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2022年2月11日金曜日

0328 フェア・チャンス (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「フェア・チャンス」 
原  題 「FairChance」2017年 
著  者 ジョシュ・ラニヨン 
翻  訳  者 冬斗 亜紀 
出  版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫)  2020年1月 
文  庫 407ページ 
初  読 2022年2月8日 
ISBN-10  4403560407
ISBN-13  978-4403560408

「イエス」
「イエス?それって−−−−−−俺たち、同じことを話してるのか?」
 エリオットは微笑んだ。

 こういう選択肢が普通にある世の中っていいな、と思った。もちろん、ナチュラルにこういう世の中の考え方が生まれた訳ではなく、あの激しい社会の中で、長年闘って勝ち取ったものではあるのだろうけど。

 それはさておき、エリオット&タッカーの3作目、M/Mロマ・サスである。
 シリアルキラーの彫刻家(スカルプター)事件で、刑務所に収監されている犯人コーリアンは、犯行の一部始終について口を閉ざしたままだった。ところが、いまだエリオットに執着するコーリアンは、エリオットに面会を要求する。
 黙秘をつづけるコーリアンがエリオットになら捜査に有力な情報を漏らすのではないか、と期待した捜査チームはエリオットに協力を求め、捜査チームのリーダーを務めるタッカーは、チームの意志を尊重しつつも複雑な気持ちを抱えながら、エリオットの心身の安全を気遣っている。夜中に事件の悪夢にうなされることもあるエリオットを知るのは、タッカーだけだ。

 前作の父絡みの事件で逮捕されたノビーの減刑のための証言に協力するか否か、で父との関係はギクシャクしたまま。タッカーは母との週末を過ごす為に、不安を抱えつつもエリオットに励まされて送り出される。

 不安感をそそる、小さな事件や、遭遇の積み重ね、そんな中でも二人の平穏な時間があり、もちろん熱い時間もあり、お互いを思う気持ちや理解も深まっている。

 そして、母に会いにいったタッカーとの連絡が途絶えてしまう。

 失踪したタッカーを探すエリオットの焦燥は深まるが、少々関係が悪くなっていた父の思わぬ理解と援助が温かい。それに、最初はというか1作目からとてつもなく態度が悪かったパイン刑事や、どうにも敵愾心が見え見えだったヤマグチ捜査官の親身の協力にも励まされる。エリオットの必至さと熱が周囲も溶かしていくようだ。

 エリオットのFBIへの復職話、二人の結婚話、そしてコーリアン、と不吉な予感と新たな展開への期待が嫌が応にも高まる。
 これ、3部作で終わりなの? 
 いや、4作目、読みたいよね!
と大いに期待感を膨らませつつも、大変満足度の高い一冊でした。

0327 フェア・プレイ (モノクローム・ロマンス文庫)

書  名 「フェア・プレイ」  
原  題 「Fair Play」2014年 
著  者 ジョシュ・ラニヨン 
翻  訳  者 冬斗 亜紀 
出  版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫)  2016年12月 
文  庫 401ページ 
初  読 2022年2月8日 
ISBN-10  440356030X
ISBN-13  978-4403560309
 ううむ面白かった。
 ミステリ・バディ物として十分イケる。ちなみに濡れ場込みなら読みどころたっぷりのM/Mロマ・サス。いろんな意味で実においしいシリーズの第2作です。
 今回はかつて赤ん坊だったタッカーを棄てた母が登場し、タッカーの孤独の一端が明かされる。
 母は、当時、麻薬に溺れていたらしいが、立派に(?)更生し、再婚した夫と一緒に登場。しかし、二人の様子はなにやら宗教的に凝り固まった印象で、どうもキリスト教原理主義系の新興宗教にはまっているイヤな予感がする。これ、ぜったいにタッカー巻き込まれるよね。「あなたの彼女に会いたいわ」という母に、エリオットを引き寄せて、自分はゲイでエリオットは親友というだけでなく、パートナーだ、と言い放つタッカー。あいかわらず真っ直ぐで男らしい。動揺や、困惑すら男らしい。(笑)

 エリオットの方は、父の若かりし革命家時代の因縁に巻き込まれる。父の(エリオットにとっては子供時代の母との思い出も詰まった実家)が放火で全焼。エリオットの家に避難した父とエリオットが散歩しているところを今度はボウガンで狙撃される。父は回顧録の出版準備をしており、どうやらその本が世にでることを臨まない人間が多数いるらしい。父を守りたいエリオットは捜査を開始するが、昔の仲間との内輪の問題ととらえる父ローランドはエリオットの介入を好まず、行方をくらましてしまう。だからといって、すんなり気持ちが収まるエリオットであるわけがなく。獲物を加えたらブルドッグ並みに食らいついて離さない執念で、父の行方を追跡する。
 エリオットを心配するタッカーと、FBI捜査官としてのタッカーの立場を慮るエリオット、お互いに嘘はいわないが、相手に手渡す情報をコントロールしようとして、「相手を信用していない」という命題に突き当たりジレンマから関係が拗れまくる。このあたり、あたまの中でとことん論理的に考え尽くし、相手と正面から議論しようとする二人に、日本との文化の差を感じたりもする。だがしかし、体の欲求は頭を裏切って・・・・・、というのはやはりソレ(笑)これは日米共通(笑)。でもこの二人の恋愛は良いね。エリオットに正面から敢然と向き合うタッカーに、エリオットならずとも心を奪われるよ。
 人を信頼するとは、というシンプルな命題に頭でっかちにどろどろと取り組むエリオットには、とりあえず頑張れ!と応援する。

  日本だと三親等くらいに犯罪者がいると警官になれないとかなかったっけ? 親が反政府活動家で革命家、別名元テロリストでも息子はFBIに入れるのか。小説だから?それとも自由の国だから? とはいえ、60−70年代はみんなが革命家だったのかもしれない。ベトナム反戦運動、ヒッピー文化、そんなアメリカの歴史的な流れを追う作品の空気感も雰囲気も良かった。

0326 フェア・ゲーム (モノクローム・ロマンス文庫)

書  名 「フェア・ゲーム」  
原  題 「Fair Game」2019年 
著  者 ジョシュ・ラニヨン 
翻  訳  者 冬斗 亜紀 
出  版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫)  2013年2月 
文  庫 448ページ 
初  読 2022年2月8日 
ISBN-10  4403560113
ISBN-13  978-4403560118
 いままで、あえて近づかなかった禁断の境地(?)。日本だとこざっぱりしたBL系だが、米国版のペーパーバックの表紙はなんつーか、オスの体臭が匂ってきそうなギラギラしたゲイ物だ。カノ国ではM/Mっていうジャンルに分類されるらしい。ハーレクインのホモセクシャル版かな?

 にしてもだ。この作家さん、ミステリ作家としてかなりの手練れだと思う。捜査もの、バディ物としてかなりの出来だ。面白い。ミステリの骨格がしっかりしているし、FBIや市警の面々、主人公をとりまく人々、脇まで登場人物のキャラが立っている。舞台となるワシントン州シアトルとその周辺の描写も良い。それになにより主人公の二人が魅力的だ。先に読んだジェイソン/サムとはまた二人の関係性が違ってるのも飽きが来なくて良い。

 裁判所での銃乱射犯を追い、犯人を射殺したものの、自分は膝を撃ち抜かれてFBI退職を余儀なくされたエリオットは、痛む足を労りながら大学で教鞭を執っていた。そんな彼の身辺で学生の失踪事件が発生し、その親からFBIとの連絡役を頼まれる。しかし相手のFBI特別捜査官は、かつて負傷し、過酷な治療と再起不能の失意の中にいたエリオットを捨てた男だった?
 やがて、当初はFBIも自殺と見做した失踪事件は連続殺人事件に発展、エリオットが標的にされて。
 ・・・キャラ立ても舞台もストーリーも十分読み応えがあるが、そこはなにしろM/Mって事で、エリオットのツンデレぶりと、ぶきっちょなタッカーの真っ直ぐな愛情の行き違いが滅法楽しい。 何しろ二人とも生真面目。
 この作者の本は、書店のBLコーナー(コミックスの隣だ。)にあるわけだが、ストレートの濡れ濡れ本はちゃんと小説棚にあるのに、差別じゃね?と思ったりもする。うん。この本は、ミステリとしても、ロマン・ポルノとしても、ちゃんと小説棚に並ぶ資格があると思うよ。なにを持って資格というのか私にもわかならいけど。