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2025年12月21日日曜日

0573 初雪 海は灰色 第一部

書 名 「初雪 海は灰色 第一部 」
著 者 柴田 よしき      
出 版 角川書店 2025年12月
文 庫 288ページ
初 読 2025年12月20日
ISBN-10 4041169135
ISBN-13 978-4041169131
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/132244150

 待って、待って、待って、待ち続けた待望の続刊。
 「聖なる黒夜」から「私立探偵・麻生龍太郎」を経て、道を分かったはずの麻生と練が、再び語らう。

 「聖なる黒夜」を読んで頭ん中がうわーーーーーっとなって、続き!続き!こいつらこれからどうなっていくんだ〜〜〜とネットを徘徊し、柴田よしきさんが続話をWEBで連載していたことは知ることができたが、その時点で、もう「海は灰色」はWEBから下げられていて、愛読者のブログなどでおぼろげに輪郭が分かるだけの、まぼろしの作品と化していた。いつかは、いつかは刊行されるに違いない、と思って待ち続けてはや〇年。このたびついに刊行され、やっと手にとることが叶った『聖なる黒夜』続刊である。

 てっきり、練のあの事件の真相を追う話だと思い込んでいたんだが、出だしはなんと、龍太郎の逃げた奥さんを探す旅だった。そこに練が乱入、その上2人が滞在する鄙びた温泉街で殺人事件と傷害事件が起こる。正統派な推理小説仕立てながら、根城の新宿を離れて身軽な風情な練と、前科がついて、裏街道をとぼとぼと行くしかなくなった龍太郎が、一緒に同じ事件を追う、という、なんというか、『聖黒』ファンにとっては、ボーナストラックみたいな、なんだか時期的にはクリスマスプレゼントみたいな作品であった。
 私は練ちゃん贔屓なもんで、麻生龍太郎ははっきりいって憎々しく思っていたのだが、なんかこの作品を読んでそんな気分も霧散した。2人の腐れ縁はこれからも切っても切れないし、龍太郎にとって、今生きている練は、暴風雨の後に一輪健気に咲き続けている小さな花なのか、と思ったら、ついうっかり、龍太郎の練を愛しく思う気持ちに移入してしまったよ。練は「練」なのだけど、なんとなく泥の中に咲く「蓮」を連想した。

 練にとっては、龍太郎は練の過去も現在も等しく知っているほぼ唯一の存在なんだな、と考えると、練の龍太郎に対する執着も分かるような気がする。練の胸に止まっているウスバシロチョウの意味も、そもそもそこにウスバシロチョウを彫っていることだって、知っているのは龍太郎以外に誰がいるのか。そういや、作中で練が温泉に入るくだりで、練が背中に彫りモンがあるような記述だったが、練って背中に何かしょってたっけ?どうにも思い出せない。『聖黒』の細部の記憶がだいぶおぼろげになったところで、『RIKO』から刊行順に読み直すのも乙かもしれんな。

 このほとんど救いのないような練・龍の2人がこれからどうなっていくのかは、続刊を待つしかない。ちなみに続刊の発行は、26年12月、つまり1年後だそう。またまた長いな〜〜〜。いっそのこと揃ってから一気読みしたいくらいだが、読者はこの本を待ってたんだ!という心意気を示すためにも、予約で買いました。ついでに、Kindle版も購入したので、2冊買いだ。それくらい応援している。続刊をあと1年、待ちます。なお、作者様のXによれば、この作品は3部作になるそうだ。そして、第二部以降は大幅なリライトになると。はい。お待ちしております。『海は灰色』刊行してくれてありがとう!

2023年4月10日月曜日

0419 ドント・ストップ・ザ・ダンス (講談社文庫)

書 名 「ドント・ストップ・ザ・ダンス」 
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2016年8月(単行本初版 2009年7月)
文 庫 560ページ
初 読 2023年3月10日
ISBN-10 4062934647
ISBN-13 978-4062934640
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/113021593
 園長探偵ハナちゃんシリーズ、最終作になる5作目。読んでしまうのが名残惜しい。だからって、読了に一ヶ月以上掛かったのは、読み惜しんだからではなく、仕事の超繁忙期と家庭の事情と、体力の都合ゆえ。疲労困憊で、週末毎に実家に通う往復の電車でも、イスに座ったとたんに泥のように寝落ちしてしまう日々で、毎日読めたのは数ページだったから。読み終わったときには冒頭のエピソードは忘れかけている始末だった。
 とは、もっぱらこちらの事情で。

 我らがハナちゃんは借金返済と愛する園の子供達のため、今日もがむしゃらに走るのだ。

 前作は短編連作だったが、こちらはがっつり長編。ハナちゃんの保育園に通う小生意気な5歳児の父は、今現在は売れていない小説家。妻には逃げられ、小説は書けず・売れずで、バイトのダブルワーク、トリプルワークでなんとか日々の糧と息子の保育料を稼いでいる状態。それなのに、何者かに襲われて意識不明の重体となってしまって。他には身よりのない子供を園で世話しつつ、逃げた母親を探し、一方で美味い稼ぎになるはずだった城島からの探偵仕事は、どんどんきな臭くなっていく。ヒットマンの影がちらつくころには、進むも引くもならない窮状に陥るハナちゃん。そして早朝の新宿駅のホームで背中をどつかれて、列車が進行してくるなか、ハナちゃんが宙に舞う!?
・・・・と、なんともテンポもよろしく、これでもか、と窮地の波状攻撃なのは通常運転といえなくもない。聖黒界隈で一番、不遇な男であるハナちゃんは今日も命からがらだ。
 
 それにしても、柴田よしきさんのこの聖黒関連のシリーズは、なぜか私の土地勘のあるエリアが舞台になっていることが多い。この作では東急田園都市線の青葉台駅が登場。最近は月にに数回は行っている。なぜならば、実家詣でのコースだから。駅前のショッピングセンターは東急スクエア。2フロアを占める大型書店はブックファースト。2階の雑貨ショップ併設のカフェは無印良品だ。

 凶悪犯罪と、園児のパパへの暴行事件&家庭内争議、という大型二本立てで進行するのかとおもいきや、事件はさくっと一本にまとまり、大人達が子供時代を過ごした児童養護施設で起こったある事件に行き当たる。前の作品のレビューで児童福祉の知識が寸足らず、などと批判的なことを書いたが、作者の柴田よしきさんが、このテーマに大切に取り組んでいる感じがして、大変失礼だった、とちょっと反省している。

 この作品で、聖黒の練ちゃん登場作品は読み切ったことになる。あとは、もやはネットでも読むことができない『海は灰色』の刊行を待つばかり。今年は柴田よしき氏の作品刊行ラッシュらしいので、そのうちの一冊が『海は灰色』でありますように、と切に願っている。

2022年10月9日日曜日

0396 ア・ソング・フォー・ユー (講談社文庫)

書 名 「ア・ソング・フォー・ユー」 
著 者 柴田 よしき
出 版 講談社 2014年12月
   (単行本初版 2007年9月)
文 庫 560ページ
初 読 2022年10月7日
ISBN-10 4062767503
ISBN-13 978-4062767507

 園長探偵ハナちゃんシリーズ、第4弾。
 短編集かと思いきや、2からは短編連作っぽい作りになってる。
 赤ん坊はなぜ、そこに捨てられたのか。
 捨てたのは誰なのか。
 「子供はみんな幸せであるべきだ。子供たちを幸せにすることができないのなら、俺たち大人なんて、生きてる価値なんかない。」その通りだね。ハナちゃん。そして子ども時代が幸せなら、大抵の大人は大人になってからも幸せになれるはず。・・・なんて書いてから、練のことを思い出して「そうでもないか・・・」と思ってしまったよ。
 悲しい・・・・・

1. ブルーライトヨコハマ
 ハリウッドセレブとなった日本人女性からの、奇妙な依頼。呪いの藁人形の持ち主だった当時の少年の捜索。
 しかし依頼は依頼。一枚の古い写真から、当時高校生だった男子学生の学校を割り出し、卒業アルバムから本人を特定し、昔の住まいを訪ね、地道に情報を集める探偵ハナちゃん。今回は危険もなく、ぽっと胸が温かくなるラストも良い。

2.アカシアの雨
 アカシアの雨からは短編連作。ハナちゃんの保育園があるビルと、その隣のビルのわずか20センチくらいの隙間に捨てられた生後間もない赤ん坊。
 そして、城島のもの凄く美人な姪っ子から舞い込んだ意外性のある依頼・オカメインコの捜索。
 赤ん坊は無事保護されたが、ハナちゃんは赤ん坊を捨てたのが誰か、気になってしかたない。赤ん坊を捨てたのは子どもだったらしい。もし、その子が赤ん坊の母だったら?その子は、今どうしているのだろう?
 おまけにハナちゃんは美人のオカメインコの飼い主の言動にただならぬものを感じてしまう。オカメインコの居所は掴んだが、はたして、その美人の飼い主を救うことはできるのか?

3.プレイバックPART3
 新宿の靴磨きカンちゃんの災難。 赤ん坊を捨てた人物はいまだ判らず。ゲームセンターの女の子は誰? 
 カンちゃんのパートナーの巨体のミヤさんがとても素敵。まさかの偶然で、カンちゃんに怪我させた女の子と、子連れの売春婦と、捨て子の赤ん坊がつながって。 
  あまりにも理不尽な世の中に、ハナちゃんは涙する。

4.骨まで愛して
 ここに至って新たな依頼が2件も! 一件は恋人から、「お骨を探してほしい」との奇妙な依頼。もう一件はなんとカネゴンこと美形の女顔の広域指定暴力団の若頭から。渋谷で練に捕獲されて、連れて行かれたのは大久保の老舗の組事務所。そこにいた組長の正体にハナちゃんは驚愕。
 赤ちゃん—赤ちゃんを捨てた少年—赤ちゃんを産んだ女・・・・とただただ金にもならぬ人助けをしただけなのに、結局練に理不尽に絡まれて、やらされた仕事は、後腐れ無く使える鉄砲玉のスカウトとは。
 ハナちゃんの無念が忍ばれる。

5.エピローグ
 そして麻生登場。
 マックでマヨネーズ垂らしながらバーガー喰ってただけだけど。 
 なんとなくくたびれた中年男になっている龍太郎は、元々私のイメージ通りではあるのだが、直前に読んでいたRIKOシリーズでは足の長いハンサム男だったりするので、ちょっと自分の中のイメージにはブレが生じる。 
 ハナちゃんは捜査一課の元名刑事とは面識がないらしい。麻生の方はどうなのかな?かつて同僚を射殺して警察を去った、暴対の刑事の顔は知らないのだろうか。麻生が頑固な分、元刑事のハナちゃんが身代わりで練にもてあそばれて、割を食っているような気がしてならんのだけど。

   あと、練がハナちゃんより年上って、やっぱりハナちゃんの勘違いじゃあないのかな? 

2022年10月4日火曜日

0395 月神の浅き夢 (角川文庫)

書 名 「月神の浅き夢」
著 者 柴田 よしき         
出 版 角川書店 2000年5月
文 庫 645ページ
初 読 2022年10月4日
ISBN-10 4043428049
ISBN-13 978-4043428045
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/109413916

 いよいよ、『聖黒』を先に読んだことを後悔する。
 被害者 玉本栄、掛川エージェンシーってだけで、激しくネタバレ状態だ。まあ、そこはぐっと目をつぶって気付かないふりして読まなければ。って言ってるそばから、泉が、彼氏はコンピューターの天才なんだ、と。それって練以外にあり得ないじゃん? やっぱり脳内を一端初期化したい。まっさらな状態でリコシリーズから読み直したい。

 そうはいっても気を取り直して、あらすじのおさらいだ。リコは息子が3歳になり、やっと安藤警視と夫婦らしい生活を営んでいる。そしてついに、刑事を辞職して息子を育て、夫に守られる生活に入ってしまおうか、と心が傾いているよう。安藤とは、長野県松本のリコの両親・・・というよりはリコの父に、結婚の赦しをもらいに行こう、と夫婦で話あっているところ。 父にとっては、リコは職場で上司と不倫して、警視庁を追われた不名誉極まりない娘だったし、安藤は、既婚者でありながら部下の初心な娘に手をだして、おまけに未婚の母にまでした、憎い男だ。しかし、生まれてきた孫は可愛いし、安藤が身辺を整理して、リコと結婚の覚悟を決めたとあっては、和解する潮時だった。

 そんな矢先に、凄惨な連続殺人事件が発生する。犠牲者はすべて私服刑事。独身、美男子。
 手足と性器を切断されて、首を吊られた状態で発見された。犠牲者はすでに5人に及ぶ。
 特別捜査班が警視庁に設けられ、辰巳署のリコも、新宿署の坂上も、特捜班の助っ人に駆り出される。警視庁は、リコにとっては鬼門。今でも偏見に満ちた軽蔑の目で見る刑事たちが大勢いる。その中で、特捜班を指揮する高須は、ここで実力を見せつけろ、とリコに命じる。
 リコの捜査と、捜査の成果をこえる閃きで、事件は過去の警察の汚点であるある冤罪事件につながる。その事件の捜査には、リコの夫の安藤や、その部下だった高須も、そして麻生も関わっていて・・・。その事件の被害者の娘と、その娘につながるもう一人の娘の存在が連続殺人事件の焦点となっていくが・・・・・・

 つかみは上々。
 だがしかし。児童福祉に関する知識がちょっと寸足らずな印象を受ける。
 子供の保護を受け持つのは福祉事務所ではなく児童相談所だし、児童養護施設はたしかに児童福祉施設の一つではあるが、ここでいうならやっぱり「児童養護施設」だと思う。
 入所している子供の保護理由の多くが母親からの虐待で、もう一つ多いのが父親からの性的虐待である、とかもどうなの?
 むろん性虐ケースはそれなりにあるが、この二つが代表であるかのような書きっぷりはちょっと違うように思った。実際には身体的虐待や非行、養育困難の方が多くて、たぶん、性的虐待は件数的にはそれほど多くない。それは、実数が少ないからではなく、表面化しずらいため子どもの保護に到らないって理由もあるだろうと思う。作品の中で、子供の虐待について、登場人物にあんなに語らせず、曖昧にぼかしたままでも十分ストーリーは成立しただろうに、あえて詳しく語っちゃったせいで、かえってリアリティが薄れてしまったのが、残念に思えた。
 もし、新版とか改訂版とか出すチャンスがあったら、児童福祉制度に詳しい人にちょっと監修してもらえるといいんじゃないかな。

 捜査の謎解きは、せっかくきめ細やかに捜査を積み重ねているのに、肝心のところはリコのひらめきに頼り過ぎてるんじゃないかな。まあ、リコはそういう「捜査のカン」が優れた刑事ではあるんだけど、もっと理詰めでもいけそうなのに。泉の表情から、許されない命がけの恋をしているのだ!というくだりなんかは、思い込みが強すぎでないかい。

 話の流れからもっと、練の冤罪事件に切り込むのかと思いきや、そこはそれほどでもなかあた。練の事件への関わり方があまりにもさりげなく、しかもリコへの絡み方もモロ好みで、やっぱり練が主役じゃあないか、と。
 練が泉を住まわせるために調度を整えてやったマンションの描写にもなんだか胸がつまる。
 しかし、練がかなり淡々としているのに、麻生はひとり悶々として、あげくにリコに慰めてもらうって、どんだけ身勝手なんだ麻生!!
 それに、練は斎藤の出所を出迎えてやったのだ。練はやっぱり、麻生に出迎えてほしかったんだろうなあ、と斎藤が練に出迎えられて驚いたってくだりで思ったのですよ。
 今作では、練のいろんな顔を見ることが出来てその点でもとても満足。

 連の冤罪事件については、『海は灰色』を待つしかないようだ。いや、批判ばっかりしているように見えるかもしれんが、私はこの一連の作品群が大好きだ。あとは大切に取っておいてある、ハナちゃんシリーズが2冊のみ。続編の刊行を切望する。

 それにしてもラスト。練はリコにどのように語ったのだろう。


0394 聖母の深き淵 (角川文庫)

書 名 「聖母の深き淵」
著 者 柴田 よしき         
出 版 角川書店 1998年3月
文 庫 560ページ
初 読 2022年9月30日
ISBN-10 4043428022
ISBN-13 978-4043428021
読書メーター https://bookmeter.com/books/573930

 リコが主人公な話なのに、私にとっては山内である。
 それは、私が『聖なる黒夜』を先に読んでいたから。あとで落ち着いたて考えたら、この話、刊行順じゃないと駄目だったよね。この本先に読んでいたら、どれだけ、「な!なにがあったのよ〜〜〜〜〜!!!山内!麻生〜〜〜!!!」とジタバタすることができたことか。やっぱり本当はRIKOシリーズを先に読むのが正解。そのじたばたとドキドキを味わう為だけでも。
 『聖黒』を先に読んでしまった私には、ハナちゃんシリーズ読んでも、RIKOシリーズを読んでも、もはや、山内が主人公としか思えない。(笑)山内には、作品の中にも外にも、その魔性の魅力にとりこまれちまった人間が山ほどいるのだ(笑)。
 さて、その山内を愛している筆頭の麻生のセリフである。
 “彼女”はどんな人か、とリコに問われて麻生が惚気るわけだよ。

『そうだなぁ……天然の、柔らかいくせっ毛なんだ。日本人にしては茶色っぽいな。朝日がさしてその髪に当たると、瞬間だけど金色に見えることもある』
『うん。睫が長くて、泣き虫なもんだから、その睫の先に大きな涙の粒が載っかってることがたまにある。それが揺れると、ころんと落ちる。』

 『ちょっと怒ったりするとすぐに耳が朱くなる。』

『抱きしめてやると、山鳩みたいな声を出す』「山鳩?」と聞き返すリコに
『そう。ククゥ、ルルルルって聞いたこと、ない?あんな感じ。』
『あとは、そうだな、酒が強いな。酔い潰されたことが何度かあるよ。その人は酔うと少し下品になるんだ。扇情的になって、すぐに脱ぎたがる。あれは悪い癖だな……』

酔って下品になって、それからどうなるの?『天使になる』

 もはや、山内練は人間ではない。山鳩みたいに喉を鳴らせる人間がいるものか。練は天使なんだ。
 練を泣かせて、睫の上に乗っかる涙の粒を(おそらく超至近距離で、おそらくは腕の中の練を)観察してる麻生め! あんたさあ。麻生さんよ。その涙は、世田谷の取り調べ室ですか?それとも、韮崎が死んだ時ですかぁ?あんた、コロンと落っこちる涙に萌えてるばあいじゃないだろうがぁぁぁ!
 ああもう。麻生の腕の中で喉を鳴らす練ちゃん。天使になる練ちゃん。きいいいいいっ(逆上)
 世の中には麻生龍太郎ファンが数多いることは知っているが、私にとっちゃ、麻生は全小説世界を横断しても、ピカイチで腹が立つ野郎だよ。だが、いや、まて!

 本当は、ここでの読者の正しい態度は「なになに、それってどんな女なの?麻生さんが惚れた女はどこの誰なの〜〜?!」だ。まさかここで、相手が練だとは思うまい。そうなのだ。そして、麻生は背が高く、ハンサムで、有能な元刑事の私立探偵なのだ。私の脳内の麻生はどっちかってーと「刑事コロンボ」さんなんだけど、そうじゃない。どこから見ても二枚目なのが麻生の役どころ。
 ああ、いったん自分の頭の中を消去して、初めから読み直したい。

 さて、ここで登場する練は、韮崎という大物ヤクザが殺されたあと、春日組の次期組長を期待され、企業舎弟の社長から、異例の抜擢で春日組の若頭に就任した、極悪ヤクザだ。だが、リコに見せる隙や、なぜかリコに聴かせてしまう昔語りや、リコに反撃されて怖い目をみるとやけに素直になっちゃったりするところは、やっぱりどうしたって可愛い。

 いつ自分がぶっ壊れても構わないかのような向こう見ずで大胆な悪行で、日夜新宿界隈の裏表を泳ぐ練ではあるが、リコも無謀・向こう見ずではひけを取らない。そんなリコはどうも練に気に入られたらしく、思わぬ昔話も聞かされたりしてしまうのだ。
 練と田村の馴れ初めなんぞも、もう、私には、涙無しには読めませんでしたが。
 刑務所で初めて男に犯された夜、ボロい毛布を口に突っ込んで声を殺して震える練を、田村が一晩中抱きしめて、背中をなでていた。・・・・・そんな昔話を、タダできかせてもらってしまったリコ、この縁はもう、切っても切れないよ。

 リコ本人については、ちょっと形容しがたい。
 生まれてこのかた自分にすり込まれた社会的性差を全部とっぱらった、全き女(そんなものが存在するとして、だが)がどういうものなのか、どうにも考えてしまう。リコみたいに、皮膚が子宮の中まで全部つながって(いや、実際つながってはいるんだけど)感覚器になってしまってるみたいなキャラ、初めてだったしな。そんなに簡単に性暴力に晒されてしまっていいのか、リコの周りの男どもの気が知れないと思う一方で、なぜそれを「ごっくん」とできるのか、赦していないけど「ごっくん」と腹に収めた、というのがどういう精神状態なんだか、どういう納得の仕方なんだか・・・・・ちょっと、素直に自分の感覚に取り込めない。ものすごく、質感というか肉感があって、魅力的なキャラではあるんだけど、同僚のバンちゃんに「私のこと守ってね」って言っちゃう感覚もよくわからない。「男に守られたい」っていう気持ちと男に互したい、っていう気持ちはリコの中では対立しないのか? リコは矛盾や葛藤を抱えまくっているし、その混沌を混沌のままマグマのように自分の中に抱え持って、かつ、1人の人格として成立しているリコに言いようのない魅力を感じるんだけど、やっぱり納得仕切れないものもあるんだよね。

 いやあ、全然ストーリーの方は頭に入ってなくて恐縮なんだけど、読了後一日経ったら、すでにあれ、この話、何の事件だったっけ?ってくらい事件そのものの印象が薄い。それだけ、練もリコも強烈。ああ早く続編、『海は灰色』を読みたい。すでに角川の電子書店ではダウンロード出来なくなっているので、近いうちに、正式に出版されるものとおおいに期待している。

2022年9月17日土曜日

0391 RIKO ‐女神の永遠‐ (角川文庫)

書 名 「RIKO ‐女神の永遠‐」 
著 者 柴田 よしき         
出 版 角川書店 1997年10月
文 庫 396ページ
初 読 2022年4月24日
ISBN-10 4043428014
ISBN-13 978-4043428014

 この間プライベートでいろいろとあったりで、細切れ読みになったり、疲労困憊して読んでる途中で意識朦朧となったりしてたので、あまり、ちゃんと感想が書けていないのが大変残念なこの本です。
 「聖なる黒夜」と表裏一体と言ってもいいようなテーマで、主人公の緑子(リコ)の性があまりにも奔放なので、ちょっと引いている自分と、自分が引っかかるからこそ、そこにリアルがある、と感じる自分がいて、読後感はかなり複雑。
 でも、まずは登場人物を整理しておかないと、わけがわからなくなりそうなので、以下。




【登場人物】
◆新宿署
 村上緑子  刑事課 警部補  
 円谷    刑事課長
 斉藤    防犯課長
 鮎川慎二  防犯課の巡査部長 緑子の恋人
 陶山麻里  交通課の婦人警官 緑子の親友
 松岡    暴対課 刑事
 坂上(バンちゃん)刑事課 刑事 緑子の部下、というか応援団
 青木(アオさん)  〃
 山本(シゲさん)  〃 巡査部長 
◆警視庁
 安藤明彦  警部  警視庁捜査一課5係
 高須義久  警部補  〃
 佐々木幸弘 捜査一課5係の緑子の元同僚
 柏木(通称コマさん) 警部 警視庁捜査一課7係 
 菅野    捜査一課長

◆被害者
 桜井和貴 17歳・・・自殺
 杉本宏幸 26歳・・・交通事故死
 清川健太 16歳 肩に薔薇の入れ墨のある少年
 鵜飼宗介・・・晴海沖で溺死体で発見 月島署に捜査本部設置
◆その他
 鈴木茉莉子 東京地検の検事
 神崎容子  緑子が取調べした殺人事件(心中未遂)の容疑者
 劉晴明   香港マフィア
 茂木鉄雄  懲戒免職になった元上野署防犯課刑事 
 
 もう、登場人物リスト作らないと、本当に頭がゴチャゴチャになる(笑)日本人の名前って苦手だ。
 警察小説だけど、本当に描いているのはジェンダー。
 香港マフィアが絡んできたところでバイオレンスの方向になるのかと思いきや、最初から最後まで女がどうやってジェンダーに立ち向かうのか、二人の女の闘い方が対照的でそれぞれに強烈だった。
 ところどころで同性目線でもよくわからないところがあったり、強烈すぎてかえってファンタジーっぽく感じるところもあるのだが、自分の中の本来の自然な女性性と、自分の周囲から求められたり、強制されたりする「女」をどう対峙させるのかっていうのは、多かれ少なかれ、ほとんどの女がそれぞれに、生きる中で対処せざるを得ない問題だと思う。自分自身も然り。
 リコは、いわばエリートの部類の刑事ではあるのだが、男女関係の陥穽に落ちて、レッテルを貼られ偏見に晒されながらも、刑事として部下も持ち、体を張って生きている。脆いのに、強くしたたかで、性的に酷い目にあっているのに奔放。このアンバランスは、小説だからこそ可能なのかもしれないが。
 男社会で縦社会で男尊女卑の縮図のような警察組織(初出は平成9年。25年前とは!今もって新しいと感じるのは、四半世紀すぎても世の中があまり変わっていないからなのか、女性の職業進出や、制度的な発展はあっても、精神的にはあまり変化がないようにも思えるのだが?そういえば今は「婦警さん」って言わないかも。)が捧げもつ正体不明な「社会正義」の犠牲にされるのはのは、組織の外にも中にもいて、リコは「中」、「聖なる黒夜」の山内練は「外」。練とリコは男と女の違いはあれど、表裏ともいえる同類項だ。

 正直、私はぶっちゃけ緑子が高須にアレを口移しした、アレさえなければ大丈夫なんだけど。アレは気持ち悪すぎてダメだった(笑)。もしアレやったのが自分だったら(←いや、そんなこと考えるなって(笑))、絶対アレの代わりにゲ◯を口移しすることになるのは必至。(汚い話題でゴメンな。)
 リコは、「男が許されるものなら、女にだって許されるべき」って思考なんだけど、私は「女がされて嫌なことは、男にもするべきではない」のでは?とか思っちゃって、そういう意味でもリコが高須を精神的にレイプしたのはどうなん?って考えたりもする。でも、高須にとっては、ものすごい気づきになったみたいだけど。
 結局上下関係を明確にすることで安定する群れ社会の男にとっては、君臨するのでなければ、服従になってしまうのか。高須は、リコの弾除けになる覚悟まで持っていて、けっこう格好良い奴だったりするので、リコとの関係がどんなふうに落ち着くのかも、ちょっと気になるのだけどな。リコの子がこの先、高須そっくりなハンサムに育ちそうな気がするし。(だって、ゴムつけてなかったのこいつじゃん?) それに、リコと明彦はこの後フィフティの関係を築いていけるのか、そんなことも気になる。明彦さん、けっこう龍太郎と似てるような気がしているのだよね。龍太郎は私の中では「ダメな奴」認定されているのだ。
 

2022年9月6日火曜日

0387 シーセッド・ヒーセッド (講談社文庫)

書 名 「シーセッド・ヒーセッド」
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2008年7月(単行本初版 2005年4月)
文 庫 512ページ
初 読 2022年9月6日
ISBN-10 4062761009
ISBN-13 978-4062761000
読書メーター https://bookmeter.com/books/543629

 このシリーズだと、練ちゃん何歳になってるんだっけ?40代だってハナちゃんが言っているけど、あと繰り返し、ハナちゃんがあと数年で21世紀だと言っているので、作品世界では1997か8年くらい?だと思ってるのだけど、そうすると練だって40代にはまだなってないんじゃない?
ここでもう一度、聖黒のレビューで書いた時系列を掲載してみよう。










時系列(全体)
 1985年夏          世田谷事件(練が麻生に逮捕される。) 練26歳
 1986年4月        練・府中刑務所で服役中
 1986年7月    〃
 1986年10月      覚醒剤中毒者による小学生刺殺事件発生
 1987年4月   練・仮釈放・武蔵小金井の保護司を頼り、印刷会社に勤める。
 1987年8月   練・印刷会社の同僚に脅迫され、武蔵小金井のアパートを飛び出して新宿に。
          生きるために体を売るようになる。
 1988年            田村出所
 1989年2月15日早朝
         ブレーキの調子が悪かったため韮崎が乗り捨てた車の回収を命じられた部下が、
                         その車を運転し運転し、飛び出してきた赤ん坊(真子)を抱いた母親(望月
                         路子)をはねる。
 1989年2月15日早朝
         同日・小田急線参宮橋近くの線路で自殺を試みた練が韮崎に拾われる。
 1989年5月    韮崎の弁護士が交通事故の示談工作。
 1989年7月    覚醒剤中毒の男に子どもを殺された女が、武藤と韮崎が同席していたところを
         拳銃で襲う事件発生。
 1989年9月    練は韮崎の住まいに居候している。
 1989年9月      北村が殺害される。
 1992年    北村の娘が北村の遺骨を納骨する。
 1995年10月    韮崎が新宿のホテルで他殺体で発見される。 練36歳


今作は、短編3作の連作
ゴールデンフィッシュ・スランパー・・・・・アイドル歌手に送りつけられた脅迫状の送り主を探すお仕事。ストーカー事件のようでいて実は、苦しい過去が。
イエロー・サブウェイ・・・・・なんと、練が置き去りにされた赤ん坊の母親の捜索をハナちゃんに依頼。
ヒー・ラブズ・ユー・・・・・最初はストーカーの片棒担ぎのように思えた尾行だったが、実は真面目で苦しい恋につけ込まれた脅迫事件に関わる調査だったと分かり、アフターケアと称して依頼主の苦境を助けるハナちゃんが、なんとも素敵。

 練の住む高級マンションの玄関先に置き去りにされた生後2ヶ月くらいの女の子の赤ん坊。置き手紙には「あなたのものなので、あなたに返す」と書いてある。疑惑の一夜には、練は泥酔していて記憶にない、と。取り巻きの斎藤などは、件の赤子を遠慮しいしい「社長のお嬢さん」扱いしているのがちょっと面白い。赤ん坊を押しつけられて困惑している練、ってのもなんというかかわいい。ここに麻生さんが居たら、「俺が育てる!」とか言っちゃいそう。いや、それはないか。。。練ちゃんに突如勃発したトラブルをがっつり押しつけられる園長ハナちゃん。今回は探偵業と保育業のフルコンボでとことん練に利用されている。
 そこはハナちゃんの努力と根性で、絡んだ糸を解きほぐし、赤ちゃんの母親も、ついでに父親と思しき人物も見つけ出し、母親を説得して赤ちゃんを返し、報酬も得ることができたが、意外にも、それでことが収まっていなかった人物が一人居たわけだ。それも騒動の大本、張本人が。
 いったんは母親の元に返った赤ん坊との親子鑑定をやりたい、と言い出す練。とうに家族との縁は薄くなっている練だが、一体赤ん坊の存在に何を求めたものか。この間何があったんだろうか? 

「事情が変わったんだ」山内は、少し妙な表情を見せた。何か企んでいる顔には間違いないのだが、どこか、戸惑っているような目つきをしている。

 その事情ってのはなんなのさ! と、ちょっと麻生さんを探して首を揺さぶって見たい気がする。
 自分が「一代雑種」だと言う練は、やはり、ヤクザの世界にも馴染みきってはいないのよね。死んだはずの自分を生かしてくれた韮崎への思いや、先代とのしがらみが練をヤクザの世界につなぎ止め、練をヤクザに擬態させてるけど、本当は寂しいのだろうなあ。

「それは、つまり、俺は消えた方がいい、ってことか。この世に生まれて来た痕跡は何ひとつ残さず、綺麗さっぱりと消えた方がいい人間だ、そういうことか」山内の声に怒りはなかった。ただ淡々と、静かにそう言った。

 こういうときは、素の練ちゃん。ああ、切ない。こういうこういう顔を見せられるハナちゃんすごいよ。
 そんな練と麻生の「聖黒」後のしがらみを描いた「海は灰色」はいつ読めるのだろうか。すでに角川のネット書店では取扱いがないようなので、書籍化を待つしかない。


 

2022年8月31日水曜日

0384 フォー・ユア・プレジャー (講談社文庫)

書 名 「フォー・ユア・プレジャー」
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2003年8月
文 庫 544ページ
初 読 2022年8月31日
ISBN-10 4062738171
ISBN-13 978-4062738170


「若」。わか。刑事だったのに汚職で懲戒免職くらった辞め警の斎藤が、今は山内練の腹心の部下に収まっている斎藤が、練を「若」と呼ぶ。
 若頭だから「若」なんだろうけど、なんか、それだけで、愛というか思慕が溢れてるんだよ。
 だけど、その男、心は他の辞め警のものなんだぜ? さらりと描いている脇のはずの斎藤の慕情が、なんとも切ないのだ。結局、保育園園長で凄腕探偵なハナちゃんが活躍するこの話は、美形で傷ついてて壊れてて、ケタケタと笑って平気で残酷な振る舞いをするあの男の物語、なんだな。だから、ここには登場しない麻生さんよ、つまらないプライドは捨ててさっさと練を抱いてやれよ、と。

 そんな練に、今日も振り回されているハナちゃんのかいがいしい努力が涙ぐましい、ハナちゃんシリーズ2冊目なのです。今作はより一層グレードアップした難題がハナちゃんを襲う。
 一回寝ただけの行きずりの男を捜してくれ、という無茶な依頼をしたのは、どこかタカビーな天然女。飛び込みで保育園を訪れた無茶な父親からやむを得ず預かった乳児が深夜の急変で救急車を呼ぶ騒ぎになり、その育児に無知な父親に罵倒され、最愛の恋人の理沙はなにか困った様子だったのだが、ハナちゃんには相談できないまま姿を消してしまい、その理沙の妹のトラブルが、理沙失踪の原因かと追いかければ、なんとまたしても殺人事件に巻き込まれる。
 その上、極悪ヤクザの山内にはケタケタと笑いながら無理難題をふっかけられ、解決の為に与えられた時間は24時間しかないのに、マトリの捕り物に巻き込まれ! 全部が全部つながって円満解決したについては、さすがにできすぎ、というかやり過ぎだろ、と思ったがそれはまあ、よい。読んでほんわか幸せな気分になるための小説だしな。
 胸の蝶の刺青で読者にちょっとどきっとさせるあたり、柴田センセは芸が細かいのお。あと、太宰治の「走れメロス」の真っクロ黒な洒落が洒落になってませんでした。今作もハナちゃんには同情しかありませんでした。頑張れ園長先生!


 

2022年8月20日土曜日

0383 フォー・ディア・ライフ (講談社文庫)

書 名 「フォー・ディア・ライフ」 
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2001年10月
文 庫 496ページ
初 読 2022年8月22日
ISBN-10 4062733064
ISBN-13 978-4062733069

 彼の名前は花咲慎一郎、愛称は「ハナちゃん」。ただそれだけで漂うほんわかな雰囲気で、そもそも大成功してるよね、この本。
 そのハナちゃんは、新宿の裏町の無認可保育園の雇われ園長で、新宿の夜の女達が預けにくる子どもたちを守るために孤軍奮闘している。保育園の経費を賄うために、睡眠時間を削って、あぶない探偵仕事を頼まれながら。
 そのハナちゃんの経歴が、じつは警視庁の元刑事で、同僚を射殺して職を追われていたり、その保育園が、某暴力団の先の組長の妾だったおばあさんが経営するものだったり、その園の建物が乗ってる土地の所有権が、某イースト興業つう超絶ブラックで反社な会社に移って、美貌の睡眠薬中毒の社長(兼暴力団若頭)に土地の買い取りを巡って顔面蹴り上げられたり、とまあ、とにかくただ事ではない。
 『聖なる黒夜』やその続編の短編では、まだ表社会と裏社会の狭間で揺れていた練も、ここでは、もはや真っ黒黒な正真正銘のヤクザである。だがしかし、その彼がチラ見せする優しさや弱さに、またそそられるのだ。ああもう、麻生さんなにやってんのよ。なんで一緒に闇落ちして、練を抱いてやんないのよぉぉぉぉぉ、という私の心の雄叫びを聴きやがれ(笑)

 ハナちゃんの事件簿、ももちろん面白いのだが、それよりも、『聖黒』『RIKO』『ハナちゃん』で構成されているこの界隈の群像が面白い。某下町のうらぶれたビルに職住共用で悶々と悩みながら暮らす硬派でホモの元刑事の探偵やら、極悪非道な美形のヤクザやら、そしてかつて大物ヤクザの愛人だった美人の医者なんかが蠢いているのだ。あ、あと私は百々井さんが結構好きだな。で、それはさておき、ハナちゃんである。

 子どもを預ける母たちから取る保育料だけでは到底園の経営は維持できないから、ハナちゃんは給料をもらうどころか、園の赤字補填のために探偵の裏稼業で稼ぐ日々。頼まれ仕事はヤクザの殴られ役に始まり、家出少女の捜索、家出少年の追跡・・・・だったはずなのに、なぜか厄介な事件に巻き込まれていく。だがそのネタがね。
 いや、これは、もっぱらワタクシ事なんだが、栗本薫の「僕らの時代」を読んだ次に、あえて「僕らの気持」を読まずにこの本を手にとったのにこのネタかよ!・・・・と。いささかげんなりしたのは事実だ。
 いや、ハナちゃん大好きです。おもしろいよ!オススメ!
 だけど、ゲイの恋愛に、往年の大漫画家ネタに、コミケに二次・・・・と、なんかトッピング盛りすぎじゃねーか?????とも思ったのだ。もう、胸焼けしちゃう。ま、面白いんだからいいけどね!


2022年5月15日日曜日

0346 所轄刑事・麻生龍太郎 (新潮文庫)

書 名 「所轄刑事・麻生龍太郎」 
著 者 柴田 よしき         
出 版 新潮社    2009年7月(文庫旧版)
    KADOKAWA 2022年7月(文庫再版) 
単行本 384ページ
初 読 2022年5月14日
再 読 2022年7月26日
ISBN-10 4041125324
ISBN-13 978-4041125328

KADOKAWA 版(新)
『RIKO』シリーズ、『聖なる黒夜』の麻生龍太郎、駆け出しの所轄刑事時代の短編集。
 『聖なる黒夜』から追いかけて5月に古本を入手したのに、7月に新版が出た、というタイミングの悪さだったが、それでもありがとう角川!
 本棚に美しく並ぶ本も大好きな私としては、背表紙が揃うのはとても嬉しい。
 
 そして新たに収録された短編はもっと嬉しい。

 ちなみに駆け出し刑事麻生の所属する「高橋署」、読み方は「たかばし」、場所は江東区高橋で、現実世界では深川署の管内なので、モデルは深川署かな?そして、思いのほかワ
ンコ本だった。

◆大根の花◆
「早く行ってやらないとな。もし奴が本ボシなら、今ならまだ、刑事事件としては微罪だ。謝罪させてそれで被害者が納得すれば、送検しなくても済む。だがほおっておけばきっとエスカレートする。未来を棒に振る前に、止めてやろう」
新潮社版(旧)
 

  のちに山内練の事件のときの、麻生の心境の底にもこんな思いがあったのだろうな、と思わせられる、先輩の今津刑事の言葉。ホシは社会性の身についていない気弱で精神を病んだ大学生。この時は刑事の優しさが大きな不幸を未然に防いだが。

 だが、麻生の「やさしさ」はもう一人の不遇な少年に、これからどう対処するのだろう。明日、話を聞く。被害宅に一緒に謝りに行く。それから? その少年の更生は、麻生が出会った少年を心配する花が好きな少女の愛情次第なのだろうか。少女の愛した少年は、傷つき、卑屈で、猜疑心が強く、押さえ切れない暴力衝動があり、ポケットにナイフを持ち歩く。それだけでなく、短絡的な腹立ちを発散させる為にそれを使う。そんな少年の育て直しをあんたは無責任に、少女に期待するのか。かといって、刑事事件で処理するほどの大きな事件ではない。まさに「一緒に頭を下げる」ことで事件は解決する。で、その後は?
 麻生は、きっとその後は追わないだろうと思う。たとえば、自分に連絡がとれるように電話番号を渡して、いつでも相談に来い。と言ってあげるだろうか。自分の冷淡さを仕事の上での割り切りと思うことができる男だから、山内練の事件でも失敗したのだ。だけど、きっとこういう少年を救う可能性があるのは、夜廻り先生じゃあないが、そんな「職業」の垣根を越えた大人の関わりだけだろう、という気がする。

◆赤い鉛筆◆
 共同洗濯場があるような、古いアパートの一室で縊死死体で発見された若い女性。検死の判断は自殺。だが、高い所から吊ったはずのロープは切断されており、梁や窓枠やカーテンレールかなにかに結び付けていたはずのロープの反対側が見当たらない。不自然な現場に麻生は納得がいかないが、多少の違和感があっても自殺と断定されれば、警察に捜査権はない。その前に、と急ぎ捜査を進める麻生達所轄の刑事。「民事不介入」の原則のギリギリの際まで刑事の矜持が事実を追い込んだときに、真実が明らかになる。

◆割れる爪◆
 「そりゃ、女にだって浮浪者はいるだろうさ。けどな。女の場合は、全部なくしてもひとつだけ金に換えられるもんがある。よっぽどのババアでない限り、夜は屋根のあるところで寝られるんだよ、本人が割り切りさえすりゃな」

 援交、パパ活、神待ち、なんて一瞬犯罪からは離れた印象を与える罪作りな言葉も流行ってるが、結局のところ売春行為で、れっきとした犯罪。売る方も買う方も。でもそうやって一日一日をなんとかやり過ごしている女性は確かにいる。しかもかなり沢山いる。場合によっては暴力団がバックにいて管理されている場合だってある。女の側が割り切りゃあいいってもんではない。そんな女性の苦難。だからって、ワンコ? ありそうで、ありそうもない話ではあった。

◆雪うさぎ◆
 話の筋とは関係ないが、かつて、某専門系大学の剣道部出身者が当たり前とする職場内での過酷な上下関係・・・・・単にパワハラともいう、を身近で耳にする経験があったので、及川と龍太郎が所属した大学剣道部もそんなんだろう、と想像した。あの人たちの1年でも先に入学、そして入職したことで得るヒエラルキーたるや、常軌を逸していたと思うよ。もし、自分がパワハラを受ける当事者となっていたら、たぶん、こっちも死ぬ気で追い込みかけたろうな、と思う。幸い(と、言ってしまうと、実際のパワハラ当事者だった知り合いに申し訳ないが)自分は当事者ではなく、残念ながら目撃者ですらなかった。
 ところで及川、警部補とはいえ28歳の地方公務員の身で、神楽坂の賃貸マンションに一人暮らしはちょっと豪勢過ぎるんじゃないか? 家具・インテリアも洋服も趣味が良いし、ひょっとして良いとこのボンなのかも。

 ちなみに、珈琲チェーン店の緑色の看板といえば、「珈琲館」ですかね。写真は菊川店。両国駅近に“ヒー館”があるかどうかは知らないけど。高校時代、仲間や先輩たちと放課後にたむろったのは、“ヒー館”、今はなき珈琲チェーン店の“コロラド”(現在はドトールを展開)、リーズナブルだった喫茶店の“ヒルトン”そして紅茶専門店の“アロマ”・・・・・これ、ひょっとして身バレするかも?

◆大きい靴◆
 気は小さいが頭は賢く、飼い主の小学生の女の子の指示に合点承知!と得意顔の柴=ポメ雑種を想像するとどうにも面白い。
 それにしても、大きな長靴のくだりはどうでもいいかな、と思った。男の子の存在に重きをおきたいがために、犬やらなんやら、作り込み過ぎな気がする。もっとシンプルな話でいいのに。

◆エピローグ◆
 本庁に異動の辞令を受けた龍太郎。
 仕事ではスーツをビシッと決めた及川の私服は白いセーターに黒のジーンズ。真っ直ぐな背筋が武士を思わせる。白の上着に黒のズボンって、思えば剣道着と同じ色合いだ。
「身だけは守れ。破滅しそうになったら逃げてくれ」
 及川がそういうからには、やっぱり龍太郎はどこか、いつか、破滅しそうに見えるんだろう。どっかなんか足りない。と感じる龍太郎は、その「足りない」部分にこれからの人生を支配されていくんだな。別れは、龍と純どっちが悲しかったんだろう。

◆小綬鶏◆(角川の文庫再版に収録)
 角川新版に新たに収録された特別書き下ろしの短編。
 龍太郎の手元に届いた一通の封筒。中には美しい筆跡の手紙。
 かつて龍太郎が逮捕した男が、病没したとの知らせだった。罪を償ったあと、陶芸作家になっていたその人が、龍太郎に残したのは、陶器の鳥の置物。
 鳥はコジュケイ。「ちょっとこい」と鳴くことから、別名は警官鳥というそうだ。

“そうだ。自分は、正義の為にに警察官になったわけではない。そして、悪を憎むと言い切る自信もない。”

“警察官とは、なんなのだろう。道を踏み外してしまった者にとって、自分を逮捕する警察官とは、どういう存在なのだろう。” 

 

2022年4月23日土曜日

0341 私立探偵・麻生龍太郎 (角川文庫)

書 名 「私立探偵・麻生龍太郎」著 者 柴田 よしき         
出 版 角川書店 2011年9月
単行本 464ページ
初 読 2022年4月23日
ISBN-10 4043428103
ISBN-13 978-4043428106

 位置づけ的には、RIKOシリーズのスピンオフ『聖なる黒夜』のさらにスピンオフ? 時系列的には、『聖黒』からRIKOシリーズにつながる隙間をつなぐ本書。
 山内練にまつわる冤罪事件(世田谷事件)の情報を追っていることを内々に咎められ、外勤(交番つまり制服組)への異動の内示をうけた麻生龍太郎が、警察を辞職し、私立探偵事務所を開いたところから、麻生が、“こちら側に戻ってこい”と懇願する山内練が、ついに裏社会で生きる(春日組の杯を受ける)ことを決めるまで。

 春日の杯は、練にとっては、麻生の前に置いた大きな踏み絵だっただろうな、と思う。条件付きの自分ではなく、過去も現在もひっくるめた俺の全てを受け入れてほしい。冤罪で人生を破壊された可哀想な俺、ではなく、それも込みで清濁合わせた今の俺は受け入れられないのか、という練の心の声が聞こえてきそう。悪い夢で済ませるには練の過ごしてきた10年間は重すぎるしリアル過ぎる。麻生がきれいさっぱり忘れていた間の練は、韮崎が生かしていたのだ。世の中の暗い面は確かに存在するし、その中でしか生きていけない連中も確かに存在する。正義とか罪は社会秩序を維持するためのシステムでしかないし、すでにそのシステムに裏切られている練の立場では、いまさらそれに自己の存在を委ねる気にはなれないのも道理だ。
 あくまでも社会システムの内側で「正しく」生きていこうとし、その生き方を練と共有したい麻生と、麻生を好きでいながら、そのシステムの内側にはもはや入れないと思い定めている練と、それぞれの揺らぎの書である。

1 OUR HOUSE
 開設間もない麻生の探偵事務所(兼ねぐら)に、いかにも良家のマダム風の美しい女性が調査の依頼に訪れる。依頼内容は子どものころに埋めた「タイムカプセル」を探すこと。なんとも牧歌的な依頼にもかかわらず、不穏な胸騒ぎを感じる麻生。しかして「タイムカプセル」の捜索は、恵まれない幼少期を過ごした一人の女性の、復讐の最初の一投だったのか。
 一連の「韮崎殺人事件」で警察に逮捕拘留されていた練は、捜査二課の梶原からの執拗な取り調べも躱し(?)、銃刀法違反+経済犯で数ヶ月の実刑となった模様だが、判決がでるまでの拘留期間を差し引くとさして日数も残らなかったため、小菅(東京拘置所) から釈放されてきた。練は「出迎えにもこなかった」麻生に不満げ。麻生も、練の更生を願ってるなら、ちゃんと釈放のスケジュールを確認して迎えに行ってやりゃあいいのに。世田谷事件からなにも学んでいない麻生に(怒)。  

2  TEACH YOUR CHILDREN
 依頼者の男は、私立女子中学校の校長。半年ほど自分の学校に勤めた女性教諭から、身に覚えのない「セクハラ」の訴えを起こされていた。私はいったいなぜ、これほど彼女に恨まれているのか、という依頼者の問い。麻生が調査して判明した事実、そしてあえて余韻の中で語られない依頼者の虚像と実像。

3  DERJA VE
 うっかり風邪をひいて、近所の薬局の世話になった麻生は、その薬局でバイトする薬剤師の青年にデジャブを覚える。当の青年も麻生と会ったことがあるというが、お互いに思い出せない。横浜で女性が死体で発見され、その青年が重要参考人として手配される予定であることを麻生は知るが、どうしても彼が殺人犯だと思えない麻生が動き出す。

4  CARRY ON
 「麻生さん、あんたなんで警察辞めたのさ。あいつの為でしょ?・・・・だったらさあ。あいつが本物のヤクザになろうがどうしようが、とことんあいつの為に生きるっていってやればいいじゃん。あんたがそう言えば、あいつ、あっさり指なんか落としてさ、あんたと二人、どっか海外にでも飛んで死ぬまでのんびり暮らす決心、すると思うんだよね。・・・・」 田村、ホントそうだよ、良いこと言うよな。練に故郷を取り戻してやりたい、という麻生の言い分もずいぶんと自己満足、手前勝手だが、それも田村に看破されている。練ちゃん、ほんとうになんでこんなダメ男に惚れちゃったんだか・・・・ 
 だが、麻生の真のこだわりポイントはそこではなかったんだな。練を陥れた真犯人を挙げる。その為には、たとえ練のためだろうが二人で海外逃亡するわけにはいかないわけだ。 

5  Eplogue
 巻末解説の高殿円氏の言葉を借りれば、「永遠の加害者」である麻生と「永遠の被害者」である練。二人の間のごちゃごちゃしためんどうくささをいったんうっちゃって、自分に正直に、とは本書冒頭の麻生の弁であるが、それなのに、麻生は「永遠の加害者」ポジションを捨てようとはしない。練に正しい生き方に戻れ、と言い続ける限り、麻生は加害者であり、練は被害者なのだ。かつての韮崎の恋人達のように、相手のあり方も含め全存在を愛するとは言えない麻生の弱さと、そんな麻生を愛する練の無情感がたまらないラスト。麻生から傘をもぎ取って練は雨の中を歩き出す。愛車のカウンタックは路肩に置いたまま。麻生は雨の中を歩む練も、(いつか練が戻ってくる)練の愛車も後に走り去ったのだろうか。それとも、雨の中、練を待ち続けたのだろうか。私は後者であることを願う。


 

2022年4月21日木曜日

0340 聖なる黒夜 下(角川文庫)

書 名 「聖なる黒夜 下」
著 者 柴田よしき       
出 版 角川書店 2006年10月
文 庫 591ページ
初 読 2022年4月17日
ISBN-10 404342809X
ISBN-13 978-4043428090

 練が愛おしい。とにかく、愛おしい。むねを掻きむしりたくなるくらいに。そして麻生がウザいのだ。なんだよこのナルシストめ!そして、麻生も及川も、麻生の同期の山背も、どいつもこいつも話しすぎだ。いい年した男どもがぺらぺらペラペラと紙が燃えるみたいにしゃべりやがって、「沈黙は金」ってのを知らねえのかよ!・・・・と、つい練ちゃんみたいなべらんめえ調になる。出てくる男どもがどうにもお喋りで、女々しくて、いやなの〜!基本黙って行動する練ちゃん意外、全員ウザい!!!・・・・でも、面白かったです。滅法面白かったです。当然、RIKOシリーズも、私立探偵、も所轄刑事も、園長探偵も読みますとも。

 しゃべりすぎ、ってのは脇に置いておいて、ラストで麻生と及川が協力して練を追う、この疾走感は良い。なんだかんだで、及川も良い奴なんだよなあ。なんで練ちゃんも及川もあんなのに惚れるんだろうなあ。そして、最後に韮崎の復讐を遂げようとする練が、犯人の女に示す優しさで、また、胸が締め付けられる。練の悲劇、不安定さ、情の深さ、能力の高さ、鋭利な感性、極めつけの不運。人間の人生が、崩れるなんてほんのちいさなきっかけがあればよい。そして墜ちた人間であっても、人間である以上、もがいて生きつづけようとし、その足掻きがさらに、周囲に波紋を及ぼさずにはいられない。
 ストーリー的には、偶然に偶然が重なり、出来すぎと感じないでもない。でも良い。練に出会えたのだから。

時系列(全体)
 1985年夏    世田谷事件(練が麻生に逮捕される。)
 1986年4月  練・府中刑務所で服役中
 1986年7月    〃
 1986年10月   覚醒剤中毒者による小学生刺殺事件
 1987年4月  練・仮釈放
 1987年8月  練・武蔵小金井の保護司の元を飛び出して新宿に。
 1988年     田村出所

 1989年2月15日早朝  鉄道自殺を試みた練が韮崎に拾われる。
 1989年2月15日早朝  同日、調子が悪かったため韮崎が乗り捨てた車を運転した部下が飛び
        出してきた赤ん坊(真子)を抱いた母親(望月路子)をはねる。

 1989年5月    韮崎の弁護士が交通事故の示談工作。
 1989年7月    覚醒剤中毒の男に子どもを殺された女が、武藤と韮崎が同席していたところを
        拳銃で襲う事件発生。
 1989年9月    練は韮崎の住まいに居候している。
 1989年9月       北村が殺害される。
 1992年    北村の納骨
 1995年10月     韮崎がホテルで他殺体で発見される。

登場人物(上巻)
麻生龍太郎 本庁捜査一課(殺人課)の警部。妻に逃げられたヤモメ男。
及川純   本庁捜査四課(対暴課)の警部 麻生の大学時代(剣道部)の先輩。
      オシャレで潔癖症のゲイ。
宮島静香  麻生の部下。捜査一課の紅一点。 
山背(山さん)   麻生の部下 、主任。
相川    麻生の部下 
山下    麻生の部下 
有田(キンちゃん) 麻生の部下 
茂田(シゲ) 麻生の部下
榎本一郎  現・町田署捜査二課長。元世田谷署。 
川口孝吉  現・柴又署捜査一課長。麻生の以前の同僚。
 
韮崎誠一  被害者 ヤクザ 関東連合春日組のNo.2。
山内 練  韮崎の恋人、兼 企業舎弟(パートナー) イースト興業社長。
      東工大の元大学院生で修士課程修了間際の頃、婦女暴行と強姦未遂で麻生に
      逮捕された。
      一度は自供したものの、裁判で無罪を主張し、有罪・実刑判決となった。
      その後、底辺を這うような経緯ののち、鉄道自殺しようとしたところを 
      韮崎に助けられる。
長谷川環  練の秘書。
金村皐月(芸名 久遠さつき) 元ジャズシンガー 韮崎の女No.1 
      一時期、韮崎から練を預かっていた。
野添奈美  内科の開業医 韮崎の女No.2
皆川幸子(芸名 篠原ゆき)  元アイドル歌手 韮崎の女No.3
      恋人がいて、韮崎が殺されたホテルで愛人と密会していた。
生田咲子  元アイドル歌手 韮崎の女No.4
      韮崎とホテルにチェックインした女。
江川達也  韮崎の男娼。東中野で囲われていた。

塚原富子  代々木五丁目あたりの下町のおばちゃん。
望月路子  赤ん坊(真子)を韮崎に轢き殺された女性。韮崎に裁判を仕掛けていた。
      夫の死後、保険金を持って行方がしれなくなった。
高山春子  新宿のデパートのブティックの店員。(=望月路子)
須山知美  高山春子が務めるブティックの店長

新藤洋次郎 高安法律事務所弁護士。春日組側

藤浦勝人  練の世田谷事件の際の国選弁護人
香田雛子  練の姉 
田村             練の府中刑務所での同房  武藤組
北村    同上 湯川組若頭(春日組と対立)、稲村芸能オーナー、韮崎に殺された 
伊藤、尾花、井野、宮田、高岡  練の府中刑務所での同房 
諏訪    春日組若頭 組長春日の娘婿

岩下圭吾  練の従兄弟 

登場人物(下巻追加)

神田陽子  北村の娘。准看護師 
黒田百合  ススキノのソープ嬢。江川達也の元ガールフレンド 
井野美雪  新宿署捜査一課の新人刑事 
植田陽介  神崎組のナンバー3
川上    韮崎の子分。
瀬尾良恵  覚醒剤中毒の男に小学生の娘を殺されて、復讐にでた女性。
梶原    警視庁捜査二課の刑事。麻生の同期
小山内槙  麻生の恋人。
槙原要介  瀬尾良恵の娘と一緒に犠牲になった小学生


 

2022年4月17日日曜日

0339 聖なる黒夜 上(角川文庫)

書 名 「聖なる黒夜 上」
著 者 柴田よしき       
出 版 角川書店 2006年10月
文 庫 668ページ
初 読 2022年4月17日
ISBN-10 4043428081
ISBN-13 978-4043428083

『囀る鳥は羽ばたかない』つながりで、読み友さんからおすすめされた。たしかに、ほとんど同じ世界観で読める。てか、『囀る鳥』のベースになってるのが『聖黒』なのか。
 韮崎が三角さんで、山内が矢代のイメージでほぼほぼいける。まあ、文字を読んでイメージをふくらませるのが小説読みの楽しみなのだから、お手軽に他の作品のイメージを拝借するのは邪道なので、ここは韮崎は韮崎だし、山内は山内で、自分の中にイメージを作っていったほうが良い、とは思う。それにしてもこの話。新宿、府中、武蔵小金井・・・・と土地勘ありすぎてやたらとリアル。しかもその描写に違和感がないのが有り難い。

 で、もってだ。「感謝する」!!!!そうくるか。麻生さんよ。そりゃあそれしかないよね、ベストアンサーだよね。
 山内だって泣くよ。ページめくったらこれだもん、まさかページの切れ目まで計算してたのか?!

 さて、これはヤクザ小説なのか、警察小説なのか、はたまた・・・・?

 人間関係の錯綜ぶりがすごいです。
 麻生−及川の関係性
 麻生の家庭問題
 麻生の恋愛関係(槙の過去?)
 世田谷事件関係・山内兄関係?
 韮崎が起こした過去の交通事故関係
 韮崎が殺した(?)北村の関係
 山内と韮崎
 長谷川環
 韮崎の愛人
 ・・・

 上巻だけで、でてくる線はこれくらいか?いやあ絡まる絡まる。きちんとメモしていかないと途中で訳わかんなくなります。
 ざっとあらすじを押さえると、
① ヤクザの大物、韮崎誠一が新宿の一流ホテルで殺害され、その捜査に、警視庁捜査一課(殺人課)の麻生と、捜査四課(マル暴)の及川があたることになる。この二人は過去に公私にわたる因縁がある。
② 殺された韮崎には男女の愛人がいたが、そのうちの一人で企業舎弟でもある山内練は、かつて麻生が扱った傷害強姦未遂事件の犯人として実刑判決を受け、裏社会に堕ちた人間だった。
③ 韮崎の殺害関係は怨恨によるものである可能性が高いが、その線の捜査は難航。
④ 韮崎が過去に起こした事件(一般人を巻き込んだ交通事故、その他の殺人事件も)も絡んでいそうな。
⑤ 麻生が山内と関わる中で、かつての事件(世田谷事件)は冤罪だったという可能性が浮上。
⑥ 韮崎と関係の深い赤坂のクラブのライターを握りしめたホステス(?)が黒焦げ焼死体で発見される。
⑦ 山内は韮崎が殺した可能性のある北村の娘の存在を提示。
⑧ 新宿署から逃げ出したおばちゃんはいまだ発見されず。

上巻ではここまで。

登場人物が非常に入り組んでいるので、登場人物一覧表と時系列を作ってみた。
しかし、登場人物一覧だけでも、ネタバレ臭が漂うので、これからわくわく読書を楽しみたいかたは、これ以下はご覧にならないほうが良し。

時系列(韮崎殺害の当日)
 午後3時頃—————韮崎が女連れでホテル・グランクレール東京にチェックイン
           (女の身元は後の捜査で判明)
 午後6時頃—————韮崎が組事務所を出る
 午後7時過ぎ————赤坂の料亭「司」に入る。武藤組組長・幹部と会食
 午後9時半頃————「司」をでて、六本木のクラブ「華座」に向かう。山内と落ち合う。
  (30分程度)
       ————山内のマンションに向かう。(裏付けはなし)

 午後11時50分——ホテルに戻る。
 午後11時55分——内線電話を使用。

時系列(全体)
 1985年夏    世田谷事件(練が麻生に逮捕される。)
 1986年4月  練・府中刑務所で服役中
 1986年7月    〃 
 1987年4月  練・仮釈放
 1987年8月  練・武蔵小金井の保護司の元を飛び出して新宿に。
 1988年     田村出所

 1989年2月  練が韮崎に拾われる。

 1989年5月  これよし少し前に路子が子どもを抱いて韮崎の車の前に飛び出してはねられる。
        子どもが死亡し、韮崎の弁護士が示談工作。
 1989年9月       練は韮崎の住まいに居候している。
 1995年10月     韮崎がホテルで他殺体で発見される。



 

登場人物
麻生龍太郎 本庁捜査一課(殺人課)の警部。妻に逃げられたヤモメ男。

及川    本庁捜査四課(対暴課)の警部 麻生の大学時代(剣道部)の先輩。
       オシャレで潔癖症のゲイ。
宮島静香  麻生の部下。捜査一課の紅一点。 
山背(山さん)   麻生の部下 
相川    麻生の部下 
山下    麻生の部下 
有田(キンちゃん) 麻生の部下 
茂田(シゲ) 麻生の部下
榎本一郎  現・町田署捜査二課長。元世田谷署 
川口孝吉  現・柴又署捜査一課長。麻生の以前の同僚。
 
韮崎誠一  被害者 ヤクザ 関東連合春日組のNo.2。

山内 練  韮崎の恋人、件企業舎弟(パートナー) イースト興業社長
      東工大の元大学院生で卒業間際の頃、婦女暴行と強姦未遂で麻生に逮捕された。
      一度は自供したものの、裁判で無罪を主張し、有罪・実刑判決となった。
      その後、底辺を這うような経緯ののち、鉄道自殺しようとしたところを 
      韮崎に助けられる。
長谷川環  練の秘書。謎の過去の女。練に金で縛られているらしい。

金村皐月(芸名 久遠さつき) 元ジャズシンガー 韮崎の女No.1 
      一時期、韮崎から練を預かっていた。
野添奈美  内科の開業医 韮崎の女No.2 アリバイあり。
皆川幸子(芸名 篠原ゆき)  元アイドル歌手 韮崎の女No.3
      恋人がいて、韮崎が殺されたホテルで愛人と密会していた。
生田咲子  元アイドル歌手 韮崎の女No.4
      韮崎とホテルにチェックインした女。

江川達也  韮崎の男娼 東中野で囲われている。
黒田ゆり  ススキノのソープ嬢。江川達也の元カノ 
      韮崎の目を盗んで江川達也が付き合っていたため、売り飛ばされた。

塚原富子  東新宿(?)の下町のおばちゃん。
望月路子  赤ん坊(真子)を韮崎に轢き殺された女性。韮崎に裁判を仕掛けていた。
      夫の死後、保険金を持って行方がしれなくなった。
高山春子  新宿のデパートのブティックの店員。(=望月路子)
春子と喫茶店であっていた品のない女 
須山知美  高山春子が務めるブティックの店長

新藤洋次郎 高安法律事務所弁護士。春日組側   


槙     麻生の恋人。過去は謎。

藤浦勝人  練の世田谷事件の際の国選弁護人
香田雛子  練の姉 
田村             錬の府中刑務所での同房  武藤組
北村    同上 湯川組若頭(春日組と対立)、稲村芸能オーナー、韮崎に殺された 
伊藤、尾花、井野、宮田、高岡  錬の府中刑務所での同房 
諏訪    春日組若頭 組長春日の娘婿

岩下圭吾  錬の従兄弟