2018年5月27日日曜日

0117−18 最重要容疑者 上・下

書 名 「最重要容疑者 上」「最重要容疑者 下」 
著 者 リー・チャイルド 
翻訳者 小林 宏明 
出 版 講談社文庫 2014年9月 
初 読 2018/05/27


 シリーズ物だけど、途中から手を付けてしまった。
 どこからともなくふらっと現れる流れ者。正義感が強く、滅法腕が立つアウトロー。町の問題を片付け、どこへともなく消えていく、ってな感じでまんま西部劇の現代版です。うんうん。こういうの好きなんだよね。君たちは。・・・・・と、いう気分になる。

 さて、ストーリーは、深夜の寒空でヒッチハイクを試みるリーチャー。彼を拾ってくれたのはなにやら奇妙な3人組。でもそれは逃走中の犯罪者の偽装工作の為だった。
 保安官の次はFBI、CIAと登場し、一体何事?と思いきや、殺された男は実は・・・・(以下略)ってところで下巻へ。

 関係ないのにずんずん踏み込んでいくリーチャー。
 最初は女を助けるため、つぎは(勝手に仲間認定した)仲間を助けるため。アメリカ人が戦争するメンタリティと同じだ、と思ってしまった。最初は家族を守るため、つぎは一緒に戦う仲間を守るため、最後は死んだ仲間のため。この理屈でどんな戦いも正当化されるのが彼らじゃなかろうか。・・・なんて、冷めた目になってしまったら、読書としては失敗。
 リーチャーが何人ぶっ殺そうがそれは無問題。結果で手段は正当化される。
 こんな男は手錠掛けて鍵の掛かる部屋に押し込んでおけよ、と思う私は、この本の読者には向いていないのかもしれない。

 途中巻から読んだのがよくなかったか?
 今度は、キレッキレのシリーズ最初の巻から読んでみることにする。

2018年5月24日木曜日

0112−13 ホステージ 上・下

書 名 「ホステージ 上」 「ホステージ 下」 
原 題 「Hostage」2001年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 村上 和久 
出 版 講談社文庫 2005年 
初 読 2018/05/24


 クレイスの作品中ではかなり硬質。元SWAT交渉役のタリーは自分の交渉失敗が原因で少年が殺害された事件がトラウマとなり、現役を退くように田舎の警察署長をしている。
 ところが重大事件なんて年に数件も怒らないような片田舎で籠城人質事件が発生。しかもその家は、マフィアも注視する家だった。。。
 とてもスリリングで、犯人との交渉がリアル。犯人の青年3人はそれぞれ親から虐待されて育ち、人格に重大な問題を抱えている。主犯格は自己中心的で場当たり的に人を殺してもその事実を直視できず事態を悪化させる。
 犯人、警察、マフィアがそれぞれに事態をコントロールしたいと画策し、タリーはその中心で絡め取られていく。
 実に面白いんだけど、先に映画の方を見ていたので、イメージが映画に引っ張られて、自由に想像する楽しみは今ひとつ。やっぱり原作モノは先に読まないとダメだ。ま、ブルース・ウィリスのタリー署長はイメージに合ってた。

 映画の方は尺の関係でさっくり終わってた気がするが、様々な思惑が錯綜し、誰の思った通りにもならずに曲折しながら終局へ。
 終盤のどんでんにはちょっと驚いた。さすが脚本家出身のクレイス、初めから映画化を意識していたか?というテンポの良い展開で最後まで一気に読まされた。面白かった。

2018年5月22日火曜日

0116 殺しのリスト

書 名 「殺しのリスト」 
著 者 ローレンス・ブロック 
翻訳者 田口 俊樹 
出 版 早川書房 2002年5月 
初 読 2018/05/22

 『殺し屋ケラーまたの名を「死神」。彼の視線は死を招く』 
 なんて帯を掛けたくなる。
 次々と彼の獲物が死んでいく。
 今回は占星術師に帰依するケラーさん。運命やら予感やらを感じたりするだけあって、精神科医よりは相性が良いらしい。
 そして出た!元祖「殺し屋を殺せ」。
 ヘンドリックスのような、グレイマンvsデッドアイのような死闘をふつふつと期待する自分がいるが、きっと、1行後にはもう終わっていてドットとアイスティとか飲んでるんだろうな〜。と読みながら予想する。
 スタイリッシュなケラーさんは、乱闘には縁がない。残念!!!ところでこの表紙はケラーさんのイメージではないんじゃないだろうか? だって銃器類NG・・・

2018年5月16日水曜日

0110−11 破壊天使 上・下

書 名 「破壊天使 上」 「破壊天使 下」 
原 題 「Demolition Angel」2000年 
 著 者 ロバート・クレイス 
 翻訳者 村上 和久 
出 版 講談社文庫 2002年8月 
初 読 2018/05/16


 舞台は定番のロス市警。主人公スターキーは爆弾事件で恋人を失い、傷跡と後遺症で重いトラウマを抱えって設定だが、とにかくキャラがイタい。
 主食はアスピリンと制酸剤。上巻でまともに口にしたのはレーズン一箱だけ。ちょっとしたことに怒りで拳を振るわせてるところなんか、全然感情移入できない。
 他人が自分の思いを汲んでくれないと怒りが湧き起こるなんて、実に自己中である意味アメリカ的?
 特別捜査官のペルの行動もまだ底が知れなくてこわいが・・・このペルも明かになにかのトラウマもち。どうにも彼に惹かれるが、スターキーがターゲットになっていることを隠しているのは、彼女を囮に使いたいから? 何をしようとしているのか、ちょっと得体が知れないところが不安をさそう。
 チェンとスターキーはこの後C&Pシリーズにも登場していて、スターキーはコールを好きになっちゃったりもしてるが、残念ながら本邦未訳。チェンは『天使の護衛』にも登場。この作品世界のどこかにC&Pもボッシュもいるのかと考えると面白い。ボッシュなんか、市警の廊下ですれ違ったりして、と妄想する。
 上巻ラストで以外な展開があり下巻への期待値が一気に高まる。
 さて、下巻にさしかかると、共感しづらい女性キャラN0.1のスターキーが、捜査の進展につれてどんどん普通になっていくじゃないですか。
 ペルももっと怪しい奴かと思ったら、存外にいい人だった。凝ってひねくったストーリーではないのはいつものクレイス。本質的に悪い奴があまり出てこないのも、やっぱりクレイス。その代わりにスピーディーに読ませてくれて楽しい。
 『容疑者』と同じく、上司のケルソーや副本部長もそのお付きのメン・イン・ブラックも、良い感じに身内感が漂っていて、職場の連帯感みたいなの?が感じられるのが良いところ。 

 それにしても、このタイトル、何とかならなかったんだろうか。ロサンゼルスに、エンジェルが掛詞になってるのかな?にしても、この邦題は。。。。

2018年5月13日日曜日

0115 殺し屋

書 名 「殺し屋」  
著 者 ローレンス・ブロック
翻訳者  田口 俊樹
出 版 二見文庫 1998年9月
初 読 2018/05/13

 殺し屋ケラーさん。
 もう、「ケラーさん」としか言いようのない、このお人である。どこかとぼけた人柄と、非情で殺伐とした稼業のこのギャップ(笑)。
 だけど拳銃は下手くそ。アメリカで、殺し屋で、拳銃下手。そりゃないぜ。

 殺しの手口は、目立たず接近して直接手を下す。
 獲物は毒物、針金、包丁、素手だってイケる。
 決して綺麗な殺しではない。

 殺しの理由は、もちろん依頼があったから。生きていく金のため。それが自分の仕事だから。

 殺される相手には、もっともらしい理由があったりなかったりだが時には人違いの時すらある。
 でもあくまでもスマートにプロの技に徹します。だってニューヨーカーだもの。
 全米をまたにかけて殺しまくっているが、警察は全く出てこないのがややファンタジー風味。

 だけど、なんつーかクセになる、この味わい。

  米国二大殺し屋がグレイマンとケラーって、なんだか間違ってる(笑)。
 じゃあ、ヘンドリックスなのかっていうと、それもどうかと。。。。。。
 それにしても、ケラーの殺しってけっこう「汚い殺し」だと思うのだけど、その瞬間のケラーの表情(てか無表情)を想像すると、日常のおとぼけとの温度差にゾクッとくる。
  ラストの切手収集を続けるために、殺し屋稼業も続行、ってあたりの軽重のズレ感もなかなか素晴らしい(笑)

2018年5月9日水曜日

0108−9 バーニング・ワイヤー 上・下

書 名 「バーニング・ワイヤー 上」「バーニング・ワイヤー 下」 
著 者 ジェフリー・ディーヴァー 
翻訳者 池田真紀子 
出 版 文春文庫 2015年11月 
初 読 2018/05/09
 電気が怖い。電気の怖さって放射線の怖さと近いかもしれない。
 アメリアが感電するわけない、と思っていても、アメリアと一緒にドキドキびくびく。こんなにスリリングなのは久しぶりだ。
 現代社会と切っても切り離せない“電気”の怖さをまざまざと教えてくれる。それにしても、アメリアや捜査員たちは安全靴履いてないんだろうか? 厚手の安全手袋と安全靴くらい、今回は必携して!お願いだから! 

 今回は、ジェットコースターのハラハラと一気読みの醍醐味を堪能した。ボーンコレクターと同じく、今回もライムがいなければそもそも発生していなかった惨事ではある。
 そしてその犯罪の凄惨さゆえに、終盤のライムと犯人の、なにかさわやかな相通ずるものに若干違和感を持ったのも事実だが、それにも勝る電気犯罪(?)の大迫力と恐怖感が尋常じゃない。
 しかもこんなことが案外簡単に起こせそうでなお、怖い。クラウドゾーンのお笑い沙汰は良い味出してる。
 今回は本筋もさることながら、デルレイが本当に心配だった。ラストのあざとさはいつも通り。 
 途中で発見された遺留品で犯人がわかってしまうよね。だけど、一体どうやってあっちとこっちで犯罪を引き起こすのか、そこがさっぱりわからなかった。交換犯罪? それとも遠隔操作?共犯?私の予想はスカッっと大外れだった。

2018年5月6日日曜日

0106−7 ウォッチメイカー

書 名 「ウォッチメイカー 上」「ウォッチメイカー 下」 
著 者 ジェフリー・ディーヴァー 
翻訳者 池田真紀子 
出 版 文春文庫 2010年11月 
初 読 2018/05/06
 例によって初めから名前まで分かっている殺人犯。
 残忍な手法で淡々と殺人を進めるソシオパス的人格と、短絡的病的レイプマニアの組み合わせ。おかしい。これで上手くいくのか?菓子の食い散らかしに唾液でも付いてんじゃないのか?と色々気になる。
 アメリアの方はといえば、前作で出世をふいにしたというのに、今度は副警視に目を付けられて大丈夫?
 キャサリン・ダンスはこの巻で登場。警察内部の不正と連続殺人、どのように絡んでくるのかまだ先が見えないまま、下巻へ。 
 さて、全体的にみて。大変評価の高い作品ではあるものの、私的いはいまいちだった。
 ウォッチメイカーの計画が複雑になりすぎて、要所要所の種明かしをほとんどディーヴァーの語りで聞かされる、というのがミステリの仕立てとしては本末転倒。
 ライムの頭脳がかりかり音を立てて回るようなシーンがもっと欲しかった。
 全部ディーヴァーが語っちゃうから、どんでん返しの醍醐味もどこへやら。あの偽装犯罪は、本命の犯罪を実行する上で必要不可欠だったのかな?装飾過美で作り過ぎな気がする。ピッキングの侵入テクと原子時計テロ疑惑くらいで十分だったような気がする。とはいえ、実はバーニングワイヤーを読む為にこの本を読んでいるのだ。次は、バーニングワイヤーに行きます。

2018年5月3日木曜日

0104−5 魔術師 上・下

書 名 「魔術師 上」「魔術師 下」 
著 者 ジェフリー・ディーヴァー 
翻訳者 池田真紀子
出 版 文春文庫 2008年10月 
初 読 2018/05/03 

 

 これまでのシリーズで一番面白いかもしれない。という予感がする。
 初めから犯人が割れているのが、不安(笑)。この人じゃないんじゃないの?とつい思ってしまうのは、コフィンダンサーの後遺症だ。結構グロい連続猟奇殺人だが、奇術やイリュージョンの味付けのせいか、ボーンコレクターよりはおどろおどろしくないような。奇術やミスディレクションの解説が興味深い。
 今回はライムがずいぶんとイジメられて、彼がいじらしく思えてきた。
 愛国同盟の事件がね。地方検事がね。。。。気になって仕方ない。
 カーラが最後まで元気でいられるのか、ソニー・リーやジェリー・バンクスの二の舞にならないか、心配でしょうがない。そういえば、ジェリーはもう、出てこないのだろうか。どこかで隻腕の刑事に成長して再登場してくれないものか、とまだ期待している。

 下巻を少し読み進めた所で、ひとつ考えてみる。
 魔術師は、愛国同盟の裁判に焦点をあてたテロから目をそらすための、陽動に利用されている!ってのはどうだろう?

 今回は読むのがイヤになるほど証拠リストが長かった。
 そもそもこんなに証拠を残していく犯人の迂闊さが不審だったが、だいたい、ディーヴァーはこっちがなんだか迂闊だなあ?とか詰めが甘いなあ、とか思ったところは大概そこがキーポイントになってどんでんが来る。
 下巻早々逮捕される犯人、殺される犯人、ええ〜これどうなるの?そう来るか!そしてさらにええ〜っとなって、おおっとお、となって。結構読めたと思ったのだけど、最後のどんでんはなあ。一番感銘を受けたのは、・・・・・いいや、これは書かずにおこう。すみません、途中の読みは大外れでした(笑)。でも今回も面白かった〜。