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2025年6月15日日曜日

コミック バルバラ異界

書 名 「バルバラ異界」  2007年日本SF大賞受賞
著 者 萩尾 望都
連 載 flowers 2002年9月号~2005年8月号
出 版 小学館  2003年6月〜2005年9月
初 読 2025年6月15日
出 版 2003年6月
ISBN-10  091670415
ISBN-13  978-4091670410
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/128495589 

 フワフワして優しい、ファンタジーSFっぽいテイストで始まったバルバラの世界。しかし、やがてこの世界が青羽という眠り続ける少女の夢の世界であることが判ってくる。
 舞台は心理学的手法の延長のような感じで人の夢の中に入り込む「夢先案内人」や、前世療法など、ちょっと前のSFやサスペンスの流行のテイストなんかを感じさせつつ、不老長寿の研究や、脳内イメージスキャン技術などが出て来て、近未来感を醸す。日本の学制も、高校が寮制の「大学進学校」になっていたり、高速道路は自動誘導システムになっていたりして、近未来の世界観の作り込みが細部まで行き届いている。
 描かれる現実世界は2052年。
 バルバラ界とバルバラの登場人物たち、現実世界の主人公の渡会時夫の関係者、青羽系列の親族関係、青羽周辺の研究者、キリヤの学友たち、もろもろ登場して、頭の中に情報が収まりきらず、アップアップと溺れる感じ。たまらず、とりあえず1、2巻までを再読して人物リストを作成しつつ、物語を再チェックした。一巻目では、物語がどこに向かっていくのかすら、皆目わからない。ただ、導かれるままに、山ほどの疑問を抱えたままヨタヨタ進んでいく感じ。(注:ヨタヨタしているのはストーリーではなく、私の頭!)萩尾望都の大傑作を今、読みつつあるのでは、との予感がひしひしとする。
 1巻目の章立ては以下のとおり。以下、1巻から4巻まで、自分の頭を整理するためにあらすじをまとめる。ネタバレになるので、未読の方はご注意あれ。

その1 世界の中心であるわたし
その2 眠り姫は眠る血とバラの中
その3 講演で剣舞を舞ってはならない
その4 彼の名は絶望 彼女の名は希望
その5 エズラはどこへ消えた?
その6 六本木で会いましょう

【人物】 ※バルバラ人
  青羽(アオバ)      世界の中心であるわたし。ジジからは「よそ者」と誹られている。
  タカ    アオバの従弟。
  パイン   ダイヤの養子。タカの兄弟。アオバの従弟。
  マーちゃん 青羽の母(養母?)
  ダイヤ   マーちゃんの妹。タカの母。 
  千里さん  夢見。夢占い。「夢はね 遠い未来か、遠い過去からのメッセージなんだ」
  雷ジジ   千里さんの祖父。
  ヒナコ   4人養子を取ったが、みんな早逝してしまって悲しんでいる
  ドクター  「ここじゃ なかなか子供が育たんからなァ」
  光合成するおねえさんたち         草木の生えた町の屋根の上で、日光浴。
  秋葉原コスモス      子役俳優。もう30年くらい子役をやっている。
  ※現実世界の人
  渡会時夫        「夢先案内人」(ドイツの〈21世紀ユング研究所所属)を仕事とする。
        キリヤの父。「ベルリンのハンバーグ屋事件」(ベルリンで起こった大量カ
        ニバリズム(食人)事件)の解決で著名になった。ただし、渡会自身はその
        影響で黒髪が白髪に。眠り続ける十条青羽の夢にアクセスすることで、《バ
        ルバラ》に行く。
  大黒先生        渡会の師? 現在は「前世療法」を行っている。火星研究にも詳しいよう。
        もともとは、パーキンソン病の世界的権威。
  北方キリヤ お茶の水山ノ上大学進学校(高校に相当)の生徒。渡会時夫の息子。かつ
        て、孤独心から心の安息地としての《バルバラ》を創作した。火星の夢を見
        て、火星の砂を引き寄せる。
        「世界はぼくを捨てた」「世界はぼくを愛していない」
  北方明美  キリヤの母。渡会の前妻。世羅ヨハネという神父に傾倒している。  
  花園蕾香(ライカ) キリヤの学友。ガールフレンド。アフリカ生まれの神田育ち。両親
        はタンザニアに研究旅行に行っているときに、行方不明になっている。
  風仁    ライカの従弟。秋葉原でバイトしている。
  百田太郎        遠軽(北海道)にある、北海道東中原人間科学研究所の研究者。現実の
        十条青羽の治療に携わる。
  十条青羽  ある凄惨な事件から7年間、東中原研究所で眠り続け、ポルターガイスト
        引き起こしている。幼少時は重篤なアレルギーがあったよう。
  十条茶菜        青羽の母。2024年12月30日、夫の勝一を殺害して、心臓を取り出し、自身も
        自殺。心臓を取り出し、青羽に食べさせた?  
  十条勝一  青羽の父。十条製薬の社長だった。
  十条菜々実 十条茶菜の母。青羽の祖母。菜々実とエズラが離婚したのが2006年。
  エズラ・ストラディ 十条菜々実の前夫で、茶菜の実父。十条製薬の特別研究員だった。
        ドイツと日本のハーフ。菜々実の叔母の静枝と駆け落ちした。晩年は火星研
        究(惑星生物学)を研究していた?
  世羅ヨハネ 神父。世界各地で里親施設を運営。明美はヨハネを「前世の恋人で夫」と信
        じている。ニューヨークで児童施設の〈グリーン・ホーム〉を運営。
  目白秀吉  六本木で〈目白サイコ・クリニック〉を運営。子供の頃の十条青羽と母の茶
        菜がクリニックに通っていた。青羽のポルターガイストで起こった竜巻に巻
        き込まれて死亡。
  目白ましろ 目白秀吉の息子。
  カーラ・シスルバーグ 〈21世紀バルトハウス〉(スイスにある医学研究企業)の職員。


*細胞活性薬《バルバラ》  十条製薬のヒット商品。細胞を活性化させる薬(若返り)の研究。もともとはエズラ・ストラディの研究だった。その薬品名が《バルバラシリーズ》。《バルバラ》は細胞を活性化し、若返らせる合成蛋白質の名前。プリオン蛋白質と同様、胃腸で消化分解されずに人体に取り込まれる。

 夢前案内人を仕事とする渡会時夫は、眠り続ける少女十条青羽の夢を探るために、北海道の研究所に招かれる。時夫が少女の夢に潜ってみると、少女は「バルバラ島」という世界の幸せな夢を見続けていた。しかし、このバルバラ島は渡会の離婚した元妻が引き取った息子であるキリヤが創造した空想の世界だった。
 十条青羽が眠り続けるきっかけになった凄惨な事件の背景を調べるために、時夫は青羽の祖母で十条製薬の会長でもある祖母菜々実に会いにいく。そこで、菜々実の前夫であるエズラの話を聞く。エズラの情報はほとんど見つからないのだが、若い頃の画像があり、その画像を見た時夫は、エズラ博士を画像加工で加齢させると、時夫の元妻の明美が傾倒している世羅ヨハネの顔になることに気付く。世羅ヨハネは、ニューヨークで〈グリーン・ホーム〉という養子縁組のための児童施設を運営していた。
 一方、現世の青羽が時夫の息子であるキリヤの夢の中に現れ、渡会時夫に青羽の夢に干渉させるな、とキリヤに警告する。

出 版 2004年3月
ISBN-10  4091670423
ISBN-13  978-4091670427
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128498109


その7 きみに肩車してあげた
その8 冷蔵庫の中のわたしを食べて
その9 火星の海で泳いでいた
その10 お父さんお帰りなさい
その11 お誕生日は同じ10月1日
その12 東池袋カササギのパン屋

 バルバラ島は実在するのか。眠っている青羽を目覚めさせたら、バルバラ世界はどうなるのか。もし、青羽の夢の世界が完成したら、現実世界と逆転して、現実が「誰かの夢」の世界になるのか? 
 そして細胞活性剤(若返り薬)の〈バルバラ〉を作ったエズラと、夢の世界バルバラはどのような関係があるのか。そして、青羽の夢とキリヤの関係は?
 時夫は、長年生き別れていたキリヤの父親として、キリヤの助けになりたいと願うが、キリヤは時夫を拒絶。一方、バルバラ世界では、キリヤにも時夫にもよく似た少年タカが、時夫を父と慕う。
 北海道の東中原研究所は、眠る青羽の力で水が湧き水没状態に。事態を打開するために、再度青羽の夢に潜った時夫は、《バルバラ世界》にふたたび温かく迎えられるが、徐々にバルバラの秘密に触れることになる。この夢世界の世界観にもカルバニズムが絡んでいる。
 それは、バルバラ人の不老の秘密はバルバラ人同士の食人にあり、そのバルバラ人の遺体が〈外の世界〉の不老不死の製薬に絡んでいる、という不穏な世界観だった。バルバラで4人目の養子を失って自殺したヒナコの葬儀は、実はヒナコの心臓を食する儀式であり、ヒナコの心臓を夢の中で食べた時夫は、現実世界で心停止した。必至の救命で現実世界に生き戻った時夫は、自分の記憶の中の乳幼児のキリヤのイメージがタカのイメージで上書きされていることを自覚。記憶がバルバラのイメージで改編されているのではないかと不安に駆られる。 
 現実の青羽の自我は、キリヤと一つになることを希求している。
 東京のキリヤの学校に、ニューヨークのグリーン・ホーム出身のパリスが転入してくる。
 キリヤは、ニューヨークで世羅ヨハネが運営していた児童施設〈グリーン・ホーム〉が、里親の依頼により試験管ベビーを作っていたこと、パインとタカがその施設で作られた子供であったことを知る。そして、世羅ヨハネは行方が知れず、〈グリーン・ホーム〉は閉鎖されていた。
 バルバラ世界と現実世界との関係を探る時夫は、バルバラの中の時間が2150年であることを知る。バルバラのマーちゃんは、もともとは東池袋で「カササギのパン屋」という小さなパン屋さんを営んでいたらしい。マーちゃんは、2130年に戦争が起きて人工衛星が落とされて地上に降り注ぎ、マーちゃんの家族も家も皆燃えた、という。また、バルバラの人達は「閉じ込められて血を採られて」いるらしい。もしや、ドイツの研究施設では、火星由来のタンパク質を持つ人々を眠らせ、いわば培養し、血液を採取して細胞活性剤バルボラを製造しているのではないのか?夢の《バルボラ》の人々は、その研究所で眠り続ける人達なのか? キアヌ・リーブス主演の『マトリックス』のような世界観が読んでいる自分の頭をよぎるが、物語はこの点には深入りしなかった。(と思う)

出 版 2004年12月
ISBN-10 4091670431
ISBN-13 978-4091670434

その13 長い長い遺伝子の物語
その14 大人にだってわからない
その15 遠軽への遠い道
その16 ひとつになりましょう
その17 誰もあたなの名前を知らない
その18 はじめてのことだから

 青羽は繰り返しキリヤの夢を訪れ、キリヤは青羽から、火星の生命体について教えられる。火星の生命体は、お互いを食べ合うことで、相手の記憶コードを取り入れることができ、全体で一つの記憶と意識を保持していた。火星の生命は遠い過去に絶滅したが、その生命を構成していたタンパク質は、隕石とともに地球に降り注ぎ、地球の生命の遺伝子の中に深く潜航した。(狂牛病の原因物質のプリオンタンパク質が、消化どころか燃焼も腐敗もせずにその構造を留めることを考えれば、このような発想はアリだと思った。)
 そして、その火星の生命の記憶は遺伝子コードの中に組み込まれ、それを引き継いだ青羽の記憶となっており、その青羽に共鳴するキリヤのなかにも潜在した。
 ひょっとして青羽は、グリーン・ホームの4人の子供のうち、死んだことになっている一人なのでは? と一瞬思ったが、そもそも青羽はエズラの実の孫なのだから、エズラの遺伝子をつまりは記憶を受け継いでいるのだ。そしてその記憶は、心臓の筋肉をある特殊な条件下で摂取することで、活性化されるらしい。

 時夫、キリヤ、菜々実その他は、青羽に会うために北海道に向かう。その途中、女満別の空港で、キリヤが老化した世羅ヨハネを目撃。世羅ヨハネは若返り治療を受けるために搬送されるところだった。

 時夫はキリヤの夢の中で現実の青羽に出会い、青羽が《バルバラ》を作ったいきさつを聞き出す。「わたしは火星の記憶をどうかたちにすればいいのかわからなかったけど、島をみつけてここに作ればいいと思ったわ 未来を」
 伊勢では、キリヤの母明美が、本物のキリヤはアレルギーで死に、「ヨハネが生き返らせてくれた」と衝撃の告白。
 菜々実からは、エズラの存在を抹殺したいきさつが証される。
 ここにいたって、バラバラだった情報が、エズラとエズラの研究に集約されてくる。
 不老不死のバルバラタンパク質、人工授精で、火星遺伝子を受け継いだ試験管ベビーたち。バルバラタンパク質は、有害な代謝物を生成するため、生まれてきた子供たちは、ほとんどが重度の免疫不全や心臓病で死んだが、エズラが世羅ヨハネとなった後も研究は密かにつづけられ、生存に成功した4人の子供たちが、グリーンホームで育てらた。うち一人は死んだキリヤの代わりに明美に与えられ、二人は、3人の女性の老化治療の研究に使用され、パリスだけが生き残った。

出 版 2005年9月
ISBN-10 409167044X
ISBN-13 978-4091670441
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/128508714

その19 ずっとあなたを愛していた
その20 死者からのメッセージ
その21 バルバラ崩壊
その22 花小金井ヒコバエ保育園
その23 ぼくのキリヤをかえしてくれ
その24 遠い過去から遠い明日へ

 女満別の老人病院で若返り治療を受けたアズーレ=エズラ=ヨハネは、最愛の妻だった菜々実と再会し、全ての秘密とデータをキリヤに手渡して亡くなる。ここまでで、大方の秘密が明らかになった、と読者に思わせ、作中の一行もいったん眠り続ける青羽を研究所に残し、なにかが不完全なまま解散の流れになるが、そこからの怒濤の展開が驚異的だった。

 大黒から、本当のキリヤは2歳で死に、グリーン・ホームのタカがキリヤに成り代わったという仮説を聞かされ、真実を突き止めようと渡会は青羽の夢を通じて三度バルバラに潜り込む。しかし、そのバルバラには破局が訪れていた。未来の2150年、地球政府は火星と決裂し、火星人の遺伝子を持つバルバラ人の抹殺が決定された。時夫が訪れたとき、バルバラ島は、政府の攻撃で蹂躙されていた。時夫は生還するが、バルバラは消滅。

 そしてキリヤの突然の事故死。
 キリヤの蘇りを必死で願う時夫の思念と、青羽の未来に干渉する力が最大化されたときに、起こったこと。
 エズラによく似た千里もまた、彼の血筋なのだろうか。もしかしたら、タンザニアの奥地から生還した花園夫婦の子供の子孫が千里なのかもしれない。その結果の起こったことを初めは拒否し、混乱し、徐々に受け入れる時夫の心理描写が、畳みかけるようで凄い。

 時夫は記憶を再体験し、徐々に記憶が置き換わっていくことを自覚する。

 2052年の火星基地では、化石化した生命の痕跡が発見され、火星にいた基地の地球人たちは、何かの感染症を発症し、死んだ人間の心臓を食べるカルバニズムが発生したようだ。おそらく、ここから地球人と火星人の分化がはじまり、80年後の2130年には火星は地球を攻撃。戦争となる。
 その後2150年に和解が成立。その時代のキリヤや青羽は生き残る未来を得る。
 一時は時夫の息子として2052年に存在したキリヤ(タカ)と、2052年に肉体が死んだ青羽の魂も、それぞれ2150年時点で生存し、おそらくは幸せになるであろう未来が構築されただろう。
 2052年、青羽とキリヤが作った現実と2150年のバルバラ島との接点はほどけ、青羽が作りあげたバルボラ島の未来は現実の未来に、2052年の時点から見た『バルバラ異界』は消滅した。

 いずれにせよ、すごい。すごい物語を読んだ。
 アーシュラ・K・ル=グウィンを読んでいる流れで、ル=グウィンと世界観が似ている(と思える)萩尾望都を読んでいたのだけど、正直いって、萩尾望都の方がはるかに才能がある、と思うようになってきた。

2025年6月8日日曜日

コミック マージナル(小学館文庫1〜3)



書 名 「マージナル」 
著 者 萩尾望都
初 出 雑誌「プチフラワー」1985年8月号~1987年10月号に連載    

 どなたかが、この作品をフェミニズムと結び付けていたのを目にした。
 正直、この作品をそういう視点で見たことは、これまでにまったく無かった。
 だって、女、出てこないじゃない。
 地球上でかろうじて女の要素があるのは、XXYの男の子だけ。
 
 しかし、たしかにフェミニズムの視点からすると、逆説的に面白い。なにしろ、女性がいない。
 2300年に突如地球を席巻した細菌汚染。海も川も湖も沼も水という水は汚れ、雑菌、プランクトン、細菌、微生物で赤くメレンゲのように泡立ち、人間は"D因子”に感染し、生殖能力を失った。人類は月や火星に逃れ、女性と大型動物が死に絶えた地上は、自然や生命が甦るかどうか、の壮大な実験場となった。
 人類はD因子に対する免疫を獲得するが、この免疫はY遺伝子にしか乗らないので、女は生き残ることができない。
 そこで、月の人類は、地球に卵子を持ち込み、地上の男達の精子によって受精させ、試験管で培養された子供たちが供給されるシステムを作りあげた。

 700年後。地上は、一人の母(マザ)と大勢の息子達による、ミツバチ型の社会を構築し、だれもその世界の在り方に疑問を持たなくなっている。しかし、マザは老いて衰え、子供の供給が減り、不安と不穏が地上に蔓延していた。

 というところからの物語。
 女性のことを考えるにしても、生殖や次世代の産出を抜きに、女性の在り方を云々することはできない、ってことを具体的が具体的に突きつけられてるところが面白い。色子制や色子宿などの、性欲解消を代替するシステムが出来上がっているのも面白い。
 地球の人口は、女性の提供卵子に支えられているってところもスゴイ。

 ストーリーを動かすのは、マージナル計画を推進するメイヤード。そしてイワンというマッドサイエンティストが創り上げた4人の子供たち(キラ)と、イワンの足跡を追う、もう一人の科学者ゴー博士。この直情で声がデカく、周囲を憚らないKYが、良くも悪くも物語を転がす。ほんとうにゴー博士はうるさいのだけど、えてして現実社会でもこういう人物が事態を推進するんだよな。

 メイヤードとナースタースの愛は切なく、アシジンは単純で健康的。グリンジャは虚無にはなりきれない。アシジンとグリンジャのキラは、死んで病んだ地球に生命の息吹を吹き込むのか。最後に残ったキラは、どちらかの、もしくは二人の子供を産むのだろうか。地上のキラの子供たち、そして、地球の生命はこれからどうなっていくのか。希望を感じさせる物語だった。

2024年9月9日月曜日

0498〜99 シャープさんとタニタくん@+RT  (クロフネコミックス)  

書 名 「シャープさんとタニタくん@ (クロフネコミックス)」
著 者 仁茂田 あい    
出 版 リブレ出版 2016年3月
単行本 146ページ
初 読 2024年9月8日
ISBN-10 4799728989
ISBN-13 978-4799728987
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/122978701

書 名 「シャープさんとタニタくんRT」(クロフネコミックス) 
著 者 仁茂田あい    
出 版 リブレ 2017年2月
単行本 172ページ
初 読 2024年9月8日
ISBN-10 4799732390
ISBN-13 978-4799732397
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/122979237

 旧Twitter時代からの名物公式「シャープさん」。私もフォローしていたが、タニタくんとつるんでこんな面白そうなことしていたなんて。リアタイで見たかったな〜。(^o^)  今だってフォローしているが、青い鳥がなんだか黒くなってから、利用頻度が少なくなって、いきおい「シャープさん」とも疎遠になってしまっていたよ。
 そんなではあるが、シャープさんとお友達のタニタくん、キングジム姐さんやらあれこれ、とても楽しそうである。まさにSNSの醍醐味。
 虚構新聞の記事→「゜」がいなくなった「シャーフさん」→「゜」を拉致したらしい「タニタ゜くん」の流れなんか、すごく面白かったです。

2024年6月7日金曜日

コミック 異国日記(4)〜(11)


(4)朝ちゃん「なんでこんなこともできないの」って禁句だからね、と思った。できない人はできないんだよ。「ふつうのこと」は、言われても傷ついちゃいけない、ってのも強者の、もしくは多数者の傲慢だよな〜。そういう傲慢は、幼かったり、若かったりすることで、周囲から許されるもの。愛されてきたであろう朝の無自覚な傲慢は、ところどころで棘のように痛い。
 そして笠町くん。頑張った。



(5)自分の中の当たり前や常識が砂上の楼閣のように崩れて、残ったのはお腹の中の命だけだったとき、実里さんにはその命を愛することは当然のことだったのか。実里さんは何を日記に書き残そうとしたのかな。
 高校生の頃、学校サボってぶらぶらするのは当たり前だったな。あの当時の形容しがたいやり切れなさは、学校という集団の中ではやり過ごすことができなかったので。幸いだったのは、そういういい加減さが許される学校だったこと。多分生徒たちを、馬鹿なことはしても、愚かなことはしない、と信頼してくれていたんだろうと思う。
 それにしても槙生さんの小説を読んでみたい。俺の竜のエイマールが死んでしまった、なんて、そこだけでも物語が怒涛のように押し寄せてきて泣けそうだ。

(6)「死ぬ気で、殺す気で、書く」「死ぬ気で、打ち、鍛え、研いで、命をかけて殺す」という作業。文章を書く極意を言語化するも、朝には「わかんない」。若いし、未熟だし、未熟だってことは恥ずかしいこと。まさに黒歴史。私はどうにも朝に共感しきれなくて。幼くて、知識も経験も足りないことにある意味あぐらをかく、というか、だから自分は許される、とどこかで思っているところが・・・・・多感なのに鈍感で、言葉を選ばないし、平気で人を傷つけるし。そんな未熟な朝を、きちんと愛する槙生さんがすごいと思うよ。もっとも槙生さんは絶対に「愛する」とは言わないのだが。
 笠町くんと、ジュノさんと、エミリのそれぞれの来訪が、同時並行で描かれていて、きっと槙生さんの頭の中はこんな感じにごちゃごちゃしているんだと思った次第。

(7)朝ちゃんが、すこし大人にちかくなって、世界と噛み合うようになってきたかな。世界と噛み合うとは、朝ちゃんの力が世界に及ぶということ。たとえば十年後の誰かの思い出のように!?
 そういえば、「自分のなりたいものになりなさい」って教育は本当にクソだと思う。自分が何者かもわからん子供に、自分がなりたいものになることが尊いのだ、と教育して、何%が成功して何%が挫折するのか、エビデンスがあるのか? それよりも、自分でメシが喰える人になりなさい。と教えてほしいよ。(と、大いに脱線。)

(8)えみりのカミングアウト。朝の「父親さがし」。数々のインタビューの中で、一番心に残ったのが、笠町くんの「年上の男性はいまだに苦手」。男の人でもそうなるのか、とこれまた男性差別的な視線で恐縮だが、そう思ってしまった。女の子だろうが男の子だろうが、高圧的な父親だったらそうなるよね。思春期の反抗期ごろに親子の関係性を転覆できなければ、そうなる。そして、親に愛されていなくても自分が価値のない人間ではない、という笠町くんの言葉。これは、真実だけど、自分の中で真実になるまでに何回も何回も反芻され、言い聞かされ、それでも頼りなく、自分を支えるものはそれしかないとしても、細く弱く頼りない。あなたはここにあるだけで価値がある、と槙生さんなら怒りながら言ってくれると思うが。

(9)7巻くらいから?判然としないけど、だんだん、構成が朝がもっと大人になってから記憶を辿って書いている日記の体裁になってきた。
そして、「やめる人とやめない人」。同じ文脈で「努力できるひとと努力できない人」という言い方をする人もいる。努力し続けることが才能だ。と。それもまた、一つの真理だけど。私にとっては、「努力し続ける」ことができる能力は、才能というよりは、恩寵、かな。自らに内在するもの、というよりは、自分の意思には無関係に与えられたり、与えられなかったりするもの。私の絵を描く友人はかつて「描き続けることを選択してきた」と。人生のさまざまな選択の場面で、「描くこと」につながる方を常に選択し続けることもまた、力であり才能。

(10)「父親探し」も一区切りついたか、気持ちも生活も受験が多くを占めるようになる高2の後半〜。姉の急死と姪の朝を引き取ることがなければ、きっと変化すこともなく、ただ硬化していっただろう姉との関係も、朝を通じて、槙生の中で変化していくのか。子育てって、自分の思い通りにはならない他者が自分の生活の中にいる、ってことだけでも、人間を成長させると思うなあ。なんとかそういう生活に適応する努力をしている槙生さんもえらいが、「努力」できている時点で、槙生さんの「生きにくさ」とはなんなんだろうなあ、とは思う。仲の良い友人がいて、仕事仲間もいて、子育て仲間もいて、ちゃんとコミュニケートできている。槙生ちゃん、ちゃんとできてるよ。

(11)了。様式美的ではあるが。予定調和的ではあるが。ほんと、こうだい槙生の作品を読みたくなる。

 総じて、自分の学生時代のこと、自分と親のこと、自分の子育てのこと、自分自身のこと、いろいろと思い出し、身につまされた。そういう意味では疲れる読書だった。

2024年6月2日日曜日

コミック 違国日記(1)〜(3)



 私の内面の、苦さ(くるしさ、とは書きたくないので、「にがさ」で。)とか、生きにくさ/やりにくさ、とか、人との関係の取り方の難しさとか、などは、決して外側からは見えないし、そんなものが存在することすら傍目には理解できないし、私がそのようなものを抱えながら毎日を生きているなどとは想像もつかないことだろうと思う。

 はばかりながら50年以上を生きてきて、人との付き合い方も、職場での振る舞いかたも、そこそこ身についている。ただ、自分の主観として、楽ではないだけだ。

 おそらくは、そこはかとなくアタッチメントに問題があるのだろうと思う。
 病的なほどではない。ただ、「傾向」として、ややそういうところがあるだけだ。

 致し方ない事情で、0歳児の頃に3〜4回、養育者が変わっている。基本的な愛着関係や言語を習得する時期なので、それなりにダメージがあったと我ことながら想像する。
 その後は、ずっと保育園で集団生活の中で育ったので、集団の中で身を処す方法は身についたが、それが自分の「気持ち」ときちんとリンクしているわけではない。

 自分の周囲で、自分以外の人が仲良く話をしているときなどに、なんの脈絡もなく、疎外感を感じる。この疎外感と自己同一化するといろいろと駄目になるので、自分の意識をちょっと遠くにおき、周囲の状況と、その環境下で自分の中に醸される感情を俯瞰することが習慣づいている。
 自分の感情と、自分のマインドを切り離して冷静に自分を観察するのは、例えば瞑想などとも関連する方法だが、四六時中そういうことをしているのはメンタル的に疲れるし、本来なら仕事などに回せる自分の脳内のリソースを余計なことに使っている。

 自分がどんな環境が一番好きかというと、たとえば、人の気配のする家の中でひとりでシンとしているのが好きだ。家族が寝静まった深夜の家の中などは、かなり好きだ。

 職場にいる時や、何かの会合に出ているときの自分はかなりテンションが高いが、周囲からはおそらくエネルギーのある元気者だと思われている。

 しかし、家に帰ると、スイッチが切り替わるので、一気にエネルギーは枯渇する。

 とても、疲れる。

 私もきっと「違国」の住人なのだと思う。

 だけど、きっと私一人がそうなのではない。皆、一人一人が、何かしらの難しさや生きにくさを抱えながら、「社会」や「世の中」に自分を合わせて、沿わせて生きている。そもそも、人は一人一人の能力にも差があり、なんとか円満に育ったとしても、この世は決して生きやすくないのだ。

 そんなことをつい、考えさせられた、「違国日記」。

(1)槙生さん、勢いと道義心の発露で、若犬(朝、15歳、女の子、姉の子)を引き取る。
 しかし、槙生さんは、人間関係全般がNGで、孤独を友とする人だった。親を失ったばかりの多感な15歳の存在に怯えつつも、なんとか関係を構築しようと模索する。あなたの感情はあなた自身のものであって、他人がそれをとやかくいえるものではない。当たり前のことだが、人は自分とは違う「他人の感じ方/考え方」を否定しがちだ。それこそ、「えー、うそー?(笑)」みたいな簡単な言葉で。「15歳の子供は、もっと美しいものを受けるに値する」「私はけっしてあなたを踏みにじらない」、日記の書き方のすすめが良し。

(2)主人を失った家の片付け。当然に続いていたはずのものが、突然断ち切られることを受け止めるのは難しい。自分にとっては敵も同然だった姉の生活をのぞく。いなくなった母のことなのに、現在形で話してしまう朝ちゃん。英文法の時制の話になぞらえて、受け止め方/考え方を教える槙生さんはとても知的で、優しい。自分と朝の「おかーさん」の話は、「過去完了形」。
 笠町くんはいい男だ。こういう男って、漫画の中にしか存在しないよな、とちと思った。
 なんで槙生の姉さんは、あんなに言葉で妹を切り刻んだんだろうな。姉というのは、それが許されると誤解していた? ただ、この場合姉の言葉は槙生の主観/記憶であって、実際はもうちょっとそうでなかった可能性もある。だが、そうだとしても、槙生の感じ方もまた、真実。
 いちいち槙生ちゃんと自分と引き比べてしまう。少なくとも、私は自分の生に疑問を持ったことはなかった。親に愛されていないと感じたことだけはなかった。それは間違いなく親に感謝できることだ。ついでに、自分の子育てをつい、振り返ってしまう。私は自分の娘にどう関わってきたか(かなり放任した自覚もあるが)。なんか、身につまされることが多すぎる。

(3)朝ちゃん、高校の入学式。一人で出席する朝に、親友えみりの母が怪訝な顔。ここにも社会常識という善意の塊。
 槙生が最初に借りたアパートは近くに学校があって、チャイムの音やプールの声が離れて聞こえてくる。緩やかに干渉はされずに、人の気配がして繋がっている感じ。これは理解できる。わたしにとっての夜中の家の中、と同じ感覚だ。
 無条件に子供を受け入れる、そうありたいと思っていたけど、実際のところ子供から見た私は「無条件」だったろうか。もしかしたら「無関心」だったのでは?
 そういえば、娘がこっちが返答に困るようなことを言ってきたときに、ひとまずそれを飲み込んで、どんな返事がいいか、と考えるんだけど、私の沈黙が長すぎて、娘は無視されている、と思っていた。べつに無視しようと思ったわけじゃないんだけどね。返答が難しかっただけだよ。もう、何を聞かれたかも忘れてしまったけど。

弁護士の塔野さん、いい味出してる。本人に自覚があるかどうかはともかくこの人も「違国」の住人か。でもこのかたはきちんと現実社会に着地していそう。
ライバル登場だ。頑張れ笠町くん。

2023年8月7日月曜日

父の蔵書編4(補完編) 手塚治虫漫画全集(第四期) 講談社


父の蔵書の手塚治虫漫画全集・第四期は未収集だったため、私の関心の赴くままに古書で収集中。(後からよく確認したら、第三期もけっこう未収集の作品があった。)
通し番号第四期巻数収録・併録作品初出および掲載誌/出版社 
301ー303MW全3巻 1976年-78年1993年
304ー306グリンゴ全3巻グリンゴ1987年-89年1993年
新聊斎志異 叩建異譚1987年
307ブッキラによろしく!全2巻ブッキラによろしく!1985年1993年
308牙人1984年
309アトムキャット全1巻 1986年-87年1993年
310ユニコ 小学一年生版全1巻 1980年-84年1993年
311ー312どついたれ全2巻 1979年-80年1993年
313あらしの妖精全1巻あらしの妖精1955年-57年1993年
こけし探偵局1957年
ピンクの天使1957年-58年
314そよ風さん全1巻そよ風さん1955年-56年1993年
ひまわりさん1956年
あけぼのさん1959年
ヨッコちゃんがきたよ!1962年
315冒険ルビ全1巻冒険ルビ1969年-70年1994年
小学二年生~小学三年生版
ジャングル大帝 小学三年生版1966年
316流星王子全1巻流星王子1955年-56年1993年
おお! われら3人1956年-57年
317チッポくんこんにちは全1巻 1957年-74年1993年
318ピロンの秘密全1巻ピロンの秘密1960年-61年1993年
お山の三五郎1958年-59年
319落盤全1巻落盤1959年1994年
花とあらくれ1959年
人食岬の決戦1957年
ジェット基地の幽霊1958年
火の谷1960年
タツマキ号航海記1963年-64年
羽と星くず1961年-62年
320バンパイヤ第4巻 1968年-69年1993年
321大地の顔役バギ全1巻大地の顔役バギ1975年-76年1993年
緑の果て1969年
熟れた星1971年
山棟蛇1972年
出ていけッ!1972年
322ガラスの城の記録全1巻 1970年-73年1993年
323森の四剣士全1巻森の四剣士1948年1993年
奇蹟の森のものがたり1949年
324拳銃天使全1巻拳銃天使1949年1993年
仮面の冒険児1948年
325夜よさよなら全1巻夜よさよなら1985年1994年
1985への出発1985年
やまなし1985年
月世界の人間1972年
三つのスリル1968年
カンパチ1974年-75年
パンサーを探せ1979年
お客さまは悪魔です1985年
326ー336陽だまりの樹全11巻 1981年-86年1993-94年
337ー338ルードウィヒ・B全2巻 1987年-89年1994年
339火星博士全1巻火星博士1947年1994年
大空魔王1948年
340地球大戦全1巻地球大戦1957年-58年1995年
ワンダーくん1954年-55年
341ー347七色いんこ全7巻 1981年-82年1994年
348-351プライム・ローズ全4巻 1982年-83年1995年
352-353ゴブリン公爵全2巻 1985年-86年1995年
354-359ミッドナイト全6巻 1986年-87年1995年
360-361ロストワールド 私家版全2巻 1982年1994-95年
362火の鳥第13巻生命編1980年1994年
異形編1981年
363火の鳥第14巻太陽編1986年-88年1995年
364第15巻
365第16巻
366ブラック・ジャック第19巻 1973年-82年1995年
367第20巻
368ー369ネオ・ファウスト全2巻 1988年1995年
370ブラック・ジャック第21巻 1973年-83年1996年
371第22巻
372ー379アドルフに告ぐ全5巻 1983年-85年1996年
377魔神ガロン第3巻魔神ガロン1959年-62年1996-97年
378第4巻
379第5巻どんぐり行進曲1959年
380ワンサくん全1巻ワンサくん1971年-72年1997年
らびちゃん1960年-61年
とべとべるんちゃん1959年
ぽっかち1969年
海のトリトン1972年
たのしい幼稚園版
381少年探偵ロック・ホーム全1巻少年探偵ロック・ホーム1949年1997年
くるったジャングル1950年
氏神さまの火1950年
村の踊り子1953年
足あと温泉1950年
カノコの応援団長1950年
凸凹牧場1951年
凸凹剣士1952年
ほろ馬車くん1952年
13の秘密1953年
まぼろしの円盤1953年
フォード32年型1954年
宇宙狂想曲1953年
382とんから谷物語全1巻とんから谷物語1955年-56年1997年
うたえペニーよ1953年
シルクハット物語1954年
リボンの騎士 チンクと金のたまご1954年
白いくびの小がも1956年
金のうろこ1956年
おかあさんの足1957年
舞踏会へきた悪魔1957年
母の眼ばなし1957年
ミニヨン1957年
つるの泉1956年