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2024年3月18日月曜日

0473 帝都騒乱 サーベル警視庁2(ハルキ文庫)

書 名 「帝都騒乱 サーベル警視庁2」
著 者 今野 敏    
出 版 角川春樹事務所 2022年8月
文 庫 372ページ
初 読 2024年3月17日
ISBN-10 475844505
ISBN-13 978-4758445054

読書メーター   

 辛くも日露戦争に勝利し講和条約を締結するも、その内容は樺太の半分をせしめたのみ、賠償金はなし。戦費をひねり出すための増税に告ぐ増税に耐えてきた国民の怒りに火が付き、東京市内で暴動となる。市民の怨嗟は首相の桂とその妾の「お鯉」に向けられる。警視庁第一部第一課の刑事達は警備に駆り出され、榎坂にある桂の妾宅に詰めることに。
 途中で死体が出て来てちょっと捜査っぽい雰囲気も出てくるが、全体的に時の空気感を読むような感じ。時は第一次桂太郎内閣。山県有朋、伊藤博文との内紛やら、桂と原敬との協力やら、孫文やらを上手く絡めて、歴史のお勉強とはひと味違う、時代の雰囲気を想像する。
 ラストは、小気味良い。してやられたり。日本にとって大陸が広く自由に感じられた時代でもあったのだろうか。

《日本近代史復習》※ニュービジュアル版新詳世界史図説(浜島書店)参照
徳川家慶 1837〜53
 1852 ロシア船下田に来航
 1853 ペリー 浦賀に来航
徳川家定 1853〜58
 1854 日米和親条約(下田・函館の開港)
 1858 日米修好通商条約
徳川家茂 1858〜66
 1858〜59 安政の大獄
 1860 桜田門外の変
 1862 生麦事件             
 1863 薩英戦争
 1864 四カ国連合艦隊 下関砲撃
徳川慶喜 1866〜67 
 1867 大政奉還・王政復古の大号令・明治改元
明治天皇 1867〜1912
 1869 版籍奉還
 1871 廃藩置県
 1872 鉄道開設(新橋—横浜間)
 1873 徴兵令・地租改正
 1874 台湾出兵・天津条約
 1875 樺太・千島交換条約
 1875 江華島事件
 1876 日朝修好条規(江華条約)・朝鮮開国
 1877 西南戦争
 1879 沖縄県設置
 1881 国会開設の詔
 1881 自由党結成
 1882 日本銀行設立
 1883 鹿鳴館開く
 1885 内閣制度開始
 1888 枢密院設置、市制町村制交付
 1889 大日本国帝国憲法公布
 1890 教育勅語
 1893 条約改正交渉開始(陸奥宗光)
 1894 治外法権を撤廃
 1894〜95 日清戦争 1895 下関上や烏
 1895 閔妃暗殺
 1900 立憲政友会結成
 1901 八幡製鉄所創業開始
 1902 日英同盟
 1904〜05 日露戦争
 1904 第一次日韓協定
 1905 ポーツマス条約  ← イマココ
 1906 夏目漱石「坊っちゃん」発表

2024年3月15日金曜日

0472 サーベル警視庁 (ハルキ文庫)

書 名 「サーベル警視庁」
著 者 今野 敏 
出 版 角川春樹事務所 2018年8月
文 庫 375ページ
初 読 2024年3月14日
ISBN-10 4758441928
ISBN-13 978-4758441926
読書メータ— 
https://bookmeter.com/reviews/119528864

 自分が50歳を過ぎて、自分の人生が「半世紀」を超えたと意識したあたりから、やっと30年、50年という年月が自分の中の丈で測れるようになった。自分が小さかったころ、まだ家の電話は重い黒電話だったし、駅の改札には駅員さんがいて、改札ばさみをチャキチャキさせながら紙の切符に斬り込みを入れていた。子供のころ、終戦は遙か昔のことだと思っていたが、自分が生まれたころからたった二十数年前の事だった。
 明治維新(明治元年・1868年)鳥羽伏見の戦いから、翌年の函館までを国を分けて戦い、その後38年で日本は、そして東京はどれだけ変化したのか。それを目の当たりにした人々はどういう人たちだったのか。戦いに勝った側もいれば、負けた側もいる。そしてどちらもそれぞれの「戦後」を生きたのだ。そんなことを考えながらの読書となり、明治38年(1905年)の東京、警視庁を舞台とするこの話、正直ストーリーよりも、歴史的な興味の方が勝ってしまった。
 ちなみに、スマホアプリで「東京時層地図」というたいそう優れた代物がある。明治初期から現代まで、地図をミルクレープのように重ねたもの。その時代時代の東京の街の様子が、現代の位置感覚と合わせて観察できるので、明治〜戦前くらいの東京が舞台の小説など読むときには必携。
 藤田五郎(新撰組の斎藤一)のキャラクターなどは正直、どうだろう?あまりインパクトを感じなかったのだけど、かえって既読の新撰組本や、これまでは手を出していなかった斎藤一や永倉新八の本を読んでみたくなった。
 陸軍の中の長州閥や、警視庁の薩長閥、フランス派とドイツ派の対立、同じ長州閥の中でも主流派と反主流派が暗闘していたり、なるほどなあ、と思って読む。
 作中に登場した「黒猫先生」は言わずとしれた、吾輩の作家だが、そういえばあの猫は、実際には黒猫では無かったらしい。本の挿絵が黒猫だったので、黒猫説が広まったか? もっとも、三毛猫説も誤りらしいぞ。ペルシャの如き黄色混じりの淡灰色に漆黒の斑入りだとか。ちょっとイメージしづらいが、ひょっとしてサバトラ?いや、キジトラか?いや、もしかしたらサビ猫かも。

 

2023年5月26日金曜日

0426 ジャベリン・ゲーム サッチョウのカッコウ (ハルキ文庫)

書 名 「ジャベリン・ゲーム サッチョウのカッコウ
著 者 田村 和大    
出 版 角川春樹事務所  2023年2月
文 庫 317ページ
初 読 2023年5月25日
ISBN-10 4758445419
ISBN-13 978-4758445412
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/11395961  

 流石に17歳の高校生にいきなりCIA入局を迫るのは荒唐無稽ではないか?などど最初に思ってしまったのだが、ああ、でもジェントリーが犯罪を犯してCIAにスカウトされたのはそのくらいだったかも? 海外小説だと気にならないのに、日本の小説だと気になってしまうのは、やはり国内モノだと“常識”に捕らわれてしまうのだろうか。こういうところで蹴躓いているとせっかくの面白いストーリーに乗れないので、ここはグッとこらえよう。
 大学教授だった父が首を縊られた異様な姿で息絶えているのを発見した17歳の穣は、両親がCIAのエージェントだったことを知る。この時から穣は、父の死を解明し仇を取るため、CIAのエージェントとして育成され、そののち日本の警察組織に潜入して、公安内のロシア諜報組織を追うことを運命づけられる。 
 
 というわけで、日米ハーフの警察官僚が実はCIAのアセットで、米軍で盗まれ、日本国内に持ち込まれ、ロシアに利用されようとしているジャベリンミサイルの行方を、警察の特別調査班の顔をしながら、実は米国大統領命を背負って追う。という和製エスピオナージ。主役の穣(じょう)が、有能な指揮官でユーモアもあり、悩める青年でもあり、で誰かに似ているなあ、と思ったのだが、私の大好きなマックス・ロビショー少佐(『栄光の旗のもとに』ハヤカワSF文庫)と似ているのだな。経験値のすくないデスクワークよりの警察官僚であるはずだが、サクサクと現場指揮をとり、ロシアスパイの陰謀を追いかける。手持ちの兵隊が少ないので、西条刑事がこき使われているのが若干気の毒であるが。銃撃戦あり、海(海上保安庁巡視船)もあり、カーチェイスがないのが不思議なくらいの盛り沢山を、さくっと軽いノリで描く。
 ほんとにこの追跡劇をこの少人数でよいのか?という少数精鋭チームなのだが、最後のびっくり箱のような種明かしには参った。息子の本当のハンドラーは実はかーちゃんなのか?
 そして、父の敵、のロシアスパイはこれからどうするんだ? 事件は一応の解決を見たが、本当のクローハンマー作戦の展開はこれから。今作は役者紹介に過ぎないようだ。私としては西条刑事の今後の不幸を見定めたいところ。ベロニカと美和が実は同級生、とか親友、みたいな展開を希望。
続刊を期待。

2022年10月30日日曜日

0401 私が愛したサムライの娘 (時代小説文庫)

書 名 「私が愛したサムライの娘」
著 者 鳴神 響一        
出 版 角川春樹事務所 2016年1月
文 庫 295ページ
初 読 2022年10月29日
ISBN-10 4758439761
ISBN-13 978-4758439763
読書メーター    
 SISシリーズの3作目で、小説家デビューを目指す人達が描かれていたので、作家のデビュー作というものに興味を引かれた。柴田よしき氏の『RIKO』もデビュー作にして、あの強烈さ。この鳴神氏の作のデビュー作もなかなかに凄い。新人賞の選考を突き抜けてデビューするにはこんなに書けないとダメなのか。なんとも凄い世界だ。
 小説愛好者として多くの人がそうであるように、私も中学生の頃から、何度か小説を書こうとしたことがあるけれど、プロの作家になれるとは思えなかった。何かが、何よりも気概が違う。小説家に限らず、プロを志し、真剣に努力する人は凄いな、と純粋に尊敬する。
 
 で、さて、鳴神響一氏のデビュー作である。
 これが、なかなかすごい。

 舞台は、江戸、名古屋、そして長崎出島。鎖国の時代、江戸幕府の将軍吉宗と対立した尾張藩主徳川宗春とその配下の甲賀武士。対日貿易を独占していたオランダと、大国スペインの海外領土と極東貿易を巡る野心。そこに、よるべを持たないスペインとオランダの(新教と旧教の)混血の士官ラファエルと、その血筋と師・左内ゆえに、忍びとしての過酷な境遇を甘受する忍びの雪野の恋。映画「マスター・アンド・コマンダー」ばりの(っていうか、ホーンブロアとか、ボライソーとか、ジャック・オーブリーの)海洋冒険小説のエッセンスまでちょこっと混ぜ込んで、時代小説ながら、当時の出島の風物や海外情勢なども紐解きつつ、の、スケールの大きな舞台を設定。日本人が(っていうか私が、か?)苦手にしてる、日本史と世界史の教科書の狭間を忍びの矜持と純愛で描くのだ。
 なにしろ日本人なら誰でも知ってそうな8代将軍吉宗(暴れん坊将軍&大岡越前)の治世に焦点を当て、しかも尾張宗春をその時代にいた先進的な視点を持った名君として描いたのも、その宗春の闘いが「負け戦さ」なのも渋いことこの上ない。これでデビュー作!凄いじゃないか。スケールの大きさの割には、そしてその濃密な筆致な割には淡白な印象もあるのは登場人物の造形の掘り下げがわりとあっさりめだから、そして負けた側の引き際が潔すぎるからかな。とはいえ、宗春の人柄の描き方がとても好ましいし、左内は文句なく格好良くて慕わしい。雪野の必死さもよかった。

2022年10月22日土曜日

0400 SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎II 聖域 (ハルキ文庫 な 13-8)

書 名 「SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎Ⅱ  聖域」
著 者 鳴神 響一
出 版 角川春樹事務所 2021年11月
単 庫 400ページ
初 読 2022年10月18日
ISBN-10 4758444455
ISBN-13 978-4758444453
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/109727555

 すっかり地元の子ども達にも信頼される“おまわりさん”になった、ハルトラマンこと武田晴虎。もとSIS(捜一特殊捜査係)の強面をやわらかくすべく、日々奮闘中です。

 今作は、丹沢湖周辺の集落に現れる「落ち武者の亡霊」。無事に解決にこぎ着けたはずなのに、今度は白い着物姿の幽霊が目撃される騒ぎに。SNSに投稿された体験談で、騒ぎを嫌らって旅館の宿泊のキャンセルがでるわ、オカルト好きの野次馬は集まるわ、晴虎の地元の信頼は揺らぐわ、で、晴虎もじっとしてはいられない。
 そうこうするうちに今度は水死体が発見されるし、白骨死体はでてくるし。
 静かな山の温泉で、これまで大した騒ぎも無かったのに、この駐在さんが赴任したとたんに立て続く騒ぎでは、かえって晴虎が「縁起の悪い男」と悪評が立ってしまうのではないか、と心配でならない(笑)
 幽霊さわぎから始まって、北条の埋蔵金、脱税絡み、映画のロケ・・・・と惜しげも無くいろいろなネタが絡み、晴虎のニューナンブも活躍。この駐在さん、よく銃を抜く。きっと事後報告書を書くのが大変だろうなあ。前作でおなじみの血圧の宇佐美管理官、江馬さんも登場するのは、本も後半に差し掛かってから。ここからは一気に巻きに入ってラストまで一気読みです。犯人逮捕の後も、犯人に、取り調べで嘘をつくな。供述が食い違うと不利になる、と懇切丁寧にアドバイスする晴虎が好きだ。
 著者の鳴神響一氏は、法学部出身で神奈川県の学校事務経験ありとのこと、公務員のお仕事と法律を良くご存じなんだろうな、と読んでいて思う。全編にわたる、多少は事情を知っている人間も裏切らないマニアックな描写が堪らん。前月は超勤ゼロだったから、超勤はつけずに休日振り替えで、とか、すこし前まで服務管理なんかもしていたわが身に染みわたるぜ。きっと地域課には超勤予算がほとんど振られていないんだろうなあ。Ⅲには年末調整の話なんかが出てきたけど、あのセリフはやったことがないと絶対出てこないと思う。学校事務で給与担当やったことあるんだろうな、と拝察する。職員数が多い職場だと大変ですよね。給与振り込みでなく、現金支給だった時代には、もっと大変だったはず。
 鳴神響一氏には「神は細部に宿る」という格言を捧げたいと思います。
 
 追伸 横浜ベイシェラトンのオールデイビュッフェ「コンパス」のスペインフェアに行きたい! → https://yokohama-bay-sheraton.jp/restaurants/compass/

2022年10月19日水曜日

0399 SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生 (ハルキ文庫 な 13-9)

書 名 「SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎III 創生」
著 者 鳴神 響一
出 版 角川春樹事務所 2022年5月
文 庫 212ページ
初 読 2022年10月18日
ISBN-10 4758444862
ISBN-13 978-4758444866
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/109666310  

元横浜市民、というか実は旭区民だったりして、以下のセリフにびっくりする(笑)

 「おまえどこに住んでるんだっけ?」
 「旭区の二俣川です」
 「ああ、運転試験場のあるところか」


 超ローカル(笑)。だけど、たしかに神奈川県運転免許試験場があるところだから、県民はかなりの確率で地名くらいは聴いたことがあるのかも。
 私は、細かい道の一本一本覚えてる。子どものころ、11年くらい生活したからね。
 思わず同じ職場の鶴ヶ峰出身者に「みてみて〜このページ!」とやってしまいました。あまりにもローカルだ!すっげーテンション上がったぁ!(ちなみに鶴ヶ峰は二俣川の隣町。)
 先日のNHK大河ドラマ「鎌倉殿・・・」にも二俣川が出てきたらしくて、同僚は大喜びしてましたが。
 作品冒頭には、横浜山手の港の見える丘公園にある、「昭和2年に建てられた英国式洋館をそのまま使ったレトロカフェ」が出てくる。作品中の店の名前は「くすの木てい」
 モデルはこちらですね。
「えの木てい」HP → https://www.enokitei.co.jp/about/


 厳ついおっさん2人がぱくついた、乙女なアフタヌーンティー(推定)のご案内はこちら。HPから勝手にキャプチャしてきちゃったけど、怒られないよね?


 神奈川県警捜査一課特命係長である諏訪警部が、アフタヌーンティーの後にオーダーすると宣言していたチェリーサンドなる菓子はこちら。
 今度横浜に行ったときには、絶対に買ってくる。


 個人的には山手十番館が好き♪ (数えるくらいしか行ったことないけど。)こちらの写真も、HPからキャプチャして拝借してきました。 

山手十番館 公式HPはこちら → https://yokohama-yamate-jyubankan.zetton.co.jp/


先日、横須賀・横浜に遊びに行ったときに撮ってきた山手十番館の写真を・・・と思ったのだけど、馬車道十番館のいちごショートケーキの写真しかなかった。(^^ゞ
 ぜひ、横浜に遊びに行ったときには、訪れてほしい。生クリームが絶品です。(このイチゴショートの生クリームよりも美味しいクリームには今のところ出会っていない、と断言できる。)あと、個人的にはこの十番館のサバランも絶対オススメです。

 しかし、武田と諏訪という無骨なおっさん2人とのミスマッチをとことん狙うなら、やっぱり「えの木てい」の圧勝ですね。お店がリカちゃんハウスかシルバニア・ファミリーみたいで可愛いすぎる♪

 いやそれにしても、ローカルネタでここまで燃える(萌える?)小説に出会えるとは思っていなかったです。
 ストーリー放置で多いに楽しんでしまいました。

*     *     *

 で、今度横浜に行ったら絶対に買ってくる。
 と書いたのは昨夜のことだったのですが、そういえば私、今日横浜に行くんだったわ。と気付いたのは、自宅から横浜の実家に向かう電車の中で。
 副都心線からみなとみらい線直通の電車にのって、あれ、終点そういや元町・中華街だよ。コレ乗ってけば、えの木てい、行けるじゃん?

 そんなわけで、実家からの帰りに元町まで寄ってきました。完全に自宅とは逆方向なんだけど、ちょうど、ラッシュアワーに差し掛かる時間だし、始発まで戻って、座っていくのはある意味合理的・・・・・
 残念ながら、「えの木てい本店」の営業時間は夕方17:00までのため、あの可愛いお店には行けませんでしたが、元町にある「えの木ていスウィーツスタンド」の方に行ってきました。スコーンは、アフタヌーンティーのスタンドの上段に乗っていたのと同じものですね♥️
 謹んで、神奈川県警捜査一課特命係長・諏訪勝行警部に成り代わりまして、食させていただきました。ウマ—♪でございました。

 ウワサのチェリーサンドは、今夜のお夜食に。
 (追伸:チェリーサンドのチョコレート味が、非常に美味でした!)
*     *     *
 さて。
 ここまで本筋そっちのけで、諏訪警部の誘うまま(?)スウィーツ談義にうつつを抜かしてましたが、さすがにこのままではイカン。

 今作、お話のほうもとてもテンポが良く、面白かったです。小説家教室のくだりは、さすがの本職でリアル感マシマシ。冬山、そして台風の山のくだりも、臨場感たっぷり。個人的に職業観の上でぐっとくるところもあって、ただ、そこに突っ込んでくとちょっとアレなんで省略。江馬さんがコロンボ刑事のマネをするあたりは、芸が細かい。
 そして、ラストの引きがね。もう、次巻が楽しみでしょうがないです。

 「オリジナリティあふれる年末調整ってないよね。」もおもわず失笑。
 たしかに、ない。うん。でもある方に長年の控除もれを発見して、すごい額の税金を還付した時はちょっとスリリングだったよ。

2022年10月16日日曜日

0398 SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎 (ハルキ文庫 な 13-7)

書 名 「SIS 丹沢湖駐在 武田晴虎」
著 者 鳴神 響一       
出 版 角川春樹事務所 2021年5月
文 庫 288ページ
初 読 2022年10月16日
ISBN-10 4758444080
ISBN-13 978-4758444088
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/109628827  
 
 元神奈川県警のSIS(Special Investigation Squad)———捜査一課特殊捜査第一係の班長であった武田晴虎は、4月の人事異動で希望通り、丹沢湖岸にある駐在所勤務の辞令を受けた。
 すこし前、武田が指揮をとった人質立てこもり事件で部下が重傷を負い、指揮官としてその責任は問われなかったものの、部下を指揮して危険に晒すことに自分はこれ以上耐えられないと感じたからだった。
 第二の警察官人生を、地域の住民の安全な生活のために捧げようと、なんのてらいもなく、単身住み込みの駐在所での勤務に臨んだのだったが。

 赴任して3ヶ月。
 大事件など起こるはずもない、平和な山奥の温泉で、突然誘拐事件が発生する。

 地元警察地域課の駐在員(おまわりさん)ながら、持てる経験と知識で人質救助の役に立ちたいと思う武田だが、捜査陣から見れば、しがない駐在員でしかない。前線本部が立ち上がり、指揮には管理官(警視)が派遣されてきた。そこに、かつて自分が指揮をとったSISの小隊も実働部隊として派遣されてくる。晴虎にできるのは、本部設営の手伝いにお茶出しくらいだが、捜査を進め、かわいい元部下たちの役に立つため、地元の状況を把握するものとして、煙たがられても必要な意見具申は行う。しかし元部下たちは自分を慕ってくれてはいるが、自分はどうみても捜査に協力を求められていない。
 まあ、そんな感じで、結局、命令無視して1人で活躍しちゃう、っていうアレだけど。元部下がみんなついて来ちゃうのもお約束なんだけどさ。そういう予定調和っぽいのも、安心して楽しめるので悪くない。

 犯人の動機が怨恨で、元自衛官で、習志野の空挺の、だから特殊部隊で・・・・って始まったときには、『ゴルゴタ』を最近読んだせいもあるが、(またこれかよ・・・)と内心思ったのは事実だが、まあ、それもそれで良い。米国ならどの部隊もよりどりみどりだけど、日本でこの役どころは習志野の空挺しかないもんね。ただ、犯人が動機を語りだしたあたりから漂う小芝居感・・・っつか、学芸会っぽい感じになってきた。

 そうはいっても、武田のキャラはなかなかよい。第一線を退いた男の感慨や、それでも現役で頑張りたい気概が、わりあいドライに描かれていて、ちょっと枯れかけてきてはいるものの、まだまだ活きのいい中年男が良い塩梅なのだ。かなり好みだし、(元)部下たちとの掛け合いも気持ちよい。一巻目は人物紹介と心得て、二巻目に期待しよう。


 最初の事件が横浜市瀬谷区で発生とか、丹沢湖・美保ダムとか、林道抜けると津久井郡とか、元・横浜市民にはとても懐かしさ溢れる舞台設定もよろしかったです。
 (そういえば、小学校の社会科見学で美保ダムと丹沢湖に行ったわ。うん。)
 ああ〜〜〜。なんだか丹沢に住みたくなった。おもわず丹沢移住情報サイトにアクセスしてしまった。温泉行きたいな♪

2022年8月11日木曜日

0380 猫に知られるなかれ (ハルキ文庫)

書 名 「猫に知られるなかれ」
著 者 深町 秋生       
出 版 角川春樹事務所  2016年10月
文 庫 365ページ
初 読 2022年8月9日
ISBN-10 4758440441
ISBN-13 978-4758440448
読書メーター  https://bookmeter.com/reviews/108223639
  
Cedant arma togae, concedar laurea laudi.
武具は市民服に従うべし。月桂冠は文民の誉れに譲るべし。「キケロー選集〈9〉哲学Ⅱ」

 戦後の日本の再生のために、旧日本陸軍諜報部将校らにより密かに結成された諜報機関CAT。その意は「武具は市民服に従うべし。」

第一章 蜂と蠍のゲーム
永倉一馬を藤江忠吾がCATにスカウト。永倉は抵抗しつつも巻き込まれ、GHQ将校を狙う旧陸軍残党との闘いに臨む。

第二章 竜は威徳をもって百獣を伏す
藤江忠吾、本名平塚三郎 長崎出身。陸軍中野学校出身の情報士官。敗戦後の引き上げてきた鹿児島港でMPに捕らえられ、東京に連行される。散々抵抗して血の気の多い米軍情報将校を煽り、願わくば(日本軍人として)銃殺されることを期待したが・・・・。

第三章 戦争の犬たちの夕暮れ
それぞれの敗戦。業火に巻かれて死んだ市民。命からがら日本で生き延びたもの。遠く大陸で死んだもの。なんとか復員できたもの。そして、さらに遠くの極寒の地で辛酸を舐め尽くしたもの。日本の焼け荒れ果てた姿を目の当たりにして願うのは、ただ、肉親の無事だった。
 
第四章 猫は時流に従わない
池袋界隈の闇市での再会。永倉の幼なじみであった元大尉が登場した時点で、イヤな予感しかしない。だがしかし、永倉が良い漢だ。いくらでも続編が書けそうな話ではあるが、続きは出ていないようだ。このくらいの余韻で終わっていたほうが良いのかも知れない。

【この本を読みながら、ついでに仕入れた雑学】
 敗戦直後の焼け野原の東京で、飢えながら必死に生き延びる日本人と、君臨する占領軍。米軍に接収されて通りの名前まで変わった丸の内界隈。(冒頭の丸の内の地図は必見。)代々木の旧陸軍練兵場は、米軍に接収されて中位の米軍将校のための住宅「ワシントン・ハウス」に。内側は日本政府の財政負担で立てられた日本製の米風住宅、外周を塀で閉ざされたこの地区は、サンフランシスコ平和条約後も都心近くの在日米軍住宅として残ったが、後に東京オリンピックの際に日本政府に返還され、米軍住宅はそのままオリンピック選手村として利用された。現在の代々木公園、国立代々木競技場、国立オリンピック記念青少年総合センター。朝鮮戦争当時、アメリカ合衆国大使館軍事援助顧問団(MAAG)の職員として来日し、ワシントン・ハウスに住んでいたジョン・ヒロム・キタガワが、日本人少年達をあつめた少年野球チーム「ジャニーズ少年野球団」を作り、ここから初代ジャニーズの4人が芸能界デビューし、喜多川はジャニーズ事務所を設立。東京のそこここに、今は目に見えない「敗戦後」の日本の記憶がある。まだ、戦争の記憶が新しかったはずの子どものころより、今のほうが、戦後の時間のつながりを濃く感じるのが不思議だ。

緒方竹虎(ウィキペディアより)(明治21(1888)年1月30日生—昭和31(1956)年1月28日没)
 日本のジャーナリスト、政治家。朝日新聞社副社長・主筆。自由党総裁、自由民主党総裁代行委員、国務大臣、情報局総裁、内閣官房長官、副総理など歴任。
 戦前は朝日新聞社の主筆、副社長を務め、2・26事件にも遭遇。戦中の1944年、国家の情報宣伝を行う情報局の総裁に就任。戦後は公職追放を受けたが、解除された後、衆院選に当選。第4次吉田内閣の内閣官房長官に就任し、保守本流の形成に尽くした。首相候補とも言われたが、56年に急死。