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2021年4月18日日曜日

0264 危険な男 (創元推理文庫) —コール&パイク18

書 名 「危険な男」 
原 題 「A Dangerous Man」2020年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋恭美子 
出 版 創元推理文庫 2021年1月 
文庫 480ページ 
ISBN-10 448811508X 
ISBN-13 978-4488115081 
初 読 2021年4月18日
「エルヴィス・コール探偵事務所、いまならひとつ分の料金で手がかりがふたつ。割引料金あり」
「手を貸してくれ」
コールの声が真剣になった。
「なんなりと」

 ジョー・パイク主役ものであっても、C&Pな由縁。パイクに手が必要になればコールが全力を尽くすし、コールに支援が必要であれば、パイクが駆けつける。すでに30年来の友情を「依存しあってる」と言い切っちゃうドレイコよ。それを言っちゃあおしまいじゃないか。あなた、思いっきり株を下げたよね。

 パイクは、酒乱の父親の暴力に晒されて育ち、コールは精神疾患の母に振り回されて、ついには捨てられた心理的虐待の過去を持つ。(公的な児童養護の世話になって育った経歴がハリー・ボッシュと共通するのは、過去にレビューでも触れたところ。)コールとパイクの二人がいかに過去の軛を受け入れ、乗り越えてきたか、については未訳の『L.A. Requiem (1999)』から『The Forgotten Man (2005)』までの翻訳刊行を大いに期待したい。それぞれが欠損をかかえた存在ではあるが、自分の人生で欠けた部分に向き合って、努力と奮闘で乗り越えてきたことが、お互いを信頼し尊敬する由縁。それを依存といわれちゃあね。

 さて、今作では「主役」パイクのエピソード多数。なかでも、彼が国防省のTS/SCI取扱許可証を持っている。というくだりは初耳。国防省の信頼の証し。国防省やCIAの請負仕事を数多くこなしてきた、という過去は、これまで邦訳ではあまり出てこなかった。ちらりとコートランド・ジェントリーを思い出す。大先輩だね♪ やっぱり、ジェントリーはロスでパイクの助力を求めればよかったんじゃないかと・・・・・(脱線)

 さて、本筋にもどろう。
 パイクが銀行に立ち寄ると、偶然にも銀行員の女性が白昼車に連れ込まれて誘拐される場面を目撃してしまう。追跡して難なく彼女、イザベルを救出。
「もう大丈夫だ。いま助けだす」 ああもう、助けてパイク!私も!とおねだりしたい。
 そのイザベルが、再度誘拐され、これは市中の捜査が必要、とみて、パイクはコールに助力を要請。それが冒頭のやり取り。コールの緩急の切り替えに悶える。

 さらに、イザベル救出の際、防弾ベストの上からとは言え、二発撃たれた衝撃で負傷しているパイクの着替えを手伝うコールに更に悶える。
 着替えのTシャツを、どうやったら痛みが少なく袖を通せるか、と思案するパイクの手からTシャツを黙って取り上げ、頭からかぶせて、パイクがゆっくりと腕を通せるよう、シャツを支えるコールは、さすがに気遣い上手である。て、いうか、どこにも語られちゃいないが、『The Forgotten Man』でコールが大怪我を負った後では、パイクの方が何くれとなく世話をしてやったんだろうな、とか妄想して、一人で勝手に悶える。とにかく、大好きなシリーズで、大好きな人達なので、いちいちページを繰る手がとまって妄想タイムが差し挟まり、読むのに時間がかかること甚だしい。
 無防備で敵の屋敷に侵入して銃撃戦で胸を撃たれたり(『モンキーズ・レインコート』)、全身を拳銃とサバイバルナイフで武装した状態で市中で警察に拘束されて、「戦争でもやるつもりか」と言われた(『ぬきさしならない依頼』)、シリーズ初期のころの描写と比べると、パイクの、ではなく著者の進化にもなんだかニヤニヤさせられる。最初の頃は、ベトナム帰還兵の社会不適合者としか思えなかったパイクも、いまでは米国政府の信任も厚い軍事請負人で、オーダーメイドの防弾ベストを常備し、市中では銃の所持に気をつかう立派な社会人に変貌している。戦争帰りの元軍人のイメージも情報量も、ランボーからだいぶ進化した。

 で、まあ今回保護の対象となった女の子二人が、あろうことかメールで居場所を教え合っていたらしい、とか、言語道断だったりするものの、そこはあえてさらりと受け流し、救出のため、連邦保安官やロス市警の刑事と連携しての突入作戦。場所は映画監督ピーター・アラン・ネルソンの別荘。ああ、豪勢な屋敷が殺戮の舞台に・・・・・でも、まあ、コールのやることであれば、ピーターは許してくれるだろう。次の映画のネタにされるかもしれんが。
 パイクとコールの息の合った突入作戦、自然と連邦保安官も主導するパイクの指揮官ぶりも素敵。ストーリにさほどひねりがないのはいつものことで、いいのだ、これはコールとパイクの友情とひととなりを悶え楽しむ本なので。。。。(爆)


2021年4月17日土曜日

ロバート・クレイス作品一覧(4/18更新)


ロバート・クレイス作品一覧 
  (1989年 新潮文庫)  The Monkey's Raincoat (1987)
  (1992年 新潮文庫)  Stalking the Angel (1989) 
  (1994年 扶桑社ミステリー)Lullaby Town (1992) 
  (1996年 扶桑社ミステリー) Free Fall (1993) 
  (2000年 扶桑社ミステリー) Voodoo River (1995) 
  (2000年 扶桑社ミステリー) Sunset Expres (1996) シェイマス賞長編部門受賞 
7 Indigo Slam (1997)        コール&パイク7
8 L.A. Requiem (1999)     コール&パイク8
11 The Last Detective (2003)   コール&パイク9
12 The Forgotten Man (2005)  コール&パイク10
13 The Two-Minute Rule (2006) 
14 天使の護衛(2011年 RHブックス・プラス) 
  The Watchman (2007)   コール&パイク11(ジョー・パイク1)
15 Chasing Darkness (2008) コール&パイク12
16 The First Rule (2010)    コール&パイク13(ジョー・パイク2)
17 The Sentry (2011)         コール&パイク14(ジョー・パイク3)
18  Taken (2012)                コール&パイク15(ジョー・パイク4)
19 容疑者(2014年 創元推理文庫) Suspect (2013)  (スコット&マギー1)
20 約束(2017年 創元推理文庫) The Promise (2015) (スコット&マギー2)コール&パイク16
21 指名手配(2019年 創元推理文庫) The Wanted (2017)   コール&パイク17
22 危険な男(2021年 創元推理文庫) A Dangerous Man(2020)コール&パイク18(ジョー・パイク5)
23 Racing the Light(2022)  コール&パイク19
24 The Big Empty(2025)    コール&パイク20

2020年5月1日金曜日

0197 The Forgotten Man (Cole & Pike) (Cole and Pike Book 10)

書 名 「The Forgotten Man (Cole & Pike)」2005年  
著 者 Robert Crais 
初 読 2020/05/01

 LAレクイエムから続く三部作(だと思ってる)のラス1。
 コールの過去にまつわる最大の危機。
 『サンセット大通り』でコールに「スーザン・マーティンの殺害とそこから派生したあらゆることが、自分の人生にこれほど長く尾を引く深刻な打撃を与えようとは」と語らせ、『天使の護衛』ではある男に散弾銃で撃たれた後のコールが「実験室の事故で生まれた何か」のような姿で登場する、その原因となる事件が語られる。
 コールが過去と向き合い、乗り越えるためにはこんなに過酷な過程が必要だったのか。『約束』や『指名手配』で示されるコールの優しさに加わった確固とした揺るぎなさや安定感、円熟味は、このエピソードでコールが乗り越えた過程で獲得したものだと納得できる。そんなお話。以下簡単にご紹介。

 10歳になるルーシーの息子の誘拐事件でほとんどすべてを失ってから、コールがゆっくりと生活を取り戻しつつあったとき、 LAPDから不吉な電話がかかってきた。発見された身元不明の遺体が持っていた唯一の手掛かりが、コールの過去の事件の新聞記事の切り抜きだったという。 そして、その男は死ぬ前に自分がエルヴィスの父親だと言い残した。パイクとコールは調査を進める。しかしコールとパイクが死んだ男の本当の正体に近づにつれ、彼らは危険の中に入り込んでいた。ーーーコールが撃たれてから命をとりとめるまでの終盤と、コールがやっと動けるようになった体で母を墓参する最終章。ずっと付き添い、見守るパイク。この二人の友情を超えた友情に、心が震える。

2019年5月12日日曜日

0177 指名手配 (創元推理文庫) —コール&パイク17

書 名 「指名手配」 
原 題 「The Wanted」2017年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋 恭美子 
出 版 創元推理文庫 2019/05/11 
初 読 2019/05/12 

 まず登場人物欄をチェック。スコットとマギーは登場しない。知ってたけどやはり残念。これは念願の待ちに待ったC&Pの新刊である。と思いきや、なんだか訳ありそうな二人組がいきなり登場、その名もハーヴェイ。今回は2対2か?

 かつては電話が仕事道具だったコールも今や事務所のウェブサイトを持っている。フェイスブック、ツイッターなんて言葉も出てくる。コールが時代の変化にちゃんと乗っかっていて嬉しい。
 可愛げ皆無な同居人(猫)も健在。
 前作から関係が続いているヘスにご飯をねだられ、せっかく厚切り子牛肉を仕込んでいたのに突然の予定変更。料理の手順も肉を焼く音も完璧!しかしご相伴はいつもと同じやぶにらみの猫。ワクワクのディナーが一人メシに転じて、コールの人恋しさはひとしお。自ずと依頼者の母子家庭と自分の境遇を重ねて物思いが募る。

 私は子供が好きで、いい父親になれると思っていたが、自分の子供はいない。ルーシーの息子ベンは息子のように愛しい、「やっぱりあの父親を殺しておくべきだった」
 おいおい。まあ、C&P9作目『The Last Detective 』(日本未訳/創元さんお願い!!)の経緯を考えればいたしかたない。「私には子供がいない。猫が一匹いる。」いきなり序盤にこんな叙情たっぷりなシーンをブチ込んでくる著者クレイスの鬼畜っぷりは健在。コールファンとしては胸が掻きむしられるところ。

 最終章ではそのベンが登場、これは読者サービスかな?
 ベンはルイジアナ州立大学の大学生になっていて、背丈はもうコールと同じくらい。コールの影響を受けてかは知らないが、武術を習っている。親子にはなり損ねた二人が重ねてきた時間をしばし想像する。
 
 ところで彼の同居猫がコール35歳の時にはすでに貫禄のある成猫だったことはシリーズ愛読者公然の秘密♪あと数年生きれば立派な猫又です。

2017年9月2日土曜日

0052 The Last Detective (Cole and Pike Book 9)

書 名 「The Last Detective (Cole and Pike Book 9)」  2003年 
著 者 Robert Crais 
初 読 2017/09/02 

 『L.A.Requiem』に続くC&Pの9作目。
 冒頭から惜しげも無くコールの過去が明かされるこの話、コールの過去をほじくり返していたぶる作者クレイスが相当な鬼畜っぷりだ。メンタルやられっぱなしのコールが読んでいて可哀想すぎて、胃のあたりがきゅーっとなってくる。
 でもヴェトナムでコールと同じ小隊に属し作戦中に戦死した親友の父がコールを労ってくれたり、陸軍基地で働いていた海兵隊の退役軍曹がコールに良くしてくれたりで、少し気持ちが救われたりもする。このアメとムチ感がまた、クレイスらしく感情を揺さぶってくる鬼畜っぷりだ。また、事件担当の少年課刑事としてキャロル・スターキーと鑑識のチェンが登場。
 なお、作中でマイクル・コナリーのボッシュが友情出演している。ちなみに、コールのほうは、ボッシュシリーズの『暗く聖なる夜(下巻)』に友情出演している。どこかよそのレビューでも書いたけど、この二人は住まいも近いのだ。コールは、ウッドロー・ウィルソン・ドライブのマルホランド・ドライブからハリウッド側の南斜面に下ったあたりに居を構え、ボッシュは同じウッドロー・ウィルソン・ドライブの、マルホランド・ドライブ(尾根)を挟んで反対側の、スタジオシティを望む北側斜面に住む。ボッシュの家の前はコールのランニングコースで、かつてロス大地震のあと、シャツを脱いで自宅前で瓦礫の片付けをしていたボッシュを、通りかかったコールが黙って手伝った、というエピソードがこの本で紹介されている。
 その時ボッシュが上半身裸だったので肩の入れ墨があるのが分かり、コールはもともとロス市警で見かけていた刑事がヴェトナム帰りだということに気づき、密かな敬意を抱いていたのだ、と。
 ちなみに、ボッシュは1968年から、コールは1970年からヴェトナムで従軍している。ふたりとも陸軍。ボッシュは第一作にあるとおりトンネル兵だった。コールはこれまで邦訳本で「特殊部隊」と書かれていたので、グリーンベレーか?と思っていたが、この作品でレンジャー部隊だったことが判明。以下、邦訳シリーズ読者向けにあらすじ公開につき、ネタバレ御免。嫌な方はスルー推奨。

 5日間の予定でコールの家に泊まりに来ていたベンは、こっそりコールの私室に忍び込んで宝物探しをする。
 コールの私室には古いSF映画とホラー映画の素晴らしいコレクションがあって、コールはいつでもベンに観せてくれたが、ベンはもっと凄い何かを見つけたかったのだ。ベンはクロゼットの上段に隠してあった箱を発見する。 中にはメダルケース5個と連隊記章、色褪せた写真が入っていた。これだ!とベンは興奮するが、そこでコールに見つかってしまう。
 こっそり私物を漁ったことを反省しつつも好奇心を抑えられず、ベンはコールを質問攻めにする。
 シルバースター勲章が2個とパープルハート勲章(名誉戦傷章)があった。写真の人物の肩にはRANGERのタトゥー。コールはレンジャーとは兵士の一種だとベンに説明する。レンジャーは何をするの?と尋ねるベンに腕立て伏せをするのさ、とはぐらかすコールは言葉すくなだった。
 コールはベンにシルバースターのうちの一つを与える。
 この数日後、ベンが誘拐された。

 ベンを探し回るコールの元に1回目の脅迫電話が掛かってくる。犯人は「5−2」「これは報復だ」と告げる。5−2はコールが所属した偵察隊のナンバーだが、この小隊はコールを除いて全員戦死していた。
 事件の連絡を受け、ルーシーの元夫であるリチャードが乗り込んでくる。彼はコールを口を極めて非難する。コールは穏やかに受け流す一方、家の周囲でベンが連れ去られた痕跡を調査した。調べるにつれ、かつての自分と同じような戦闘経験を持つ人間の犯人像が見えてきて不安を強めたコールは、パイクに応援を求める。2回目の脅迫電話。犯人は「これは報復だ。彼は26人の民間人を虐殺した。仲間は口裏を合わせたが、コールは彼らを信用せず、殺した」と告げる。
 リチャードはコールの過去を調べ上げ、彼が少年時代、暴行傷害・自動車窃盗などの罪で刑務所に入る代わりに従軍したのだ、とルーシーに暴露。コールは秘密にしていたわけではない、とルーシーに言う。ただ不遇だっただけだ、と。ルーシーはコールを信じる、と言うもののベンのことで追いつめられており、コールの心情に配慮する余裕はなかった。
 ベンをコールに預けたのは間違いだった、とルーシーは言い、コールに捜索から手を引くよう求める。「君とベンは僕の家族なんだ」と訴えるコールに「いいえ、貴方は私達の家族じゃない」とルーシーは答える。ひとり、車の運転席で涙を流したコールを遠くから見守っていたのは、パイクだけだった。
 
 犯人が自分の陸軍の人事記録を入手したのではないかとコールは疑う。人事記録は秘匿されているので、入手する方法は限られている。その履歴から、意外な線が浮かび上がってきた。スターキーとジョンの捜査で実行犯が割り出され、やがて事件の全容が見えたてきたが。。。。

 謎解きは『容疑者』レベルのあっさり感。それよりも回想シーンで4人の戦友を失う戦闘シーン(コールが親友アボットの遺体を守り抜く)、母がコールの名前をエルヴィスに変えた出来事や、戦友に父の事を聞かれ「知らない」と答えるシーン、アボットを生きて連れ帰れなかったことを詫びるコールにアボットの父が、いや、連れて帰ってきてくれた、とコールを労るシーンとか、これでもか、と心を揺さぶられる。ちなみにアボット家にはエルヴィスという名前の孫がいるらしく、すこしだけほっこりする。

 コールは死闘の末、ベンを取り戻す。しかし、ベンのために静かで安心できる環境を取り戻すことを最優先したルーシーは、ベンと共にルイジアナに去ったのだ。
 
C&Pのペーパーバックは何種類も出ているが、このシリーズの表紙が一番好き♪

2017年8月30日水曜日

0051 L. A. Requiem (Cole and Pike Book 8)

書 名 「L. A. Requiem (Cole and Pike Book 8)」
1999年 
著 者 Robert Crais 
初 読 2017/8/30

 この本を巡る国内状況について。Robert CraisのC&Pシリーズは、1作目『モンキーズレインコート』から『指名手配』まで17作が発表され、そのうち日本で出版されているのは1作目から6作目『サンセット大通りの疑惑』までと11作目『天使の護衛』の7作品と、16作目『約束』、17作目の『指名手配』の計9作品。このうち『約束』は日本では警察犬マギーとスコットの続編として発行され、『約束』を読んで、初めてコール&パイクシリーズに関心を持った日本の読者も少なくないはず。因みに本作は8作目。
 だがこのシリーズ、本邦未訳の7作目『Indigo Slam』から10作『The Last Detective』までの4作は名作として誉れ高い。コールとパイクの、お互いに対する堅い友情と献身が刻まれているのこの作品群を読まずにいるのは、あまりにも惜しい。そこで、無理を承知でペーパーバックを入手した。(私は英語力が低い。)でも辞書を引くのが面倒だったので、読んだのはもっぱらKindleで。ありがとう辞書機能。以下ざっくりあらすじ。

 ルーシーがロスに引っ越してきた。コールが引越しの手伝いに精を出していると、パイクから呼び出しがかかる。友人のトラブルに手を貸して欲しいという。パイクがプライベートのトラブルを持ち込んでくるのは例のない事で、訝しみながらもコールは駆けつける。パイクはコールをフランク・ガルシアと引きあわせる。トラブルとは彼の一人娘であるカレンの失踪だった。ガルシアから、パイクがカレンのかつての恋人であり、いずれパイクは自分の一族に加わると思っていた、と聞かされたコールは驚く。
 捜索を始めて程なく、カレンが死体で発見され、事態は犯人の捜索に移るが、犯人がパイクを偽装したことによって殺人の容疑はパイクに向けられる。

 終盤、パイクは銃撃戦で重傷を負ったまま姿を消す。逮捕されれば残る人生を刑務所で過ごさなければならない、と言うパイクをコールは敢えて逃がすが、パイクはだれもが失血死を予期するほどの傷を負っていた。また、コール自身も跳弾によって負傷する。コールは病院で応急手当を受けるが、医師は肩の手術が必要だと言う。 翌日、コールは顧問弁護士のチャーリーに伴われ市警本部に出頭する。殺人犯(パイク)の逃亡を教唆・幇助した罪を受け入れてコールは犯罪者となり、私立探偵のライセンスを失うのは確実となった。それを受け入れたのは、自分の法廷闘争に拘っていてはパイクを捜索する時間が失われるからだった。翌日、肩の再建手術を受け、退院するとすぐに、コールはパイクを探し始めるが消息はつかめない。事件の渦中にあってコールはルーシーとだんだん疎遠になっていく。やがてコールの事務所に探偵免許と銃器所持許可を剥奪する州からの公式通知が届く。
 
 ガルシアがコールを夕食に招待した。ガルシアがコールに渡した封書の中には、コール名義の私立探偵のライセンスと武器の携帯許可証が入っていた。ルーシーがコールのライセンス回復の為に、コネのあるガルシアに働きかけていたのだ。「我々は君を愛している」「そしてあの美しい女性も、君を愛している」ガルシアは言う。コールは声をあげて泣く。自分の為にではなくパイクのために。
 失踪していたパイクの居場所が分かり、コールはその場所に駆けつけるが、その後からロス市警のSWATが到着し、ライフルが二人を取り囲む・・・。

 個人的には銃撃戦の後、病院で応急手当を受けたコールがやっと家に帰り、ためらいつつルーシーに電話を掛けるシーンがツボ。ダイヤルするだけでも傷が痛む、と思いつつルーシーの声を聞きたくてコールは電話をする。しかしルーシーは必ずしもコールが期待した優しい声を掛けてはくれない。体の右半分が全部痛む。「傷が痛いんだ」と言ってしまえ!と思うが、そういう言葉が出てこないのがコール。電話のあと黒猫がやってきてコールの包帯を舐める。恋人がいても、やっぱりコールをなぐさめてくれるのは黒猫だけ。コールの根深い孤独が垣間見える。

2017年8月22日火曜日

0050 ヒーローの作り方―ミステリ作家21人が明かす人気キャラクター誕生秘話

書 名 「ヒーローの作り方―ミステリ作家21人が明かす人気キャラクター誕生秘話」 
著 者 オットー・ペンズラー  
翻訳者 小林 宏明
出 版 早川書房  2010年8月
初 読 2017/08/22

 ひとまず、冒頭のケン・ブルーウン、ロバート・クレイス祭りの流れでクレイス/コール&パイク、私にも馴染みのある数少ない主人公の一人であるリンカーン・ライムの章だけ読んだ。
 それ以外はまた後ほど。
 読んだこともないのに、ブルーウンが面白すぎて爆笑。リンカーン・ライムは短編小説になっていてちょっと得した気分。
 コールは一人称が「おれ」になっていてかなりの違和感あり。「わたし」か「僕」の方が良いなあ。パイクのパートは素晴らしい!の一言に尽きるけど、ある意味、人物の種明かしなので、人によっては読まないほうがいいんじゃないかな。とも思った。
引用 「わたしは人間を描く。わたしが達成感を味わうのは、意表を突くプロットを思いついたときではなく、キャラクターの陰影が読者を共感させたり、感動させたり、夢中にさせたりしたときだ。(中略)人間を深いところで理解したと思ったときのほうが、喜びは大きい」「私が書いているのは、(中略)人間のまったき理解の仕方なのだ。」
 完全に同意。私は読んでいて入り組んだ謎解きよりも、登場人物の存在の理解に力が入る。クレイスとは相性がいい。でも、パイクの造形ついて、あまり詳しく解説しないほうがいいんでない?と思わないでもなかったのだ。

2017年8月19日土曜日

0049 サンセット大通りの疑惑 探偵エルヴィス・コール

書 名 「サンセット大通りの疑惑 探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「Sunset Express」1997年 
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 高橋玖美子 
出 版 扶桑社 2000年3月
初 読 2017/08/19

 C&P6作目。
 純なコールが迂闊にも強者の悪意に騙される。
 それだけだと読むのがツラいが、ルーシーとの恋が絡んでコールが騙されるのも止むなしと思わされるところが上手い。コールの恋の為なら子守も辞さないパイク超万能!
 利用された事に気づいた後半の巻返しは爽快だが「そこから派生したあらゆることが、自分の人生にこれほど長く尾を引く深刻な打撃を与えようとは思いもしなかった」というプロローグを読み返すにつれ、グリーンを撃ち殺したくなるのはパイクだけじゃない。
 その後のコールの災難を読んだ後となっては奴を締め殺してやりたい。

 クレイス祭りも終盤。残すところは『破壊天使』と『ホステージ』、コール&パイクはこれで邦訳は読み切った。本当はここからの4作をじっくり邦訳で読みたいのに。このシリーズはここからシリアスモードに突入するんだよ!
 『天使の護衛』の後のパイク主役シリーズもなかなか良さそうなのに。ああ、残念。この巻には、思わず励まされるような良い台詞が沢山あった。
 P「たぶん。だが、不都合があれば俺たちが正す」 
 ギブス「それでも、連中はまちがってて、われわれは正しい。その過程で銃弾を浴びなきゃならないのなら、浴びるまでだ」
 「大事なのは司法制度の悪い部分じゃなくて、いい部分だ。悪い部分は正していかなきゃならない」
 「あなたが正義と呼びたいものをわたしたちに与えてくれるのは、人間だけだわ」

 ここのところ、ほぼ仕事から逃避するように読書にのめり込んでいたが、最後の最後でコールに元気づけられてしまった。しゃーない。私も頑張るかあ。(ちなみに司法とは関係ない) 
 ついでに守護神パイクの恋愛指南
 「こいつが寂しがるだろう」(コールを見ながら、ルイジアナに戻るルーシーへ)
 「頭がどうかしてるぞ。最後の夜なのにこんな話をしている場合か」

2017年8月10日木曜日

0048 天使の護衛

書 名 「天使の護衛」 
原 題 「Stalking the Angel」 1992年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 村上 和久 
出 版 武田ランダムハウスジャパン 2011年8月
初 読 2017/08/10

 C&P11作目。
 三人称で語られることでCとPの輪郭がいっそうはっきり立ち上がる。
 正直、本当の意味で、コールの格好良さに気付いた。コールは前作(The Forgotten Man)でショットガンで撃たれて重傷を負っており、本作ではまだ自宅で療養・回復中の身である。にもかかわらず、自由にならない体をおして、パイクの為に活動する姿が実にタフで有能でクールで格好よいのだ。
 一方のパイクは父に虐待された生い立ちから、「家族」というものに抱くあこがれのような特別な感情、ラーキンへの思い、コールとの友情などが、スリリングな事件の展開と絡み合いながらパイクらしくハードに表現される。「愛している」は蛇足だ、とは思ったけど、それも込みでパイクなのかも。とにかくこれまで邦訳されたシリーズでは、ターミネーターの印象しかなかった(笑)パイクの印象を改めることになる一冊。

 ストーリーとしては、ラーキンとパイクのあれこれがメインのはずなんだけど、脇を手堅く固めるコールがいぶし銀のごとく輝いていて、ラーキンがかすむ。。。。。やっぱり、コール&パイクだよねえ。
 解説等ではパイク主役のスピンオフってことになってるが、紛れもなくC&Pの11作目だと思う。

 蛇足ながら、不思議と痛くないやりかたで殴られるって、それ痛くないんじゃなくて解離してるだけだから!虐待から心理的に逃避してるんだよ?
 悲惨な育ち方で、身近に守ってくれるものがなかったからこそ、人として正しく行動し、他人を守れる人間になりたいと願うパイク。しかし世間の標準とはちょっと価値基準がズレてるので、組織の中では上手くいかない。結局パイクが選択した自分の正しさを実践できる生き方は傭兵だったのだ。
 コールの存在は、パイクにとって最も価値あるもののうちのひとつなのだろう。
 「自分がコールの背後を掩護していなかったら、たぶんコールは殺されるだろう」というのがコールのパートナーをやってきた理由。だから前作の負傷を引きずり、自分の身をまもるのもおぼつかないであろうコールに危険を持ち込んだ事を悲しんでもいる。そんな2人の友情と共闘が胸熱である。

2017年8月7日月曜日

0047 追いつめられた天使―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「追いつめられた天使―ロスの探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「STALKING THE ANGEL」1989年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 田村義進 
出 版 新潮文庫 1992年3月
初 読 2017/08/07

 一人クレイス祭り続行中。C&P第2作。
 正直妙な日本文化には閉口するけどまあそれはいい。コールが初めから最後まで関与しないほうが、ミミの為には良かったんじゃないの??というのは言わぬが花。
 今回の仕事は盗まれた日本の古書「葉隠」の捜索。手がかりを求めて乗り込んだヤクザの事務所でいきなり刺青やら小指のない男やらと遭遇して乱闘寸前。ノリは三文アクション映画である。そうこうしている内に依頼者の娘ミミが誘拐されてしまい、護衛に失敗したと落ち込むコールが実にカワイイ。
 内心心配して様子を見に来るパイクはさらに良い。

 事件は例によってどんどん深刻化。ついには殺人に発展。事態を阻止できなかったことをコールは悔やんでさらに落ち込むが、そんなコールに守護神パイク。
 酔っ払ったコールがパイクに電話を掛けた30分後には瞬間移動したかのように居間にいて、台所でオムレツとイチゴジャムトーストを作り「こっちへこい」。黙って食べたコールに「話せるか?」そして、コールの話を微動だにせずに聴くのだよ。 
 C&Pの何がいいって、この二人の関係性がいいのだ。コールもパイクも基本的にサバイバーで、辛ければ辛いほど、それを言葉にできなくなる。(幼少時から周りの他者(親や大人達)に助けられた経験が乏しいから。)それをわかってるパイクはまずはコールに食事を食べさせて、コールの心のハードルを下げてから「話せるか?」と問うんだよね。さりげないシーンが胸に来る。

 今回のパイク語録。
 C「まずいな。飛行機に乗るつもりかもしれない。」
 P「だいじょうぶだ。撃ち落とせばいい」ほんとに出来そうで怖い。

 「葉隠」は秘伝なんで読んで覚えたら本は燃やせと伝えられていて、だから原書は残っておらず伝承されているのは写本で、しかも何冊もあるんだ、とか、写本である以上、文化財的価値はさておき、精神的価値は、そこらの出版物と大して変わらず、そんなもののために日本人は殺し合いはしないだろう、とかはこの際どーでも良い。
 サムライは紅白のハチマキはしないし、ソバ入りのミソスープは勘弁してほしい。でもいい。どーせ亜米利加人の描いた軽めのミステリーなんだから!コールとパイクが格好良ければそれで良いのだ!

【再読C&P祭り!『指名手配』刊行記念】
 初読時はコールが好きすぎて興奮状態だったが、今回はさすがに落ち着いて読めた。
 その分、コールの男っぷりと優しさが染みわたる。依頼人の娘ミミの境遇に本気で腹を立て、心底心配して力を尽くそうとするコール。事件の結末は苦すぎて、どれだけ酒を飲んでも足りないが、「苦痛を取りのぞいてくれる者が愛してくれる者なら、それはあなただ。」というジリアンの言葉は最大の慰めだろう。ハガクレやヘンな日本文化には今回も目をつぶる。

 「そこに置いてあるウィーバー社製のバーベキュー・グリルの下に、ネコはうずくまっていた。大きくて、意地が悪くて、真っ黒。片方の耳は立っているが、もう一方の耳は横に倒れていて、そこにクモの巣のような白い傷跡が残っている。誰かに撃たれたのである。それ以来、まともではなくなった。」
 コール若かりし頃から同居している黒猫さん。「わたしも11ヶ月ヴェトナムにいたが、・・・」「ヴェトナム以降、おまえさんは自分自身の子供の部分にしがみついてきた。」2作目は、過去の従軍体験への言及は少なめ。カルヴァーシティの射撃場の主リックは、海兵隊に12年いて、そのうち8年間は射撃班に所属。そんな彼が嬉しそうに目を細めて眺めるパイク。そういえば、コールの年齢その他はあらかた推測できているが、パイクは何歳なんだろう。

2017年7月31日月曜日

0046 死者の河を渉る―探偵エルヴィス・コール

書 名 「死者の河を渉る」
原 題 「Voodoo River」1995年
著 者  ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 扶桑社 2000年1月 

この巻、最初からコールは人恋しさ全開で、なんだか子犬のようだ。 今回は有名女優の実親捜しの依頼。依頼人から紹介されたルイジアナの女性弁護士ルーシーにコールは恋をする。コールの胸のときめきが伝染してこっちまで胸が苦しくなる。ルーシーと8歳の一人息子の輪に加わるコールが幸せのお裾分けをもらったよう。 一方シリーズ当初はベトナム帰りの社会不適応者にしか見えなかったパイクであるが、もはや超人レベル。 コールが空港で、ルーシーを事件捜査のパートナーとして紹介しただけで、コールの恋人だと理解してルーシーの手にキスって、一体どんなセンサーを搭載してるの(笑)、てか、女性の手にキスをするような機能を完備していたとは!事件そのものは、36年前の殺人に端を発し、現在の不法移民に関わる犯罪がからみ、暗い河が象徴する社会の暗部、不法移民に関わる裏組織との取引やハードな銃撃戦など、息つく暇もなく読み応えがある。 自分に課した依頼人への忠誠と、社会悪に対する正義感が対立して、葛藤するコールの誠実さが好きだ。その悩めるコールを気分転換させるために運動に誘って、話相手をするパイクの言葉が、これまた良い。「愛情は、差し出された時に拒絶する余裕があるほど、ざらに転がっているものじゃない。」パイク語録に追加しておこう。

2017年7月29日土曜日

0045 ぬきさしならない依頼―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「ぬきさしならない依頼―ロスの探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「FREE FALL」1993年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋 恭美子 
出 版 扶桑社 1996年10月

 いよいよ筆致鮮やかなC&Pシリーズ第四作。
 今度は恋人の素行調査の依頼。
 ただの浮気かと思いきや事態はどんどん深刻化、事は警官による黒人青年暴行死事件の真相へと発展。1992年のロス暴動を下敷きに1993年にこの本を書いたクレイスもタフだと思う。
 依頼人のジェニファーに個人的にかなりむかつく。
 純粋なのかもしれんが身勝手すぎるだろ。人を巻き込んでおいてそれか?1,2発張り倒したい。コールは女性に優しいからそんなことは絶対にしないけどね。
 今回は殺人の濡れ衣を着せられ、逮捕→拘留→脱走→拳銃にモノを言わせたのち、司法取引の流れ。パイクが相変わらず格好よい。
 C「付けられている」
 P「撃ち殺せ」
 単純すっきり。
 「正直に答えてくれ、ルー。わたしの容疑を聞いたとき、本当にやったと思ったか」
 ポイトラスは首を横に振った。「思わなかった。グリッグスもだ」

 聞かずにはいられなかったコールの心情がやいかに。
 終盤の特殊部隊の軍事行動ばりの悪党掃討作戦は著者のファンサービスか? 元海兵隊というだけで連帯できる単純野郎どもめ。なんだかうらやましいぞ。

2017年7月24日月曜日

0044 モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール」
原 題 「The Monkey's Raincoat」1987年
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 田村義進
出 版 新潮文庫 1989年2月

  C&P第1作。
 80年代 の空気感と西海岸の陽光とハードボイルドの交じり具合が絶妙。
 ベトナムでの泥沼の戦場体験があっても自分なりの前向きな生き方と正義を貫いて生き抜いてきた、コールの精神の強さが魅力。
 ちゃんと小さなコトにも怒ったりイラついたりできる、そういう感情が摩滅していないことが大事なのだと思う。
 子供と依頼者を守る為なら危険の中にもあえて踏み込んで行く。人殺しは好きではないが、反撃は躊躇しない。周りに悪人の死体の山ができても、警察に怒られても、ボロボロになりながらもあくまでも人助けはさらりとやる。推理よりは荒事寄りのロスの探偵である。
 コールのことを「ハウンド・ドッグ」という渾名で呼ぶ、ルー・ポイトラスとコールの関係も気になる。ルーの台詞「きみはいつも深入りしすぎる。依頼主に近づきすぎる。ときには恋心さえ抱く。ちがうか?」 ルーの上司バイシェも出番は少ないながら刑事魂を発揮して地味に良い。

《コールの来歴》
 生まれた時の名前はフィリップ・ジェームズ・コール。6歳の時に、プレスリーにかぶれた母に強引に改名されるが、「母がくれた名だから」という理由で今も名前を戻すことはしない。18歳の時ベトナムの水田にいた。ベトナム戦争に2年間従軍。1987年刊行の本書で35歳なので、逆算して1952年生まれ。(最新巻の『指名手配』が2008年頃と想定すると56歳くらいになってる。)従って1970年に18歳でベトナム戦争に行き、2年間従軍して1972年のベトナム戦争終結ののち除隊。計算は合う。
 その後はロスに戻って撮影所の警備の仕事をへて、探偵事務所の見習い。この頃同じく海兵隊を除隊して警官になっていたパイクと知り合う。28歳で探偵免許を得て開業。「美しいものはみな子供の心のなかにある。」14歳が理想の年齢。ちなみに、ヴェトナムで特殊部隊っていうからつい、グリーンベレーかと思っていたが、レンジャー部隊だったことが9作目の「Last Ditective」で判明。涙なしには読めない名作なのに、本邦未訳!残念すぎる。

《エルヴィス・コールとハリー・ボッシュ》
 同じくロス在住のボッシュは1950年生まれでコールより2歳年上である。従軍も2年早い。二人ともウッドローウィルソンドライブに家があり、コールはマルホランド・ドライブ(峠)を挟んで南側斜面のハリウッド側。ボッシュは北側斜面でスタジオシティ側に家を構えている。
 家庭に恵まれず施設で育ったという設定も似ていて、その分「我が家」に対する思い入れが強いのも同じ。ちなみに作者のクレイスとコナリーは友人同士だそうで、ボッシュとコールは、それぞれの作品にちらりと友情出演している。
 コールは、ボッシュの家の前をランニングすることがあるらしく、ロス大地震の後、家の前で上半身裸で瓦礫の片付けをしていたボッシュを見かけ、その刺青で彼がナム帰りと知って、黙って片付けを手伝ったんだそうな。このロス市警の刑事にコールは密かに敬意を持っている。このあたりが書かれてるクレイス作品は前述の「Last Ditective」で、残念ながら翻訳出版されていない。

《最恐チート・パイク》
 コールとの出会いはベトナムから帰還後の1973年。ベトナムでは特殊部隊に所属していたコールを「優秀な兵士」として尊敬している。パイクは海兵隊で、スナイパーだったらしい。グレイマンやヴィクターには及ばないかもしれないが、十分主役張れるだけの最恐チート級であるパイクをさらりと脇で使ってるこの贅沢。

2017年7月22日土曜日

0043 約束 (創元推理文庫) —コール&パイク16

書 名 「約束」
原 題  「THE PROMISE」2015年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 創元推理文庫 2017年5月

 C&Pの16作目。S&Mとしては2作目で、夢の共演。
 コールがパイクのことをおしゃれ感ゼロとか言ってるが、貴方がた何歳になってるの?ベトナム従軍当時20歳だったんだから、この作品が2008年と仮定すると、56歳だね?!
 多少は落ち着いて少々渋みが増したものの、相変わらずの体言止めだし、パイクの方も相変わらずの筋肉美。某NATOの少佐みたいに時代は進んでも年取らない系のアレか?同居している黒猫さんはララバイ・タウンの黒猫さんなんだな?猫又まであと何年だ?
 とはいえ、やはりカッコイイものはカッコイイし、素敵なものは素敵なのだ。
 今回は特に、ジョンが素敵。
 パイクとマギーの会話も良し。「よくかえってきたな。海兵隊員」

 真面目で不器用なスコットは、今度はコールの事件に巻き込まれて、爆弾を仕掛けられるやら殺し屋に狙われるやら、散々なあげくに懲戒免職の危機。それでも自分の筋は通したい意地っ張りなんだが、色々と不運なのも相変わらずだ。
 スコットみたいに善良な人間は、コールみたいな訳の分からんエネルギーに溢れた人間の側に寄ると巻き込まれて大変な目にあうらしい。殺されなかったのは、ひとえにマギーの愛のおかげゆえ。マギーとスコットがあまり危ない目に遭わずに、安心して読める続編を希望する。

 マギーを取り上げられて、コールん家で涙目になってるスコットをさりげなく気遣うコールが優しい。スコットもエミリーも全部引っくるめて何とかしてしまうところがさすが。やられっぱなしのスコットも今回はきっちりと落とし前をつけることができたし、コールにちょっとしたロマンスが芽生えたりもして、最後にはジョンがきっちり〆める、三度くらい美味しい作品だった。ちょっとこんがららりはしたけど。

 この本の中でいちばんコールらしい、と思った台詞。「(前略)そんなことはどうだっていい。気がかりなのはエイミーだ。わたしはこの女性を守りたい。ヘスがなにをしているのか突きとめて、もしそれが気にいらなかったら、チャールズやコリンスキーと同様、彼女も仕留める」これに対してパイク。「いいノリだ」 すなわち自分が正義だ、といって憚らないこの俠気がコールだよ。あととにかくジョンが格好良い。

【料理で読む】
 コールが自宅の台所で作るラム肉のローストとトマト、コリアンダー、パラペーニョ、クスクスのサラダが美味しそう。それをタッパーに詰めてジョンにお届けする気配り(笑)。落ち込むスコットにも夕ご飯を振る舞おうとするし、私もコールが作ったご飯を食べてみたい!と思ったのでした。


2017年7月21日金曜日

0042 ララバイ・タウン

書 名 「ララバイ・タウン」
原 題 「Lullaby Town」1992年
著 者  ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 扶桑社 1994年7月

 C&P3作目。シリーズ初読。
 トレンチコートの似合う無口で渋い男が出てくるのがハードボイルドだと思ってたらどうやら違うらしい。ロサンゼルスの陽光のもと、マスタードのシミ付きミッキー柄スウェットシャツでコールが登場、過剰な軽口が体言止めで畳みかけてくる。
 仕事の依頼は、ハリウッドの有名映画監督(たぶん、スピルバーグと同じくらい?)ピーター・アラン・ネルソンの、無名時代の妻と子供の捜索。ピーターは甘やかされた芸術家肌の有名人にありがちな抑制の効かない男で、今回は10年も逢っていない息子の事を思い出し「父親」になりたくなったらしい。
 仕事を引き受け、足取りを追い、案外簡単にピーターのかつての妻と息子の居場所に辿り着く。それでは簡単すぎるな、と思っていたら、その元妻カレンが、務めている銀行で、ニューヨークのマフィアのマネーロンダリングに関与していることが判ってくる。
 マフィアのしがらみからなんとか彼女を引きだそうとしているうちに、ピーターが乱入して事態を引っかき回し、結局カレンもピーターもまとめて助ける羽目になる。
 コールは、女性や子供や社会的弱者に対してフェアで、しかもとことん優しい。これは損得抜き。そして彼らを脅かす敵には容赦無い。
 コールは、不遇な中から自分で自分を育てたタイプの人間で、彼の強さも弱さも、そこに由来する。そのゆらぎが最大の魅力で、つい引き寄せられる。
 コールとパイクはニューヨークで上等の宿をとり、美術館に出かけ、美味い食事をする。それで少しは人生が楽になると知っている。コールを支えるパイクがこれまた良い。
「おれが行くまで生きているように。」