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2019年2月27日水曜日

0164 帰郷戦線―爆走― (元海兵隊員ピーター・アッシュ・シリーズ)

書 名 「帰郷戦線―爆走― (元海兵隊員ピーター・アッシュ・シリーズ)」 
著 者 ニコラス・ペトリ 
翻訳者  田村 義進 
出 版 早川書房 (2018/9/5) 
初 読 2019/02/27 

 タイトルと表紙から、退役帰還兵がぼろいアメ車を駆ってガタピシと合衆国を暴走横断!て話だと思い込んでた(笑)。違った。

 むしろ、PTSDを煩う退役軍人の内省の書って感じです。面白い。そしてミンガスが楽しい。犬は正義、に一票。
 ダイナとどうにかなるんだろうと思ってたら、まさかの伏兵ルイスですか!そして、ルイスの正体はまだ知れず。

 最初から丁寧に描いていたミッデンは仲間に転じ、ジョシーはミッデンとピーターのどっちを選ぶんだ?と、まだまだ、続刊の刊行を待つしか無い。ミッデンの殺人が不問になっちゃうのはどうよ?と思わんでもない。それでいいのか、アメリカ??

 これは、続刊が出たら、読む。

2017年10月14日土曜日

0063 エニグマ奇襲指令

書 名 「エニグマ奇襲指令」 
著 者 マイケル・バー・ゾウハー 
翻訳者 田村 義進 
出 版 早川書房 1980年9月 
初 読 2017/10/14 

  Dday前夜の英仏を舞台とした痛快娯楽小説。
 アルセーヌ・ルパンは第一次大戦に軍医として従軍もしていたが、これは“ルパン第二次大戦でも活躍す”って感じの泥棒物。
 そんなだから人物造形が単純だという気もするが、まあそれぞれ魅力的に描かれてはいる。
 老獪な英国軍人、明朗快活なフランス男の大盗賊。勤勉実直で実は詩的で夢見がちなドイツ青年将校。このフォン・ベックだけはなんだか哀れだった。
 英国で服役中の盗賊が英情報部の依頼で仏国内の独エニグマ暗号機を盗み出す!交換条件は自由と大金、という設定もどこかで観たような読んだような。だけど、この話は、細かいことは考えずにワクワク読むのが正しい読み方。最後のオチも、なんとなく初めから見えていたような気もするけど、気にしない!

2017年8月7日月曜日

0047 追いつめられた天使―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「追いつめられた天使―ロスの探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「STALKING THE ANGEL」1989年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 田村義進 
出 版 新潮文庫 1992年3月
初 読 2017/08/07

 一人クレイス祭り続行中。C&P第2作。
 正直妙な日本文化には閉口するけどまあそれはいい。コールが初めから最後まで関与しないほうが、ミミの為には良かったんじゃないの??というのは言わぬが花。
 今回の仕事は盗まれた日本の古書「葉隠」の捜索。手がかりを求めて乗り込んだヤクザの事務所でいきなり刺青やら小指のない男やらと遭遇して乱闘寸前。ノリは三文アクション映画である。そうこうしている内に依頼者の娘ミミが誘拐されてしまい、護衛に失敗したと落ち込むコールが実にカワイイ。
 内心心配して様子を見に来るパイクはさらに良い。

 事件は例によってどんどん深刻化。ついには殺人に発展。事態を阻止できなかったことをコールは悔やんでさらに落ち込むが、そんなコールに守護神パイク。
 酔っ払ったコールがパイクに電話を掛けた30分後には瞬間移動したかのように居間にいて、台所でオムレツとイチゴジャムトーストを作り「こっちへこい」。黙って食べたコールに「話せるか?」そして、コールの話を微動だにせずに聴くのだよ。 
 C&Pの何がいいって、この二人の関係性がいいのだ。コールもパイクも基本的にサバイバーで、辛ければ辛いほど、それを言葉にできなくなる。(幼少時から周りの他者(親や大人達)に助けられた経験が乏しいから。)それをわかってるパイクはまずはコールに食事を食べさせて、コールの心のハードルを下げてから「話せるか?」と問うんだよね。さりげないシーンが胸に来る。

 今回のパイク語録。
 C「まずいな。飛行機に乗るつもりかもしれない。」
 P「だいじょうぶだ。撃ち落とせばいい」ほんとに出来そうで怖い。

 「葉隠」は秘伝なんで読んで覚えたら本は燃やせと伝えられていて、だから原書は残っておらず伝承されているのは写本で、しかも何冊もあるんだ、とか、写本である以上、文化財的価値はさておき、精神的価値は、そこらの出版物と大して変わらず、そんなもののために日本人は殺し合いはしないだろう、とかはこの際どーでも良い。
 サムライは紅白のハチマキはしないし、ソバ入りのミソスープは勘弁してほしい。でもいい。どーせ亜米利加人の描いた軽めのミステリーなんだから!コールとパイクが格好良ければそれで良いのだ!

【再読C&P祭り!『指名手配』刊行記念】
 初読時はコールが好きすぎて興奮状態だったが、今回はさすがに落ち着いて読めた。
 その分、コールの男っぷりと優しさが染みわたる。依頼人の娘ミミの境遇に本気で腹を立て、心底心配して力を尽くそうとするコール。事件の結末は苦すぎて、どれだけ酒を飲んでも足りないが、「苦痛を取りのぞいてくれる者が愛してくれる者なら、それはあなただ。」というジリアンの言葉は最大の慰めだろう。ハガクレやヘンな日本文化には今回も目をつぶる。

 「そこに置いてあるウィーバー社製のバーベキュー・グリルの下に、ネコはうずくまっていた。大きくて、意地が悪くて、真っ黒。片方の耳は立っているが、もう一方の耳は横に倒れていて、そこにクモの巣のような白い傷跡が残っている。誰かに撃たれたのである。それ以来、まともではなくなった。」
 コール若かりし頃から同居している黒猫さん。「わたしも11ヶ月ヴェトナムにいたが、・・・」「ヴェトナム以降、おまえさんは自分自身の子供の部分にしがみついてきた。」2作目は、過去の従軍体験への言及は少なめ。カルヴァーシティの射撃場の主リックは、海兵隊に12年いて、そのうち8年間は射撃班に所属。そんな彼が嬉しそうに目を細めて眺めるパイク。そういえば、コールの年齢その他はあらかた推測できているが、パイクは何歳なんだろう。

2017年7月24日月曜日

0044 モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「モンキーズ・レインコート―ロスの探偵エルヴィス・コール」
原 題 「The Monkey's Raincoat」1987年
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 田村義進
出 版 新潮文庫 1989年2月

  C&P第1作。
 80年代 の空気感と西海岸の陽光とハードボイルドの交じり具合が絶妙。
 ベトナムでの泥沼の戦場体験があっても自分なりの前向きな生き方と正義を貫いて生き抜いてきた、コールの精神の強さが魅力。
 ちゃんと小さなコトにも怒ったりイラついたりできる、そういう感情が摩滅していないことが大事なのだと思う。
 子供と依頼者を守る為なら危険の中にもあえて踏み込んで行く。人殺しは好きではないが、反撃は躊躇しない。周りに悪人の死体の山ができても、警察に怒られても、ボロボロになりながらもあくまでも人助けはさらりとやる。推理よりは荒事寄りのロスの探偵である。
 コールのことを「ハウンド・ドッグ」という渾名で呼ぶ、ルー・ポイトラスとコールの関係も気になる。ルーの台詞「きみはいつも深入りしすぎる。依頼主に近づきすぎる。ときには恋心さえ抱く。ちがうか?」 ルーの上司バイシェも出番は少ないながら刑事魂を発揮して地味に良い。

《コールの来歴》
 生まれた時の名前はフィリップ・ジェームズ・コール。6歳の時に、プレスリーにかぶれた母に強引に改名されるが、「母がくれた名だから」という理由で今も名前を戻すことはしない。18歳の時ベトナムの水田にいた。ベトナム戦争に2年間従軍。1987年刊行の本書で35歳なので、逆算して1952年生まれ。(最新巻の『指名手配』が2008年頃と想定すると56歳くらいになってる。)従って1970年に18歳でベトナム戦争に行き、2年間従軍して1972年のベトナム戦争終結ののち除隊。計算は合う。
 その後はロスに戻って撮影所の警備の仕事をへて、探偵事務所の見習い。この頃同じく海兵隊を除隊して警官になっていたパイクと知り合う。28歳で探偵免許を得て開業。「美しいものはみな子供の心のなかにある。」14歳が理想の年齢。ちなみに、ヴェトナムで特殊部隊っていうからつい、グリーンベレーかと思っていたが、レンジャー部隊だったことが9作目の「Last Ditective」で判明。涙なしには読めない名作なのに、本邦未訳!残念すぎる。

《エルヴィス・コールとハリー・ボッシュ》
 同じくロス在住のボッシュは1950年生まれでコールより2歳年上である。従軍も2年早い。二人ともウッドローウィルソンドライブに家があり、コールはマルホランド・ドライブ(峠)を挟んで南側斜面のハリウッド側。ボッシュは北側斜面でスタジオシティ側に家を構えている。
 家庭に恵まれず施設で育ったという設定も似ていて、その分「我が家」に対する思い入れが強いのも同じ。ちなみに作者のクレイスとコナリーは友人同士だそうで、ボッシュとコールは、それぞれの作品にちらりと友情出演している。
 コールは、ボッシュの家の前をランニングすることがあるらしく、ロス大地震の後、家の前で上半身裸で瓦礫の片付けをしていたボッシュを見かけ、その刺青で彼がナム帰りと知って、黙って片付けを手伝ったんだそうな。このロス市警の刑事にコールは密かに敬意を持っている。このあたりが書かれてるクレイス作品は前述の「Last Ditective」で、残念ながら翻訳出版されていない。

《最恐チート・パイク》
 コールとの出会いはベトナムから帰還後の1973年。ベトナムでは特殊部隊に所属していたコールを「優秀な兵士」として尊敬している。パイクは海兵隊で、スナイパーだったらしい。グレイマンやヴィクターには及ばないかもしれないが、十分主役張れるだけの最恐チート級であるパイクをさらりと脇で使ってるこの贅沢。