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2026年6月30日火曜日

0596 サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 」
原 題 THE SECRET CASEBOOK OF SIMON FEXIMAL」2015年
著 者 KJ・チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2021年12月
文 庫 363ページ
初 読 2026年6月27日
ISBN-10 4403560482
ISBN-13 978-4403560484
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136178079

 19世紀末から20世紀初頭のイギリス(主にロンドン)を舞台にした、ゴシックロマン+M/M。霊能者のサイモン・フェキシマルとその相棒で著述家のロバートの物語。19世紀後半のオカルトに覚えがあれば、面白さはたぶん倍増する。当時の神秘主義の流行や、諸々の作品群へのオマージュに溢れてる。

 耳なし芳一みたいに、躰の上を経文ならぬルーン文字の呪文がのたくっているサイモンと、自身の幽霊事件がきっかけで彼に出会って恋をした新聞記者のロバート。2人の出会いの物語から、かずかずのおどろおどろしい事件、2人の関係が恋愛の上でも、仕事の上でも、そして霊的な結びつきの上でも深まる。密やかに愛情深い関係を築き、しかし、第一次世界大戦が始まる。霊能者たちももれなく戦争の道具として利用され、遂に2人も行方不明となった由。しかし、2人のこれまで語られなかった冒険と、秘められ、大切に温められてきた愛を綴った、ロバートの手によるサイモンの事件簿の原稿を手にした、ロバートの長年の友人である編集者のヘンリーは、2人が密かに南欧あたりの人里離れたコテージに居を移し、満ち足りた愛の生活を営んでいることを夢想する。

 同性愛即犯罪だった生きにくい時代と、戦争の世紀に突入した世相が、汚水の悪臭漂うロンドン下町の埃っぽく薄暗い汚さ、ゴシックロマンの濃厚な闇と交じりあって、2人の人生に苦難の色を添えている。その中にあって、不器用で実直で有能なサイモンと、直情で陽気で行動力のあるロバートのパートナーシップは最高。暗い世相の中でキラキラと光るような、2人の気持ちを愛おしく感じる。

2023年6月30日金曜日

0436 カササギの飛翔〜カササギの魔法シリーズ3〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ(3)カササギの飛翔」
原 題 「Flight of Magpies」2014年
著 者 KJ.チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2023年2月
文 庫 352ページ
初 読 2023年6月28日
ISBN-10 4403560539
ISBN-13 978-4403560538
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114585655

 前巻では「紳士」なクレーンに感心し、惚れ込むことしきりだったのですが。2人の中も深まっただけ、クレーンの独占欲も支配欲も深まったのか、変態度も・・・・(^^ゞ
 実のところ、ベッドの中ではとことん支配されたいスティーヴンと、余すところなく支配欲を発揮したいクレーンはベストカップルなんですが。2人とも外面とのギャップが激しすぎでクラクラする。

 審犯機構を潰したい協議会の、陰湿なやり口で予算も宛てられず、欠員補充もされないまま、大ロンドンの能力者絡みの犯罪の捜査や取り締まりに忙殺されるスティーブン。自分にしか出来ない、と頑張りすぎてしまうスティーヴンに対して、変わりの利かない仕事はない、と力説するクレーンの台詞が、いや、合理的だし、耳が痛いわ。
 おまけに協議会の悪意の裏には、宿敵ブルートン夫人の暗躍があった。
 クレーンの血に潜む〈カササギ王〉のちからを渇望する能力者たち。
 今回は、スティーヴン、クレーンがそれぞれ捕らえられてしまい、危機一髪でした。

 ご先祖様の力も威光も振り払って自分自身であることを選ぶクレーンとスティーヴンに幸あれ。ついでに、メリックとセイントのカップルにも。
 おまけ短編の4人で迎えたクリスマスのお話もステキだし、エピローグの舞台が日本だなんて、どういうサービスよ! もう、日本で花を愛でながら、どうぞ幸せに暮らしてください。

2023年6月27日火曜日

0435 捕らわれの心〜カササギの魔法シリーズ2〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ(2)捕らわれの心」
原 題 「A Case of Possession」2017年
著 者 KJ.チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2023年1月
文 庫 380ページ
初 読 2023年6月26日
ISBN-10 4403560520
ISBN-13 978-4403560521
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114550665

 2巻目の表紙も、美しく、そして色気がある。
 ただこの2人、本当は40cm近く身長差があるんですよ。たぶんスティーブンの頭の先が、クレーンの肩に届くくらいなのでは。絵的にはちょっと難しいかな? 話中で、体の大きなクレーンが、小柄でやせっぽちのスティーブンをすっぽり抱きすくめたり、ベッドの中で丸くなったスティーブンをクレーンが腕の中にかいこんで寝かしつけたりするのがめっぽう良いんですけどね。まあ、それはさておきましょう。

 体のサイズはともかくも、一流の能力者として立派に自立しているスティーブンですが、彼自身は天涯孤独で、同じ能力者の間でも距離を置かれる存在であり、心を許せる数人の仲間の他は友と呼べる者もなく、仕事に誇りを持っているといいつつ、現実にはその仕事を失ったら生きて行く術がない、という不安定で寄る辺のない身の上。それが身に染みているからこそ、全てを持っていて、なにものも怖れないクレーンの愛を信じきることができない。そういうスティーブンの葛藤ごとまるっと包み込むクレーンの深くて真っ直ぐで強い愛情が素晴らしい。そしてその想いは抱いているだけではいけなくて、きちんと、「言葉」にして相手に率直に伝えなければならない。そんなクレーンの人間としての真っ当さ、ゆるぎなさが、この作品の芯です。

 この巻ではこの2人、冒頭から恋人同士ですから、それはもう遠慮なく、愛し合ってます。私はまったく真っ当な感性の人間なので、なぜベッドの支柱に縛り付けて変態的にいたすこととが、彼の中でスティーブンを〈崇拝する〉ことにつながるのか、もうまったく理解できませんが!(ホントですよ) おまけにスティーブンはM寄りの気質があって、疲労や葛藤が深まると、恋人に乱暴に扱われたがるんですよ。本当は繊細に優しくしたいと願いながらも、そんなスティーブンの要求に激しく応えるクレーンが、それなのにとてつもなくよい男である、という点について私の脳は若干理解が追いつかない。ですけど、その倒錯っぷりを遺憾なく発揮しているクレーンが本当に紛れもない紳士なんですよ。
 
 時は19世紀英国で、神に背く同性愛が法律上の犯罪として投獄の対象となる、彼ら性的異端者には生きにくい時代と土地柄。その英国で仕事をするスティーブンのために、自らも上海に戻らず英国に身を置き続けているクレーンを、脅迫しようとする輩が現れる。一方、ロンドンの下町、貧民街で巨大化したドブネズミが人々を襲って食い殺す事件が発生。スティーブンの能力者チームはこの事件を追っている。ドブネズミがクレーンの周辺の人物を襲うに至って、2人の関係が仲間にバレ、スティーブンはかなり恐慌状態に陥りますが、仲間達は暖かく2人を受け入れてくれて一安心。2人は協力して事件の解明に乗り出し、化けネズミを操っているのは殺されて正しく弔われずに死霊と化した上海のシャーマンであると判る。この死霊が、力の溢れるクレーンの体を欲して、乗っ取りを企み、そしてカササギ王の片割れたるスティーブンがそれを阻止する。
 と、いう粗筋ですが、それよりもこれはもう全編、クレーンからスティーブンへの愛の告白です。メインはそれ。堂々たるラブロマンスでした。
 

2023年6月25日日曜日

0434 カササギの王〜カササギの魔法シリーズ1〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ1 カササギの王」
原 題 「THE MAGPIE LORD」2017年
著 者 KJ・チャールズ    
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2022年12月
文 庫 290ページ
初 読 2023年6月24日

ISBN-10 4403560512
ISBN-13 978-4403560514
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114512453

   この本を読むなら、まずはかささぎの画像をググって、この鳥の姿形を目に焼き付けてから読み始めてほしい。羽根と尾を広げて飛んでいる姿が非常に美しい、黒と白と青の羽が極めて印象的な鳥です。飛んでいる姿をネットで探していたら、こちらのブログの写真が素晴らしかったので →「日本全国の山・川・海に生息している野鳥達に会えるサイト」

 ついでに、この本と同じ年に原作が上梓されてベストセラーとなっている『カササギ殺人事件』にも登場する“カササギの数え歌”も予備知識をもっているとなお良い。
「カササギの数え歌」は17世紀まで遡る伝承で、鳥の数を数えて吉兆をうらなう子供の遊びうたのようなものらしい。子供の頃に靴を前に蹴り投げて、裏になるか表になるかで明日の天気をうらなった遊びのようなものか? カササギは烏の一種の比較的大型の鳥で、日本にも広く生息しているが、ヨーロッパでも日本の鳩や烏並みに普通にいる野鳥らしい。翻訳としては、「一つ」よりは「一羽」のほうが良かったかも?
ストーリーのあちこちで、結構効果的にこの数え歌が使われている。
 この本の冒頭に載っている数え歌は以下を参照。

一つは哀しみのため
二つは歓びのため
三つは女の子のため
四つは男の子のため
五つは銀のため
六つは金のため
七つは明かしてはいけない秘密のため
八つは海の向こうへの手紙のため
九つはとても誠実な恋人のため 
KJ・チャールズ. カササギの魔法シリーズ(1)カササギの王 (モノクローム・ロマンス文庫) (p.10). Kindle 版. 

 さて、時は19世紀英国。17歳で英国から放逐されて以来、上海で生き抜き貿易商としてのし上がっていたルシアン・ヴォードリー(37歳)は、伯爵だった父と、跡継ぎの兄の相次ぐ自殺でクレーン伯爵の爵位と所領と財産を継承することになり、20年ぶりに英国に帰国した。しかし、冷血非道だった父と兄を殺したと思しき呪いがルシアンの身にも及ぶ。ルシアンは英国のシャーマンである「能力者(プラクティショナー)」を頼り、彼の元に派遣されて来たのが、痩せた小男のスティーブン・デイ。しかし、彼の両親はヴォードリーの父と兄によって非業の死を遂げており、スティーブンはヴォードリーの血筋を恨んでいた。図らずも親の敵であるヴォードリーの血縁者を助けねばならなくなったスティーブンの心中は穏やかではないが、それ以上に、ヴォードリーの血族に向けられた魔術による呪いは邪悪なもので、スティーブンは看過することができない。小柄だが印象的な琥珀色の瞳と力を秘めた手を持ったスティーブンは、英国の超常能力者を束ね、違法とされる魔力の行使を取り締まる「審犯機構」の「審犯者(ジャスティシアー)」だったからだ。
 という感じで、ルシアンとスティーブンが、反発しつつも惹かれあいつつ、ヴォードリーの屋敷とルシアン自身に幾重にも掛けられた呪いを解しながら源を辿っていく。
 読んでいて“審犯者”などの造語の座りが悪くて馴染めなかった、というのは傍に置いておいて。
 空気が濁って動かない、陰気で湿っぽい石造りの古い屋敷、座り心地の悪い馬車、陰湿な執事や召使い、淀んで力を失った呪われた土地、総じてゴシックロマン調というか、いかにも英国っぽい陰鬱な雰囲気の中で進行する黒魔術。
 ではあるのだけど、要所要所で地崩れするみたいにルシアンとスティーブンの2人がロマンス方向に雪崩れ込む(笑)。その唐突さで一瞬、目眩のようにくらっとして意外にもこれが面白い(笑)。
 魔力絡みの本筋は、ルシアンのご先祖初代クレーン伯爵が、能力者の律法を築いた“カササギ王”と呼ばれた稀代の能力者だったことが判明したあたりから、これはルシアンも能力に目覚めるのか、とか、いろいろな可能性がちらちらと頭を掠めて、焦点が定まらずにバタバタしている間にクライマックスになって、どたばたと片付いてしまった。個人的には、もっとドラマティックに盛り上げてもよかったのに、と少々物足りなかった気がする。しかし、あっちの方は途中散々お預けを食らったり、スティーブンの葛藤やルシアンの男振りも素晴らしく、ラストで大いに盛り上がる。カササギが飛び回るラストがとくに印象的。ストーリーとしては★三つくらい、キャラクターと恋愛に関しては★五つ。次作を期待して間違いなし。
 なお、カササギの刺青にまつわる掌編も読む価値大いにあり。最後のお楽しみに♪

2022年2月27日日曜日

0335 イングランドを想え (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「イングランドを想え」 
原 題 「Think of England」2017年
著 者 K.J.チャールズ    
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫) 2020年7月
単行本 285ページ
初 読 2022年2月27日
ISBN-10 4403560423
ISBN-13 978-4403560422
読書メーター    

 「イングランドを想え」という詩的な、もしくは知的な印象のタイトルにちょっと心惹かれて、中身も確認せずにAmazonでポチ。立て続けにジョシュ・ラニヨンを10冊以上読んできたので、ほかのモノクローム・ロマンス文庫はいかほど?と好奇心がもたげて手を出した一冊。


 で・・・・・!!「イングランドを想え」ってそーゆーことかよ!(爆)
 まあ、面白うございました。直情、正直で正義漢の元軍人カーティスと、ポルトガル系ユダヤ人で詩人のダ・シルヴァの冒険活劇、でございます。正直ものですぐに顔にでるカーティスが完全にシルヴァに手玉にとられておりますな。

 カーティスがね。モーリスの世界っていうか上流社会のパブリックスクール(男子の園)から、オックスフォード大学(選択的に男社会)を出て、そのまま陸軍(男社会)に進み、愛情はともかく男に付きものの欲求を男同士で処理することは別段問題視していない、ってのも驚きだが、そこから、男に友情ではない愛を覚えるまでには東尋坊から飛び降りるくらいの落差があるらしいのが面白い。シルヴァに誘惑されて(からかわれて)顔面蒼白でだらだら冷や汗かいてるのがねえ。
 愉快なMM小説でした。なんか、箸休め的に、気晴らし的に、ちょうど良い感じ。大言壮語吐いてたダ・シルヴァ(ダニエル)が、簡単に敵の手に落ちたり、あっさりと意識不明だったり、お嬢さん方のウチ一人は電話交換機に精通している、とか、一人は射撃の名手、だとか、なんでそもそもこの二人がここに居合わせているのか、とか、なんつーか、なんつーかだけど、ちょっと(かなり)ご都合主義だけど、まあ大事なのはそこではないっっていうことで。ついでにいうと、カーティスがあまりにも直情で軍隊式筋肉バカで力任せなんで、色事シーンもぜんぜん色っぽくなかったです(笑)。