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2025年6月15日日曜日

コミック バルバラ異界

書 名 「バルバラ異界」  2007年日本SF大賞受賞
著 者 萩尾 望都
連 載 flowers 2002年9月号~2005年8月号
出 版 小学館  2003年6月〜2005年9月
初 読 2025年6月15日
出 版 2003年6月
ISBN-10  091670415
ISBN-13  978-4091670410
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/128495589 

 フワフワして優しい、ファンタジーSFっぽいテイストで始まったバルバラの世界。しかし、やがてこの世界が青羽という眠り続ける少女の夢の世界であることが判ってくる。
 舞台は心理学的手法の延長のような感じで人の夢の中に入り込む「夢先案内人」や、前世療法など、ちょっと前のSFやサスペンスの流行のテイストなんかを感じさせつつ、不老長寿の研究や、脳内イメージスキャン技術などが出て来て、近未来感を醸す。日本の学制も、高校が寮制の「大学進学校」になっていたり、高速道路は自動誘導システムになっていたりして、近未来の世界観の作り込みが細部まで行き届いている。
 描かれる現実世界は2052年。
 バルバラ界とバルバラの登場人物たち、現実世界の主人公の渡会時夫の関係者、青羽系列の親族関係、青羽周辺の研究者、キリヤの学友たち、もろもろ登場して、頭の中に情報が収まりきらず、アップアップと溺れる感じ。たまらず、とりあえず1、2巻までを再読して人物リストを作成しつつ、物語を再チェックした。一巻目では、物語がどこに向かっていくのかすら、皆目わからない。ただ、導かれるままに、山ほどの疑問を抱えたままヨタヨタ進んでいく感じ。(注:ヨタヨタしているのはストーリーではなく、私の頭!)萩尾望都の大傑作を今、読みつつあるのでは、との予感がひしひしとする。
 1巻目の章立ては以下のとおり。以下、1巻から4巻まで、自分の頭を整理するためにあらすじをまとめる。ネタバレになるので、未読の方はご注意あれ。

その1 世界の中心であるわたし
その2 眠り姫は眠る血とバラの中
その3 講演で剣舞を舞ってはならない
その4 彼の名は絶望 彼女の名は希望
その5 エズラはどこへ消えた?
その6 六本木で会いましょう

【人物】 ※バルバラ人
  青羽(アオバ)      世界の中心であるわたし。ジジからは「よそ者」と誹られている。
  タカ    アオバの従弟。
  パイン   ダイヤの養子。タカの兄弟。アオバの従弟。
  マーちゃん 青羽の母(養母?)
  ダイヤ   マーちゃんの妹。タカの母。 
  千里さん  夢見。夢占い。「夢はね 遠い未来か、遠い過去からのメッセージなんだ」
  雷ジジ   千里さんの祖父。
  ヒナコ   4人養子を取ったが、みんな早逝してしまって悲しんでいる
  ドクター  「ここじゃ なかなか子供が育たんからなァ」
  光合成するおねえさんたち         草木の生えた町の屋根の上で、日光浴。
  秋葉原コスモス      子役俳優。もう30年くらい子役をやっている。
  ※現実世界の人
  渡会時夫        「夢先案内人」(ドイツの〈21世紀ユング研究所所属)を仕事とする。
        キリヤの父。「ベルリンのハンバーグ屋事件」(ベルリンで起こった大量カ
        ニバリズム(食人)事件)の解決で著名になった。ただし、渡会自身はその
        影響で黒髪が白髪に。眠り続ける十条青羽の夢にアクセスすることで、《バ
        ルバラ》に行く。
  大黒先生        渡会の師? 現在は「前世療法」を行っている。火星研究にも詳しいよう。
        もともとは、パーキンソン病の世界的権威。
  北方キリヤ お茶の水山ノ上大学進学校(高校に相当)の生徒。渡会時夫の息子。かつ
        て、孤独心から心の安息地としての《バルバラ》を創作した。火星の夢を見
        て、火星の砂を引き寄せる。
        「世界はぼくを捨てた」「世界はぼくを愛していない」
  北方明美  キリヤの母。渡会の前妻。世羅ヨハネという神父に傾倒している。  
  花園蕾香(ライカ) キリヤの学友。ガールフレンド。アフリカ生まれの神田育ち。両親
        はタンザニアに研究旅行に行っているときに、行方不明になっている。
  風仁    ライカの従弟。秋葉原でバイトしている。
  百田太郎        遠軽(北海道)にある、北海道東中原人間科学研究所の研究者。現実の
        十条青羽の治療に携わる。
  十条青羽  ある凄惨な事件から7年間、東中原研究所で眠り続け、ポルターガイスト
        引き起こしている。幼少時は重篤なアレルギーがあったよう。
  十条茶菜        青羽の母。2024年12月30日、夫の勝一を殺害して、心臓を取り出し、自身も
        自殺。心臓を取り出し、青羽に食べさせた?  
  十条勝一  青羽の父。十条製薬の社長だった。
  十条菜々実 十条茶菜の母。青羽の祖母。菜々実とエズラが離婚したのが2006年。
  エズラ・ストラディ 十条菜々実の前夫で、茶菜の実父。十条製薬の特別研究員だった。
        ドイツと日本のハーフ。菜々実の叔母の静枝と駆け落ちした。晩年は火星研
        究(惑星生物学)を研究していた?
  世羅ヨハネ 神父。世界各地で里親施設を運営。明美はヨハネを「前世の恋人で夫」と信
        じている。ニューヨークで児童施設の〈グリーン・ホーム〉を運営。
  目白秀吉  六本木で〈目白サイコ・クリニック〉を運営。子供の頃の十条青羽と母の茶
        菜がクリニックに通っていた。青羽のポルターガイストで起こった竜巻に巻
        き込まれて死亡。
  目白ましろ 目白秀吉の息子。
  カーラ・シスルバーグ 〈21世紀バルトハウス〉(スイスにある医学研究企業)の職員。


*細胞活性薬《バルバラ》  十条製薬のヒット商品。細胞を活性化させる薬(若返り)の研究。もともとはエズラ・ストラディの研究だった。その薬品名が《バルバラシリーズ》。《バルバラ》は細胞を活性化し、若返らせる合成蛋白質の名前。プリオン蛋白質と同様、胃腸で消化分解されずに人体に取り込まれる。

 夢前案内人を仕事とする渡会時夫は、眠り続ける少女十条青羽の夢を探るために、北海道の研究所に招かれる。時夫が少女の夢に潜ってみると、少女は「バルバラ島」という世界の幸せな夢を見続けていた。しかし、このバルバラ島は渡会の離婚した元妻が引き取った息子であるキリヤが創造した空想の世界だった。
 十条青羽が眠り続けるきっかけになった凄惨な事件の背景を調べるために、時夫は青羽の祖母で十条製薬の会長でもある祖母菜々実に会いにいく。そこで、菜々実の前夫であるエズラの話を聞く。エズラの情報はほとんど見つからないのだが、若い頃の画像があり、その画像を見た時夫は、エズラ博士を画像加工で加齢させると、時夫の元妻の明美が傾倒している世羅ヨハネの顔になることに気付く。世羅ヨハネは、ニューヨークで〈グリーン・ホーム〉という養子縁組のための児童施設を運営していた。
 一方、現世の青羽が時夫の息子であるキリヤの夢の中に現れ、渡会時夫に青羽の夢に干渉させるな、とキリヤに警告する。

出 版 2004年3月
ISBN-10  4091670423
ISBN-13  978-4091670427
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128498109


その7 きみに肩車してあげた
その8 冷蔵庫の中のわたしを食べて
その9 火星の海で泳いでいた
その10 お父さんお帰りなさい
その11 お誕生日は同じ10月1日
その12 東池袋カササギのパン屋

 バルバラ島は実在するのか。眠っている青羽を目覚めさせたら、バルバラ世界はどうなるのか。もし、青羽の夢の世界が完成したら、現実世界と逆転して、現実が「誰かの夢」の世界になるのか? 
 そして細胞活性剤(若返り薬)の〈バルバラ〉を作ったエズラと、夢の世界バルバラはどのような関係があるのか。そして、青羽の夢とキリヤの関係は?
 時夫は、長年生き別れていたキリヤの父親として、キリヤの助けになりたいと願うが、キリヤは時夫を拒絶。一方、バルバラ世界では、キリヤにも時夫にもよく似た少年タカが、時夫を父と慕う。
 北海道の東中原研究所は、眠る青羽の力で水が湧き水没状態に。事態を打開するために、再度青羽の夢に潜った時夫は、《バルバラ世界》にふたたび温かく迎えられるが、徐々にバルバラの秘密に触れることになる。この夢世界の世界観にもカルバニズムが絡んでいる。
 それは、バルバラ人の不老の秘密はバルバラ人同士の食人にあり、そのバルバラ人の遺体が〈外の世界〉の不老不死の製薬に絡んでいる、という不穏な世界観だった。バルバラで4人目の養子を失って自殺したヒナコの葬儀は、実はヒナコの心臓を食する儀式であり、ヒナコの心臓を夢の中で食べた時夫は、現実世界で心停止した。必至の救命で現実世界に生き戻った時夫は、自分の記憶の中の乳幼児のキリヤのイメージがタカのイメージで上書きされていることを自覚。記憶がバルバラのイメージで改編されているのではないかと不安に駆られる。 
 現実の青羽の自我は、キリヤと一つになることを希求している。
 東京のキリヤの学校に、ニューヨークのグリーン・ホーム出身のパリスが転入してくる。
 キリヤは、ニューヨークで世羅ヨハネが運営していた児童施設〈グリーン・ホーム〉が、里親の依頼により試験管ベビーを作っていたこと、パインとタカがその施設で作られた子供であったことを知る。そして、世羅ヨハネは行方が知れず、〈グリーン・ホーム〉は閉鎖されていた。
 バルバラ世界と現実世界との関係を探る時夫は、バルバラの中の時間が2150年であることを知る。バルバラのマーちゃんは、もともとは東池袋で「カササギのパン屋」という小さなパン屋さんを営んでいたらしい。マーちゃんは、2130年に戦争が起きて人工衛星が落とされて地上に降り注ぎ、マーちゃんの家族も家も皆燃えた、という。また、バルバラの人達は「閉じ込められて血を採られて」いるらしい。もしや、ドイツの研究施設では、火星由来のタンパク質を持つ人々を眠らせ、いわば培養し、血液を採取して細胞活性剤バルボラを製造しているのではないのか?夢の《バルボラ》の人々は、その研究所で眠り続ける人達なのか? キアヌ・リーブス主演の『マトリックス』のような世界観が読んでいる自分の頭をよぎるが、物語はこの点には深入りしなかった。(と思う)

出 版 2004年12月
ISBN-10 4091670431
ISBN-13 978-4091670434

その13 長い長い遺伝子の物語
その14 大人にだってわからない
その15 遠軽への遠い道
その16 ひとつになりましょう
その17 誰もあたなの名前を知らない
その18 はじめてのことだから

 青羽は繰り返しキリヤの夢を訪れ、キリヤは青羽から、火星の生命体について教えられる。火星の生命体は、お互いを食べ合うことで、相手の記憶コードを取り入れることができ、全体で一つの記憶と意識を保持していた。火星の生命は遠い過去に絶滅したが、その生命を構成していたタンパク質は、隕石とともに地球に降り注ぎ、地球の生命の遺伝子の中に深く潜航した。(狂牛病の原因物質のプリオンタンパク質が、消化どころか燃焼も腐敗もせずにその構造を留めることを考えれば、このような発想はアリだと思った。)
 そして、その火星の生命の記憶は遺伝子コードの中に組み込まれ、それを引き継いだ青羽の記憶となっており、その青羽に共鳴するキリヤのなかにも潜在した。
 ひょっとして青羽は、グリーン・ホームの4人の子供のうち、死んだことになっている一人なのでは? と一瞬思ったが、そもそも青羽はエズラの実の孫なのだから、エズラの遺伝子をつまりは記憶を受け継いでいるのだ。そしてその記憶は、心臓の筋肉をある特殊な条件下で摂取することで、活性化されるらしい。

 時夫、キリヤ、菜々実その他は、青羽に会うために北海道に向かう。その途中、女満別の空港で、キリヤが老化した世羅ヨハネを目撃。世羅ヨハネは若返り治療を受けるために搬送されるところだった。

 時夫はキリヤの夢の中で現実の青羽に出会い、青羽が《バルバラ》を作ったいきさつを聞き出す。「わたしは火星の記憶をどうかたちにすればいいのかわからなかったけど、島をみつけてここに作ればいいと思ったわ 未来を」
 伊勢では、キリヤの母明美が、本物のキリヤはアレルギーで死に、「ヨハネが生き返らせてくれた」と衝撃の告白。
 菜々実からは、エズラの存在を抹殺したいきさつが証される。
 ここにいたって、バラバラだった情報が、エズラとエズラの研究に集約されてくる。
 不老不死のバルバラタンパク質、人工授精で、火星遺伝子を受け継いだ試験管ベビーたち。バルバラタンパク質は、有害な代謝物を生成するため、生まれてきた子供たちは、ほとんどが重度の免疫不全や心臓病で死んだが、エズラが世羅ヨハネとなった後も研究は密かにつづけられ、生存に成功した4人の子供たちが、グリーンホームで育てらた。うち一人は死んだキリヤの代わりに明美に与えられ、二人は、3人の女性の老化治療の研究に使用され、パリスだけが生き残った。

出 版 2005年9月
ISBN-10 409167044X
ISBN-13 978-4091670441
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/128508714

その19 ずっとあなたを愛していた
その20 死者からのメッセージ
その21 バルバラ崩壊
その22 花小金井ヒコバエ保育園
その23 ぼくのキリヤをかえしてくれ
その24 遠い過去から遠い明日へ

 女満別の老人病院で若返り治療を受けたアズーレ=エズラ=ヨハネは、最愛の妻だった菜々実と再会し、全ての秘密とデータをキリヤに手渡して亡くなる。ここまでで、大方の秘密が明らかになった、と読者に思わせ、作中の一行もいったん眠り続ける青羽を研究所に残し、なにかが不完全なまま解散の流れになるが、そこからの怒濤の展開が驚異的だった。

 大黒から、本当のキリヤは2歳で死に、グリーン・ホームのタカがキリヤに成り代わったという仮説を聞かされ、真実を突き止めようと渡会は青羽の夢を通じて三度バルバラに潜り込む。しかし、そのバルバラには破局が訪れていた。未来の2150年、地球政府は火星と決裂し、火星人の遺伝子を持つバルバラ人の抹殺が決定された。時夫が訪れたとき、バルバラ島は、政府の攻撃で蹂躙されていた。時夫は生還するが、バルバラは消滅。

 そしてキリヤの突然の事故死。
 キリヤの蘇りを必死で願う時夫の思念と、青羽の未来に干渉する力が最大化されたときに、起こったこと。
 エズラによく似た千里もまた、彼の血筋なのだろうか。もしかしたら、タンザニアの奥地から生還した花園夫婦の子供の子孫が千里なのかもしれない。その結果の起こったことを初めは拒否し、混乱し、徐々に受け入れる時夫の心理描写が、畳みかけるようで凄い。

 時夫は記憶を再体験し、徐々に記憶が置き換わっていくことを自覚する。

 2052年の火星基地では、化石化した生命の痕跡が発見され、火星にいた基地の地球人たちは、何かの感染症を発症し、死んだ人間の心臓を食べるカルバニズムが発生したようだ。おそらく、ここから地球人と火星人の分化がはじまり、80年後の2130年には火星は地球を攻撃。戦争となる。
 その後2150年に和解が成立。その時代のキリヤや青羽は生き残る未来を得る。
 一時は時夫の息子として2052年に存在したキリヤ(タカ)と、2052年に肉体が死んだ青羽の魂も、それぞれ2150年時点で生存し、おそらくは幸せになるであろう未来が構築されただろう。
 2052年、青羽とキリヤが作った現実と2150年のバルバラ島との接点はほどけ、青羽が作りあげたバルボラ島の未来は現実の未来に、2052年の時点から見た『バルバラ異界』は消滅した。

 いずれにせよ、すごい。すごい物語を読んだ。
 アーシュラ・K・ル=グウィンを読んでいる流れで、ル=グウィンと世界観が似ている(と思える)萩尾望都を読んでいたのだけど、正直いって、萩尾望都の方がはるかに才能がある、と思うようになってきた。

2025年6月8日日曜日

コミック マージナル(小学館文庫1〜3)



書 名 「マージナル」 
著 者 萩尾望都
初 出 雑誌「プチフラワー」1985年8月号~1987年10月号に連載    

 どなたかが、この作品をフェミニズムと結び付けていたのを目にした。
 正直、この作品をそういう視点で見たことは、これまでにまったく無かった。
 だって、女、出てこないじゃない。
 地球上でかろうじて女の要素があるのは、XXYの男の子だけ。
 
 しかし、たしかにフェミニズムの視点からすると、逆説的に面白い。なにしろ、女性がいない。
 2300年に突如地球を席巻した細菌汚染。海も川も湖も沼も水という水は汚れ、雑菌、プランクトン、細菌、微生物で赤くメレンゲのように泡立ち、人間は"D因子”に感染し、生殖能力を失った。人類は月や火星に逃れ、女性と大型動物が死に絶えた地上は、自然や生命が甦るかどうか、の壮大な実験場となった。
 人類はD因子に対する免疫を獲得するが、この免疫はY遺伝子にしか乗らないので、女は生き残ることができない。
 そこで、月の人類は、地球に卵子を持ち込み、地上の男達の精子によって受精させ、試験管で培養された子供たちが供給されるシステムを作りあげた。

 700年後。地上は、一人の母(マザ)と大勢の息子達による、ミツバチ型の社会を構築し、だれもその世界の在り方に疑問を持たなくなっている。しかし、マザは老いて衰え、子供の供給が減り、不安と不穏が地上に蔓延していた。

 というところからの物語。
 女性のことを考えるにしても、生殖や次世代の産出を抜きに、女性の在り方を云々することはできない、ってことを具体的が具体的に突きつけられてるところが面白い。色子制や色子宿などの、性欲解消を代替するシステムが出来上がっているのも面白い。
 地球の人口は、女性の提供卵子に支えられているってところもスゴイ。

 ストーリーを動かすのは、マージナル計画を推進するメイヤード。そしてイワンというマッドサイエンティストが創り上げた4人の子供たち(キラ)と、イワンの足跡を追う、もう一人の科学者ゴー博士。この直情で声がデカく、周囲を憚らないKYが、良くも悪くも物語を転がす。ほんとうにゴー博士はうるさいのだけど、えてして現実社会でもこういう人物が事態を推進するんだよな。

 メイヤードとナースタースの愛は切なく、アシジンは単純で健康的。グリンジャは虚無にはなりきれない。アシジンとグリンジャのキラは、死んで病んだ地球に生命の息吹を吹き込むのか。最後に残ったキラは、どちらかの、もしくは二人の子供を産むのだろうか。地上のキラの子供たち、そして、地球の生命はこれからどうなっていくのか。希望を感じさせる物語だった。

2019年9月22日日曜日

0182 放課後地球防衛軍 2  ゴースト・コンタクト

書 名 「放課後地球防衛軍 2 ゴースト・コンタクト」 
著 者 笹本祐一 
出 版 早川書房 (2019/3/20) 
初 読 2019/09/22 

 なんと、この本にずいぶん時間をかけてしまった。目がすべるんだよ。予想を裏切らない展開なんで、ついうっかり2ページくらい読み飛ばして、気付いて戻る、を繰り返し。ペースに乗り損ねた。
 それにしても、著者、笹本サンの宇宙愛が炸裂する一冊である。こんなこと考えながら、民間宇宙船飛ばそうとしてるんだなあ、とニヤニヤ。岩江高校の文化部の連中が自分の出身校の文化部連中(電気部とか、化学部とか、写真部とか、図書委員会とか・・・・)とまるっと重なってこれもニヤニヤ。お約束のような「大変だ〜!」で、次巻へ続く。待ってます。

2019年8月24日土曜日

0179 ミニスカ宇宙海賊 2  黄金の幽霊船

書 名 「ミニスカ宇宙海賊 2  黄金の幽霊船」 
著 者 笹本祐一 
出 版 KADOKAWA (2018/12/25) 
初 読 2019/08/24 

ミニスカ・パイレーツ。海賊船船長修行中の茉莉香さん、危機になればなるほど腹が据わって判断が速くなるのが船長たるところ。
今回は由緒正しき王家のお家騒動?に巻き込まれ、王家の宝である「黄金の幽霊船」を探す旅、という趣向。
まあネタはどうでも良い。ただひたすら宇宙船を飛ばす蘊蓄を、宇宙大好き宇宙船大好きな笹本サンが垂れ流す、これ、そういう本というかシリーズである。
良家の子女が集う名門女子高➕クルクル縦ロールの元気娘➕海賊コスプレミニスカート ➕王家のお姫様➕海賊船➕幽霊船➕艦対艦戦 で破綻せずにまとまってるところに力技を感じマス。

2019年8月20日火曜日

0178 ミニスカ宇宙海賊 1

書 名 「ミニスカ宇宙海賊 1」 
著 者 笹本祐一 
出 版 KADOKAWA (2018/12/25) 
初 読 2019/08/20 

朝日ノベルズ版は2008年、こちらは角川版2018年もの。
『幼女戦記』と同じく、表紙とタイトルが誤解(?)を招く系。中身は立派なスペオペ・・・って言ったってミニスカでパイレーツな訳だが。

 旧式の電子戦闘艦(電子戦特化した海賊船)しかも帆船を女子高生達が飛ばす、「宇宙船が飛ぶ」ことに関してのうんちくが詰まった一品。さすがの笹本サン。軽いノリで読みやすいが、なにげに本格派。最近角川から再販されましたが、単行本だったのが残念。文庫本化したら、全巻買うわ〜。今回はKindleにて。

2019年3月16日土曜日

0168 アリスマ王の愛した魔物

書 名 「アリスマ王の愛した魔物」 
著 者 小川 一水 
出 版 早川書房 (2017/12/19) 
初 読 2019/03/16 

雪風といい、トーレンの正義といい、わたしはやっぱり健気な機械が大好きらしい。

短編の第1話「ろーどそうるず」
自意識をもったバイクの一生。やんちゃな口のききようと裏腹に純情真面目なバイクの魂は、人間からみたらノイズでしかないのか。めちゃくちゃ切なかった。シンギュラリティが近いらしいが、いつかどこかで、AIに魂が宿るときが来るのだろうか、などと考えつつ。

「ゴールデンブレッド」
ヤマトとカリフォーニャの文化逆転をどういう話に持っていくのかと思ったが。

「アリスマ王」なんとなく、ナウシカ原作に出てくる黒くて四角いやつを連想した。

2018年7月28日土曜日

0132 銀河英雄伝説  3 雌伏編

書 名 「銀河英雄伝説  3 雌伏編」 
著 者 田中芳樹 
出 版 創元SF文庫 《初版は徳間ノベルズ 1984年4月》 
初 読 1984年頃?   再 読 2018/07/28

 再読企画《銀英伝》  往年のファンとしては読み方がマニアックになるのは否めない。
 3巻で特筆すべきはこれ!「オーベルシュタインの犬」。 
 人名録に「オーベルシュタインの犬」「オーベルシュタインの犬の飼い主」とそれぞれ記載されても可笑しくないほどのインパクト。 
 あと一つはやはり「黄色いばらの花束」。 
 以来初読より30余年。定期的に衝動的に黄色いバラの花束を求めたくなる。例え花言葉が「嫉妬」であっても。 
 シュトライトとリュッケの副官コンビ結成もこの巻。シュトライトは好きだ。色々はしょってるがラストのミュラーの勇姿が光る。
「何だ、この犬は?」
「は、あの、閣下の愛犬ではございませんので?」
「ふむ、私の犬に見えるか」
「そうか、私の犬に見えるのか」。
 オーベといい、フェルナーといい、目的のためなら手段を選ばない現実主義者が私は好きだなあ。でも、こんな面もあるのよ。
 そしてキャゼルヌ先輩は、トリューニヒトの隠しようのない悪臭に隠れる致命的な毒に気付き始める。そうそう、査問会という不毛なイベントもあった。とにかく、嫉妬羨望で人が人の足を引っ張るのはかくも醜いものなのだ。
 そうだ、もう一つ思い出した。要塞をワープさせるんならいっそのことイゼルローンを飛び越えて同盟側出口に布陣出来なかったものか、と思うんですがね?一応イゼルローン回廊を飛び越える技術はまだないって設定なんですよね。だけど要塞を飛び越えるくらいは出来そうじゃないですか。 と、30年越しの疑問を口にしてみる。

2018年2月11日日曜日

0088 銀河英雄伝説  2 野望篇

書 名 「銀河英雄伝説  2 野望篇」 
著 者 田中芳樹 
出 版 創元SF文庫 《初版は徳間ノベルズ 1983年9月》 
初 読 1984年頃?   再 読 2018/02/11 

  読むのが恐い2巻。
 何が起こるか知っているだけに読書スピードが鈍る。
 スタジアムの虐殺、ヴェスタ−ランドの悲劇と来て、極めつけの衝撃。皆殺しの田中の暗黒面が踊る悲劇の一冊。あああ、分かってるのにツライ。
 ラインハルトはなぜオーベに弱んだ?自分に足りない種類の冷酷を持っているからか?これから何回「・・・が生きていたら」とつぶやくことになるんだろう。

 2巻はヤンとキルヒによる捕虜交換式→同盟側クーデターの策動→ヒルダ登場→クーデター勃発→リップシュタット戦役→そして。これから長く彼の不在に耐えなければならないとは。
 レンテンブルグ要塞攻略で、かの?有名な台詞が飛び出す。「きさまらの屍体を鍋に放り込んで、フリカッセを大量につくってやるぞ」p152・・・フリカッセってどんな料理だ?と初読の時には盛り上がったものだ。以下抜き書き。
✓「形式というのは必要かもしれないが、ばかばかしいことでもありますね。ヤン提督」p29・・・キルヒの穏やかな佇まいがもはや懐かしいのは再読ゆえ。
✓「平和というのはな、キルヒアイス。無能が最大の悪徳とされないような幸福な時代を指して言うのだ」p56・・・いや、平和な時代にあっても無能は悪徳だよ。やはり。
✓"彼は解毒剤でなければならなかったのである。必要と意思さえあれば、劇薬にもなれる男だったが。"p89
✓「気の毒にこの横着な男が汗をかいているじゃないか」p201・・この二人の造反者のくだりはどちらも大好き。生きていくにはこういう軽さもむしろ必要。
✓「もうすぐ戦いが始まる。・・かかっているものはたかだか国家の存亡だ。個人の自由と権利にくらべれば、たいした価値のあるものじゃない」p176 人は国家が無くとも生きていけるが、国家は人なしには存在し得ない。近頃国家主義、愛国主義が頭をもたげていることの警鐘と受止める。
✓"ヤンがスクリーンに視線を向けたまま、右手を肩の線まで挙げた。"p178 この瞬間、ヤンにとっても人間一人々々の命の価値は宇宙塵のように希薄なものにならざるを得ない。歴史を知るものだからこその思いもあろう。 
✓「内憂外患とはこのことだな」p189 !おまえがな!!と叫ぶ。
✓「政治家が賄賂をとってもそれを批判することが出来ない状態を、政治の腐敗というんだ。」p272   フレデリカにゃ悪いが、グリーンヒル大将に終始ムカつく。総司令官の隣にいたクセに、アムリッツァの大敗には自分の責任はないとでも?

2018年2月8日木曜日

0087 銀河英雄伝説 1 黎明篇 

書 名 「銀河英雄伝説 1  黎明篇」 
著 者 田中芳樹 
出 版 創元SF文庫 《初版は徳間ノベルズ 1982年11月》 
初 読 1984年頃?  
再 読 2018/02/08

 再読企画《銀英伝》30年ぶりの再読。
 もちろん初読はトクマノベルズ。私はかつて銀英伝で民主主義を学んだのだ。そういや当時は中曽根首相の時代だったが、トリューニヒトを読むと中曽根を思い出し、中曽根を見るとトリューニヒトを思い出してさらに不愉快になる、とのたまったのはどちら様だったっけ。
 丸々2ページに及ぶトリューニヒトの演説を読むのがヤン同様苦痛だ。全体的にうろ覚え状態だったが、1巻こんなに内容濃かったのか? 
 序章−アスターテ会戦−イゼルローン奪取−アムリッツァ−ヤン艦隊創設−皇帝の死まで。

 ファーレンハイトが冒頭から出ていた!オーベも登場してたか。ミッちゃんロイちゃん、ビッテンフェルト、メックリンガー、ケンプ。うろ覚えだったが、やはりアムリッツァで出てきた新兵器は指向性ゼッフル粒子だった。完全に忘れていたのは地球とフェザーンの関係性。

 そして文章がキレキレである。名言・名文の多いこと。
✓「・・・俺は宇宙を手に入れることができると思うか?」「ラインハルトさま以外の何者に、それがかないましょう」
✓「私は自分の人生の終幕を老衰死ということに決めているのです。150年ほど生きて、よぼよぼになり・・・」以下、抜き書き御免。
✓「用心しておられるようだ、貴官は」 
✓"いつでも、王様は裸だと叫ぶのはおとなではなく子供なのだ。" 
✓"愚将が恥じるべきは能力の欠如であって・・・"  
✓「決まってる。他に能がなかったからだ」 
✓「とにかく期待以上の返答はいただいた。この上は私も微力を尽くすことにしましょう。永遠ならざる平和のために」 
✓"レベロは言葉を失い、為政者自身の手で民主政治の清新が汚されようとする情景を呆然と見守った、"  
✓"グリーンヒル大将の返答は、いっそ荘重なほどだった。"  
✓「よし、全艦隊、逃げろ!」

2018年2月7日水曜日

0086 銀河英雄伝説事典

書 名 「銀河英雄伝説事典」 
出 版 東京創元社
初 読 2018/02/08
 
 本編を読んでいて、「あれ?この人の旗艦なんて名前だったっけ?」となった時用。二番煎じ、三番煎じ感はどうしたって否めないけど、創元の文庫に並べられるのが良い。それと、私の脳内の絵は、ほぼ、道原かつみ版銀英伝で構成されているので、OVAや、最近のコミックのイラストが一切入っていないのが非常に有り難い。

2017年5月6日土曜日

0037 帝国宇宙軍1-領宙侵犯-

書 名 「帝国宇宙軍1-領宙侵犯-」
著 者 佐藤大輔
出 版 早川書房 2017年4月

 銀河帝国というラベルを貼ったブランデーボトルにイゼルローン製の大衆酒をぶち込み、ちょっと旧日本軍で風味を付けると佐藤版帝国軍が出来上がる。あっかるい成立過程は伊達と酔狂、というよりはノリと酔狂。
 各勢力の描写もそれぞれ面白い。銀河帝国が一番マシに見える。”異性愛傾向を備えた童貞の妄想を形にしたような女たち”。げろげろ。近傍国家の憎悪混じる思惑のあれこれは現実の日本周辺国家を想起させられる。艦対艦戦も艦隊戦も国家間の謀略もこれから、というところで佐藤大輔氏、無念の絶筆だった。享年52歳。著者のご冥福を祈る。この年は、これ以外にも数冊の刊行が予定されており、佐藤氏、油がのりきった、というところだったろうか。ご多忙だったのだろうな、と推測する。
 この物語の続きが読めないことが返す返すも残念。だれか佐藤大輔フリークが続きを執筆してくれないだろうか。グインサーガのように。着想ノートとか、設定集とか残っていないだろうか。佐藤氏の作品はいずれ全部読みたいと思っているけど、このようなお別れは悲し過ぎる。

2016年12月31日土曜日

0015-17 マルドゥック・スクランブル

書 名 「マルドゥック・スクランブル The 1st Compression 〔完全版〕
    「 マルドゥック・スクランブル The 2nd Combustion〔完全版〕
    「マルドゥック・スクランブル The 3rd Exhaust 〔完全版〕
著 者 冲方 丁 
出 版 ハヤカワ文庫 2010年10月

2016年12月30日金曜日

0014 司政官 全短編

書 名 「司政官 全短編」 
著 者 眉村 卓 
出 版 創元SF文庫 2008年1月 

  Kindleで読み始め後から文庫を入手したらびっくりな厚さ。本の厚さを感じさせないくらい引き込まれた。
 歴代の司政官の苦悩、孤独、焦燥、決断がテーマなので、物語的にはこれからだよね、というところでブッツリお話が終わってしまったりする。(余韻がある、ともいえる。)
 主人公は全員ストイックで有能な官僚。ある意味直線的な生き方しかできない。ラストに登場する女性の巡察官が「逃げればいい」と言い放っても、それを受け入れるなんて無理無理!
 組織や制度と自分を同一視してそれを体現しようと孤軍奮闘する主人公達が哀しい。
 私は制度設計とか、組織構成がどうしても気になってしまって、司政官制度には構造的欠陥があるよな〜、と思ってしまうところがやや残念なところではある。お話としては「長い暁」と「扉のひらくとき」が好き。

「司政官としての全権限と全責任において命令する」

 組織の末端ともいえる立場ではあるけど、重い責務があり、果たすべき責任がある。その決断に幸いあれかし、と願う。

2016年12月23日金曜日

0013 放課後地球防衛軍(1)なぞの転校生

書 名 「放課後地球防衛軍(1)なぞの転校生」 
著 者 笹本 祐一 
出 版 ハヤカワ文庫 2016年11月

 まだまだ導入部。一冊読んで何も始まっていない。「星のダンス」くらいポンポン話が転がっていくくらいのテンポ感の方が好きだなあ。
 でも星雲賞を狙う勢いで書くそうなので、期待して続刊を待ちます。こういう自分の隣に宇宙がありそうなこの作家さんのSFは好きです。自分の町の漁協とか農協に地球防衛軍の支部とかあって、リアルタイムでSFしたいな〜と思う。

2016年5月6日金曜日

0001ー2 「星のダンスを見においで」

書 名「星のダンスを見においで1ー地球戦闘編」
   「星のダンスを見においで2ー宇宙海賊編」
著 者 笹本祐一
出 版 東京創元社 2015年5月

 

 前回の長きに渡る読書スランプを蹴破ったわたし的奇跡の一冊。
 ミニスカパイレーツから遡る事?世紀。地球的には現代日本は横須賀の裏路地に隠棲する某大物宇宙海賊。ひょんなことから女子高生に身バレし、なし崩し的に市街戦から2人海賊旅(宇宙)へ。キャラよし、テンポよし。極めて映像的で鮮明な情景が脳裏に展開して面白い!素晴らしい!の一言、ではなく二言に尽きる。上巻は太陽系内の近接戦闘からお宝求めての旅立ちまで。ジャックがくるっと指を回して宇宙を指さす。私も行きたい!
 敵役のヴィンが終始敬語調なのが、結構好みである。イメージ的には歳喰ったメックリンガー(より、やや人が悪い感じ。)白髪のじーさんとおっさんが少年のようにやり合ってるのがなんか可笑しい。(ただし、超弩級戦艦VS突撃上等の衝角付き海賊船、である。)ああもう、スペオペの真骨頂。これ、ほんとに新刊の頃に読みたかったよな〜。ラストが想像以上に神頼みなのはどうなのよ、と思わんでもないが、これは、他に収めようがない。仕方ない。
 私としては、おっさん宇宙海賊と女子高生のその後の恋愛模様を知りたい。(なにしろ、子孫が残ってる。)・・・・てか、本当に唯佳とジャックがくっついたのだろうか?ダークホース的に、アレックスとだったりして?