2017年9月30日土曜日

0057ー8 暗殺者の反撃 上・下 

書 名 「暗殺者の反撃 上」「暗殺者の反撃 下」 
原 題 「Back Blast」2013年 
著 者 マーク・グリーニー 
翻訳者 伏見 威蕃 
出 版 早川書房 2016年7月
初 読 2017/09/30 

 コートを巡る陰謀の謎解きは陰謀が陰謀で塗り替えられる結末に。最後の007張りの飛び道具(?)はアリなのか?でも調べて見ると、一応は実用化されているらしい。あまり効率はよくなさそうだけど、これしか脱出の手段がなかったら、やるか?
頭上高く飛ばしたワイヤーを飛行機に取り付けた引っ掛け金具で引っ掛けて高速で引っ張る訳だけど、本当に真上の天井の穴から真っ直ぐ上に抜けられるものなのか?タイミングや角度がまずいと悲惨なコトになるぞ? 引っ張り上げた時には蜂の巣死体になってたとか、天井に激突して頭蓋骨骨折してたとか・・・ リアルに想像してしまう。

 ジェントリーが自殺を企てるシーンは実に可哀想。そこを助けに来るのはやっぱりザック。コートとザックの軽口が良い。コートの方はとかく深刻になる質だから、ザックにはこれからもコートの手綱を握っていてほしい。コートが「お父ちゃん」などと軽口を叩けるのもザック相手だから。最後にぎゅっとハグしてくれるのもザックだけ。ザックの性格はホント現場指揮官向きで下働き向きなコートとはバランスの良いコンビだ。しかし、5年の経験で自分で物事を判断するようになったコートはもはや只の兵器には戻れないだろう。CIAは彼を御し切れるか?
 父とは二度と会えない、ってフラグ立てていたけれど、やっぱり私はジェントリー父子の再会シーンが見たい。家主のメイベリーさんまでフォローしたのに、ヤニスは放置っていうのが弱冠気になるところ。これは絶対にこれ以降の展開でもう一度モサドが絡んで、ヤニスは再登場するだろうから、ひとつ楽しみが増えた。ジェントリーとヤニスの共闘話を読みたい。

2017年9月25日月曜日

0056 暗殺者の復讐

書 名 「暗殺者の復讐」 
原 題 「Dead Eye」2013年 
著 者 マーク・グリーニー 
翻訳者 伏見 威蕃 
出 版 早川書房 2014年5月 
初 読 2017/09/25 

 コートの苦悩の原因がカーマイケルの無能であるとか、今回に関してはラスの嫉妬でしかなさそうな陳腐感はいかんともしがたい。が、弱冠読むのが辛かった中間部に比べ、コートが俄然動き始める後半400ページあたりからがめちゃくちゃ面白い。
 ラストの100ページは目まぐるしく状況が変転し、先が予測できないままずんずん進む。
 最後の凍った池での戦闘後にたどり着いた農家で、コートが発した言葉は「助けて」。ラスの口からは絶対に出て来ないだろう。ルースは残念だったが、ヤニス、ジェントリーとも殺伐とした世界に身を置きながらも信頼や心が通う瞬間があるのが良かった。
 それにしても、常に漂うカーマイケルの小物感。ラスのキエフへのこだわりぶりが不自然過ぎだ。何か裏があると疑え、コート。各所詰めが甘いぞ。ジャンパーチームはラスを殺すべきでしょ。グレイマンと結託しているのが分かっているのにあの場面で放免はナイでしょ。
 サイコパスにソシオパスだと言われて動揺したり、ヒコーキに「がんばれ!」と励ましたり、なんだかコートがうぶでカワイイ。
 せっかくルースと信頼を結べたのに、あっさり殺されてしまったのが残念だったけど、最後はモサドの計らいでついに米本土上陸。
 いよいよ本丸に突撃。カーマイケルにかましたれ! 

 シリーズここまで読んでの感想。
 キエフと発見即射殺〈SOS〉の謎を引っ張り過ぎだ。
 期待を高め過ぎるとかえって陳腐になるから、構成としては、グレイマン→正義→復讐→反撃→インターバルで回想として鎮魂を入れて、→飛躍 という順番でも良かったんじゃないかなあ、と個人的に思う。
 さていよいよ次ぎは反撃。ザックも当然再登場するでしょ。ザックが入ると話が引き締まるから、いろいろと期待する。

2017年9月16日土曜日

0055 暗殺者の鎮魂

書 名 「暗殺者の鎮魂」 
原 題 「Ballistic」2011年 
著 者 マーク・グリーニー 
翻訳者 伏見 威蕃 
出 版 早川書房 2013年10月 
初 読 2017/09/16 

  舞台は中南米。重く暑く濃いラテンの空気感。
 潜伏したメキシコで命の恩人エディの訃報に触れ、どうしても墓参したくなったジェントリー。エディを殺した麻薬カルテルがエディの妻とそのお腹のエディの子を付け狙い、例によって善人スイッチON。あまつさえ戦闘中の姿をテレビ放映されて居場所がCIAにも知られることになり絶体絶命。
 エディの妹とシリーズ初イチャイチャ。で、あるのだが、戦闘下の緊張でエッチに集中できないコート。エディの妹ラウラはそんなコートを上手にリードしてくれちゃういい女である。熟睡できて良かったねー(棒)。

 敵に捕らえられ、とりあえず拷問される。塩ライムが、結構リアルに想像できて、かなり痛い。登場したCIAはかつての上司であるハンリー。コートを助けてくれるも。その手段が電撃ショックなところがハンリーの恨みを感じなくもない。ラストは必死で救出したラウラに清々しく振られて轟沈。ご愁傷様である。

 東南アジアに潜入するのにマラリア対策してなかったんかい?と言う根本的なところが引っかかる。プロの技量とコントロール不全な善人スイッチのミスマッチがジェントリーの魅力だから、プロの技量の方には疑問を持たせてほしくない。マラリア予防薬と治療薬とディートぐらい持っとけ!
 今回のサービスショット(?)は麻薬カルテルにとっ捕まっての拷問シーンだな。ラウラとのベッドシーンではなく! 拷問メニューは定番中の定番、マッドサイエンティスト風味な拷問官もよくある感じで新味はないが、痛そげな描写がリアルだったので良しとする。(何がだ?)

2017年9月13日水曜日

0054 暗殺者の正義

書 名 「暗殺者の正義」 
原 題 「ON TARGET」 2010年 
著 者 マーク・グリーニー 
翻訳者 伏見 威蕃 
出 版 早川書房 2013年4月 
初 読 2017/09/13 

 フィッツロイと袂を分かったジェントリーは、やむを得ずロシアマフィアの仕事を請け負って、やさぐれモードなところをかつての仲間であるCIAに捕獲される。
 しかし、殺されるかと思いきや意外にも共同作戦を持ちかけられる。SOS指令解除を餌にされ選択の余地はない。しかし、例によって、善人スイッチONで仕事前に厄介な事態に陥る。
 本命仕事もどんどんヤバくなって、文字通り怪我を背負込み元上官のザック・チームも危機。助けに戻った事をラングレーには小馬鹿にされ、個人的正義感を発動した結果さらに怒らせ、人質は殺されて、更に敵を増やし正真正銘の踏んだり蹴ったりの巻 。

 今回はかつての仲間で今は敵なCIAチームと一時休戦・共同工作。
 背後を心配しなくて良いのと気心知れた元上官との共同作戦ってことで、前回の緊迫感とはちょっと違った味わいもある。
 (元)指揮官ザックが上司としても戦闘員としても有能、さばけた性格で仲間想い。コートが実直に命令に従っていたのはザックも知ってるはずで、SOS指令には割り切れないものを感じているはず。そんなザックの折角の救いの手を払いのけちゃった形のジェントリー、ザックを怒らせたが、強引に命を助けて今後の展開には弱冠の期待が持てる。
次巻まで殺されないように頑張っとけ!

 それにしても、 女と逃げて砂漠で追われて砂嵐ってベタすぎじゃないか?。もーちょっと何とかならんかったのか? 
 「拙者でござるよ」とか、原文がどうなっているのか気になる妙な訳もあるが、鼻につくほどではない。背中に突きたった矢を見て、どうしても信じられなくて「うそだろう?」っておとぼけが私好み♪ 
 今回はちょっとヤク中気味のジェントリー、はらはらさせられたがなんとか生き抜いてくれてGJでした。 それにしても、ザックが本当にいい男だ。コートはずっとザックの下にいれたら幸せだったろうと思う。それに引き替え、ロイドといい、カーマイケルといい、敵役がいつも役不足。カーマイケルなど、どうしても伝説的人物、という気がしない。もっと含蓄のある敵を配置してくれたらさらに話が面白いのに。SOS指令の謎とキエフの謎は、ここでも明らかにならず。次回に持ち越し。

2017年9月9日土曜日

0053 暗殺者グレイマン

書 名 「暗殺者グレイマン」 
原 題 「The Gray Man」2014年 
著 者 マーク・グリーニー 
翻訳者 伏見 威蕃 
出 版 早川書房 2012年9月 
初 読 2017/09/09 

  堪え性がない!このお人好し!と冒頭から叱咤したくなるが、この性格だからこそこの物語。
 ロイドのような奴にまで「子犬みたいな奴」だと見破られているところが笑える。善悪ってそんなに簡単に判別できるものなのか?という疑問はさて置き、いささか単純で善良で無慈悲でお人好しな殺戮者という矛盾する性格と、それを凌駕する戦闘技能の高さに魅了されっぱなしだ。
 動けば動くほど怪我が増えて痛そう。実際泣いて痛がってるし。痛みに強いわけでもなさそうだけど、それでも彼を突き動かす動機は正義?責任感?あまりにも人間味のある暗殺者。次作が楽しみである。
 初っぱなからジェントリーの履歴を事細かにご披露してくれてるおかげで、「彼は何者なのか」などと考えなくてすむのが吉。ひたすら彼の戦いに酔いしれるだけ。
 いやあ、テンション上がるわ〜。結構な爽快感がある(笑)。ロイドが頭が悪すぎて胸くそ悪いけど、そこはリーゲルも同じ気持ちなので彼のプロフェッショナルで補ってもらう。サー・ドナルドとモーリスが渋くて良い。
 アメリカ人と書いてあるだけでなんとなく「バカ」と書いてあるような気がするのは、たぶん馬鹿ブッシュとトランプのせい。

✓「一日に二度くらいサンドイッチを食べさせて、キッチンのコーヒー・ポットには熱いコーヒーを入れておき、彼がここにいることは忘れろ」・・・・・・猫? 
✓「おれが重武装し、憤怒し、外にいるからだよ」・・・・・・!!! 
✓クレアは、ケイトの口を手でふさいで、悲鳴が漏れないようにした。・・・・・・クレア偉すぎる。8才なのに、双子なのに!将来ドンおじいちゃんの会社の跡を継いだクレア嬢とそれにかしづく元暗殺者、って構図を妄想して楽しむ。 
✓「ご提案に、ひとつだけ些細な問題があるのですが」・・・・・・コートに惚れた。

2017年9月2日土曜日

0052 The Last Detective (Cole and Pike Book 9)

書 名 「The Last Detective (Cole and Pike Book 9)」  2003年 
著 者 Robert Crais 
初 読 2017/09/02 

 『L.A.Requiem』に続くC&Pの9作目。
 冒頭から惜しげも無くコールの過去が明かされるこの話、コールの過去をほじくり返していたぶる作者クレイスが相当な鬼畜っぷりだ。メンタルやられっぱなしのコールが読んでいて可哀想すぎて、胃のあたりがきゅーっとなってくる。
 でもヴェトナムでコールと同じ小隊に属し作戦中に戦死した親友の父がコールを労ってくれたり、陸軍基地で働いていた海兵隊の退役軍曹がコールに良くしてくれたりで、少し気持ちが救われたりもする。このアメとムチ感がまた、クレイスらしく感情を揺さぶってくる鬼畜っぷりだ。また、事件担当の少年課刑事としてキャロル・スターキーと鑑識のチェンが登場。
 なお、作中でマイクル・コナリーのボッシュが友情出演している。ちなみに、コールのほうは、ボッシュシリーズの『暗く聖なる夜(下巻)』に友情出演している。どこかよそのレビューでも書いたけど、この二人は住まいも近いのだ。コールは、ウッドロー・ウィルソン・ドライブのマルホランド・ドライブからハリウッド側の南斜面に下ったあたりに居を構え、ボッシュは同じウッドロー・ウィルソン・ドライブの、マルホランド・ドライブ(尾根)を挟んで反対側の、スタジオシティを望む北側斜面に住む。ボッシュの家の前はコールのランニングコースで、かつてロス大地震のあと、シャツを脱いで自宅前で瓦礫の片付けをしていたボッシュを、通りかかったコールが黙って手伝った、というエピソードがこの本で紹介されている。
 その時ボッシュが上半身裸だったので肩の入れ墨があるのが分かり、コールはもともとロス市警で見かけていた刑事がヴェトナム帰りだということに気づき、密かな敬意を抱いていたのだ、と。
 ちなみに、ボッシュは1968年から、コールは1970年からヴェトナムで従軍している。ふたりとも陸軍。ボッシュは第一作にあるとおりトンネル兵だった。コールはこれまで邦訳本で「特殊部隊」と書かれていたので、グリーンベレーか?と思っていたが、この作品でレンジャー部隊だったことが判明。以下、邦訳シリーズ読者向けにあらすじ公開につき、ネタバレ御免。嫌な方はスルー推奨。

 5日間の予定でコールの家に泊まりに来ていたベンは、こっそりコールの私室に忍び込んで宝物探しをする。
 コールの私室には古いSF映画とホラー映画の素晴らしいコレクションがあって、コールはいつでもベンに観せてくれたが、ベンはもっと凄い何かを見つけたかったのだ。ベンはクロゼットの上段に隠してあった箱を発見する。 中にはメダルケース5個と連隊記章、色褪せた写真が入っていた。これだ!とベンは興奮するが、そこでコールに見つかってしまう。
 こっそり私物を漁ったことを反省しつつも好奇心を抑えられず、ベンはコールを質問攻めにする。
 シルバースター勲章が2個とパープルハート勲章(名誉戦傷章)があった。写真の人物の肩にはRANGERのタトゥー。コールはレンジャーとは兵士の一種だとベンに説明する。レンジャーは何をするの?と尋ねるベンに腕立て伏せをするのさ、とはぐらかすコールは言葉すくなだった。
 コールはベンにシルバースターのうちの一つを与える。
 この数日後、ベンが誘拐された。

 ベンを探し回るコールの元に1回目の脅迫電話が掛かってくる。犯人は「5−2」「これは報復だ」と告げる。5−2はコールが所属した偵察隊のナンバーだが、この小隊はコールを除いて全員戦死していた。
 事件の連絡を受け、ルーシーの元夫であるリチャードが乗り込んでくる。彼はコールを口を極めて非難する。コールは穏やかに受け流す一方、家の周囲でベンが連れ去られた痕跡を調査した。調べるにつれ、かつての自分と同じような戦闘経験を持つ人間の犯人像が見えてきて不安を強めたコールは、パイクに応援を求める。2回目の脅迫電話。犯人は「これは報復だ。彼は26人の民間人を虐殺した。仲間は口裏を合わせたが、コールは彼らを信用せず、殺した」と告げる。
 リチャードはコールの過去を調べ上げ、彼が少年時代、暴行傷害・自動車窃盗などの罪で刑務所に入る代わりに従軍したのだ、とルーシーに暴露。コールは秘密にしていたわけではない、とルーシーに言う。ただ不遇だっただけだ、と。ルーシーはコールを信じる、と言うもののベンのことで追いつめられており、コールの心情に配慮する余裕はなかった。
 ベンをコールに預けたのは間違いだった、とルーシーは言い、コールに捜索から手を引くよう求める。「君とベンは僕の家族なんだ」と訴えるコールに「いいえ、貴方は私達の家族じゃない」とルーシーは答える。ひとり、車の運転席で涙を流したコールを遠くから見守っていたのは、パイクだけだった。
 
 犯人が自分の陸軍の人事記録を入手したのではないかとコールは疑う。人事記録は秘匿されているので、入手する方法は限られている。その履歴から、意外な線が浮かび上がってきた。スターキーとジョンの捜査で実行犯が割り出され、やがて事件の全容が見えたてきたが。。。。

 謎解きは『容疑者』レベルのあっさり感。それよりも回想シーンで4人の戦友を失う戦闘シーン(コールが親友アボットの遺体を守り抜く)、母がコールの名前をエルヴィスに変えた出来事や、戦友に父の事を聞かれ「知らない」と答えるシーン、アボットを生きて連れ帰れなかったことを詫びるコールにアボットの父が、いや、連れて帰ってきてくれた、とコールを労るシーンとか、これでもか、と心を揺さぶられる。ちなみにアボット家にはエルヴィスという名前の孫がいるらしく、すこしだけほっこりする。

 コールは死闘の末、ベンを取り戻す。しかし、ベンのために静かで安心できる環境を取り戻すことを最優先したルーシーは、ベンと共にルイジアナに去ったのだ。
 
C&Pのペーパーバックは何種類も出ているが、このシリーズの表紙が一番好き♪