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2021年12月20日月曜日

海・駆逐艦・潜水艦 その3(Googleマップで確かめてみた)

横須賀の海軍基地をGoogleマップで眺めて見て、がっつり潜水艦が映り込んでいることが分かったので、『ハンターキラー』で登場した米海軍基地も眺めてみる。ひょっとして原潜が見つかるかも? てか、本当に写ってるよ。びっくり。民間の衛星写真ですらこれだもの。もはや世界中、露天では何一つ隠せないのが良く分かる。

←で、これが横須賀です。
がっつり。おやしお型とそうりゅう型が仲良く並んでる。それにしても、駐車場の目と鼻の先に無造作(?)に潜水艦が泊まってるとは。むろん基地関係者の車だろうけどさ。私にとっての非日常(=潜水艦)は、基地の人には日常なんだな、とか考えたり。
こんな写真を見てしまった日には、ロサンゼルス級とか、原潜はどれくらい大きいのかな、と、探したくなるではないか。

で、探してみた。(ちなみに縮尺は合わせていない。あしからず。)

サンディエゴ潜水艦基地。→
水中のプロペラが辛うじて見えている。これはロサンゼルス級?


←こちらはパールハーバー。
二艦が縦に並んでいる。



←こっちもパールハーバー。
バージニア級っぽい形の艦尾が水中に透けて見えてる。さすが、ハワイは水が綺麗なようだ。ミサイルの垂直発射管も蓋開けて丸出しじゃないか。いいのか?



乾ドッグ入りしているのも、丸見え。パールハーバーはざっと探して、埠頭に6隻、ドッグに2隻見つかった。





こちらはノーフォーク。→
海の水、きたなっ。泥水みたいな色だ。都会だし、湾内奥だし、仕方ないのか?

この艦は、セイルに潜舵が付いているタイプのようだ。

ちなみに、フランスはどうかな?
ブレスト軍港。→
モザイク掛かってますね。このあたりは国ごとに規制の度合いがちがうんでしょうかね。

 それにしても、リアルタイムの写真ではないと分かっていても、こんなに見えちゃうとドキドキします。中はカラだとしても弾道ミサイルの発射管くらい隠しておいてほしいと、素人・一般人の私は思ってしまうのでした。

2021年12月19日日曜日

海・駆逐艦・潜水艦 その2(横須賀軍港めぐりに行ってきた)


横須賀港に行ってきました。
お目当ては港内遊覧船の『横須賀軍港巡り』その名の通り、湾内の海の上から停泊中の艦艇を眺めることができる珍しいツアーです。

 最初に潜水艦を目撃。艦尾ちかくから真っ白い排気を上げている。この艦はエックス舵のそうりゅう型。
 この後、おやしお型が2隻、並んで停泊しているのも目視。米軍基地がある側の岸壁を使っていたので、あれ?と思ったが後でGoogleマップで確認したら、ここが自衛隊の第二潜水隊群司令部のようだ。にしても、軍事基地の航空写真がここまで見れてしまうのね。ともあれ最近は潜水艦関連の本ばかり読んでいたので、実物の潜水艦を見ることができてドキドキだ。



 湾内、浦賀水道に向かって右手は横須賀米海軍基地。空母ロナルド・レーガンが停泊しているのは下調べ済みだったが、空母の護衛のイージス艦も沢山いる。
 湾のすぐ先は船舶の往来が賑やかな浦賀水道だが、自然の地形に守られた港内は静か。
 こちらは海上自衛隊の艦船。
6102が試験艦の〈あすか〉
101は護衛艦〈むらさめ〉
そのほかにも掃海艇や潜水艦救難艦〈ちよだ〉、
補給艦、護衛艦、イージスも。なかなか綺麗に写真がとれたが、マストの先っぽが見切れてしまったのは、失敗。

手前の110の艦は、護衛艦〈たかなみ〉
111は護衛艦〈おおなみ〉です。


 潜水艦の写真にはセイルに大きく艦番号が描かれているのが多いけど、実働中は表示していないのか。艦番号がないとどれがどれだか、素人にはさっぱり分からない。辛うじて艦尾のエックス舵からそうりゅう型かな、というくらい。とはいえそのエックス舵が港内に4隻いた。あれ、横須賀配備のそうりゅう型って、ずいりゅう、こくりゅう、せいりゅう、とうりゅう、だから「そうりゅう型」は勢揃いしていたのかもしれない。

 午後3時からの最終便だったので、湾内を巡っているあいだに、日が低くなってきて、逆光に浮かぶ艦たちが美しい。

 次回は、私の愛する氷川丸に逢いに、横浜港に行かねば。

2021年12月12日日曜日

「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」メモ

もっとも幸せな瞬間は、未来にある

リーダーシップとは、人が持つ価値と潜在能力を明確に伝え、本人がその存在に気付いて刺激をうけられるようにすることである。

◆著者マルケ氏の、人間(部下やそれ以外の人々)に対する優しさと公平さ
・会社に貢献する気持ちも、仕事に対する思い入れややりがいも失った社員は、組織の利益をむしばみ同僚のやる気をそぐ。確かに利益の損失も甚大だが、私の感覚としては、彼らが失った喜びや幸福巻の喪失の大きさは、その比ではないように思う。p.9 

・誰もが自分の仕事に満足している世界を思い浮かべてみてほしい。そこは、誰もが自分の知力を存分に発揮し、自分を高めたいという意欲に満ち溢れた世界だ。人間という種に授けられた認知の力を存分に使い、目の前に問題が現れるたびに解決していく姿がそこにはある。p.15

・乗員の稼ぎを増やすためにできることと言えば、昇進のチャンスを最大限に生かせるようにしてやることぐらいしかない。私はそのためにできることを必死でやった。p.228

・もう12月だが、評価表の提出期限は9月15日だった。昇進審議会が開かれても、彼のファイルが不完全であれば、昇進のチャンスはゼロになる。上等兵曹の評価ですらこの扱いなら、かれより立場の低い水兵はどんな扱いを受けているというのだ?p.49
①部下の昇進やキャリア形成に対する上司としての責任。
②人事にもとめられる公平性。
③業務手順を守ることが、組織としての信頼性を高める。
 
◆行動を変える/意識を変える
・問題解決の責任を各自に負わせることで、自分は欠かせない存在だと各自が意識するようになる。(ただし、責任転嫁ではなく、最終責任は上司が負う覚悟が必要だとは思う。)
・優れた成果をあげることよりもミスを犯さないことにエネルギーを注いでいないか?
・ミスについて深く理解することが優れた仕事につながる。ミスが起きた場合には、なぜ起きたのか原因を深く追求し、ミスを排除するために必要な措置を理解する。これは責任追及のために行うのではなく、これから先同様のミスを起こさないようにするために行う。
・決断を下す者が情報のある場所へ降りていく。
・これまでとは違う行動をとらせることから始める。そうすれば新しい考え方は後からついてくる。
・立場が下の者は、最初から「完璧」なものを上の者に見せようとする。そういう思いはそれまでの努力を無駄にしてしまいかねず、効率を悪くする。早めに見せて、目指すものとのズレが無いか確認をする。上の者の意志や、助言は早い段階で確認することで早めに小刻みに軌道修正をはかったほうが効率が良い。
・(上の者が)「早めに短く言葉を交わす」というのは、部下に命令するという意味ではなく、一足早く進み具合を報告をする機会を作っているのだ。そうすることで、引き続き部下の責任で問題解決にあたってもらえる。それに、そういう機会を通じて、成し遂げたいことを部下にはっきりと理解させることもできる。それで何時間もの時間を無駄にせずにすむ。

権限を委譲する/委ねるリーダーシップ
・権限の委譲の背後にはトップダウン構造が潜んでいる。その行為の中核には、部下に権限を「譲ってやる」という考え方があり、リーダーには部下に権限を委譲できる権力や能力があると暗示している。

●「視認責任」の導入
 現場で行われる活動の一つ一つを中間職のリーダーがその場に立ち会って自分の目で確認し
上官への説明責任を果たすしくみを作る。
●具体的な決定権限を下ろす。(休暇に関する稟議の決定権者を下ろすことによって、関連する諸々の服務関連の把握を現場の長がおこなうように変更)
●計画書に現場の責任者の記名欄を設け、全ての活動に現場で権限と責任を持つものを表示。

自発性を高める言葉の力
・「これから〜をします」という言い方の導入。指示待ちにせず、自分の責任において為すべきことを考え、進言し、上司の承認を取る。
 【上司に従うだけの言い方】      【権限が自分にある言い方】
   ●〜の許可をお願いしたいのですが    ●これから〜をします
   ●〜できればと考えています       ●私の計画では〜
   ●何をすべきか教えてください      ●〜をするつもりです
   ●どうすべきだとお考えですか      ●〜をしましょう
   ●何ができるでしょうか 

・部下の当事者意識や責任者意識を損なわせるメッセージを無意識に発していないか。

委ねるために(委ねられるために)技能(技術)を高める
・権限を下に委譲するにつれ、あらゆるレベルの乗員に技術的な知識があることが重要になる
・物事を判断する力を高めたいなら、判断の基となる確かな技術的知識が必要になる。p.177
常に学ぶ
・私は、「いつどこでも学ぶ者でいる」と意識するようになったことで、精神的に安定し、ものの見方が広がった。p.185

繰り返し伝える
・大事なメッセージは、しつこいほど繰り返し伝える必要がある
・すぐに受け入れられる人もいれば、受け入れに時間がかかる人もいる

目標設定/目標を正しく共有/信頼
・目標を定めるときには、成果が測れるかどうかを意識するとよい。p.243
・将来のビジョンを同僚や部下とともに描くときには、具体的で成果が数値でわかる目標を定めることが重要。
・部下の目標について話し合うときは、相手が抱える問題に親身になって相談にのる必要がある。個人的に支援する姿勢を示せば、部下のことを考えて行動し、彼らが達成したいことをつねに頭に描いているのだと分かってもらえる。

行動指針/判断の基準
・たとえば、査定をするときや報告を書くときは、行動指針にある言葉を積極的に使わせた。「M軍曹は、勇気と積極性を持って報告し・・・」p.236
・行動指針を判断の基準とすることは、組織の正しい理解につながる。p.237

委ねる(委ねられる)ために必要なもの。知識と技術。そして学び続ける。
・本当に必要なのは、命令系統からの解放、すなわち自由である。自由というのは、人が生まれ持った才能やエネルギー、創造性を認め、それを存分に発揮させることを意味する。
・自ら判断して行動出来る環境が整い、高い技能と正しい理解が備わったとき、自由が生まれる。自由な状態で仕事をしているとわかれば、権限を委譲する必要はなくなる。というよりも、上の立場の人間の力を頼りにしなくなったのだから、権限を委譲するということ自体ができなくなるのだ。p.275 

・決断を下すうえで、彼らに何が必要になるかを理解する。何かと接するときは、的確な専門的知識、組織の目標に対する深い理解、決断を下す権限、状況に応じた決断を下す責任が必要になる、と覚えておくとよい。p.266

・私は組織にはそれぞれ個性があり、一つとして同じものはないのだと知った。組織で働く人の育った環境も、権限を許容するレベルも、自由に対する感じ方も、人によって異なる。p.279

・結局のところ、誰よりも支配しないといけない相手は自分自身である。p.280 

委ねるリーダーシップ
 【部下に命じる構造の打開策の成功例】
●作業を細かく見るのではなく、作業をする人を細かく観察した。
●報告の数や確認する箇所は増やさず、むしろ減らした。
●リーダーシップを振りかざして命令に従うだけの「フォロワーシップ」を助長させず、自分が一歩下がることであらゆるレベルでリーダーシップを発揮させた。 p.262 

2021年12月4日土曜日

0310 米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方

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書 名 「米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方」 
原 題 「Turn the Ship Around!」2012年
著 者 L・デビッド・マルケ 
翻訳者 花塚 恵 
出 版 東洋経済新報社 2014年6月 
単行本 285ページ 
初 読 2021年12月15日    
ISBN-10 4492045325 
ISBN-13 978-4492045329 
読書メーター   https://bookmeter.com/reviews/102854935
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 自分が仕事ができていると感じているときの充足感、自分がきちんと業務にひいては社会にコミットしている、と思えたときの健全な満足感は、人が仕事をして、それによって長い人生を生きていく上でとても大切で、必要なものだ。

 この本は、組織を構成する一人ひとりがそのような状態になることを、リーダーとしてどうやって意識的に作っていくことができるかを、潜水艦というある意味特殊で閉鎖された環境のなかで実践したことの、記録、というか報告のようなもの。
 潜水艦で、という環境が面白い。
 原子力潜水艦は、一度出航したら何ヶ月も母港に戻らず、浮上すらしないまま長時間の航海が可能で、100名程度の乗員は、狭い艦内で、極めて緊密な関係のなかで缶詰になる。
そのため、組織運営に不確定な要素をもたらす外的な刺激はかなり単純化されていると思える。
・業務は高度に組織化されていて、出来・不出来は一目瞭然。
・ついでにいうと、そのような環境で長時間能力を維持することを求められる乗員は、海軍でも「エリート」に属し、精神的にも安定して強靱で、他者との協調性が高く、意欲的な人物が選抜されているとみてよい。

 そのようなエリート集団であっても、軍組織という上意下達、上官には絶対服従、しかも艦内(艦長の権限は極めて強大)という環境で、専制的でダメなトップのもとでは腐ってしまうのだ。自分の仕事が評価されない。自分が組織の中で役に立っていると思えない。自分が十分に能力を発揮できていない、という思いは、簡単に人間を腐らせ、本来の能力まで奪ってしまう。
 この本は、そのような状態に陥っていた米攻撃型原子力潜水艦〈サンタフェ〉(ロサンゼルス級)の艦長に任じられた著者のマルケ(当時大佐)が、部下に権限を委譲するなかで、部下一人ひとりの責任と判断を尊重し、部下のやる気と充足感を高め、その結果一隻の潜水艦の能力を飛躍的に向上させた実践を簡潔にまとめたものである。
 組織のメンバーが有機的に結びつき、エネルギーが正しく流れるときの無駄のない業務の進行と、それに関わるメンバーの健全な人間関係は、ひとことで言ってしまえばとても“気持ちの良い”ものだ。それを、自分の部下に味あわせることは、いわば組織の上に立つものの責務ではないだろうか。今の自分にそれができているだろうか。という反省も浮かんでくるが、これもまた、健全な反省であるべきだ。
 この本(最強組織の方)を、単に読み物として楽しむもよし、我が身にあてはめて、工夫のヒントとするもよし、何回でも手にとって楽しめそうな、珍しくも有用なハウツー本、ビジネス本だと思う。

 ちょっと脱線するが、H・ポール・ホンジンガーの『栄光の旗のもとに』は、まさに〈サンタフェ〉と同じ状況で新艦長に引き継がれた駆逐艦〈カンバーランド〉を、新任艦長が乗員の自信を回復して最優秀艦に育てる話でもある。この「最強組織」が2012年刊、「栄光の」が2012年に書かれ、2013年に刊行されたのは偶然かな? 真っ黒な円筒型のステルス宇宙艦は、駆逐艦とはいえど、ほぼ潜水艦のようなもの。全長、艦内の構造、乗員数も原潜と似たりよったりだ。リーダーシップを試行して、結果を確認するのに丁度良い規模と環境である、とも言える。


 これは余談。表紙の写真は、ロサンゼルス級原潜〈サンタフェ〉ではない。S112ってどこの艦だろう?国旗はギリシャに見えるけど。せめて米原潜の写真が使えればよかったのにねえ。
 さらに余談。各見開きページの左上のイラスト表示の潜水艦の艦影が第二次世界大戦の頃の姿だ。現代の潜水艦はもっと丸い。
 このあたりのビジュアルにもっと凝ってくれたらよかったのに。。。。。(ちょっと残念。)

2021年11月27日土曜日

映画『ウルフズ・コール』ネタバレあり


2019年のフランス映画です。
もう一つの潜水艦映画。
これを見ると、アメリカ映画ってやっぱりエンターテイメントなんだなあ、と実感する。
(当たり前だが)フランス語が溢れる発令所の中も米原潜とはひと味もふた味も違う。面白い。

「ウルフズ・コール」とは、謎の潜水艦が発するソナー音のこと。フランスの特殊部隊を支援する作戦任務中にこの音に遭遇した音響鑑定士のシャンテレッドは混乱して、艦種の特定や敵味方の識別に手間取り、艦と仲間の特殊部隊員を危険に晒してしまう。任務の失敗から潜水艦乗務をはずされてしまうシャンテレッドだが、どうしてもあの狼の鳴き声が頭から離れない——————

 アメリカ映画なら、ここから、敵の不明艦の探索と対決、という一大スペクタクルに展開する流れだが、そうはならないフランスのエスプリ。
 
 全身全霊集中して見たけど、2度、3度みたいとは思わないくらいシビアな世界だ。現実寄りの核戦争の恐怖と潜水艦戦の非情な世界を描き出している。細部まで集中して見て、見終わったあとに、自分の中に吹き荒れる感情を鎮めながら諸々を考える。そんな映画。見る価値ありの名作です。(と、思うのだけど、Amazonのレビューはいまいち振るわないようだ。そりゃあ、ハリウッド並みのスペクタクルを望んではいけない。これはフランス映画だからね!もうちょっと大人で、もうちょっとしっとりしているのだ。たとえ戦争映画であっても。)

 主人公は鋭敏な聴覚を武器に海中で戦う『音響鑑定士』。水中の小さな音まで聞き取り、敵か味方か、艦種や武装の種類まで鑑定する。通り名は「黄金の耳」、渾名は「靴下(ソックス)」。渾名の由来は耳が良すぎて自分の足音が気になってしまうため、数ヶ月の潜水艦乗務の間、靴を履かずに靴下だけで過ごしたから。聴覚だけでなく人柄全般的にセンシティブな男。
 ひたすらヘッドホンから海中のすべての音に耳を澄ませ、作戦の遂行も中止も、攻撃するかしないかも、鋭敏なシャンテレッドの耳が聞き取る音とそれに下される鑑定にかかっている。こんな繊細な奴が、何ヶ月もこんな仕事をしていたら心を病んでしまうんじゃないだろうか。でも艦長のグランシャンは彼を信頼している。

 「狼の鳴き声」を放つ謎の音紋の潜水艦による欺瞞作戦のために、フランスは核戦争の引き金に指をかけてしまう。フランスの新鋭戦略核ミサイル原子力潜水艦(SSBN)レフローヤブル号を指揮するのは、シャンテレッドが尊敬するグランシャン艦長。その原潜は大統領からの核攻撃命令を受けて潜航し、いまや核攻撃の最終段階にある。電波も通信も届かない潜水艦には核攻撃中止命令も届かない。そして、潜水艦艦長に与えられた大統領命令は絶対不可侵で変更や取消は不可能・・・・・て、謎の潜水艦などそっちのけで、味方同士の潜水艦による核戦争回避のための戦い−−−−−つまりはどうやって潜航する潜水艦(味方)の位置を特定し、核攻撃中止を伝えるか、さもなければ−−−−−っていう超絶鬱展開。これを魅せる人間ドラマが良いのだ。レフローヤブルを追うために、もう一つの潜水艦チタン号に移乗して指揮を執る潜水艦部隊司令官(「私もかつては潜水艦艦長だ」)もまた、シャンテレッドの能力を信頼する。そして、レフローヤブルからの魚雷を受けて大破し、沈降していくチタンの中で、司令官は、シャンテレッドを艦外に脱出させるのだ。シャンテレッドが得たもの、そして失ったもの。

 字幕だと、登場人物の階級がまったく分からないのだが、肩章である程度把握できる。シャンテレッドは少尉。チタンの艦長で中盤レフローヤブルの艦長になるグランシャンは中佐、チタンの副長だったドルシは少佐だったが艦長に昇任して中佐に。司令官は上級中将だ。音響分析センターの長官(?)も中佐。
 大麻の一件は、彼がやっていたのではなく、彼女が手巻き煙草で吸っていたのを副流煙で吸収していた、ということかな、と。彼女を責める方向に話が向かないのも“らしい”と思った。大人の世界だなあ、と。(自分が納得できるかどうかは別問題。)あと、勤務オフの時もシャンテレッドがヘッドホンをしているのは、音楽を聴いているというより、もしかしたらノイズキャンセリングのためかもしれない、とも思った。
 ラストの、音のない静かな世界は、聴覚を失ったシャンテレッドの世界を表現しているんだよね。彼女が後ろから近づいてくる気配も感じ取ることができなくなったシャンテレッドは、これからどんな世界を生きて行くのだろう。

 この映画は真夜中に部屋を暗くして、ヘッドホン推奨。シャンレテレッドの聴いたものを、聴け!

 

2021年11月26日金曜日

海・駆逐艦・潜水艦

 いつの間にか、戦闘艦好きになっている。いちおう自分に念押しするが、これでも平和主義者だ。戦争反対・軍備反対。だけど、なぜか軍艦ものが好きだ。人間は矛盾に満ちた存在だ。
 生まれながらの平和主義者だった息子が、いつの間にやら銃器マニアに育っているのもなぜだ? 言っておくが、私のせいではない。息子のヘンな進化に気付くまでは、銃器や兵器の話なぞ、家の中ではしたこともなかったし、BB弾のピストルのおもちゃだって持たせたことは無かったのだ。
 そういえば、どう考えても反戦主義者だろうと思える宮崎駿氏も、戦闘機への憧れが捨てられなかったように。
 戦うという目的のためだけに作られた無駄な無機物に、どうして人は愛を感じてしまうのだろうか。
 ひょっとして、そうやって、創作と空想の世界に野蛮な欲求を昇華させることで、本能的な闘争心を宥めているのだろうか。

 しかし、この気持ちはやはり「愛」。船の代名詞が『彼女』なのにも心震える。
 というわけで。動いている戦艦見たさに映画を見る。ストーリーは二の次でよし。操舵号令にうっとりとする。
戦争映画の傑作。ロバート・ミッチャムの駆逐艦艦長とクルト・ユルゲンスのUボート艦長が、海面の上と下で頭脳戦を繰り広げる。大好きなシーンはなんといっても、敵潜水艦から放たれた二本の魚雷の航跡が、艦すれすれに通り過ぎていくシーン。『Uボート』が戦争の悲惨を描いているとすれば、こちらは娯楽映画のレベル。Uボートの艦内もこぎれいで、映画『Uボート』との描き方の違いを感じる。原作のシビアさと比べても、あっかるいアメリカ映画の仕上がりだが、米海軍の協力を得て作成された本物の駆逐艦の爆雷投下シーンは圧巻。


『バトル・シップ』
近未来SFのくせに、戦艦ミズーリが主役。老兵がそりゃあ楽しげに艦を操ってる。ボイラーに点火するシーンがお気に入り。「耳をふさいどれよ!」 字幕・日本語吹き替え、どちらも味わいがある。戦艦が波を蹴って進むシーンが壮観。一番好きなのは、窯の火が落ちて死んでいた艦に電源が入り、息を吹き返えしていくところ。




『Under Siege』
こちらも戦艦ミズーリ。第二次大戦中に就役した戦艦が、近代化改修を経て湾岸戦争時まで活躍していたとは知らなかった。バトル・シップはミズーリがハワイで記念艦になってからの話だが、こちらは、退役前最後の航海で艦内で反乱が起きる話。スティーブン・セガールがマイペースな奴で面白い。ヒロイン役の女優さんが、とても美し可愛い。
 この映画の見所はなんといっても主砲をぶっ放すところだな。揚弾機で弾薬を砲尾まで持ち上げて、装薬して撃つ。ダグラス・リーマンの小説を読んでいても、実際の揚弾の様子なんてわからなかったからね。なるほど〜、と。


こちらは、米攻撃型原子力潜水艦。一番お気に入りのシーンは、前半、潜水艦の出航シーン。「よし、潜ろう」「ダイブ・ダイブ」のかけ声で、艦長、副長、その他幹部士官が発令所の海図台(?なのか)の前と横に前方を向いて陣取り、腕を組んで直立不動。潜行する艦が前のめりに斜めになっても、潜水艦乗りの誇りにかけて、どこにも掴まったりするものか、と体を斜めにして踏ん張るシーンが、大好き。あと、ラストシーン、ロシアの駆逐艦隊(多分)に護衛されて真っすぐ北海洋上を航行する、USS《アーカンソー》。字幕、日本語吹替え、どちらも味わいがあるが、日本語吹替え版は、細かいセリフで状況説明を自然に補ってくれていて、俳優の細かい表情や小さな目配せなどの仕草の意味がはっきりして印象が際立つ。良い翻訳だと思う。ちなみにとってもハンサムな航海長のパークは韓国系の朴さんだろうな。


原作『駆逐艦キーリング』 第二次世界大戦に米国が参戦して間もない1942年初旬。大西洋はドイツのUボートによるウルフパックに席捲され、連合国側の通商網は大打撃を受けている。護送船団を組み、それを護衛する米駆逐艦《グレイハウンド》とコルベット艦。お気に入りのシーンは、戦闘とかではなく、ラストの梯型で洋上を進むグレイハウンドと僚艦だったりする。
2020年に航海、ではなく公開予定だったが、コロナのあおりで劇場公開はされず、アップルTVが独占配信。映画館の大画面・大音響にかぶりつきで、荒天の荒波を頭から被る勢いで鑑賞するのを1年も前から楽しみにしていたので、残念ではあった。
アップルTVは、最初の試聴期間はタダなので、ユーザーでない方もぜひ観てみてください。いつか劇場で観たいです。




2019年フランス映画。アメリカの潜水艦映画とはひと味もふた味も違うエスプリ。潜水艦の「音」の世界を垣間見ることができる。有線誘導の魚雷ってこんな感じなのか、とか、沈没する潜水艦からの緊急脱出ってこういうものなのか、とか。小説『ハンターキラー』でも描かれる潜水艦艦長の忠誠心の強さや独立独行の作戦遂行能力の高さゆえに、抑止力としての戦略核の運用を、潜水艦に担わせることのリスクにも考えさせられてしまった。プライムビデオの見放題に入っていないのが残念ではあるが、レンタル料払って見る価値アリの名作だと思います。
おまけ『Uボート』
これは「楽しむ」映画ではない。戦争の悲惨さに愕然とするための映画。戦争映画で思わず高揚してしまったら、これを観て反省しよう。



2021年11月17日水曜日

0307-08 ハンターキラー 東京核攻撃 上・下 (ハヤカワ文庫NV)

書 名 「ハンターキラー東京核攻撃 上」 「ハンターキラー東京核攻撃 下」 
原 題 「Dangerous Grounds」2021年
著 者 ジョージ・ウォーレス/ドン・キース 
翻訳者 山中 朝晶 
出 版 早川書房 2021年10月 
文 庫 上巻352ページ/下巻352ページ  
初 読 2021年11月18日 
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/102625713  
ISBN-10 上巻4150414874  /下巻4150414882 
ISBN-13 上巻978-4150414870/下巻978-4150414887
 潜水艦の姿を表示したいがばかりに、シリーズ3作、表紙画像を貼り合わせた。
 遠景に、本作に登場するアーレイ・バーク級駆逐艦〈ヒギンズ〉の姿もあれば良かったのにな。
 
 で、ハンターキラー3作目です。今回は日本の横須賀が前線司令部として登場する。そして、今作ではワードの家族がそろって苦難に見舞われる。
 ワードの息子はアナポリスの海軍兵学校の4年生で、初めての潜水艦乗艦実習。乗り組むのはグアムを母港とするロサンゼルス級原子力潜水艦〈シティ・オブ・コーパスクリスティ〉、むろん実在する艦である。この長い名称の由来は、話中で副長が2人の少尉候補生(1人はワードの息子ジム)に語っている。さて、初の乗艦実習、将官を父に持つジムの苦労やいかに。
 子供が手を離れたワードの妻のエレンは大学で植物学の研究に戻り、野生の蘭の植生を調査するために学生を引率してタイの山奥に向かう。
 フィリピンではイスラム超過激派の武闘集団と宗教指導者が世界を核戦争に導く事を画策し、北朝鮮では老軍事指導者がイスラム過激派をペテンにかけ、自らも核戦争を仕組む。これにアジアの麻薬王の親子の確執が絡み、麻薬捜査官キンケイドも麻薬密売ルートの解明と摘発のためにフィリピンで隠密捜査中。
 数多の思惑がアジアの西から極東まで複雑に絡み合う。北朝鮮の内情とか、イスラム過激派の描写とかの敵側が陳腐なのはいつも通りではあるのだが、関係性が複雑になってスピード感と面白さは、前作よりはかなりアップしている。

 ロシアから盗まれて北朝鮮に密輸された旧ソ連の核魚雷の存在が米国の知るところとなり、捜索・破壊作戦が立案され、司令官にはジョン・ワード准将が任命される。副官はSEAL部隊長のビル・ビーマン。この2人が、SEAL北朝鮮潜入作戦の前線指揮を執ることに。お互いに相手を老兵呼ばわりして皮肉を言い合う老兵2人(笑)。司令部が置かれたのは横須賀米海軍基地。横須賀基地内にある旧大日本帝国海軍司令部だった洞窟が米軍の司令部に転用されている描写に心がざわめく。

 一方、ジョンの息子のジムは、心躍る潜水艦乗務なのに困難に見舞われる。海軍の高官を父にもつ候補生を快く思わないのか、かつて父のジョン・ワードとなにか因縁があったのかは知らないが、案の定、〈コーパス〉の艦長に露骨にいじめられる。が、そこにはちゃんと助けてくれる叩き上げの乗組員達もいて、若いころお父さんと同じ艦に乗り組んだ、という先任伍長が優しくも厳しい助けの手を差し伸べる。

 日本の近海で、訓練よろしく同盟国である米の原潜を追尾する日本の“ディーゼル潜水艦”が米原潜に鬱陶しがられているのも面白い。

 にわかに騒然とし始めた太平洋で、訓練航海だったはずの〈コーパス〉も騒乱に巻き込まれる。妻のエレンの方は、タイの山奥で寄宿したのがなんと麻薬王の邸宅、というこれまた突飛な巻き込まれよう。
 北朝鮮に渡った二発の核弾頭の行方はようとしてしれず、前線司令部に詰めるワードの元に、次々と悪い知らせが届く。息子ジムの乗り組んだ潜水艦〈コーパス〉が消息を絶った。そしてエレンは麻薬絡みの戦闘に巻き込まれてタイの山中で行方が分からなくなる。さらに、海賊にシージャックされて核魚雷を積み込まれ、東京に向かった可能性のある〈コーパス〉には、発見次第撃沈せよとの大統領命令が下されるのだ。

 ジョン・ワードには相当気の毒な展開だが、核弾頭を追ってサウジアラビアまで出張ったSEALの若きリーダー“カウボーイ”ウォーカーも、全編通して非常に憐れである。ウォーカーと同じチームになったダンコフスキー、カントレル、マルティネッリも一蓮托生。ああ、これまでがんばってきたのに(涙)。とくにマルティネッリは、映画『潜航せよ』ではSEALのルーキーとして登場し、負傷しつつもスナイパーとして抜群の技倆を見せたりして良い味だしていたのでまことに残念だ。

 後書きによれば、まだ翻訳出版されていない4作目では、ワードの息子ジムがSEAL隊員として登場するとのこと。ドルフィンマーク(潜水艦乗務員記章)も取得したジムだが、初めての乗務で乗員や同期の士官候補生を目の前で殺される、という経験が、彼を近接戦闘技術の獲得に向かわせたのだろうか。
 何はともあれ、はやく次巻を読みたい。早川書房様、次作の出版もぜひよろしくお願いします。簡単にシリーズ見捨てないでね!

2021年11月15日月曜日

0305-06 ハンターキラー潜航せよ 上・下 (ハヤカワ文庫NV)

書 名 「ハンターキラー潜航せよ 上」 「ハンターキラー潜航せよ 下」 
原 題 「FIRING POINT」2012年
著 者 ジョージ・ウォーレス/ドン・キース 
翻訳者 山中 朝晶 
出 版 早川書房 2019年3月 
文 庫 上巻425ページ/下巻426ページ  
初 読 2021年10月30日 
ISBN-10 上巻4150414491  /下巻4150414505 
ISBN-13 上巻978-4150414498/下巻978-4150414504 
 つい気になってしまった誤訳と、誤訳か誤植か迷うケースについて。
その1。
SASを『空軍特殊部隊』と訳す痛恨のミス。SASはSpecial Air Serviceの略称だが空軍ではない。『陸軍特殊空挺部隊』である。各部隊から志願し選び抜かれた陸軍の超エリート部隊。よって、小説に登場するシーンも多いのだが、軍事オタクではないが多少詳しく知りたいという人には、イアン・ランキンのリーバスシリーズ一冊目『紐と十字架』およびギャビン・ライアルのマキシム少佐シリーズをお薦め。いずれも現役のSASではないのだけど、雰囲気は伝わる。ガブリエル・アロンの親友ケラーも元SAS。アティカス・シリーズにも格好良い元SASが出てきた。
その2。
The young junior officer を「若い下士官」と訳してある。彼は大尉なので、決して「下士官」ではない。そもそも下士官なら、Petty officerだと思うんだよね。ここは下級士官と当てるところだろう。下士官と下級士官。誤訳か脱字か迷う。

 だがしかし。そんなことは置いておいて、潜水艦が氷海を潜り、海上艦は波濤を割って駆け、有能な司令官が指揮をとり、部下の乗組員たちは各々の技量の限り奮闘する。真っ当な海洋軍事小説である。つまりは面白い。『最後の任務』でスタージョン級原子力潜水艦〈スペードフィッシュ〉の艦長を務めたジョナサン・ワードが准将に昇進して、大西洋潜水艦部隊の司令官になっている。スペードフィッシュが退役した時点では中佐だった。あの麻薬撲滅作戦の勲功で大佐に昇進したにせよ、短期間(およそ2年ほど)の間に准将になっているっていうのは、超スピード出世なんじゃないか?あいかわらず、ワードは好男子だ。今回主役のロサンゼルス級原子力潜水艦〈トレド〉の艦長は、前作でワードの副長だったジョー・グラス。艦長となった今も、グラスとワードが見せる厚い信頼関係が読み手にも心地よい。北極海の氷の下からイギリスのファスレーン海軍基地に帰還した〈トレド〉とグラスを迎えたワードの会話。早くパブに行きたいというグラスに対し、ワードが言う。

「まあ、当分先だな。今度の作戦の戦術司令官は本当に人使いが荒い、 
冷酷非情なろくでもない男だからな」 
「誰です?」 
「わたしだ」

著者の一人のジョージ・ウォーレスが元潜水艦艦長で、それこそスタージョン級の〈スペードフィッシュ〉では副長をつとめ、ロサンゼルス級では艦長を務めた人。潜水艦管内の描写が精緻を極めるのは当然で、その分、陸上の陰謀のあれこれが相対的にかすんで見えるのは致し方のないところ。大勢の登場人物をからめ、さまざまな思惑が錯綜するが、総じて敵役がしょぼく見えるのは前作と同様。でもいいのだ。これは潜水艦の本なのだ。ないと話にならないから敵役も必要だが、私は海のシーンだけで満足だ。だがひとつ、気がかりなことがある。この巻に出てくるUSS〈マイアミ〉も〈トレド〉もロサンゼルス級の実在の潜水艦。〈マイアミ〉は2014年に退役したようなので、この本が米で出版された時ににはまだ現役だったはずなんだけど、良かったのか、沈めてしまって? 験を担ぐ海の男的にさすがに撃沈はまずいのでは・・・・と、まったく人ごとながらかなり心配になった。うーん、恨まれないだろうか?〈マイアミ〉関係者に。と、(繰り返すが)まったく人ごとながらまことに不安。

 で、ここからは下巻の感想です。
 米国証券市場を舞台とした民間パートの、コンピュータープログラム改竄による証券取引詐欺と市場テロの策動、ずっと軍事パートと交互にやって来たが、まさか最後までストーリーがほとんど交わらないとはびっくりだ。これ、民間パートをバッサリ削っても十分ストーリー成り立つよね、と書いてから、そういや映画はそうだったよな、と。
 軍事クーデターは兎も角、愛国主義とは別物の拝金主義者の魑魅魍魎が蠢く腐った資本主義市場は、老獪とはいえ単純な海軍軍人が泳ぐにはヘドロすぎる。一方、海上でイージス巡洋艦〈アンツィオ〉から指揮を執るジョン・ワード、その弟子たるジョー・グラス、そして小生意気だったのにどんどんグラスに感化されていくグラスの副長エドワーズ。ついでにこちらもジョンに感化される〈アンツィオ〉の艦長、海軍パートはとにかく読んでいて気持ちがいい。
 潜水艦のコースは途中何回も地図で確認。海上の視線から見るヨーロッパの地形は面白い。デンマークは海の要衝。かつて海洋国家として栄えたのもうなずける。で、普段メルカトル図法の地図ばかりみていると特に極地は距離感が狂うので、グーグルアースも活用。今回ロシア潜水艦隊はバルト海と白海の二手に展開したわけだが、モスクワを狙うとして、危険を冒してバルト海に潜り込む価値はあったのかな、とちょっと疑問に思った。モスクワまでの直線距離はバルト海、白海いずれも1000キロ超で似たり寄ったり。仮にバルト海からのモスクワ攻撃が成功したとしても、そのあと西側諸国の軍に囲まれるのは目に見えているわけで、素直に白海から攻撃仕掛けたほうが勝算はあったのでは?
 フィヨルドの戦闘、そしてバルト海の戦いは、映画に比べてもちょっとあっさり風味だったけど、十分堪能できた。面白かった。

 映画の方の『ハンターキラー潜航せよ』は尺に合わせて証券詐欺パートはバッサリ削り、潜水艦もロサンゼルス級ではなく、バージニア級〈アーカンソー〉に変更。 細かいところは良く分からないが艦尾のスクリュー周りのデザインがかなり違う。ロシア駆逐艦〈ヤヴチェンコ〉が単なる敵艦ではなく、ラストに乗員の意思でアーカンソーを守ってクーデター派に対抗するなど、渋い展開となる。私はこの映画が大好きだが、アメリカではあまり受けなかったらしい。ジェラルド・バトラー演じるグラス艦長が、かなり抑制の効いた役作りで、派手な戦闘好みの米国人には静的すぎたのだろうか?
 私は、何度見ても飽きないんだけどね。
 ところで、映画の中に登場するフィスク少将は、胸に潜水艦乗員徽章を付けている。彼は潜水艦隊司令官だったのか。小説ならドネガンとワードを足して割ったくらいの役回り。この潜水艦乗員徽章(ドルフィンマーク)、ドルフィンと言いつつ金のしゃちほこに見えてしまうのは私だけ?だって鱗あるし。。。。こういうことを、手軽に検索できるインターネット時代が本当に有り難いと思う。

2021年11月8日月曜日

0302-03 ハンターキラー最後の任務 上・下 (ハヤカワ文庫NV)

書 名 「ハンターキラー最後の任務 上」 「ハンターキラー最後の任務 下」 
原 題 「FINAL BEARING」2003年
著 者 ジョージ・ウォーレス/ドン・キース 
翻訳者 山中 朝晶 
出 版 早川書房 2020年8月 
文 庫 上巻415ページ/下巻415ページ  
初 読 2021年10月30日 
ISBN-10 上巻4150414688  /下巻4150414696 
ISBN-13 上巻978-4150414689/下巻978-4150414696 
『ハンターキラー東京核攻撃』が出版されたので、あわててこちらに着手する。国内の出版順では、『ハンターキラー潜航せよ』→『最後の任務』→『東京核攻撃』だが、時系列的にはこちらの本が先。『ハンターキラー潜航せよ』で主役の艦長をつとめるジョー・グラスが、この巻では信頼あつい(とはいえまだ発展途上の)副長である。SEALのビル・ビーマンは全部の話に出ているようだ。
 
 この本の主役は攻撃型原潜(ハンターキラー)〈スペードフィッシュ〉。スタージョン級で、実際にジョージ・ウォーレスが副長を務めた艦だというから、思い入れも多かろう。作中では6ヶ月後に退役を控えた古参の艦である。艦内各部の老朽化は如何ともしがたく、機器は故障につぐ故障で機関長を忙殺し、ときに艦長に冷や汗をかかせている。手のかかる艦だけに艦長ジョン・ワード中佐の愛情はひとしお、そして若手の乗組員にとっては厳しい鍛錬の場ともなっている。
 そんな〈スペードフィッシュ〉は、折しも、悪意に満ちた査察に苦しめられていた。危険な査察の続行に抵抗したワードは査察官である大佐と対立。母港のサンディエゴに帰港したのち、艦隊司令官と部隊司令官の前で申し開きをすることになる。維持修理に金も手間もかかる〈スペードフィッシュ〉の退役をあわよくば早めようという官僚的な部隊司令官(大佐)の悪意に思わず激高しかけるワードであるが、艦隊司令官であるドネガン大将が間に入り、おそらくはこれが最後であろうという実戦任務が〈スペードフィッシュ〉に割り当てられることになる。
 (このドネガン大将という人、ジョン・ワードとはずいぶん親しそうな様子なのだが、続巻の『ハンターキラー潜航せよ』(ここでは、ジョン・ワードは准将に昇進している。)では、ドネガン大将は、ジョン・ワードの父の親友で、父と早くに死別したワードの父親代わりともいえる人物だと明かされている。)
 さて、そのドネガンがワードに命じた任務とは、南米コロンビアで麻薬栽培と密輸を原資に反政府闘争を繰り広げるゲリラ組織の壊滅と麻薬撲滅だった。
 国際共同麻薬禁止局(JDIA)の指揮の下、ワードの親友で麻薬捜査官のキンケイドはシアトルでコカインの売人の動向を追い、これも親友で戦友の海兵隊SEALのビル・ビーマンの部隊が、現地アンデス山地に潜入して麻薬栽培地とコカイン精製工場の位置を探り出し、〈スペードフィッシュ〉は発見されたコカイン精製工場に洋上からトマホークを打ち込む、という最後の任務にふさわしい大型の作戦に、思わず心躍るワード艦長である。

 映画『ハンターキラー潜航せよ』の、展開のテンポの良さを期待して読み始めると、著者の濃厚な人物と情景の描写に足をとられる。
 敵方の麻薬組織の指導者の行動やら心情描写やら、現地の情勢や情景にもねっとりじっとりと筆数をかけており、おまけにどれだけ字数をかけても到底その心情に共感できるものではない、という軽快とはいいがたい滑り出し。麻薬王のページに入るたびに、早く潮風をかぎたくなる。それでも、きっと下巻にいくころには良いペースになるに違いないと信じて、我慢の読書である。敵方、味方それぞれの陣営にどうやらスパイが潜入しており、どちらの計画も水がもれている気配がある。麻薬組織側のスパイ《エル・ファルコーネ》の正体にピンときてしまったが、さて、これが当たっているかどうか。下巻を読んでのお楽しみだ。

 で、下巻である。
潜水艦パート、麻薬王パート、現地潜入のSEALパート、シアトルの麻薬密売人パート、密輸ルートパート、麻薬捜査官パート、とと細かく交互に刻んでくるが、さすがに後半に入りテンポアップして、面白さも加速。とはいえ、はやり麻薬王がちょっとしょぼいかなあ。これで敵方が見応えあるとさらに面白いんだが、さすがにこのストーリーでは、こいつを暗黒のヒーローに仕立てるのは無理か。《エル・ファルコーネ》は最初の見立てどおりの正体。これに騙される反政府指導者のしょぼさがやはり際立つ。敵側を悪し様に書かないと、先進国で軍事大国のアメリカが最新鋭の武力で小国のゲリラにトマホークをブチ込み一方的に殺戮する話になってしまう。小説の仕立てとしてはこうなってしまうのは致し方ないところか。


 潜水艦パートは安定の面白さ。ダグラス・リーマンにも共通する、艦内の日常と非日常、トラブル対処と潜航・追跡・戦闘がスリリングである。面白いのが、

“映画でよく見る場面とはちがい、実際にはサイレンで寝棚から飛び起き、潜水艦内を走って配置に就く者などいないのだ。”

 という一文。なるほど、静粛性が命の潜水艦内で、どたばたしすぎてるよなあ、とは思っていた。でも、あれがないと、映画では潜水艦内は絵的に静かすぎてつまらないかも。そういえば、吹き替えにも少々違和感がある。英語版の音声だと、艦内の会話は静か(潜水艦の乗組員とはそういうもの。)だが、吹き替え音声だと声優さんが声を張るので、けっこう会話がデカい(笑)。

 潜水艦艦長ワードは部下思いで有能。一糸乱れれぬ艦内の統率ぶりは読んでいてただただ気もちがよい。
 長期間の単独行動をむねとする潜水艦の艦長は裁量の幅が広く、自立心旺盛でクセがつよい、またそれでこそ有能・・・ということで、意に沿わない指令には断固として抵抗も。
 長官からの指令の無線を電波状態が悪いせいにして聞こえないふりで回線をぶち切る、という古典的なバックレもかまして、ひたすら狙った獲物を追跡する。

「わたしの親父もよく言っていた。〝前もって許可を取れなかったら、あとで許してもらえばいい〟と。」

 と言う艦長に、敬服する副長。この副長がのちの『潜航せよ』の艦長だからね。かくして伝統は受け継がれる。

 さて、老朽艦にお約束の重大な機器の故障も部下の決死の奮闘で乗り越えて、最後の務めを果たすハンターキラー〈スペードフィッシュ〉。麻薬戦争はまだ終結を見ていない段階ではあるが、為すべきことをなし、これ以上すべきこともなくなった、と見立てた艦長は老朽潜水艦を母港に向けるのだ。
 
 ラストは、〈スペードフィッシュ〉の退役式。このあと、解体される、とかはとりあえず考えたくない。すべての作戦と任務を終え、母港の埠頭に静かにたゆたう老朽潜水艦。
 ラストで繋留されている〈スペードフィッシュ〉と対照的に、揚々と出港していく最新鋭潜水艦の姿は、ウィリアム・ターナーの『戦艦テレメール号』の絵を思い出したりして、なんとも感慨深かった。ご苦労様。


2021年11月6日土曜日

ハンターキラー・シリーズ(ジョージ・ウォーレス/ドン・キース)

※Amazonのページからのコピペでまとめ。その都度検索するのがめんどいので。書影でAmazonページにリンク。それと、Amazonだと発行日がKindle版の発売日表示になっていたりするので、著作順がいまいちわかりにくい。邦訳がでている版については、原著の発行年はハヤカワNVより。

Final Bearing (The Hunter Killer Series Book 1) (English Edition) 2003

Commander Jonathan Ward and his crew on the old attack sub Spadefish are on one last mission. A US Navy SEAL team is inserted into South America. Their orders are to destroy the secret laboratories of the world’s most notorious drug cartel, and the Spadefish has been sent to provide assistance.But Juan de Santiago, the violent billionaire drug lord, has an entire private army and a futuristic new mini-submarine of his own. He will do anything to protect his empire. 
★邦題『ハンターキラー最後の任務』
 






Firing Point (English Edition) 2012

Below the polar ice cap, an American nuclear submarine moves quietly in the freezing water, tailing a new Russian sub. But the usual, unspoken game of hide-and-seek between opposing captains is ended when the Americans hear sounds of disaster and flooding, and the Russian sub sinks in a thousand feet of water. The American sub rushes to help, only to join its former quarry in the deep.The situation ignites tensions around the world. As both Washington and Moscow prepare for what may be the beginnings of World War III, USS Toledo—led by young, untested Captain Joe Glass—heads to the location to give aid. He soon discovers that the incident was no accident. And the men behind it have yet to make their final move. A move only Glass can stop.
 
★邦題『ハンターキラー潜航せよ』 



Dangerous Grounds (The Hunter Killer Series Book 2) (English Edition) 2015

A DEA agent investigating the Asian drug trade stumbles upon a deadly plot. A Navy SEAL team is tasked with finding stolen Russian nuclear weapons in east Asia. And a young Naval Academy midshipman becomes trapped aboard a hijacked submarine. Together, this unlikely American team must battle radical terrorists and criminal drug syndicates in the deadliest waters on Earth. For if they fail, a nuclear armageddon will be unleashed upon mankind...
★邦題『ハンターキラー 東京核攻撃』






Cuban Deep (The Hunter Killer Series Book 3) (English Edition) 

Admiral Juan Valdez is the puppet master behind Venezuela's dictatorship. He has spent years modernizing Venezuela’s military while the poor of his country starved. All the while, Valdez was working toward his grand vision of seizing much of Latin America. Now Admiral Valdez is convinced that Bolivia, Columbia, and Peru are all well within his grasp. And when the time is right, he will strike.
But the real key to his victory lies to the north. With the recent discovery of massive undersea oil deposits, he must take Cuba. For oil is money. And money is power.
The crew of the submarine USS Toledo, along with a handful of SEALs and intelligence operatives, have been sent in to protect America’s interests.
But with Russia’s best technology at his disposal, Valdez’s elaborate plot puts the Americans right in the line of fire.

 

Fast Attack (The Hunter Killer Series Book 4) (English Edition) 

A belligerent Russian president seeks to reunite the Soviet Union—beginning with Lithuania. But before the US can send military support, Russia’s navy forces a dangerous face-off in the Atlantic. As a Russian fleet maneuvers into a blocking position, a pair of spies attempts to sabotage the American navy.
With a hurricane bearing down on the Atlantic and the US fleet ordered to port, two American submarines and a small team of Navy SEALs are all that remain. Together, Commander Joe Glass and his fast attack submarines must defeat the Russian forces, or risk losing the global balance of power for good.





Arabian Storm (The Hunter Killer Series Book 5) (English Edition) 2020/06/16

To US intelligence, he is known only as Nabiin.
But his followers call him the Prophet, and they will stop at nothing to follow his orders—orders that will pit the world powers against one another, and bring about his personal vision of the End of Times.
For skipper Joe Glass and his crew aboard the submarine Toledo, thwarting the seemingly unstoppable terrorist plan becomes their new mission.
Pitted in a race against time before countless civilians are killed, and assisted by a team of Navy SEALs, Joe and his crew must use their submarine, their wits, and their bravery to stop a global war...before it’s too late.





Warshot (The Hunter Killer Series Book 6) (English Edition) 2021/05/25

Trillions of dollars’ worth of gold. Enough to launch an ambitious nation to a position of global primacy... permanently.
It lies on the floor of the Pacific Ocean in hotly contested territory, and it's discovery might be the spark that finally ignites a powder keg of long-simmering political and military antagonism.
China races to claim the territory and the gold, but corrupt leaders within the power-hungry nation commit increasingly brazen acts of violence; willing to risk destabilizing the region, and even a world war, for the chance at finally achieving world preeminence.
Commodore Joe Glass and the US Navy move swiftly to intervene. Submarines and SEALs deploy with haste, bringing cutting-edge technology, naval assets, and highly advanced fighting units into an increasingly tense standoff. Their mission: to prevent a global war and to protect the sovereignty and safety of those caught in the middle of the historic power-grab.

But the enormous treasure lies in some of the deepest waters on the planet. Laying claim is only the first step. The gold must be retrieved. And when disaster strikes, adversaries and enemies must come together for one of the most spectacular and dramatic deep-sea rescues ever attempted.


Silent Running (The Hunter Killer Series Book 7) (English Edition)2022/5/17

Biding its time for decades, China has patiently lain in wait for its chance at global dominance. Long content to needle the West while secretly amassing intelligence, technology, and resources, the war chest is now full and the gears of the colossus are grinding into motion.

New arenas of modern battle emerge as China wages an all-out cyber assault on the West. And the more familiar tactics of brute strength play out in its bold attacks against sovereign neighbors. The scope of the Chinese menace draws the US into the melee.

But then US Naval Intelligence learns the true reasons for, and the vulnerabilities of, the Middle Kingdom’s aggression.

Will the men, women, and submarines of America's Silent Service be able to hang on to a tenuous world order...or have the scales already tipped too far?




2020年8月6日木曜日

0213  国王陛下のUボート

書 名 「国王陛下のUボート」 
原 題 「Go in and Sink!」1973年 
著 者 ダグラス/リーマン 
翻訳者 高永洋子
出 版 早川書房 1985年10月

 なんと、英国軍艦Uボートである。英国にとっての幸運と、ドイツにとっての不運が重なり、ほぼ無傷で、拿捕されたUボート。ドイツはこの潜水艦が沈んだとは思っていても、英国に獲られたとは知らない。この僥倖をどう利用すべきか。
 作戦は、大西洋、太平洋を荒らし回るUボート群の補給を担う大型補給潜水艦〈ミルヒクー〉を沈めることから始まる。抜擢されたのは、歴戦の潜水艦乗りスティーブン・マーシャル少佐。
 さてとりあえず今回の据え膳、死んだ親友の妻ゲールがダメだ。地中海で夫の指揮する潜水艦が消息を絶つ。おそらくは機雷。後から帰還したマーシャルが弔問に訪れた時にはすでに再婚して転居済み、相手はエリート士官のシメオン中佐。それなのにマーシャルを呼びつけて、死んだ夫ビルと結婚したのはマーシャルが結婚してくれなかったから、今も私、あなたが好きなの。でも私は家庭が欲しかったのよ。それってそんなに悪いこと?だから今の夫と結婚したの。でもあなたがその気なら・・・・って、なんだこの女?こんなすえた膳食ったら腹壊すって。
 でも、ご安心あれ。ホントのヒロインはもう一人の方。亡命フランス人だが、フランスに残った夫がドイツ軍に協力して新形兵器を作っているらしい。夫と接触し、情報を得るためにマーシャルのU−192に乗って、イタリアへの潜入を図る。今回色事は控えめなれど、英雄気取りはいらないって散々言ってるくせに、彼女を助けるために上陸作戦に及ぶ潜水艦の艦長ってどうなの?でもまあ、これは戦記ではなくて冒険小説だから。。。
 生意気な気取り屋航海長が戦闘中に死ぬのもリーマン的お約束。シメオンとはマーシャルが中佐に昇進して、部下ではなくなった途端に、腕力でぶちのめし、ある種の理解に達したようなのは良かったのか。シメオンの方がどう考えても先任だろうに、階級がそろった途端に殴るはタメ口になるは。行儀の悪い艦長だよ。
 とにかく、ハヤカワにしては珍しくもタイトルで成功していると思うこの一冊。『国王陛下』で時制もOK、意外性でつかみもOK。英国軍にもその存在を知られず、ひとたび海にでれば、英国軍からドイツ軍からも攻撃されかねない、というまさに四面楚歌な状況下で、この見た目も恐ろしい、かつては宿敵であったはずの自艦を愛すべきか、当初気持ちを扱いかねていたマーシャルのラストの台詞が効いている。
 激しい戦闘で回復不能な損傷を受け、微速で航海するU192。放棄するか曳航するか、との英駆逐艦からの問いかけに
 〈国王陛下ノU192ハ、艦隊二復帰スル〉

2020年6月8日月曜日

0203 眼下の敵

書 名 「眼下の敵」 
原 題 「Enemy Below」 
著 者 D.A. レイナー 
翻訳者 鎌田 三平
出 版 東京創元社 1986年11月 
初 読 2020/06/08

 1943年南大西洋。大西洋の戦局は大きく変化している。ウルフパックは連合国側の護衛艦隊に軽空母が加わり連合軍側に軍配が上がった。この話は単騎のUボートと英国駆逐艦ヘカテの一騎討ちである。
 映画『眼下の敵』が騎士道精神に溢れているので(勿論大好きだ)、原作のこの両艦長の捻くれ具合がいささか可笑しい。
Uボートのフォン・シュトームブルグ艦長は貴族らしく高慢だし、駆逐艦ヘカテ艦長のマレルはどこか屈折してる。
 そんな二人が海の中と上で神経をすり減らして頭脳戦を繰り広げる。本文中の要所要所に、戦闘中の航路のプロットが差し込まれているので非常にわかりやすく、勉強にもなった。
 ラストはもはや喜劇だが、これはこれでおもしろい。ボートの上の連中はまだしも、どうやって海中で殴り合いするんだ。 戦っているのは国と国、主義と主義であって、一度戦列を脱したら人間同士に戻れる、と言わんばかりの理想主義あふれる米映画版に比べて、この原作の洞察のシビアなことよ。

「艦長は自分がもう一度、戦争をやり直しているような気になった。」
「ドイツ人とは決して和解できない」
「戦っていたのは人間そのものだったのだ」

 このシビアな洞察。さすが英国人と言うべき? そりゃあEUも上手く行くわけないよな、とほぼ小説とは関係のない感慨を覚えた読後である。 
 英国海軍の伝統らしい、熱々甘々なココアが美味そう。マレル艦長に言わせると、アメリカ人はコーヒーを飲むらしい。英国人でよかった、との事。イギリス人は本当にチョコレートが好きなんだと再確認。

 こちらは、ハリウッド版『眼下の敵』言わずとしれた名作である。主演、ロバート・ミッチャム、クルト・ユンゲルス。駆逐艦は、米海軍ヘインズに変更されている。撮影には米海軍が全面協力し、駆逐艦も爆雷シーンも本物らしいので、文句はいえまい。素晴らしい迫力である。
艦長が時計で時間を計って魚雷をかわす名シーンは何度見ても飽きない。やや、Uボートの中が広くて小綺麗にすぎるかと思わないではないが、クライマックスのUボートの魚雷攻撃、捨て身の欺瞞作戦、退艦命令、体当たり攻撃からの、Uボート上の負傷者救出、そして最後の水葬シーンまで、以後の駆逐艦戦モノの原型全てが詰まってるといっても過言ではあるまい。


 駆逐艦ヘインズが魚雷で致命傷を負ってから、機関長が艦内通話で「まだ2番ボイラーから蒸気が取れます」と艦長に告げるシーンが好き。私の機関長好きの原点も此処にある。

2020年6月5日金曜日

0202 駆逐艦キーリング(映画「グレイハウンド」原作)

書 名  「駆逐艦キーリング」新訳版
原 題 「The good shepherd」1955年
著 者 セシル・スコット・フォレスター
翻訳者 武藤 陽生
出 版 早川書房 2020年5月

 第二次世界大戦。1942年大西洋。Uボードの襲撃から身を守るべく、輸送船37隻が船団を組み、その船団を4隻からなる連合国艦隊が護衛する。護衛艦隊を指揮するのは米駆逐艦キーリングの艦長ジョージ・クラウス。海軍に20年籍を置き、13年は艦上で過ごした41歳の中佐はしかし、実戦においては事実上の初陣。第二次大戦が勃発し、すでに英独は大西洋で熾烈な海戦を繰り広げていたが、アメリカは1941年の真珠湾攻撃をもって、ついに参戦したからである。
 大西洋の真ん中に、航空支援の届かない〈キリング・フィールド〉がある。この海域でドイツUボートは群れを成して輸送船団を待ち受け、護衛艦達は船団を守って熾烈な戦闘を闘い抜かなければならない。
 最初の接敵から50時間。
 ノンストップで戦闘指揮を続けるクラウスとひたすら緊迫した時間を共にする。
 疲労が蓄積し、僚艦は見えず、無線機のスピーカーから聞こえる会話のみ。ほぼ全編が狭い駆逐艦の艦橋のなかで進展する。
 羊の群れを取り囲む飢えるオオカミの群れのようなUボートは実に6艦。見えない闇に目を凝らし、敵の思考を読み本能を推測する。敵と味方の距離、方角、深度を予測し、合理的な攻撃位置を割り出し、機雷到達時間を差し引き秒単位での戦闘指揮。艦長クラウスの頭の中には大量のモノローグがあふれているが、指揮は簡潔で平静である。当直士官は次々に交代していくが、クラウスは船団の命運を双肩に負ってひたすら指揮を続ける。
 兵の交代から食事まで目を配り、ついでに飲まず喰わず、暖を取らずの艦長の世話も焼く女房役の副長の存在に、にクラウスと一緒に読んでいるこちらもほっとする。
 戦闘指揮だけでなく部下を育てる指導者としても立派である。
 激戦中でも部下の行動を観察し、不適切な言動はその場で指導し功績は必ず誉める。失敗には次のチャンスを与えて自信を付けさせる。こんな上司の下で働きたい。いや、年齢考えたらこんな上司になりたいと思わなくてはならないのか?
 コーヒー、サンドイッチ、コーヒー、コーヒー。『栄光の旗のもとに』(ハヤカワSF文庫・2017年刊・P.H.ホンジンガー著)マックス・ロビショー艦長には、海軍中佐ジョージ・クラウスの血が流れているに違いない。少なくとも『栄光の旗のもとに』が海洋冒険小説の直系であることは間違いないとの確信を得る。私の愛する男がまた一人増えてしまった。『鷲は舞いおりた』以来の読書経験である。これは素晴らしい。ホーンブロワーシリーズと違って、ジョージ・クラウスはこの一冊だけらしいが、1945年のWWⅡ終結まで、ジョージ・クラウスの指揮する船が善戦して生き延びてくれることを心から願ってやまない。