけでなく、3人の部下や、師団長、その他の脇キャラもうまくキャラ立ちしているのが効いている。 
 さて、《冒頭その1》
 ダニエルからの電話、もしくはメール、または手紙。ひょっとしたらモノローグ。私はこういうはた迷惑な男は嫌いだが、純也の師であり、親兄弟にも勝る影響力を持った人間であることは間違いない。まだ終わらないこのシリーズのオーラスで、純也とダニエル・ガロアの対決を見ることになるのかならないのか。気になるところ。 
《冒頭その2》
  怪しげな中国人組織。名前の読み方を覚えられない自身があるので、とりあえずメモる。 
爺夫 イェフ 
一夫 イーフ 
二夫 アルフ 
三姫 サンジイ 
四夫 フウフ 
五夫 ウーフ 
六夫 リュウフ 
七姫 チージイ 
八夫 バーフ 
九夫 ジョウフ  
 今作は、中国の黒孩子がテーマ。戸籍を持たない闇の子が、どのように遇されてきたのか。中国共産党内の腐敗、人身売買・臓器売買、密漁・密輸、私兵集団、虚実ない交ぜ。これだけのことをやったらさすがに日本国内でも足が付くんじゃ? とくに妙齢の女性の誘拐は、さすがに無理があろう。だが、とにかく今作も面白かったのは間違いない。

 それにしても、純也が分室を出て、晴れて「表の部署」に配属になったり、警視正以上に昇進したりする日がいつか来るのだろうか、などと考えたりして。父親が政治家引退する時がきたら、、、かな? いつまでも日陰に置いておいたら、かえって アブナイ気がするんだけどな。

2024年4月4日木曜日

0475 警視庁公安J マークスマン (徳間文庫)

書 名 「警視庁公安J マークスマン 」 
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2016年5月
文 庫 396ページ
初 読 2024年3月31日
ISBN-10 4198941092
ISBN-13 978-4198941093
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/119912131 

 なんと純也の恋バナで終始した(?)初巻に続く2巻目も、組織の権力闘争の匂いがなんともきな臭いとはいえ、やはり表層は恋バナの風味が。ディズニーランドかよ!
 冒頭明かされる、純也の生い立ちの詳細。母が殺害され、純也が失われた経緯、その後のサウジアラビアの砂漠での、ベドウィンの一族との生活。そして族長の息子に連れられてわずか8歳での湾岸戦争参戦。純也が生活していた多国籍軍(?)キャンプへのイラク軍の攻撃、フランス人傭兵のダニエル・ガロアとの出会い、初めて銃を手にして戦闘。傭兵部隊に連れられて転戦したカンボジアでの矢崎との再会から、冷え切った親子の関係なんかも詳細に明かされて、なるほどなあ、と思う。初巻を読んだときの違和感はある程度は払拭された。
 だがしかし、戦場にいたのは11歳かそこらまでだった純也が、その後も武器操作・戦闘術の手腕を磨いているだけでなく、超一流のスナイパーの腕前もって果たして可能なのか? 体格だって、成長して変わるだろうし、どうやって訓練して、能力を維持したんだ。矢崎のところで鍛錬したっていっても、さすがに難しくないか? と、そのあたりはまあ、ファンタジーってことで不問に処すべきか。
 で、そこはさておき機龍警察、竜崎の隠蔽捜査シリーズに公安Jと読み継いできて、警察組織の内部のアレコレもそれぞれ作者・作品ごとに趣がある。もちろん色々でいいし、パラレルワールドみたいで楽しい。
 今回は「ゼロ」ならぬオーバー・ゼロ「OZ(オズ)」という公安の裏組織が登場。純也の父である小日向和臣総理大臣の暗殺未遂(=公安部長狙撃)、国内に入ったスナイパーの目的、日本各所でぶん回される陸自隊員(笑)など、動きがダイナミックでそこはかなり面白い。それに、矢崎サン。
 一緒に天幕立てて野営って、どれだけ猿を気に入ってるんだ(笑)。この人の行動力と行動パターンもかなり謎で天然で面白い。でも、天幕で寝るのが好きな陸将って、きっと部下に好かれるだろうな、と思う。

 で、さて。
 今作の事件をまとめると、(以下ネタバレ)
① 純也と公安部長に秘密を握られたと思ったヤクザが、蛇頭に二人の暗殺を依頼→第1のシュポ(Supperのハングル読み?)=蛇頭・・・なのに韓国人だってことに違和感はあるな。
②それを知ったダニエルが便乗して、第二のシュポに純也父(小日向首相)の暗殺を指令・・・理由は、純也を手元に取り戻したいと思ったから。
③さらにダニエルは第三のシュポに、作戦全体の攪乱と第二のシュポの監視及び失敗した場合の抹殺指令を与える。理由は、この男の能力を見定め、期待以上の成果をあげれば、仲間に引き込むつもりだったから。

 最初の狙撃で公安部長が負傷したとき、犯人の狙いが総理大臣だったのか、公安部長だったのか、で警察も見解が割れるが、思うに公安部長が標的だったのなら、部長を狙撃ポイントに誘導したエレナは、はっきりと黒。首相が標的で、本当にエレナが1100mの距離の狙撃を察知して首相を庇ったのだとしたら、エレナ自身の射手としての能力も極めて高いはず。・・・それを純也はディナーを賭けたゲームで確かめ、エレナの技倆はそこまででは無い、と判断。ならばエレナが首相を庇う行動をとれたのは、そもそも狙撃を知っていたから・・・なのでやっぱり黒。
 標的がどちらだったとしてもエレナは黒で、かつエレナ以外の狙撃手がいる。おまけに最初に確定されたシュポは体格からして“ハズレ”。ということは少なくとも、エレナ以外にも最低2人の敵がいる。いつものように、はにかんだような微笑を浮かべつつ、縦横に上司と部下と陸自を使い敵に揺さぶりをかけつつ、陰謀の輪郭を照らしだしていく。

 このシリーズは一話ごとに区切りがつくスタイルではなく、今作は〈カフェ〉事件が尾を引き、次作にはそれに加えてオズとの力比べやダニエルとの因縁も捩れていきそうだ。

2024年3月27日水曜日

0474 警視庁公安J (徳間文庫)

書 名 「警視庁公安J 」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2015年12月
文 庫 517ページ
初 読 2024年3月21日
ISBN-10 4198940517
ISBN-13 978-4198940515
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/11979734  

 いくらなんでも芝居がかりすぎてないか、とか文章が気障で気恥ずかしいの一歩手前、とか思わないでもないが、こういう本はファンタジーが入ったフィクションと割切って、入り込んでしまえば無問題なはず! 日本人にあるまじき特異な経歴と身元(曰く「華麗なる一族」)故に警視庁公安で「飼い殺し」司令が出ている「J」こと小日向純也のアクション&アドベンチャー。いたるところで多用される「◯◯にして△△」という表現が鼻につくったらないが、それもこれも作者の個性と思うべし。
 PTSDやPTGの設定も、あんまり純也の個性に現実感を持たせることには成功してないような気がするし、6歳から10歳を戦場でっていうのもどうかと思う。傭兵部隊とは言え、先進国フランスの部隊がそんな子供引き回してていいのか?アリなのか? せめてティーンエイジャーくらいまで戦場で過ごした設定のほうがよかったんじゃあ・・・・とか、色々、いろいろ注文をつけたくなる。だけど、10歳というのは日本に帰国して感動秘話的にマスコミ受けして、かつ家族と再統合をはかることができる年齢としてはギリギリかも。そもそもリアリティを追求している小説じゃないし、そこにこだわっちゃうのは、正しくない。
 で、とにかくいろいろ飲み込んで、とりあえず面白い。ちゃんとエンタメとして成立している。荒唐無稽だしかなり際どいけど。だけど、もろもろ凌駕して、きちんと面白い。日本を舞台にしてここまでスカッっとスケールが大きい小説もあまりない。
 繰り返して言うが、面白いです。
 設定が荒唐無稽な反面、時代背景とか歴史公証的なところ、題材はちょっとアンタッチャブルではあるけれど堅実で、そこがまた面白いと思う。
 女性の描きかたは、どうもいまいち。多分におっさん臭い嗜好を感じる。それに犯人に全部語らせちゃうのも好みではないんだけど。
 でもまあ、面白いし、続きは全部読むでしょ。

 ところで純也の部下が鳥居と犬塚と猿丸・・・・鳥と犬と猿ってコレ桃太郎か? 
 なるほど、腰のきびだんご(純也の私財)で取り込まれて、正義の桃太郎と一緒に鬼退治をする話なのね(笑)
 きび団子ならぬ、大金さえあれば何とかなる。(笑)BMWのクーペが何台壊れようが、帝都(帝国)ホテルのエントランスが大破しようが、ほとんどポケットマネーで公安を運用しようが。『隠蔽捜査』シリーズを踏破した後にこっちを読むと、価値観が真逆で変な笑いがこみ上げてくるよ。いや〜小説って、ホントに何でもできて面白いですねって思います。

登場人物の中では、純也に指を落とされた猿丸さんと、春子お祖母様が好き。

あ、だけとちょっと気になったのは。

それは「公文書偽造」ではなく「有印私文書偽造」ではないだろうか。
あと、金相場は3000円/キロではなく多分/gだと・・・

忘備メモ・純也の部下兼見張り役(元)
 鳥居洋輔(メイさん)
 犬塚健二(シノさん)
 猿丸俊彦(セリさん)

2022年8月6日土曜日

0378 ゴルゴタ (徳間文庫)  

書 名 「ゴルゴダ」
著 者 深見 真    
出 版  徳間書店  2010年7月
文 庫 378ページ
初 読 2022年8月6日
ISBN-10 419893195X
ISBN-13 978-4198931957
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/108126704   

 『ヴァイス』を読んだところ、この『ゴルゴタ』が出色だ、との読み友さんからの情報をいただき、手に取る。
 冒頭、某国の工作船が能登半島に漂流・座礁し、逃げ場を失った10名の精鋭工作員が石川県に上陸、自暴自棄で戦闘に出るところから始まる。これは、大石英司の『特殊作戦群、追跡す!』みたいな展開になるのか、と思いきや、そこは一章でサクっと作戦終了。この思い切りの良さに驚く。続く数章は自衛隊特殊部隊の訓練風景。ここまでは、ひたすら主人公の為人や背景を説明するための数章。そして事態が動く。

 最精鋭の特戦群でもトップの戦闘力の自衛官が、10代の非行少年どもの凶行で妻子を失う。不自然な少年審判で犯人達が正しく法に裁かれる道が閉ざされた被害者の真田が、周到な準備ののち、非道な報復に出る。残虐な拷問殺戮を繰り返し、捜査に当たる警官もあっさりと殺害してしまい、「これで良いのか?それとも、このあと更に、この事態を納得させるようなどんでん返しが来るのか?」と不安にざわざわする。
 迎え撃つ警視庁捜査一課の特殊班も、SIG社のアサルトライフルやらSIGの1911やらで武装して、ただ事ではない様相になってくるし、真田の元部下の協力者が、自衛隊制式のライフルを持ち出しているあたりで、どうもウラがありそうなきな臭さも感じるが、警察対真田の結末はかなりあっけなくついてしまう。

 とにもかくにも、なんとも複雑な気持ちにさせられる作だった。
 真田よ、アンタは正しくない。絶対に間違ってる。だけど、何がどう間違ってるのか、読んでいる自分が混乱してくる。バカも愚か者も含めての世の中だ。駄目な連中の酷い行いもなにも、清濁併せ呑むのが人の世のあり方なんだよ。でもそんな理屈が、幼い時に目の前で両親を殺された孤独な男に、その男がやっと得た家族を、なんの理由もなく殺されてしまった絶望に通用するか?
 この小説とはなんの関係もないのだが、最近のことだが、本当は危険な人物に対して、さしたる自覚もなく無責任な行動をとる人たちの危うさを目の当たりにして、ヒヤリとしたことがある。この人、こんな無責任なことしちゃって、もしこの人に恨まれたら、ただじゃ済まないかもしれないよ。と。

 怒らせてはいけない男を怒らせてしまった。眠れる竜を起こしてしまった。そんな話。
 ゴルゴタの丘で一人の人間が殺されたことで、後世を大きく変えた。
 それは大げさに過ぎる喩えかもしれないが。

追伸 どうしても一箇所、気になる表現が。
『大会の無差別級個人戦決勝で、優勝候補同士がぶつかった。』
・・・・決勝戦でぶつかるのは、優勝候補同士にちがいあるまいよ。いや、そういうことを言いたいのではないとは思うのだけどね。優勝候補の二人が、順当に決勝戦に勝ち上がったんだよね。分かってるよ、うん。


2020年8月23日日曜日

0218  燃える魚雷艇

書 名 「燃える魚雷艇」 
原 題 「A Prayer for the Ship」1958年 
著 者 ダグラス・リーマン 
翻訳者 中根 悠
出 版 徳間文庫 1988年2月

 記念すべきリーマン処女作。さすがに若い頃の作だからか、翻訳の違いなのか、描写が丁寧。
 主人公クライヴ・ロイス中尉、志願予備役でなんと任官3ヶ月目の20歳!このまだ未熟な中尉が魚雷艇に着任するところから始まり、一人前の魚雷艇艇長に成長するまでを、もちろん恋愛付きで、懇切丁寧に描写してます。
 彼が尊敬するハーストン艇長もまた若い。23歳。ですがすでに歴戦の勇士の貫禄を備え、ロイスを導き、艦を指揮する。小さな魚雷艇のこと、士官は艇長と先任の二人のみ。あとは下士官と水兵。つまり、ロイスは初心者なれど先任士官なのだ。激しい戦闘の中で、ハーストン艇長がロイスに艇を託して絶命。その後ハーストンには一人妹がいたことが判明。もちろん、ロイスにとって忘れられない女性となる。後任の指揮官はカービー少佐でこれが教条主義のイヤなやつ。カービー指揮下で闘う中で、ついに被弾し艇を喪う時がくる。ドイツ軍トロール船を道連れにしたものの、ロイス自身も重傷を負って死にかける。ここまでが前半。
 救助→治療→回復の過程の描写も丁寧で、後のリーマンが用いる、断片的に情報を提供して読者の想像にぶん投げる手法はまだ見えない(笑)。

 さて、後段は、百戦錬磨の魚雷艇乗りとして自艇を操るロイスの活躍と、恋愛模様。大尉に昇進し、殊勲賞を受け、最新のフェアマイル型魚雷艇を預かる艇長としての成長が語られる。
 ハーストン艇長の妹ジュリアと恋仲になり、クリスマスにジュリアを乗せてちょっとした冒険もしたりして。ドイツ駆逐艦やEボートとの激しい戦闘。港への帰還。突堤で入港してくる艇隊を見つめるジュリア。再会と抱擁。
 処女作とはいえ、やはりリーマンの全てが詰まってました。(正し、不倫と未亡人をのぞく(笑))。なにしろ主人公達が若いから!青春モード全開でした。