ラベル モノクローム・ロマンス文庫 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル モノクローム・ロマンス文庫 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2026年7月31日金曜日

0560 Ghosted (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「Ghosted (ゴーステッド)」
原 題 「Ghosted」2023

著 者 ジョシュ・ラニヨン
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2026年7月
文 庫 424ページ
初 読 2026年7月25日
ISBN-10 4403560679
ISBN-13 978-4403560675
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136840330

 久しぶりのジョシュ・ラニヨンの新刊。既刊のシリーズの続きではないが、FBI物ではあるので、きっとこの世界のワシントン州シアトルにはエリオット&タッカーがいて公私ともに仲良くしているだろうし、ロスのFBI支局にはジェイソン・ウエストがいて、ワシントンDC・クワンティコのFBI本部に勤務するサム・ケネディと遠距離恋愛中なんだろう。
 そして、この作品の主人公アーチーもFBI特別捜査官で、1年数ヶ月、過激派武装組織に潜入捜査をしていた。最終的に身バレして銃撃され、ターゲットは逮捕、アーチーは重傷を負って戦線離脱し、故郷のトゥインクルトンに傷病休暇で戻ってきた。・・・・かつて、恋人だったボーが警察署長を務める町に。
 そして、アーチーが戻ってきてすぐ、アーチーの後見人であり養い親であったジョンが殺害される。頭部外傷の後遺症に悩まされるアーチーにも嫌疑がかかり、その捜査に当たるのは、辛い破局の記憶がいまでもアーチーの心の傷になっているボーだった。

 そうね〜、アーチーは『殺しのアート』シリーズのジェイソンタイプ。ボーは『フェア・シリーズ』のタッカータイプ、かな。ざっくり男らしいボーに対して、アーチーの内面は柔らかくその悩みは深い。結構厚めな本なんだけど、読んでいると、延々アーチーのお悩みに付き合うことになる。

 日本のBLとはっきり違うな、と思うのは、アーチーがしっかりと自分をゲイだと認識していること。そして、アーチーはカミングアウトしており、ボーはクローゼット。どこかファンタジックでパラレルな感じが付きまとうBLと違って、現実感のある同性愛者の愛や困難、なんなら肉感もマシマシで描かれてる。とはいえ、そこそこいいお年になった2人で、しかも片方は、体力万全ではないアーチーなので、せっかくのチャンスも寝落ち(笑)
そんなこんなで、SEX描写はやや控えめ、アーチーとボーの悩みはマシマシな、ちょっと大人な恋愛事情でした。

 また、表紙、挿絵の門野葉一氏の絵が美しいことよ。完璧にこの絵が脳内に刷り込まれて、物語が進んでいく。憂いを含んだ青い目と紺青の目が見つめ合い、絡み合い。なんかもう、眼福です。

2026年6月30日火曜日

0596 サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「サイモン・フェキシマルの秘密事件簿 」
原 題 THE SECRET CASEBOOK OF SIMON FEXIMAL」2015年
著 者 KJ・チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2021年12月
文 庫 363ページ
初 読 2026年6月27日
ISBN-10 4403560482
ISBN-13 978-4403560484
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136178079

 19世紀末から20世紀初頭のイギリス(主にロンドン)を舞台にした、ゴシックロマン+M/M。霊能者のサイモン・フェキシマルとその相棒で著述家のロバートの物語。19世紀後半のオカルトに覚えがあれば、面白さはたぶん倍増する。当時の神秘主義の流行や、諸々の作品群へのオマージュに溢れてる。

 耳なし芳一みたいに、躰の上を経文ならぬルーン文字の呪文がのたくっているサイモンと、自身の幽霊事件がきっかけで彼に出会って恋をした新聞記者のロバート。2人の出会いの物語から、かずかずのおどろおどろしい事件、2人の関係が恋愛の上でも、仕事の上でも、そして霊的な結びつきの上でも深まる。密やかに愛情深い関係を築き、しかし、第一次世界大戦が始まる。霊能者たちももれなく戦争の道具として利用され、遂に2人も行方不明となった由。しかし、2人のこれまで語られなかった冒険と、秘められ、大切に温められてきた愛を綴った、ロバートの手によるサイモンの事件簿の原稿を手にした、ロバートの長年の友人である編集者のヘンリーは、2人が密かに南欧あたりの人里離れたコテージに居を移し、満ち足りた愛の生活を営んでいることを夢想する。

 同性愛即犯罪だった生きにくい時代と、戦争の世紀に突入した世相が、汚水の悪臭漂うロンドン下町の埃っぽく薄暗い汚さ、ゴシックロマンの濃厚な闇と交じりあって、2人の人生に苦難の色を添えている。その中にあって、不器用で実直で有能なサイモンと、直情で陽気で行動力のあるロバートのパートナーシップは最高。暗い世相の中でキラキラと光るような、2人の気持ちを愛おしく感じる。

2026年6月20日土曜日

0595 狼の見る夢は (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼の見る夢は」
原 題 「With Abandon」2011年
著 者 J.L.ラングレー    
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2015年6月
文 庫 481ページ
初 読 2026年6月14日
ISBN-10 4403560229
ISBN-13 978-4403560224
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/136022876

 『狼の遠い目覚め』で登場した、ジェイクの探偵事務所の事務員バイトのマットと、キートンの兄オーブリー。
 マットがジョージア州立大学に入学して、オーブリーの自宅のゲストルームに居候することになる。マットとオーブリーは初対面で“メイト”であることを悟るけど、オーブリーはゲイであることが許されない超保守的な南部で一族代々のホテルチェーンを経営し、代々続く家系や財産や、群れの“アルファ”までも継承しなければならない身で。“跡取り”は必須、いずれ結婚して子どもを作って、家を継ぐことが自分の務めと信じている。当然、ゲイだなんて、親にも打ち明けられないし、母親には結婚して子供を作ることを求められるし。
 メイトとの熱く手放しがたい恋、だけどとてもじゃないがカミングアウトなんてできない長男の責任感と苦悩。所詮、オーブリーの独り相撲って言ってしまったら身もフタもない話なんだけど、オーブリーの悩みは真剣。そこはお気楽な次男(キートン)がさっさとカミングアウトして、家を出てしまったりしたものだから、いっそう雁字搦めになってしまっていて。
 もちろんM/Mなだけに、あっちこっちSEXまみれ(笑)なんだけど、自分の生き方に悩む、しごく真面目なゲイ小説であった。

 マットについては、ヘンテコな色使いの服を着る天然、って感じの初出だったが、実は赤緑色盲で、マットなりに悩んでいたり、ちょっとヌケた感じだと思っていたのが、純真無垢で、努力家で家族思いの長男だったりと、相当イメージアップした。
 あとは、無理やり人狼化させられちゃったカーソンがかなり憐れではある。これからどうなるのかは相当気になるものの、カーソンとボスキーの恋物語を読みたいとは思えない(笑)。さすがにボスキーは強引すぎるだろ。この件に関しては、終始一貫してカーソンがかわいそう。
 マットの兄弟たちはこれからも苦労が多いだろうけど、長兄マットや次兄のローガンがしっかりしているし、ジェイク以下、群れの大人達も頼りになるし。レミ贔屓の私は、一番下のエディとダレンは、レミとジェイクが養子にして育てたらいいんじゃないか、と密かに思っているのだけど。(レミとエディの組み合わせサイコー!)

2026年6月14日日曜日

0594 狼の遠き目覚め (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼の遠き目覚め」
原 題 「With Caution」2008年
著 者 J.L.ラングレー
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2014年5月
文 庫 436ページ
初 読 2026年6月12日
ISBN-10 4403560172
ISBN-13 978-4403560170
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/135897720

 「狼を狩る法則」ではかなり嫌みな登場の仕方をしたあげくに、人狼に襲われて死にかけて、ジェイクとチェイの血によって人狼となったレミは、実は、16歳年の離れた弟のスターリングを父親の暴力から守り、父親代わりになって育ててきた良い奴だった。天真爛漫に育ったスターリングを見れば、傷を負ったレミが、どれだけ努力奮闘してスターリングを守ってきたか、分かろうというもの。とにかくレミが健気すぎて心が痛い。心からスターリングを愛してきたレミは、子供の遊び相手も上手で、読んでいる途中から、だんだんレミの印象が性別を超越してきた(笑)。同性愛嫌悪のように見えた言動も、父親から自分と弟を守るために創り上げた鎧のようなもの。メイトであるジェイクが側にいることで感じる安心感で、少しづつレミが安らいでいく様子に絆される。

 そのレミが、群の集会で他の“アルファタイプ”の狼たちに襲われそうになったことで、“オメガ”であることが判明、メイトがオメガであることが分かったジェイクは、これまでの群から独立して、新たな群を率いることになる。

 レミとジェイクがパートナーとして親密さを増して高まっていくこと、アルファに従属的で闘争力は弱いが、その共感力で群の連帯を強めるオメガとして、レミの能力が開花していくのと、レミが虐待親と対決し過去の傷を乗り越えていくという、レミの成長三本立てのストーリーである。

 アルファ気質で支配欲のあるジェイクがSMの性癖があるとか、ちょっとうへぇ、と思わないでもなかったけど、SMといっても、父親から惨い身体的虐待を受けてきたレミに対しては、ジェイクもそんなに大胆なことはできず、描写はごくソフトでした。

 結局、レミとスターリングは両親を喪うことにはなるのだけど、そもそも機能不全家族だったし、レミとスターリングには、群という新たな家族ができ、おまけにスターリングが、ジェイクの副官(ベータ)のリースのメイトなのが分かったり、その上、スターリング三形態の人狼ってことは、優秀で力のある個体であることは間違いなさそうなので、幸せな将来の予感がたっぷりでよかったです。

0593 狼を狩る法則 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「狼を狩る法則」
原 題 「Without Reservations」2006年
著 者 J.L.ラングレー
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2013年10月
文 庫 414ページ
初 読 2026年6月13日
ISBN-10 4403560148
ISBN-13 978-4403560149
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/135915673

 最初に「遠い目覚め」の方を読了してしまったのだが、こちらが1巻目。米国発M/M小説。冬斗亜紀さん翻訳(好き)。
 日本でいうBLカテゴリで、表紙イラストもそんな感じであるが、(いつもつい書いてしまうのだが、ボーイズラブってよりも、ゲイ・ラブロマンス。私の感覚が古いんだろうが、BLっていうとどうしても「少年愛」寄りな語感を感じてしまって。M/Mはもっとオス臭いっていうか、ガチムチ寄りっていうか、大人の恋愛寄り(当社比)。) そして、人狼(ワーウルフ)物でもある。
 人狼の群れを統率する概念として、アルファ、ベータ、オメガが出てくるが、これは狼の群れのヒエラルキーの話。いわゆるオメガバースはこちらが本家。アルファが群れのボス。ベータは副官。オメガは群れの調和者で、集団の維持の要になる、という設定。

 もっとも、この狼のヒエラルキーは、かつて人工での集団飼育下で観察されたもので、現在では、自然界における狼の群れは家族単位で構成されており、父(リーダー)、母、子供達で構成され、それほど厳格なヒエラルキーはないことが分かっているそう。この作品における「オメガ」の設定は、かつての狼ヒエラルキー概念における「最弱者」(集団のガス抜き役)と、現在の狼の群れの概念の「母親」(母性)がミックスされたような感じかと。 「人狼もの」の設定はいろいろあるらしくて、読み比べてみると楽しそうな気がする。

 さて、作品の舞台はニューメキシコ。
 ネイティブアメリカン(アパッチ)の居留地に程近いエリアに住む獣医のチェイことチェイトン・ウィンストン(ネイティブアメリカン)の元に、怪我をした白狼が運び込まれるところから。チェイは人狼で、このエリアの人狼の群れに属している。(おもにネイティブアメリカンで構成されているよう。そこに運び込まれた白人で白狼のキートン。
 チェイは、この白狼が自分の“メイト”(=伴侶。運命の恋人)であることを直感するのだが。
 なんとこの白狼が雄だった。自分はストレートだと確信していたチェイは大混乱。そしてストレートだった恋人に手酷く裏切られた過去のある生粋のゲイのキートンも、チェイを誤解して、断固拒絶・・・・・からの、急接近。運命には逆らえない♥️
 ほぼ最初から最後まで、全編ゲイSEX描写が全開だけど、とにかく明るく、前向きで健康な大人の恋愛って感じであるので、思うほどイヤラシくない。

 まあ、男女の恋愛ものだと、どうしてもジェンダーを感じて、自分的に陰にこもった感じになっちゃうので、男/男のほうが、他者的に(あるいみ無責任に)楽しめる、という個人的な感覚の問題もある。
 
 キートンが命を狙われたり、最初はホントに嫌なヤツだったレミが、瀕死の重傷を負って人狼の仲間になったり、とか物語の起伏も面白いし、人間だと、チビでやせっぽちで童顔のキートンが、狼としては最強だったりとか、登場人物もキャラ立ちしていて良き。読んでいて楽しかった。

 子供の頃、最初に買ってもらった本格的な読み物としての本が『おおかみ王ロボ』と『名犬ラッシー』(ポプラ社)で、依頼、オオカミの物語には特別な憧憬を感じる。人狼ものってなんだか特別なロマンがあるわ。そこに人種や同性愛、虐待、差別なんかの人間としての葛藤も加わって、物語としても面白い。

2025年8月17日日曜日

0563 好きだと言って、月まで行って (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「好きだと言って、月まで行って」
原 題 「To the MOON and BACK」2023年
著 者 N.R.ウォーカー
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2024年11月
文 庫 400ページ
初 読 2025年8月17日
ISBN-10 4403560598
ISBN-13 978-4403560590
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/129720163


 N.R.ウォーカーは、オーストラリアのゲイロマンス作家さん。初読み。翻訳は安定の冬斗亜紀さん。とても読みやすい。
 主人公の一人、ギデオン(ゲイ/シングルパパ/失恋直後/ヒゲのいい男/高学歴・高収入)の背景とか、もう一人の主人公トビー(ゲイ/イタリア系オーストラリア移民の家系/高学歴のプロのナニー(超有能))の背景とか、オーストラリアのLGBTQの様子とか、育児に関わる社会制度とか、ストーリーの背後にぎっしり詰め込まれているものがあって、これを全部読み解けたらかなり深いな、と思うけど、単純に不器用男2人がモダモダ恋に落ちるロマンスとして、十分に楽しい。
 出だしこそ、ヒゲのタフガイが慣れない子育てでおたおたしている話かと思ったが、この「ヒゲのタフガイ」が思いのほか繊細で、むしろ女性的(っていうか、こういう性格描写の語彙がどうしても性的役割分担を色濃く反映しているのは、なんか良い形容詞がないものか)なのが、ミスマッチで面白い(というか、これをミスマッチと感じる感性がそもそも性差に対する意識が固定化しているよな)というか。
 読んでいると、さりげなく、固定化したジェンダー意識に揺さぶりをかけられているようで、なんか意識の柔軟体操しているみたいで良いよな、と思う。日本の社会でLGBTQが社会権を得たのって、BLもそれなりに大きな役割を果たしていると思うのよね。

 ストーリーは、突然シングルパパになってしまって困惑・疲労困憊している男のところに、超有能な男性ナニーがやってきて、あっというまに生活改善して、あっというまに恋に落ちる、というまあ、ありがちな感じなんだけど、その恋に落ちる過程や、2人の心理描写がとてもとても良い。早くに親を亡くして親の愛情に飢えていたギデオンが、トビーの大家族に心温められながらも、寂しく感じる描写なんかもすごく素敵だ。も〜〜〜あんたたち両思いなんだから、もっとシャッキリしなさい!と言いたくなるが、この、これまで自分が世の中的に慣れ親しんできた男性性とは、性質を異にしたナイーブな優しさ全開の2人に、なんだか未来への希望を感じちゃう。・・・・とちょっと壮大な感じの感想になってしまった。
 あと、雇用関係や雇用契約に対する意識がはっきりしているなあ、と思う。さすが、ジョブ型雇用の欧米社会。権利—義務関係を明確にさせようとする意識がここまで恋愛の足を引っ張るって、日本人的な感覚だとあまりないのでは。そういう意味でも、「もだもだしすぎだ!」とうっかり感じてしまうかもしれないが、きっと当人たちにとっては、そして彼等の文化規範の中では、独立した個人として、とても大切なことなのだ。

 以下は余談だが、先日、子育て仲間だった友人と呑みながら話をしていて、なぜかBLの話になり、友人は「BLは女の子の健全な成長に必要なのよ!」(ちょっと細部はうろ覚え)と力説していて、私もなるほどなあ、と思ったのよ。
 男女の恋愛物語を読んだり見たりしたら、女の子は女性側に移入せざるを得ない。“女性らしい”感じ方、“女性らしい”振る舞い、女性としての性的役割を、作品のを通じてすり込まれる。私はそれが苦手で、恋愛小説はあまり読まないのだけど、BLならば、キャラクターのどちらに移入しても可だし、それこそニュートラルに、若干は客観的に、恋愛を疑似体験できる。なにをどう感じるかを(精神的にも、肉体的にも!)強制されることはない。自己を確立する時期の思春期の女の子にとって、BLは成長のための梯子になり得るのかもしれない。

2024年1月3日水曜日

0455 ロイヤル・フェイバリット (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「ロイヤル・フェイバリット」
原 題 「His Royal Favorite」2016年
著 者 ライラ・ペース     
翻訳者 一瀬 麻利
出 版 新書館  2020年12月
文 庫 512ページ
初 読 2023年12月31日
ISBN-10 440356044X
ISBN-13 978-4403560446
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/118037864 


     前作「ロイヤル・シークレット」ラストの翌朝からスタート。上下巻でもいいくらいのつながり具合。昨夜、重大な決意をしたものの、すでに翌朝若干及び腰なベンジャミン・・・(笑)
      タイトルの「ロイヤル・フェイバリット」とは、タブロイド紙が、同性であるがために正式な婚姻(教会婚)はできないので「ロイヤル・コンソート」とは呼べないベンジャミン・ダーハムに奉った呼び名。王の恋人を指す、懐古趣味的な呼び方、とは作中の説明。
     どなたかが読書メーターのレビューで書かれていたが、表紙が壮大なネタバレなので、とにかくここを目指して読んでいく512ページです。
     その道のりはまさに、ジェイムスが王位を目指す大波小波。と同時に、まったく主義ではない、制約だらけで自由のない人生を受け入れることができるのか、というベンの葛藤。タブロイド紙やパパラッチとの攻防なんてメじゃなかった。愛するジェイムスの為、ベンが未知の領域で努力する。真実の愛だからこそ乗り越えられた数々の困難。王位を失うと知った時の、王位継承のために私生活とプライバシーの全てを犠牲にしてきたジェイムスの怒りはかなりリアルに感じる。
     そして、ジェイムスを守るという一点において、ベンは岩盤よりも強固で頼もしい。おとぎ話のような王室恋愛ものではあるのだが、ベンもジェイムスもその苦悩はリアルで、この2人の信頼と愛に、胸が熱くなる。
     前作ではけっこうチャラいしちょっとガサツだし、ジェイムスに対する振る舞いにはいささかいただけないものもあったように思うベンだが、ジェイムズの為に、(不本意なところはあるものの、)どんどん洗練され、どんどん良い男になっていく。なにしろ、上等なスーツが意外にも似合う男なのだ。ダブルのスーツの肩幅胸幅は男らしく、腰のラインはすっきりと、とても初めてとは思えない風格でバッキンガム宮殿に乗り込み、王族とまみえるベンジャミン。もともとは一匹狼だったベンジャミンが、王室の中で控えめながら筋の通った知的な人間として、地歩を固めていくのが頼もしくも心地良い。そしてまた、2人に関わる女性達がチャーミングだ。キンバリーは超有能、カサンドラは逞しく、そして王妃!「私だって現代人になれるのですよ」の台詞に全部もっていかれてないか?
     個人的には、ベンがジェイムスを堂々とゲイクラブに連れ出すシーンがお気に入りです。年末年始をこの本と過ごせて幸せだ。

2023年12月30日土曜日

0454 ロイヤル・シークレット (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「ロイヤル・シークレット」
原 題 「His Royal Secret」2016年
著 者 ライラ・ペース     
翻訳者 一瀬 麻利
出 版 新書館 2019年11月
文 庫 390ページ
初 読 2023年12月30日
ISBN-10 4403560385
ISBN-13 978-4403560385
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/118018746   

 実は、続刊の『ロイヤル・フェイバリット』を先に入手しており、あらかた読んでいたので、こちらはある意味安心してほっこりと読むことが出来た。
 ロイヤル・フェイバリットのベンと比べると、こちらの方はずいぶんとまあ、奔放で野性的である。そしてジェイムスが初心で誠実でなんともいじらしい。こんな繊細な恋人の手を離せるとしたら、そりゃあ人でなしでしょう。

 出会いはケニア。雨期のスコールに降り込められたサファリリゾートのスイートで、雨の中走る青年を呼びとめ、個室に招きいれたベンは、その青年が英国皇太子であることに内心驚愕する。そして、チェスの勝負を仕掛けて、駆け引きするうちに、相手が(も)ゲイであることに気付く・・・・あとは、どうやってベッドインするか??? 一度だけの火遊びのつもりがあらゆる意味で忘れがたい記憶となり、そして、二度目の出会いで熱い恋になり、やがては深い情愛になる。
 相手が英国皇太子でなく、同性でなければ、何の変哲もないごく真っ当な純愛ラブストーリーかもしれないけど、そこは『ローマの休日』と同様、相手が王族なればこそ、の葛藤が。おまけにクローゼット入りの禁断の恋。ベンジャミンときたら、皇太子に向かって「あんた」呼ばわりだし、少々が粗野に過ぎるのでは、とか不躾すぎないか?とか気になるけど、これはおいおい、ジェイムスの立場や高貴さに気付く過程でだんだん(下巻では)改まってくるので、まあよしとしておく。

 なにはともあれ、最後に愛が勝つ的な、素敵なお話である。ささくれた心のための絆創膏。2人の本当の奮闘はこれから。次巻、『ロイヤル・フェイバリット』こそ必読です。

ジョシュ・ラニヨンは良い。



 日本でモノクローム・ロマンス文庫から出版されている、ジョシュ・ラニヨンの作品(冬斗亜紀さん翻訳)はどれも素晴らしいのだが、表紙の美しさと、主人公の恋心の切なさがピカイチなのはこの「殺しのアート」シリーズ。
 強面・鈍感・傲慢・鉄面皮なのに内実は素朴で恋愛に不器用なFBIのプロファイラー、サム・ケネディと、FBIロス支局に勤める美術品犯罪の専門捜査官のジェイソン・ウエストの恋愛と犯罪捜査。ミステリー、サスペンス、ロマンスの黄金比。美術を専門とするジェイソンは感受性が豊かな一方で頑固で無鉄砲なところもあり、ジェイソン1人でもなかなか危なっかしいのに、そこにサムという巨大は不安定要素が加わるものだから、ジェイソンのメンタルの振り幅も自ずと大きくって。サムとの関係での葛藤と、それを凌ぐ愛情が濃くて細やか。ジョシュ・ラニヨンの作品はどれも切なく優しく繊細で、それなのに強く逞しく、癒やし効果も抜群なので、落ち込んでるときの心に効く。
 
 そんなこんなでこの2023年の年末、新刊の「ムービータウン・マーダーズ」刊行をきっかけに、つい、再読モードになってしまった。
 
 なにより、ミステリーとしてもサスペンスとしてもとても練れていて、途中に濡れ場が挟まってもダレずにラストまでテンションを上げていくストーリーテラーっぷりが素晴らしい。
 これから先、ジェイソンのストーカー殺人鬼との対決がどのように展開していくのか、ドキドキしている。

2023年12月3日日曜日

0451 殺しのアート(5)ムービータウン・マーダーズ

書 名 「ムービータウン・マーダーズ 殺しのアート5 」
原 題 「The Movie-Town Murders : The Art of Murder 5」2022年
著 者 ジョシュ・ラニヨン    
翻訳者 冬斗 亜紀
装 画 門野 葉一   
出 版 新書館 2023年9月
文 庫 336ページ
初 読 2023年12月3日
ISBN-10 4403560571
ISBN-13 978-4403560576
読書メーター
    

 何と言っても、この表紙の美しさ。イラストは門野葉一氏。このシリーズの表紙が私をBLの門に誘ったのは間違いのないところです。しかし、今回、変装?偽装?の為とはいえ、ジェイソンがスキンヘッドになっちゃったのは、絵的にはいただけない(爆) 米国のM/M的にはアリなのか?たぶん。なにしろ、これら米国産M/Mのペーパーバックの表紙ときたら、もう。アレがあちらの理想型なんだよね。うん。ムッキムキの裸体バーン! 濃い眉、扇情的な青い瞳、整った鼻、もの言いたげな唇。割れた顎。そして割れた腹筋。めっちゃ男臭さい。なんだかリアル過ぎて、ファンタジーがかった日本のBLファンはドン引きしそう(笑)

 で、中身の方ですが。
 前作、『モニュメントマン・マーダーズ』で失職の危険を冒し、サムとの関係まで破綻したかに思えたジェイソンでしたが、そこは無事に乗り越えたところから、本作はスタート。
 数日であれ、サムに見限られた、と思えた時間がジェイソンの心に残した傷はまだ生々しく、ジェイソンは自分の抱えた事件を、なかなかサムに相談することができない。サムも、それが自分がジェイソンに付けた傷のせいだと判っている。しかし、ここをちゃんと会話で理解しあい、乗り切ろうとするところが、さすがの米国人クオリティ。日本人にはマネできないところ。まあ、遠距離恋愛なので、とりあえず電話で語り合うしかない不自由さ故でもあるのだが。

 今回、ジェイソンに割り当てられた任務はUCLAへの潜入調査。といっても、自殺とも事故とも不明(ただし殺人ではない。)な映画学の准教授の背後関係の再調査。なぜなら死んだ准教授の祖父が、有力な元上院議員だったため。たいした成果は求められておらず、ただ、有力者の気持ちを慰めることがその主要任務。ジェイソンもそこは理解している。ジェイソン自身も上流階級の身で、UCLA出身でもあり、老元上院議員を宥めるのに適任と見做されたことも判っている。失職を免れたあとの失地回復のためのリハビリとしては異論ない、と思っている様子。
 だがしかし、それほどノリノリでもなく調査を開始したにもかかわらず、自殺にも事故にも思えない。となれば殺人。故人が発見したという稀少フィルムを巡り、いったい何があったのか・・・・は、本編を読んでいただきたいところ。

 一方で、サムの親友であり、恋人であったイーサンを殺害したとされる“ロードサイド・リッパー”の捜査にも新たな展開が。そしてイーサンその人にも謎が生まれたのか? サムの心情も気になるところ。

 そして例によってラスト。ジェイソンをストーキングする殺人鬼カイザーが、ジェイソンのバンガローの隣の空き家に住み着いていた、だと? 残されたのはジェイソンの家族がジェイソンの為に置いていたガードマンの死体と、ジェイソンの心に打ち込まれた恐怖のみ。こちらももうそろそろ解決してくれないと、ジェイソンの神経も、読者の心臓もちそうにない。これってミステリーじゃなくてホラーだったのか?ってか、カイザーと決着を付けるであろう最終刊は確実に、サスペンスになりそう。次巻はいつになるんだろう?待つのがツライ。

2023年7月1日土曜日

0437 ウィンター・キル (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「ウィンター・キル」
原 題 「Winter Kill」2015年
著 者 ジョシュ・ラニヨン    
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館 2021年2月
文 庫 350ページ
初 読 2023年6月30日
ISBN-10 4403560466
ISBN-13 978-4403560460
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114655233

 主人公のFBI特別捜査官、アダム・ダーリング・・・・「フェア」シリーズの主人公の1人、タッカーのロサンゼルス時代の元恋人。そして、そのアダムのバディのJ・Jは、「殺しのアート」シリーズ主人公であるFBIロス支局のジェイソンのバディとしても登場している。後ろの方では、クワンティコの天才分析官のサム(「殺しのアート」シリーズのジェイソンの恋人)が登場。ジョシュ・ラニヨンの一連のFBIシリーズに連なる一作。
 そのFBIロス支局のアダムは、ある誘拐事件捜査の失敗以来、腫れ物あつかいされて半端な仕事を淡々とこなす日々。現在FBIが追いかける連続殺人犯「ロードサイド・リッパー」関連の事件を黙々と調査しているが、隣州オレゴンの田舎町の保安官から、発見された死体の捜査協力依頼を受け、調査に訪れる。空港に出迎えた保安官補ロブと、その瞬間から視線がビビビっとなって、3回視線が絡むころには、お互いにゲイであることを確信。そしてロブときたら、夜、アダムが泊まるキャビンの扉を閉じた瞬間にすっぽんぽんになって、肉弾戦!(笑)。
 これまでに読んだジョシュ・ラニヨンの中でも一番、直裁。あんたら、もうちょっと、お互いを知り合う努力ってしないんだ。しないんだね? ロブはともかく、アダムって超慎重派に見えるのに。

 その時は、一夜限りの関係だったが、季節が巡ってふたたび殺人事件が発生。保安官は今度はアダムを名指しで捜査協力を依頼し、アダムはふたたびニアバイを訪れ、ロブと再開する。

 小さな街で、住民はみな、知り合い同士。保安官事務所の仕事といえば、事故の処理やら酔っ払いの相手やら。そんな田舎町で起こった、2〜30年前の2件の失踪・殺人と、最近連続して起こった女性暴行未遂。そして地元で愛されていた女性の惨殺死体。そこに、冷静なアダムと、熱血なロブ、ベテラン保安官などのキャラクターが加わる。さすがのM/Mミステリー作家ジョシュ・ラニヨンで、捜査ものとしても、捜査官の群像ものとしてもそれなりに面白く仕上がっているが、そこに、タッカーとの破綻の傷も癒えきらない超慎重派のアダムと、性格も考え方もまったく違うロブとの恋愛が絡む。

 オレゴンとカルフォルニアは隣州とはいえ、そこは広大な合衆国、直通便の本数も少なく、忙しい捜査官の身で長距離恋愛は難しい。おまけにサム・ケネディにスカウトされて、クワンティコに異動したら、更に距離は遠くなる。しかしそこは、現役でロス支局のジェイソンと遠距離恋愛進行中のむっつりスケベなサムがいるではないか。なにかアドバイスでもしてやったら〜?と一人にやにや。(無論、サムはそういう性格ではない。)アダムの元恋人のタッカーはその隣のシアトル支部でラブラブしてるし、どうも、ジョシュ・ラニヨンを読んでいると、FBIにはゲイカップルしかいないんじゃないかって気がしてくるんだけど・・・・・

2023年6月30日金曜日

0436 カササギの飛翔〜カササギの魔法シリーズ3〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ(3)カササギの飛翔」
原 題 「Flight of Magpies」2014年
著 者 KJ.チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2023年2月
文 庫 352ページ
初 読 2023年6月28日
ISBN-10 4403560539
ISBN-13 978-4403560538
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114585655

 前巻では「紳士」なクレーンに感心し、惚れ込むことしきりだったのですが。2人の中も深まっただけ、クレーンの独占欲も支配欲も深まったのか、変態度も・・・・(^^ゞ
 実のところ、ベッドの中ではとことん支配されたいスティーヴンと、余すところなく支配欲を発揮したいクレーンはベストカップルなんですが。2人とも外面とのギャップが激しすぎでクラクラする。

 審犯機構を潰したい協議会の、陰湿なやり口で予算も宛てられず、欠員補充もされないまま、大ロンドンの能力者絡みの犯罪の捜査や取り締まりに忙殺されるスティーブン。自分にしか出来ない、と頑張りすぎてしまうスティーヴンに対して、変わりの利かない仕事はない、と力説するクレーンの台詞が、いや、合理的だし、耳が痛いわ。
 おまけに協議会の悪意の裏には、宿敵ブルートン夫人の暗躍があった。
 クレーンの血に潜む〈カササギ王〉のちからを渇望する能力者たち。
 今回は、スティーヴン、クレーンがそれぞれ捕らえられてしまい、危機一髪でした。

 ご先祖様の力も威光も振り払って自分自身であることを選ぶクレーンとスティーヴンに幸あれ。ついでに、メリックとセイントのカップルにも。
 おまけ短編の4人で迎えたクリスマスのお話もステキだし、エピローグの舞台が日本だなんて、どういうサービスよ! もう、日本で花を愛でながら、どうぞ幸せに暮らしてください。

2023年6月27日火曜日

0435 捕らわれの心〜カササギの魔法シリーズ2〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ(2)捕らわれの心」
原 題 「A Case of Possession」2017年
著 者 KJ.チャールズ
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2023年1月
文 庫 380ページ
初 読 2023年6月26日
ISBN-10 4403560520
ISBN-13 978-4403560521
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114550665

 2巻目の表紙も、美しく、そして色気がある。
 ただこの2人、本当は40cm近く身長差があるんですよ。たぶんスティーブンの頭の先が、クレーンの肩に届くくらいなのでは。絵的にはちょっと難しいかな? 話中で、体の大きなクレーンが、小柄でやせっぽちのスティーブンをすっぽり抱きすくめたり、ベッドの中で丸くなったスティーブンをクレーンが腕の中にかいこんで寝かしつけたりするのがめっぽう良いんですけどね。まあ、それはさておきましょう。

 体のサイズはともかくも、一流の能力者として立派に自立しているスティーブンですが、彼自身は天涯孤独で、同じ能力者の間でも距離を置かれる存在であり、心を許せる数人の仲間の他は友と呼べる者もなく、仕事に誇りを持っているといいつつ、現実にはその仕事を失ったら生きて行く術がない、という不安定で寄る辺のない身の上。それが身に染みているからこそ、全てを持っていて、なにものも怖れないクレーンの愛を信じきることができない。そういうスティーブンの葛藤ごとまるっと包み込むクレーンの深くて真っ直ぐで強い愛情が素晴らしい。そしてその想いは抱いているだけではいけなくて、きちんと、「言葉」にして相手に率直に伝えなければならない。そんなクレーンの人間としての真っ当さ、ゆるぎなさが、この作品の芯です。

 この巻ではこの2人、冒頭から恋人同士ですから、それはもう遠慮なく、愛し合ってます。私はまったく真っ当な感性の人間なので、なぜベッドの支柱に縛り付けて変態的にいたすこととが、彼の中でスティーブンを〈崇拝する〉ことにつながるのか、もうまったく理解できませんが!(ホントですよ) おまけにスティーブンはM寄りの気質があって、疲労や葛藤が深まると、恋人に乱暴に扱われたがるんですよ。本当は繊細に優しくしたいと願いながらも、そんなスティーブンの要求に激しく応えるクレーンが、それなのにとてつもなくよい男である、という点について私の脳は若干理解が追いつかない。ですけど、その倒錯っぷりを遺憾なく発揮しているクレーンが本当に紛れもない紳士なんですよ。
 
 時は19世紀英国で、神に背く同性愛が法律上の犯罪として投獄の対象となる、彼ら性的異端者には生きにくい時代と土地柄。その英国で仕事をするスティーブンのために、自らも上海に戻らず英国に身を置き続けているクレーンを、脅迫しようとする輩が現れる。一方、ロンドンの下町、貧民街で巨大化したドブネズミが人々を襲って食い殺す事件が発生。スティーブンの能力者チームはこの事件を追っている。ドブネズミがクレーンの周辺の人物を襲うに至って、2人の関係が仲間にバレ、スティーブンはかなり恐慌状態に陥りますが、仲間達は暖かく2人を受け入れてくれて一安心。2人は協力して事件の解明に乗り出し、化けネズミを操っているのは殺されて正しく弔われずに死霊と化した上海のシャーマンであると判る。この死霊が、力の溢れるクレーンの体を欲して、乗っ取りを企み、そしてカササギ王の片割れたるスティーブンがそれを阻止する。
 と、いう粗筋ですが、それよりもこれはもう全編、クレーンからスティーブンへの愛の告白です。メインはそれ。堂々たるラブロマンスでした。
 

2023年6月25日日曜日

0434 カササギの王〜カササギの魔法シリーズ1〜 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「カササギの魔法シリーズ1 カササギの王」
原 題 「THE MAGPIE LORD」2017年
著 者 KJ・チャールズ    
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 2022年12月
文 庫 290ページ
初 読 2023年6月24日

ISBN-10 4403560512
ISBN-13 978-4403560514
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/114512453

   この本を読むなら、まずはかささぎの画像をググって、この鳥の姿形を目に焼き付けてから読み始めてほしい。羽根と尾を広げて飛んでいる姿が非常に美しい、黒と白と青の羽が極めて印象的な鳥です。飛んでいる姿をネットで探していたら、こちらのブログの写真が素晴らしかったので →「日本全国の山・川・海に生息している野鳥達に会えるサイト」

 ついでに、この本と同じ年に原作が上梓されてベストセラーとなっている『カササギ殺人事件』にも登場する“カササギの数え歌”も予備知識をもっているとなお良い。
「カササギの数え歌」は17世紀まで遡る伝承で、鳥の数を数えて吉兆をうらなう子供の遊びうたのようなものらしい。子供の頃に靴を前に蹴り投げて、裏になるか表になるかで明日の天気をうらなった遊びのようなものか? カササギは烏の一種の比較的大型の鳥で、日本にも広く生息しているが、ヨーロッパでも日本の鳩や烏並みに普通にいる野鳥らしい。翻訳としては、「一つ」よりは「一羽」のほうが良かったかも?
ストーリーのあちこちで、結構効果的にこの数え歌が使われている。
 この本の冒頭に載っている数え歌は以下を参照。

一つは哀しみのため
二つは歓びのため
三つは女の子のため
四つは男の子のため
五つは銀のため
六つは金のため
七つは明かしてはいけない秘密のため
八つは海の向こうへの手紙のため
九つはとても誠実な恋人のため 
KJ・チャールズ. カササギの魔法シリーズ(1)カササギの王 (モノクローム・ロマンス文庫) (p.10). Kindle 版. 

 さて、時は19世紀英国。17歳で英国から放逐されて以来、上海で生き抜き貿易商としてのし上がっていたルシアン・ヴォードリー(37歳)は、伯爵だった父と、跡継ぎの兄の相次ぐ自殺でクレーン伯爵の爵位と所領と財産を継承することになり、20年ぶりに英国に帰国した。しかし、冷血非道だった父と兄を殺したと思しき呪いがルシアンの身にも及ぶ。ルシアンは英国のシャーマンである「能力者(プラクティショナー)」を頼り、彼の元に派遣されて来たのが、痩せた小男のスティーブン・デイ。しかし、彼の両親はヴォードリーの父と兄によって非業の死を遂げており、スティーブンはヴォードリーの血筋を恨んでいた。図らずも親の敵であるヴォードリーの血縁者を助けねばならなくなったスティーブンの心中は穏やかではないが、それ以上に、ヴォードリーの血族に向けられた魔術による呪いは邪悪なもので、スティーブンは看過することができない。小柄だが印象的な琥珀色の瞳と力を秘めた手を持ったスティーブンは、英国の超常能力者を束ね、違法とされる魔力の行使を取り締まる「審犯機構」の「審犯者(ジャスティシアー)」だったからだ。
 という感じで、ルシアンとスティーブンが、反発しつつも惹かれあいつつ、ヴォードリーの屋敷とルシアン自身に幾重にも掛けられた呪いを解しながら源を辿っていく。
 読んでいて“審犯者”などの造語の座りが悪くて馴染めなかった、というのは傍に置いておいて。
 空気が濁って動かない、陰気で湿っぽい石造りの古い屋敷、座り心地の悪い馬車、陰湿な執事や召使い、淀んで力を失った呪われた土地、総じてゴシックロマン調というか、いかにも英国っぽい陰鬱な雰囲気の中で進行する黒魔術。
 ではあるのだけど、要所要所で地崩れするみたいにルシアンとスティーブンの2人がロマンス方向に雪崩れ込む(笑)。その唐突さで一瞬、目眩のようにくらっとして意外にもこれが面白い(笑)。
 魔力絡みの本筋は、ルシアンのご先祖初代クレーン伯爵が、能力者の律法を築いた“カササギ王”と呼ばれた稀代の能力者だったことが判明したあたりから、これはルシアンも能力に目覚めるのか、とか、いろいろな可能性がちらちらと頭を掠めて、焦点が定まらずにバタバタしている間にクライマックスになって、どたばたと片付いてしまった。個人的には、もっとドラマティックに盛り上げてもよかったのに、と少々物足りなかった気がする。しかし、あっちの方は途中散々お預けを食らったり、スティーブンの葛藤やルシアンの男振りも素晴らしく、ラストで大いに盛り上がる。カササギが飛び回るラストがとくに印象的。ストーリーとしては★三つくらい、キャラクターと恋愛に関しては★五つ。次作を期待して間違いなし。
 なお、カササギの刺青にまつわる掌編も読む価値大いにあり。最後のお楽しみに♪

2023年2月11日土曜日

0415 夜が明けるなら ヘル・オア・ハイウォーター3 (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「夜が明けるなら  ヘル オア ハイウォーター (3)」
原 題 「Hell or High Water Book 3 Daylight Again」2014年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2017年7月
文 庫 380ページ
初 読 2023年2月9日
ISBN-10 4403560318
ISBN-13 978-4403560316
読書メーター 

 やっと彼らの設定を生かして、アクション小説っぽくなってきた・・・かもしれない。プロフェットの因縁に、トムも手に手を取って躍り込む。
 プロフェットの仲間たち、シールズ時代のチームのメンバー、キリアン、ゲイリーと役者もそろい踏み。そしてランシング、ジョン、サディーク、と敵の顔ぶれもだいたい揃ってきたか、というところ。(ランシングは小物だったけど。)しかし3巻はまだ風呂敷を広げきった、というところ。事態が動くのはこれから。

 そしてなんと、マルとキリアンが“出来ている”。
 また、プロフィットが抱える最大の悪夢がトムに明らかになる。遺伝性の先天性疾患でやがて失明する運命であること、そしてすでに視力の低下が始まっていること。
 喪失の予感がプロフを頑なにし、トムを信じ切れず、また信じるからこそ、トムが自らの意志で自分に縛られることになるのが耐えがたく、とはいえ、一人で暗闇に中に生きることになるのはさらに耐えがたいプロフィット。乗り越えるべき試練はトムの側にも、プロフの側にもある。しかし、それを乗り越えた二人は、これまでより強い絆で結ばれるように。
 キリアンの組織のSB−20ってのが良く判らないが、とにかくキリアンは自らの組織を脱して、プロフを監視し必要があれば殺す側から、プロフを守る側に立つことを選ぶ。なぜなら、事が済んだら自分も口封じに殺されることを察したから。そしてなにより、プロフの人間性に惹かれたから? ついでに、マルに恋したからかも。

 そして、ジョンの裏切りの輪郭が明らかに。この刊は、起承転結でいえば「転」。ことが大きく動くのは次巻だな。トム側の人材資源にキリアン側の手駒と協力が加わって、いよいよジョンを追いつめる計画が動き出す。

 ストーリー的には不満もあるし、消化不良だし、欲求不満もある。
 アクション巨編っぽい打ち出しなのに、やっぱり主眼はロマンスなので、作戦行動やら、航空機や銃器の扱いやら、近接戦闘やらの扱いがちょっとアレレな感じがするし、いくら米国とはいえCIAのエージェントに“弁護士”をぶつけてなにか面白いことが起こるんだろうか、と思ったし。
 マルとキリアンがいきなりアレはなかろう。と思ったし、ワタシが鈍感なのかもしれないけれど、いまいち思わせぶりな会話が理解しきれてなかったりもする。
たとえば、マルはサドなのか?それともマゾなのか?
 マルがサドで、トムがマゾってことなのか?よくわからーん!いや、マルとトムが両方ともマゾなのか。
 でもまあ、このさき、どのように作戦行動して、話を畳むのかは興味があるし、トムとリア(プロフ)が全ての重荷をおろして幸せになる姿も見たいので、第4巻の翻訳発行を待ってます。

2023年2月4日土曜日

0414 不在の痕 ヘル オア ハイウォーター (2) (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「不在の痕  ヘル オア ハイウォーター (2)」
原 題 「Hell or High Water Book 2 LONG TIME GONE」2013年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2016年9月
文 庫 421ページ
初 読 2023年2月3日
ISBN-10 4403560288
ISBN-13 978-4403560286
読書メーター 
https://bookmeter.com/books/11105019
 読書メーターではめでたいキリ番1000冊目、基本、過去読了本とマンガは登録しないこちらのブログでは414冊目はこの本にした。
 で、最初にまずワタシは開眼したよ。この本は、シリアスだと思って読んじゃいけなかったんだ!
 冒頭数ページにわたるトムのラブレターは、きゃーっと本を投げるレベルで恥ずかしい。日記を書くことも手紙を書くことも恥ずかしすぎてできないワタシには、これを読むのはもはや羞恥プレイに近い。36のいいオトコが女子高生みたいなメールをイラスト入りで毎日一通、122日! それに絆されるプロフェットもどうかと思うがな! ロマンチストで甘々な二人なのだ。お互いのうなじをなでる描写だけで、もう、とろけるように愛が溢れてる。
 元シールズやら、元海兵隊やら、CIAやらFBIやら、民間軍事会社の傭兵やら、イスラム国家の核開発っぽいお膳立てなんて実にAAっぽいのに。
 ストーリーはミステリー基調なのに。
 中身は、あつあつべたべたのゲイ・ロマンス以外のなにでもなく。
 それなのに、舞台はハリケーン吹き荒れる魔境ルイジアナ(笑)
 バイユーで育ったんだというトムに、某別シリーズのおかげで爆笑の予感しかしないのはどうしてくれようか。

 カトリーヌ以来最大のハリケーン直撃を前に、故郷のルイジアナで避難を拒んで頑なに自宅に居続ける叔母を案ずる思いを、トムはどこにいるかも知れぬプロフ宛てのメールに書き綴る。
 そしてプロフは、来れないはずのトムの代わりに、勝手にルイジアナのトムの叔母宅に手伝いに乗り込むという、謎の行動力を発揮。
 デラ叔母さんの家には70代のロジャーとデイブというゲイカップルが下宿していて、お互いに手を繋いでプロフェットの前に登場。
(トムとプロフの出会い頭の熱々SEXを悠々と鑑賞するロジャーとデイブの会話は実に楽しい。バイユーには老人がよく似合うな。)
 トムとプロフはお互いに相手を近寄らせまいと牽制しつつ、だけど求め求められ、激情にかられたそのSEX描写がとてもきれいだ。

 にしても、ルイジアナで、バイユーで、傭兵で、ゲイで、ガチムチで甘々の肉弾戦だよ。なんともまあ、濃い。濃厚とんこつ背脂多めで、お腹いっぱいでもう二度と頼まなくていいや、と思ったのになぜか一週間後にまた食べたくなってるラーメンみたいだ。

 今作では、ルイジアナのトムの故郷で鉢合わせした二人が、トムの過去にとことん向き合う。虐待され、疎外され、差別されて傷ついたトムが過去に向き合うのをとことん支援するプロフェットは神々しいほど。一方のトムはプロフェットにアリゲーターを素手で捕縛する技を披露し、プロフェットドン引き(笑)。
 トムの生まれ故郷への帰還がもたらした危機は、あまりにもあっさりと終わったけど、まあ、ミステリーメインの作品じゃあないから仕方ない。
 登場人物が、グレイマン級だったり、ザック並みだったりするんで、思わずAA方面の展開を期待しそうになるのをすかっと肩透かしされたりもするけれど。
 とにかく、これはロマンス作品なんだと自分に言い聞かせて読み切る。
 今作は、とにかくプロフェットの優しさが際立ってます。それに、なんとも素敵なプロフの本名や、彼の秘められた仕事や過去が、ついにトムに明かされる。これだけの大風呂敷ってことは、ここまでが序章。あとはいくらでも、何冊でも引っ張れそう。

 ついでに書いておくと、こいつらアメリカ人は緊縛プレイするときもダクトテープだ。
 ダクトテープ万能。

2023年2月2日木曜日

0409 幽霊狩り ヘル・オア・ハイウォーター(1) (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「幽霊狩り ヘル・オア・ハイウォーター(1)
原 題 「Hell or High Water Book 1 CATCH A GHOST」2013年
著 者 S.E.ジェイクス    
翻訳者 冬斗 亜紀
出 版 新書館 2015年12月
文 庫 425ページ
初 読 2023年1月30日
ISBN-10 4403560245
ISBN-13 978-4403560248
読書メーター 
https://bookmeter.com/books/9944171   
  最初、文体?翻訳?それともストーリー?に馴染めず、目が滑って滑って読書のペースが上がらず困った。どうしてだろう?この手のは苦手なはずはないのに。
 さて、何と言いますか、本場(かどうかはしらんけど)ガチムチの筋肉ゲイが男臭くぶつかり合うM/Mです。うまく言えないけど、若いマスチフとドーベルマンが、牙むき出してじゃれてる(怖い)感じというか。
 本邦のBL系だと、タチ(攻め)とネコ(受け)が固定していたり、なんとなく受け側は女性的に表現されていたり全体的に柔和な感じのするものが多いような気がするのだけど、これはそんなこたあない。
 EE(エクストリーム・エスケープ)社ー民間軍事会社に所属する二人の傭兵、プロフェットとトム・ブードロウ(表紙の向かって左の金髪がプロフ、刺青黒髪がトム)
 片や元Navy SEALs、片や貧困底辺からのし上がった元FBI。最初はエキセントリックなプロフと冷静なトムの組み合わせなのかと思ったが、どちらかというと逆か。プロフの方が冷静。トムの方が頭に血が上りやすい。とはいえ、どっちもどっちで、脛に傷があって、なにやら過去にデカい痛みがあって、口が悪く、協調性がなく、めちゃくちゃ戦闘能力が高くて沸点が低い。似たもの同士。それが上司のフィルの方針で無理矢理バディを組まされて、七転八倒、組んずほぐれつ。思わせぶりな地の文に二人分の悪口雑言で読みにくくてしかたなかったが、二人の関係がややほぐれてきてからはどうにか多少は読みやすくなってくれた。
 とはいえ、少々、文に難があるような気がする。まず、“こんなシーン”でよく出てくるような形容が、前後の脈絡なく安直に使われる。おかげで、人物の印象がちぐはぐで、人物像がうまく固まらない。これは翻訳ではなくて、元の文の問題じゃないかなあ。(良く分からないけど)

 トムが36歳でいい加減落ち着いていてもイイお年頃だけど、はっきり言って若いプロフェットに手の上で転がされてる。
 また、プロフェットと同じ建物に住む謎の諜報員キリアンが、まだどこの誰だか不明だが、イイ感じだ。
 身ごなしや英語の使い方から、おそらくSAS(英国陸軍特殊空挺部隊)出身。どこかのスパイ。同じ建物の上階にプロフが住み、階下にキリアンが住んでいる。面識はないが、お互いがお互いのことを調べ尽くし、相手込みで住んでるビルごと防衛したほうが身辺が安全だとの結論に達したのか、不思議な共生関係が成立している。お互いの留守中に部屋の安全に目配りしたり、こっそり忍び込んでいたずらを仕掛けたり。命を削る銃撃戦の最中にチャットでたのしく会話したりも。
 そんなキリアンが、プロフェットとトムの危機に、救出に乗り出してくる。いやいや、格好よいこと。キリアンの身元が明かされるのが楽しみだ。
 トムについては、まあ幼少時に虐待されていたんだろうな、というところまでしか判らない。コイツの隠れ設定も今後を待つ。
 まあ、いまいち読みにくい作品ではあったものの、とりあえず、邦訳残りの2冊は読むし、4冊目も翻訳されたら読むだろう。

2023年1月28日土曜日

0408 ドント・ルックバック (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「ドント・ルックバック」
原 題 「DON'T LOCKBACK」2009年
著 者 ジョシュ・ラニヨン    
翻訳者 冬斗 亜紀    
出 版 新書館  2013年10月
文 庫 209ページ
初 読 2023年1月27日
ISBN-10 440356013X
ISBN-13 978-4403560132
読書メーター 
https://bookmeter.com/books/7224548   
 久しぶりのジョシュ・ラニヨン。というかここのところ、pixiv小説ばかり読んでいたので、久しぶりな読書だという気分。まああれはアレで面白い。好きな作家さんが何人か出来て、追いかける楽しみが増えた。

 で、久しぶりに紙本を・・・・と思ったのだけど、結局主な読書時間が通勤時間なので、Kindleアンリミに収蔵されていたのを幸いに、ほとんど電子で読了。

 お気に入りの「フェアシリーズ」と「アドリアン・イングリッシュシリーズ」の作家さんの厚さ薄めの作品。ミステリタッチのM/Mです。美術館の中のコテージに住むキュレーターである主人公が夜間、美術館の庭園で、何者かに頭を強打される。命からがら逃げたものの、次に病院で気付いたときにはあらかた記憶を失い、しかも自分が美術館収蔵品窃盗の犯人扱い。態度の悪い刑事と、親友のはずがどこか浅薄な美術館オーナー。不安と危機と、なくした恋と。うーん。ちょっと甘くて苦しくて、少々ハラハラして、でもとっても精神が健康なのがジョシュ・ラニヨンの良いところです。読書リハビリには丁度良い小品だったな。ジョシュ・ラニヨンは、シリーズものの続編を待ってます♪

2022年2月27日日曜日

0335 イングランドを想え (モノクローム・ロマンス文庫)

書 名 「イングランドを想え」 
原 題 「Think of England」2017年
著 者 K.J.チャールズ    
翻訳者 鶯谷 祐実    
出 版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫) 2020年7月
単行本 285ページ
初 読 2022年2月27日
ISBN-10 4403560423
ISBN-13 978-4403560422
読書メーター    

 「イングランドを想え」という詩的な、もしくは知的な印象のタイトルにちょっと心惹かれて、中身も確認せずにAmazonでポチ。立て続けにジョシュ・ラニヨンを10冊以上読んできたので、ほかのモノクローム・ロマンス文庫はいかほど?と好奇心がもたげて手を出した一冊。


 で・・・・・!!「イングランドを想え」ってそーゆーことかよ!(爆)
 まあ、面白うございました。直情、正直で正義漢の元軍人カーティスと、ポルトガル系ユダヤ人で詩人のダ・シルヴァの冒険活劇、でございます。正直ものですぐに顔にでるカーティスが完全にシルヴァに手玉にとられておりますな。

 カーティスがね。モーリスの世界っていうか上流社会のパブリックスクール(男子の園)から、オックスフォード大学(選択的に男社会)を出て、そのまま陸軍(男社会)に進み、愛情はともかく男に付きものの欲求を男同士で処理することは別段問題視していない、ってのも驚きだが、そこから、男に友情ではない愛を覚えるまでには東尋坊から飛び降りるくらいの落差があるらしいのが面白い。シルヴァに誘惑されて(からかわれて)顔面蒼白でだらだら冷や汗かいてるのがねえ。
 愉快なMM小説でした。なんか、箸休め的に、気晴らし的に、ちょうど良い感じ。大言壮語吐いてたダ・シルヴァ(ダニエル)が、簡単に敵の手に落ちたり、あっさりと意識不明だったり、お嬢さん方のウチ一人は電話交換機に精通している、とか、一人は射撃の名手、だとか、なんでそもそもこの二人がここに居合わせているのか、とか、なんつーか、なんつーかだけど、ちょっと(かなり)ご都合主義だけど、まあ大事なのはそこではないっっていうことで。ついでにいうと、カーティスがあまりにも直情で軍隊式筋肉バカで力任せなんで、色事シーンもぜんぜん色っぽくなかったです(笑)。


2022年2月25日金曜日

0334 So This is Christmas

書  名 「So This is Christmas」
原  題 「Icecapade」他 2010〜2017年
著  者 ジョシュ・ラニヨン
翻  訳  者 冬斗 亜紀
  版 新書館 (モノクローム・ロマンス文庫)  2017年12月
文  庫 407ページ
初  読 2022年2月25日
ISBN-10  4403560334
ISBN-13  978-4403560330
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/104746297   

 表紙を見ただけで、幸せ感が溢れてくる、アドリアン&ジェイクの番外編(というかエピローグね。)
 この表紙の雰囲気は、コミックの『Papa Told Me』のテイストを思い出す。そんな感じの暖かい幸福感。中身は、中〜短編3作と掌編2作。

 では順に。

『氷の天使』 Icecapade 2010年
 元泥棒のノエルとFBI特別捜査官ロバート・カフェ。ドロボーさんと刑事の関係でいえばキャッツアイみたいな?
 クリスマス前のある日、今は引退して厩舎のオーナーとミステリ作家を兼業するノエルの元に、ロバートがやってくる。ロバートは引退した大泥棒のノエルを10年間追い続けていた。かつての犯行はすべて時効を迎えているノエルは、現れたロバートの目的に戸惑うが。。。。。追いつ追われつのスリルの中でいつしか惹かれ合っていた刑事とドロボーが10年後に再会する話。ノエルの引退にはある理由があった。まあ、BLっぽい・・・・というか二次創作っぽい雰囲気だが、ノエルの軽さ・・・・・いや、軽やかさは結構良い。

掌編の『Another  Chriatmas』 Christmas Cade 10 Noel & Robert  2012年
『氷の天使』の1年後のお話。FBIをやめてノエルと暮らしているロバート。どうやら幸せな一年だったらしい。インフルエンザに罹って一時的に障害が悪化したノエルの号泣(T-T)が大変可愛いっす。

『欠けた景色』 In Plain Sight 2013年
 FBI特別捜査官のナッシュとアイダホ州ベアレイク郡の地元警察官グレン、一目惚れ同志、運命の恋の行方。なんだかジョシュ・ラニヨンの宇宙では、FBI はゲイの宝庫(?)のようだな。

『Christmas in London』Christmas Cade 41 Adrien Jake  2017年 
 こちらも掌編。『瞑い流れ』の後、晴れて(?)リサとビルの家族に公認となったジェイクと一緒にロンドンでクリスマス休暇を過ごすアドリアンだが、ジェイクとなかなか二人きりになれないフラストレーションがだんだん溜まって(笑)

『So This is Christmas』
 家族より一足早く、二人きりのクリスマスを過ごすためにロンドンからロスに帰ったアドリアンとジェイク。しかしトラブルを吸い寄せる体質の?アドリアンの周りは、どうにも静まらない。
 帰国するなり、アドリアンに代わってクローク&ダガー書店を守っていたナタリーとアンガスのまさかの濡れ場に踏み込んでしまう。友人(♂)の恋人(♂)は失踪し、ジェイクは人捜しに奔走しようとするアドリアンの健康を気遣って「首を突っ込むな」と言い続け(笑)。
 ジェイクがいい男なんだよねえ、これが。力強さと冷静さと苛烈さと優しさの絶妙なブレンド。そしてアドリアンへ向ける絶対的な愛情。「お前は健康体だ。これまで俺が見てきた中で、今が一番元気だ。そのままでいてほしい。これからの五十年をお前とすごしたいからな。五十年、一緒にすごすつもりでいるからな。・・・・」・・・・なんか良いなあ。

 カミングアウトしたジェイクを拒絶したジェイクの両親に対しては、怒りと嫌悪を募らすアドリアンだったが、ジェイク父からリオーダン家のニューイヤーパーティーに二人で招待される。リオーダンの両親も息子のカミングアウトに困惑し、苦しみながらも息子と和解しようと手を差し伸べようとしていることに気付いたアドリアンは、ジェイクと一緒にリオーダン家のニューイヤーパーティーに出向く。(というよりは、尻込みするジェイクを励まして。) ここからが、ジョシュ・ラニヨンの真骨頂。家族に囲まれて、だんだん気持ちがほぐれて肩や背中から力が抜けてくるジェイク、それを眺めてジェイクのために心から喜ぶアドリアン。愛情って言葉はこの二人の為にあるんじゃないだろうか、と思えてくる。そして、新年の2時。きっと何回も戻ってきて読むだろうなあ、この本。

 そういえば名前だけちょこっと登場するゲイ作家のモリアリティさんは、別シリーズの主役。ホームズ&モリアリティシリーズの3巻に、クローク&ダガー書店でサイン会をするエピソードがあるそうだ。こちらのシリーズの翻訳もぜひ、お願いしたい。