2026年4月5日日曜日

ガブリエル・アロン来歴《美術修復師ガブリエル・アロンシリーズ》(2026.4.5更新)


《大天使ガブリエル》

 イスラエルの復讐の天使 ガブリエル・アロン
 ダニエル・シルヴァによる、美術修復師にしてイスラエル諜報機関の暗殺工作員(キドン)であり、やがては諜報機関、内部の人間の呼ぶところの〈オフィス〉の長官となるシリーズの主人公、ドイツ系ユダヤ人。
 画家として非凡な才能があったが、ドイツ語を母語とし複数のヨーロッパ言語に堪能だった彼は暗殺工作員として活動することを半ば強いられ、22歳で最初の暗殺を実行する。その後も極限の中で暗殺を重ね、結果として、絵を描く才能は損なわれてしまう。その後、ベネツィアで絵画修復師として修行を積み、独立後はこれを隠れ蓑にヨーロッパで工作員としての活動を継続することになる。

 容姿の形容は、身長175cmくらいで平均以下、自転車選手のような引き締まった体躯、暗色の髪はこめかみに白髪が交じり、知性を感じさせる広い額、面長の顔、目はアーモンド型で不自然なほど鮮やかな緑の瞳、高い頬骨、木彫りのような鋭い鼻の線、細い顎。ちなみに、私の脳内では、キアヌ・リーブスが近い。目の色以外はぴったりだと思っている。もし映画化されることがあるなら、主演は彼でお願いしたい。(正し、身長差はいかんともしがたいが。)

 犬が嫌い。(キアラに言わせると野生動物全般と相性が最悪らしい。たぶんガブリエルも動物に劣らずワガママだからだろうな。)
 ガブリエルの犬嫌いはスパイ業界では有名な話らしく、部下のミハイルによれば、犬とガブリエルは「ガソリンとライターのように危険な組み合わせ」なんだとか。元々好きではなかったらしいが、『イングリッシュ・アサシン』で逃走中にアルザス犬(=ジャーマン・シェパード)と闘う羽目になり、左腕を噛み砕かれたことがあって、以来、犬族全般に対して極めて険悪な感情を持っていると推察される。

 性格はやや神経質で寡黙で暗い。時間を掛けることも待つことも厭わないが、待たされることはあまり好きではない。待たされてイライラすると物や人に当たりちらすこともあり。情緒に乏しく傲慢で冷酷とは少年期の彼に与えられた評価だが、感情表現があまり豊かでないだけで、内実は愛情深く、恩義に厚い。

「・・・石灰岩の建物と、松の香りと、冬の冷たい風雨を愛している。教会と、巡礼の人々と、安息日に車を運転する彼をどなりつける超正統派ユダヤ教徒を愛している。旧市街の市場でアラブ人の露店の前を通り過ぎるとき、彼らの守護聖人たるテロリストを何人も排除してきたのが彼であることを知っているかのように、みんなが警戒の視線を向けてくるが、そんなアラブ人のことすらガブリエルは愛している。信心深い暮らしを送っているわけではないが、旧市街のユダヤ人地区に入って、嘆きの壁のどっしりした石組みの前に立つのを愛している。パレスチナと広いアラブ世界とのあいだに永続的な平和を確保するため、縄張りをめぐる譲歩を受け入れてはいるが、本音を言うなら、嘆きの壁だけは譲りたくないと思っている。エルサレムの中心部に国境が作られることが二度とあってはならないし、ユダヤ人が自分たちの聖地を訪れる許可を求めねばならないような事態を招くことも、二度とあってはならない。嘆きの壁は現在、イスラエルのものとなっている。この国が存在しなくなる日まで、そうありつづけるだろう。地中海沿岸のこの不安定な一帯で、いくつもの王国や帝国が冬の雨のごとく現れ、消えていった。現代によみがえったイスラエル王国もいずれは消えていくだろう。しかし、自分が生きているかぎり、そうはさせない。」ダニエル・シルヴァ. ブラック・ウィドウ 上  Kindle の位置No.945-957 


 普段はかなり無口で、几帳面で感情の起伏を表に出さないタイプだから、こんな想いを語られるとけっこう胸熱だ。  

以下作中から読み解く彼の来歴
 ※『ブラックウィドウ』を読んで、ガブリエルの生年を上方修正。1950年生まれだ。

◆ ガブリエル・アロンの家族の出身はドイツ、母方はベルリン。父方はミュンヘン。
 母方は一家全員がアウシュビッツに送られ、母のみ生還。母方祖父はヴィクトール・フランケルという名のドイツ印象派の高名な画家であったがアウシュビッツに到着した日に殺害されている。母も才能ある画家で、戦後イスラエルに逃れ、現代イスラエルを代表する抽象画家となったが、心を病み生涯アウシュビッツの記憶に苦しめられた。 父も腕に番号の入れ墨のあるアウシュビッツの生還者だ〔報復という名の芸術〕が、ハーパーブックス以降の巻では、ミュンヘン出身でユダヤ人虐殺が始まるまえにパレスチナに移住した、とされている。作品初期から設定が変わっているのか?それとも戦前のパレスチナへの移住者だが、捕らわれてアウシュビッツに送られるような経緯があったのか? いずれにせよ、ガブリエルは母から芸術家としての才能と、両親からアウシュビッツを生き抜いた強靱で不屈な精神を受け継いだ。
◆ ガブリエルは1950年(の多分冬。11月か12月頃)に、イスラエルのイズレル渓谷にあるラマト・ダヴィドという農業を中心とする入植地で生まれた。〔ブラック・ウィドウ〕
◆    1967年 父が第三次中東戦争(六日間戦争)で死亡。〔ブラック・ウィドウ〕
◆ 1968年 父の死の1年後、母が癌で死亡。〔イングリッシュ・アサシン〕
◆ 兵役(イスラエルのユダヤ教徒は男女とも皆兵。男子は18歳から36ヶ月の兵役を務める。 )ののち、ベツァレル美術学校(ベツァレル美術デザイン学院)に入学。イスラエルの学生は兵役があるため、普通大学に入学した時点で21歳くらいのはずだが、アロンは1972年に暗殺者となったとき20歳、との記載。〔英国のスパイ〕 若干計算が合わない気がしたが、『ブラック・ウィドウ』では「ミュンヘンオリンピックの後、22歳で復讐の天使になった」とのエリ・ラヴォンの言葉があり。そうであれば、1950年生まれで、ハリー・ボッシュと同じ歳(笑)である。これだと、計算があう。というわけで、ざっと年齢を修正。
◆ 在学中に最初の妻、リーアと結婚。
◆ パリに1年留学していた、との記載あり。〔報復という名の芸術〕
 留学、とはいうものの留学生の身分を偽装に利用して暗殺工作を展開するためだった可能性もある。
◆ 1972年のミュンヘンオリンピック事件(ブラックセプテンバー事件)直後の9月、ガブリエルの語学力、兵役時の銃器を扱う才能、偽装に使える画才等を見込んだシャムロンが彼を強引にスカウトし、シャムロン麾下の暗殺工作員(キドン)となる。〔イングリッシュ・アサシン〕 この時22歳。〔ブラック・ウィドウ〕その後3年間にわたって、ブラックセプテンバー事件への報復作戦である「神の怒り作戦」に従事。
◆ ブラックセプテンバー事件の実行犯・関係者12名を暗殺(銃殺もしくは爆殺)して「神の怒り作戦」におけるガブリエルの任務は終了する。ガブリエルはそのうち6名を直接殺害した、とされている。その際、ブラックセプテンバー事件の犠牲になったイスラエル選手団11名の報復として、可能な限り一人につき11発の銃弾を撃ち込んだ。これは、この後もガブリエルの暗殺のスタイルとなっている。
◆暗殺した6人の内のひとりが、マハムンド・アル=ホウラニだった。この男の弟のタリク・アル=ホウラニが、兄を殺された復讐のため後にガブリエルの妻子を爆殺する。〔報復という名の芸術〕
◆ ガブリエルは、3年間作戦に従事したのちイスラエルに帰還し、改めて画家としての活動を再開しようとしたが、キャンバスに向かうと自分が殺した相手の顔がちらついて、絵を描くことができなくなっていた。そこで、シャムロンの了解のもと、ベネツィアの美術修復士のもとに弟子入りし、絵画修復の道に入る。
◆ 1975年〜1977年頃までの3年間、ベネツィアで修行。
  絵画修復師として独り立ちした後は、この身分を隠れみのに、工作員としての活動を継続。
◆    1976年頃には、チューリッヒ在住のパレスチナ人劇作家、アリ・アブデル・ハミディを殺害。〔イングリッシュ・アサシン〕
◆ 1977年頃  シャムロンが修復師修行を終えたガブリエルをイシャーウッドに引き会わせる。
◆ 1988年頃 息子のダニエル・アロン誕生。(ガブリエルはこのとき38歳)
◆ 1988年4月のPLO幹部暗殺事件では、作戦に加わり、暗殺を実行している。
◆ 1991年1月 ウイーンでガブリエルの自動車に仕掛けられた爆弾により息子のダニ(当時2歳半)が死亡、妻リーアは全身大やけどを負い、精神に異常をきたす。〔報復という名の芸術〕
◆ 事件の後、ガブリエルは〈オフィス〉を辞め、イギリスのコーンウォール最南端のガンヴァロー海岸にあるコテージに隠棲。このコテージとアトリエは、こののち長い間彼の心の休息地となるが、『英国のスパイ』では殺戮の舞台となる。
◆ 1998〜1999年頃、イギリス・コーンウォールのヘルフォード川河口、ポート・ナヴァスの近くにあるコテージに移り住む。このコテージの隣家にピール少年が住んでおり、ガブリエルは亡くなった息子ダニエルと同じ歳のピールと交流する。〔報復という名の芸術〕
◆ 1998年頃は「この世界(諜報と暗殺)から遠ざかっていた」と本人の弁。〔英国のスパイ〕この頃はイシャーウッドからの絵画修復の依頼で生計を立て、精神病院に入院していたリーアの治療費を稼いでいた。
◆    1999年頃 シャムロンの要請で〈オフィス〉の現場に復帰。ニューヨークでパレスチナ人テロリスト(タリク・アル=ホウラニ)の銃撃を胸にうけて重傷。〔報復という名の芸術〕
◆ 2001年頃 ナチスによって奪われたユダヤ人が所有していた絵画を巡り、スイスの秘密組織に潜入するも捕らえられて拷問される。なお、この作戦の際、パリで爆弾テロの標的とされ、腕に大怪我もしている。(爆弾テロ1回目)〔イングリッシュアサシン〕
◆ 2001年〜2002年冬 サン・ザッカリア教会の祭壇画(ベッリーニ)の修復。
  盟友ベニがミュンヘンで謀殺される。
  ローマ教皇暗殺犯(ベニを殺した男)をバイクで追跡中転倒し重傷を負う。〔告解〕
◆ 2003年  聖クリストソモ教会の祭壇画(ベッリーニ)の修復。キアラとは恋仲になっている。SS将校であったラデックを捕らえてイスラエルに連行する。〔さらば死都ウィーン〕
【5作目から13作目 未読 ガブリエルがキアラと別れたりくっついたり、ローマ教皇を助けたり、ロシアに潜入して大怪我したり、サウジに潜入して捕まったり、イギリスの首相を助けたりしている。ああ、翻訳読みたい(泣)】
◆    2014年秋  サン・セバスティアーノ教会の祭壇画(ヴェロネーゼ)の修復。
◆ 2014年秋〜12月 英国人の殺し屋ケラーとともに元IRA爆弾テロリストとロシアのスパイを追う。ロンドンで爆弾テロの標的にされて負傷するが、この事件を逆手にとって死亡を装ってテロリストを追撃。
◆    2014年12月 妻キアラとの間に双子誕生。
  女の子をアイリーン(ガブリエルの母の名)、男の子をラファエル(ルネサンスの大画家より)と名付ける。〔ブラック・ウィドウ〕
  カラヴァッジョの祭壇画《キリストの降誕》の修復〔ブラック・ウィドウ〕
◆ 2015年4月〜ISISの爆弾テロ指導者〈サラディン〉を追う。この間、ワシントンで爆弾テロに巻き込まれる。〔ブラック・ウィドウ〕
◆ 2015年の末に 〈オフィス〉長官に就任(65歳)。双子1歳の誕生日。サラディンの追跡を継続。パリのヴォクソール・クロスでまた爆弾テロにあう。〔ブラックウィドウー死線のサハラ〕

◆ 2019年11月 ローマ教皇パウロ7世逝去。双子は4歳で、もうすぐ5歳。ガブリエルは69歳になったところ。ガブリエルの旧友でもあるドナーティが、新教皇に選出される。〔教皇のスパイ〕

◆ 2020年3月 新型コロナの流行。アロン家はナハラルのバンガローに仮住まい。ガブリエルの旧友であるロンドン在住のロシア人富豪が毒殺される。
◆ 2021年1月6日 米国でトランプ支持者による議会議事堂襲撃。 1月20日 大統領就任式の直後にQアノン支持者によるガブリエル暗殺未遂。生死を分ける一週間、さらに2週間の集中治療ののち、ガブリエルはイスラエルに帰国。その後、復帰までにはさらに数ヶ月の静養を要した。〔報復のカルテット〕

◆ 2021年末 オフィス長官辞任。ヴェネティアでついに引退生活に入る。

◆ 2022年春 旧友のイシャーウッドが贋作絵画売買の詐欺に巻き込まれる。1枚の絵の所有者が殺害され、イシャーウッドも狙われるに及んで、ガブリエルが調査に乗り出す。結果、全世界を股に掛けた巨大絵画投資詐欺グループを壊滅に追い込む。〔謀略のカンバス〕
◆ 2022年秋 〈オフィス〉長官引退後、ヴェネティアで絵画修復に励むガブリエルにフェラーリ将軍が巨匠絵画の盗難事件を持ち込む。ガブリエルは調査を請け負うが、それがウクライナ戦争での核使用を目論むロシアの陰謀に繋がり、ガブリエルは再び〈オフィス〉のメンバーを集め諜報戦を指揮することに。〔償いのフェルメール〕
◆ 2023年1月 修復を手がけたゴッホのお披露目の式典のためにイギリス、コートールド美術館を訪れていたガブリエルに旧知のティモシー・ピールから一本の電話が。〈斧男〉と呼ばれた連続殺人犯による殺人に見せかけた美術史家の殺害から、第二次大戦中にフランス在住のユダヤ人から奪われたピカソの作品を知り、事件を追いかけるうちに、ガブリエルはイギリス政界を揺るがす陰謀を暴く。双子は8歳になっている。〔コーンウォールに死す〕
◆ 2023年秋〜初夏頃? ガブリエルはヴェネツィアの運河で、若い女性の他殺体を見つける。女性は、イギリス人の美術修復師で、ヴァチカンで研修中の女性だった。彼女が発見したレオナルド・ダ・ヴィンチの作品を巡り、ガブリエルはヴァチカンの暗部を暴き出す。これまで数学にしか興味を示さなかった双子の片割れラファエルが遂に絵に目覚める。〔ダ・ヴィンチの密命〕

2026年3月の読書メーター

 ガブリエル・アロンシリーズ新刊『ダ・ヴィンチの密命』の発売日が月末近くだったので、楽しみにしていたんですが、三月中に読了ならず。なんとすれば、想定外の人事異動を喰らって、わたわたしていたから。残務が!!!残務がぁぁぁぁぁぁっっ!と、ムスカのように叫ぶ。
 だって、あと2年くらい居残ってやろうと思っていたのだ。来年度やろう♪ と思っていた仕事も後任者様に丸投げをせざるを得ない。(T-T)・・・いや、泣きたいのは後任者だろうよ。
 今週は自分の仕事の引継ぎしかできず。私がうけた引継ぎはまだ未消化なので、これから引継書を精読せねばならん。・・・・というわけで、3月後半は自分の引継書の執筆と、書類の整理と、フォルダ内の整理に追われ、追われ、追われ。。。。久しぶりの終電であった。こう書くと、自分の準備が足りないだけだろうがあ、っと我ながら思う。
 そんなこんなで、3月の読書は、ほぼ、佐伊さんの『精霊を宿す国』のみ。
 これがまた良かった。こんなファンタジー世界を構築できる佐伊さんの才能が凄い。面白かった。
3月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2044
ナイス数:316

煙と蜜 第七集 (ハルタコミックス)煙と蜜 第七集 (ハルタコミックス)感想
文治サマの弟二人も文治サマが大好き(笑)。姫子さんと姐さん女中さんたちも相変わらずきゃっきゃしているし、姫子産もゆっくりと成長中。この話、シベリア出兵まで辿り付くのかしら? 
読了日:03月14日 著者:長蔵 ヒロコ



In These Words (5) (ビーボーイコミックスデラックス)In These Words (5) (ビーボーイコミックスデラックス)感想
最新巻が出ていたので購入。絵がとても濃くて美しいのだけど、話運びのもったいぶった感じがやや辛くなってきたな。記憶はまだ戻らず、そして犯人にもまだ近づけない。焦燥と不安。そして新たな男の登場。力のある男の登場であっというまに犯人と再会って、ちょっと安易な気もするけど、ここまで読んできたので最後まで追いかけたい。
読了日:03月14日 著者:Guilt|Pleasure

五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました5 (Celicaノベルス)五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました5 (Celicaノベルス)感想
すでWEBで2回くらい通読済み。あいかわらず優しい、心の絆創膏系です。
読了日:03月05日 著者:須王あや





精霊を宿す国 新しき空と神の獣達精霊を宿す国 新しき空と神の獣達感想
二週目。ついに完結です。格好良いところは概ねルカとダナルに持って行かれてる。ダナルの愛が尊い。セフィストがそうなるか。しかしセフィストが巻き散らかした争乱はもはや止めることは叶わず、ヨダの生き残る道は、鳳泉に掛かっている。ところどころ笑いどころもちょこっと挟みつつ、物語は大団円へ。カディアス王の治世は本当にご苦労様だった。新王の青雷の授戒シーンは、その父カディアスの初めての授戒であったゼドとセツの青雷授戒のあの幸福な風景を思い出す。やっと、正常で安定した世界を取り戻したヨダ国の面々に幸いありますように。
読了日:03月04日 著者:佐伊

精霊を宿す国 赤い炎の翼精霊を宿す国 赤い炎の翼感想
オルガとキリアスの里帰り編(辺境&王宮)。色街を襲った大火を治め、青雷が約定の日を迎えて去ったあと、来るべき試練の前にオルガを両親に会わせたいと願ったキリアスがオルガと友に辺境を訪れるところからの王都への召還。今編はオルガの出生にまつわる、王宮を激震させた災悪が明かされる。カディアスはよく正気を保っていると思う。それが王たる所以か。この物語はカディアスの物語でもある。カディアスの被った苦難に比べれば、キリアスなど本当に小僧っ子にすぎない。そして影なる諸悪の根源はアジス家だろう。次巻はいよいよ鳳泉授戒へ。
読了日:03月02日 著者:佐伊

精霊を宿す国 黄金の星精霊を宿す国 黄金の星感想
終始一貫して切ない。イーゼスとハユル、ダナルとルカ、青雷を宿すオルガ、ガイとリアン・・・。そしてどこをどう切り取っても苦労人のカディアス。1巻の終わりに鳳泉の操者にとの国王の意を受けたキリアスはすでに半年もオルガと別離。こいつだけは、一生懸命でもどこかまだ身勝手。早く覚醒しやがれ。王宮での事件と場末の娼街での騒乱で、イーゼスのことやオルガの出生に関わる先代ステファネスの事件が見えてきた。過去話では2代前の先読リネスの事件が明らかに。青雷が覚醒し,そして去っていよいよ物語は核心に近づく。
読了日:03月02日 著者:佐伊

精霊を宿す国 青雷精霊を宿す国 青雷感想
『竜王の婚姻』『君を転生させないために』につづき、佐伊さんの作品3作目。すごくよい。初読時はとにかく先を知りたくて駆け足で読み飛ばしたので、最初に戻って精読中。最後まで読んでから最初から読み返すと、物語冒頭のキリアスの行動がいかにヒドいか良く分かる。初読時とは全然印象が違うので再読オススメ。オルガの出生から現在まで、いかに多くの人がその健やかな成長を切望し、見守ってきたか、それをいかにキリアスが踏みにじったか!初読時とはまるでちがう切なさをひしひしと感じる。依代と操者の二人一組で
読了日:03月02日 著者:佐伊

読書メーター

2026年3月21日土曜日

0586〜89 精霊を宿す国

書 名 「精霊を宿す国(1)青嵐」
著 者 佐伊          
出 版 リブレ 2023年8月
単行本 312ページ
初 読 2026年03月02日
ISBN-10 479976389X
ISBN-13 978-4799763896
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133790956


 これまでに、『竜王の婚姻』『君を転生させないために』と佐伊さんの作品を読んできて、三作目の「精霊を宿す国」を遂に入手した。
 この作品、これまでに読んだ中で一番好きだ、と思う。
 一読目は、とにかく何が起こるのか、どうなるのか?と先を知りたくて、駆け足で読み飛ばしたので、ラストまで読み終えてから、最初に戻ってじっくりと精読した。なにしろ登場人物が多いし、血縁関係や縁戚関係が入り組んでるので、読みながら人名や用語や設定をメモった。それもまとめようと思っていたが、著者の佐伊さん作の設定集/人物集が「なろう」の作品サイトの冒頭にアップされてるのに気がついたので、そちらを有り難く活用させていただいた。

 でもって、一度最後まで読んた後に最初から読むと、物語冒頭のキリアスの行動がいかに、いかにヒドいか良く分かる(^^ゞ 
 初読時とは全然印象が違うので再読オススメだ。

 オルガの出生から現在まで、いかに多くの人がその健やかな成長を切望し、遠くに、近くに見守ってきたか。そしてそれをいかにキリアスが踏みにじったか!初読時とはまるでちがう切なさをひしひしと感じる二読目である。
 依代と操者の二人一組で一体の精霊を操作する、そしてその二人の「共鳴」の過程はセックスに通じる感覚である、ってことで全編ややエロい描写が散らばってるが、なにしろ、それも「修行」の一貫なので笑い事ではない。エロ全開のラグーン師匠は大変いい味だしてる。(笑)

 で、さて、一巻目は、14歳になった主人公オルガがおっかなびっくり、精霊師になる修行のためにお山(千影山)に入るところから。
 お山に生息する精霊「こだま」はまんま、宮崎駿の『もののけ姫』のイメージで。そして傍若無人な第一王子キリアスとの出会い。大切に育てられた国王の長男が、ちゃんとその血筋ゆえに、育ちゆえに、能力ゆえに、大いに傲慢ワガママに育っている。お手軽ファンタジーにありがちな由緒正しい品行方正な王子様❤️ではないのだ。こんなところも何気にリアルである。
 王位継承権を奪われたからには、ぜったに神獣師になってやる、と手段を選ばず、最短距離で「青雷」をひそかに身のうちに宿すオルガを、強引に我がものにしたキリアス。本当にダメな子なんだが、そのあとはひたすら精進するあたりはやはり、ただのダメっ子ではない。ちゃんとクルトにお仕置き喰らってるしな。ちゃんと努力も出来るし、譲れないところ以外では、師匠の教えに従う素直さもあって、そういうヤツが好きな師匠連中の評価は爆上がりしてるし、ただただ年齢相応な(よりやや幼い)だけのオルガが比較されて可哀想ではある。

 そして、なぜオルガは青雷をその身に宿しているのか。オルガの出生の謎は、まだこの巻ではチラ見せ。そして、オルガとの出会いでは、とにかく恐ろしいばかりのカディアス王(キリアス父)。これから巻が進むごとに、彼が舐めた理不尽な辛酸であるとか、彼の愛情のありようであるとかが分かってくるのだけど、とにかく最初はもう、カディアス王との出会いはトラウマ級の恐怖体験でしかない。

 オルガよ、よく耐えた。そしてオルガは己の父の名前と己が血筋を知るのだ。
 メインのストーリーと併走して、ライキとクルトの紫道、ゼドとセツ、ユセフスとミルドの百花の物語も。ミルドなんか、純愛を通りこしてただの変態・・・・(失礼!)にしか思えないんだけど、それも突き抜ければ一周巡って? あのユセフスが折れて? ・・・・まあ、割れ鍋にとじ蓋的な? ユセフスも、よくわからない人物ではあるのだけど、これからだんだんじわじわと味わい深くなってくるからな。


書 名 「精霊を宿す国(2)黄金の星」        
出 版 リブレ 2023年9月
単行本 312ページ
ISBN-10 479976411X
ISBN-13 978-4799764114
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133790959

 1巻の終わで、鳳泉の操者になれ、との国王の意を受けたキリアスは、すでに半年もオルガと別離の状態で修行を重ねている。こいつ、一生懸命でもまだまだ身勝手だな〜と思う。早く覚醒しやがれ。そして、ちゃんとオルガ本位になりやがれ(笑)

 物語は、光蟲のイーゼスとハユル、時を一世代遡って、ダナルとルカの物語、さらに前代の鳳泉のガイとリアンの物語も。まだ若いカディアスと、王宮を覆い尽くす不穏。先読という存在が、こんなに不安定で大丈夫なんだろうか? これで、ちゃんとこの国は維持されるのであろうか? と、大いに心配になる。とにかくそれぞれのパートで語られる物語が終始一貫して切ない。そして、どこをどう切り取ってもこれ以上はないってくらい苦労人のカディアス。よくこんな状況で16歳で即位し、耐えてきたな。やっぱりこの物語で一番存在感が大きいのは、カディアス王だろう。この物語は、いわばカディアスが即位してから退位するまでの、一代記でもある。
 現在の時点での王宮での事件と場末の娼街での騒乱でついにオルガとキリアスは共鳴し青雷の能力は全開になる。そして、オルガが16歳を迎え、青雷はオルガを離れていく。 オルガは鳳泉を授戒する定めのキリアスの半神足たるべく歩んでいく。これから、いよいよ物語は核心に近づいていく。


書 名 「精霊を宿す国(3)赤い炎の翼」         
出 版 リブレ 2024年1月
単行本 336ページ
ISBN-10 4799765760
ISBN-13 978-4799765760
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133790963


 色街を襲った大火は、光蟲、紫道、青雷が治め、そして青雷がオルガ16歳の約定の日を迎えて去った。来るべき試練の前にオルガを両親に会わせたいと願ったキリアスがオルガと友に辺境を訪れるところからの王都への召還。
 つかのまの穏やかな日々。心休まるオルガの里帰りと、波乱の予感しかないキリアスの里帰り(王宮)。
 この巻で、オルガ出生に繋がる過去の物語が明かされる。
 それにしても、少年期から延々と続く、危機を一人耐えたカディアスである。いくら神獣師達に囲まれ守られていたっていったって、そもそも傲慢不遜な能力至上主義の連中である。助けになってるんだか、圧迫になってるんだか。よくカディアスは心折れず、投げ出さず、耐えたな。それこそが王たる所以か。カディアスとトーヤの愛にも泣かされる。
 カディアスに比べたら、キリアスなんて、ほんのひよっこ。キリアスの悩みなんぞ如何ほどのものだろう。

 それにしても、だ。アジス家の悪習が諸悪の根源ではないか。
 やっぱり、先読みとの意思疎通にすら難がある依代でなかったなら、もっと違った物語があったはず、と思ってしまう。
 そして、いよいよ次巻では、鳳泉の授戒と、最終決戦である。


書 名 「精霊を宿す国(4)新しき空と神の獣達」
出 版 リブレ 2024年2月
単行本 320ページ
SBN-10 4799766104
ISBN-13 978-4799766101
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133844400


 3周くらい読んだ。ついに完結。オルガとキリアスが鳳泉を授戒したものの、なかなかその力を万全に発揮できるようにはならない・・・・ってところで、若干のお笑いパートも差し挟みつつ、セフィストとの闘いが終局に至る。
 セフィストと真っ向から戦ったのは、ルカ。そしてその闘いを全力で支えた半神のダナル。おおむね、格好良いところはこの二人に持って行かれてました。とにかく、ダナルの愛が尊い。そして、セフィストを討伐するのではないところにもひとつの愛がある。


 そして、隣国との決戦に、鳳泉は間に合うのか。カディアス王が出陣し、ユセフス、イーゼス、ライキもその後を追い国境へ。最終決戦に青雷が参加しなかったのは、たぶん五つの神獣は輪番で代替わりせざるをえないのだから仕方ないんだけど、やっぱり、五大神獣そろい踏みの闘いは観てみたかったかも。しかし、足の悪いユセフスまでが前線に展開した総力戦は読み応えがあった。
 
 それにしても、カディアス王の治世は波乱に満ちていた。ラストの新王セディアスによる青雷の正戒シーンは、その父カディアスの初めての正戒であったゼドとセツの際の、あの幸福な風景を思い出す。時は螺旋のように巡り、やっと正常で安定した姿をヨダ国は取り戻す。

 読後も、余韻が尾をひき、しばらく物語世界で揺蕩っていた。小説というか、ファンタジーというか、ここではない別の世界にしばし飛ばされた気分。こういう作品を書ける人って凄いなー、と心底羨ましいと思ってしまった。

2026年3月7日土曜日

2026年2月の読書メーター

2月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:2986
ナイス数:482

君を転生させないために(3) (ピスタッシュ・ノヴェルス)君を転生させないために(3) (ピスタッシュ・ノヴェルス)感想
ソラが実はシゲンを呪った相手なのでは、とか大呪術合戦スペクタクルになるのでは、とかシゲンとソラが手を携えてともに戦闘するのでは、など(武闘派な)読み手側の勝手な予測と期待を大きく裏切り、3巻目はなんとも切ない愛の物語に大きく舵を切る。そうきたか〜!もうクライマックスはロミジュリみたいじゃないか。一巻目はこれBLじゃなくても、とか思ったけど立派な(?)BLだった。ってか切ないラブストーリー。最終章で、私が気になっていた初恋カップルも成就したし、まさに大団円。
読了日:02月28日 著者:佐伊

君を転生させないために(2) (ピスタッシュ・ノヴェルス)君を転生させないために(2) (ピスタッシュ・ノヴェルス)感想
3巻ものの2冊目、大きく事態が動く。主人公の呪術師ソラが密かに仕掛けた罠が始動する。さて、間者はあの2人の内のどちらか・・・・ってそっちだったか!シゲンの呪いを身に受けたソラがこれからどうなるのか・・・・って、これ2人が助かる道は、もう呪いを掛けた呪術師を仕留めるしかないではないか。この巻ではいよいよ2人の関係もBLらしく(^^;) メイリンとカイリもうまくいってほしいもの。せっかくの古代中国風味なのに、やけに現代的な言葉が混じるのが相変わらずちょっと気になるが、なにはともあれ、最終刊へ!!
読了日:02月27日 著者:佐伊

君を転生させないために(1) (ピスタッシュ・ノヴェルス)君を転生させないために(1) (ピスタッシュ・ノヴェルス)感想
『竜王の婚姻』がなかなか良かったので入手してあった佐伊さんの作品。佐伊さんはそもそもBLとして作品を創ってるんだけど、これBL要素抜きで中華風ファンタジーでも良かったな〜と思った。言葉の選び方はもうちょっとこなれてると良かったなーと思うところはあるのだけど、呪術の設定など、よく世界観を作り込んでると思う。物語の感想は最後まで読んでからで。漢名っぽい登場人物の名前が全部カタカナなのはちとつらい。覚えられない〜(笑)
読了日:02月26日 著者:佐伊

石礫 機捜235 (光文社文庫 こ 45-2)石礫 機捜235 (光文社文庫 こ 45-2)感想
文庫化から1年以上積んでしまったが、本日やっと読了。シマエナガみたいだな、とつい思っちゃうシマさんこと見当たり捜査のプロ縞長の活躍を描く2作目。自信があるんだかないんだかわからないシマさんと、シマさんを引き立てようと熱弁ふるう高丸の凸凹コンビ。今回はシマさんが指名手配容疑者を見つけたことから、どんどん転がるように話が大きくなっていく。やや幸運や偶然に頼りすぎでは、とかただの見込み捜査じゃ?って気もしないではないが、話はテンポよく進み、さくさくと解決。最後に登場した刑事部長は彼か?
読了日:02月23日 著者:今野敏

この悪夢が消えるまで (ヴィレッジブックス F ロ 3-1 イヴ&ローク 1)この悪夢が消えるまで (ヴィレッジブックス F ロ 3-1 イヴ&ローク 1)感想
まだまだ続くシリーズ60巻の1冊目。ロークがまさに“女性が夢見るような”ミステリアスハンサム大富豪であるが、ベタベタのハーレクイン風味かと思いきや、しっかりしたロマサスだった。1995年初版。近未来設定は描きやすさもあるが、陳腐化するのも早い。あと30年で、この世界になるかというと、ムリじゃないかな〜とは思うんだけど、いろいろなガジェットはさておき、主要人物の人物造形に好感度高し。しかしこの手の米国作品、トラウマ持ちでない主人公っていないな、と思う。なにはともあれ、イブとロークはこうして出会い恋に落ちる。
読了日:02月22日 著者:J.D. ロブ

傭兵の男が女神と呼ばれる世界 (3) (アンダルシュノベルズ)傭兵の男が女神と呼ばれる世界 (3) (アンダルシュノベルズ)感想
番外編も含めて、厚い(熱い?)最終巻。バタフライエフェクトの完成。もはや「女神隊、出陣するぞ!」が格好よく聞こえるのは自分も壊れかけているせいか?雄一郎は妻と娘の無残な死を越え、自分の場所に戻り、戦を終えて母になる。番外編は私はアリだと思った。『雄一郎がどんなことをしても最後には許す。雄一郎が好きだから。誰よりも大事だから』という言葉を守ったノアとテメレアに雄一郎ともども感謝を捧げよう。
読了日:02月10日 著者:野原耳子


傭兵の男が女神と呼ばれる世界 (2) (&arche NOVELS)傭兵の男が女神と呼ばれる世界 (2) (&arche NOVELS)感想
荒みきった雄一郎の、その実細やかな心情が描写されるのが良し。殺されかけたり・倒れて寝込んだり、それなのにやっぱり犯され喘がされ、戦争以上にベッドの上も激しい。シャグリラの実という女体化を促進する実を摂取しているうちに、なんとなくヒゲが薄くなり、体が柔らかくなってきた。そして、ノアとテメレアを求めずにはいられない体になりつつある。しかし、内戦は混沌としてるし、もう一人の女神アオイの同行も不穏。雄一郎の外套の襟元にとめられたピンの赤い石がヤバい。それを留めたゴートはいずこに?てなところで3巻へ。
読了日:02月07日 著者:野原耳子

傭兵の男が女神と呼ばれる世界傭兵の男が女神と呼ばれる世界感想
引き続き野原耳子さん作品。異色も異色なBL。有り得なさそうなものをぜんぶブッ込んで面白くしました!って感じだけど、ちゃんと面白い。AK47抱えてジャングルを縫い、手榴弾放り投げてた傭兵・元自衛官・既婚・子あり(ただし訳あり)。そんな、男臭く汗臭く、泥にまみれた迷彩服の男が、なんと異世界に召喚される。それも女神として!!つーか異世界側が女神を召喚したら現れたのがこいつ尾上雄一郎だった。しかし異世界側の方には、女神として召喚されたんだから男だろうがおっさんだろうがお前は女神なんだ、と強弁(笑)されてしまう。
読了日:02月05日 著者:野原耳子

花よりも花の如く 24 (花とゆめコミックス)花よりも花の如く 24 (花とゆめコミックス)感想
やっと最終巻。「道成寺」もわりと淡々と進んだ。泰一先生の朝長見開き2ページが一番の見物だったかも。ずーとこの「淡々」と付き合ってきて〇年。けんちゃんと葉月さんもやっとゴールイン、というかスタートライン。ご苦労様。おめでとう。
読了日:02月07日 著者:成田 美名子

2026年2月28日土曜日

0583—85 君を転生させないために

書 名 「君を転生させないために(1)」 
著 者 佐伊        
出 版 新書館 2025年6月
単行本 304ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221440
ISBN-13 978-4403221446
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133704298   

『竜王の婚姻』で出会った佐伊さんの作品。
『竜王の婚姻』のスケールの大きい大河っぷりに敬服し、こちらも読んでみようと入手してあった。この度、やっと読了できた。
 そもそもBLとして創作されている作品ではあるが、1巻目はまだそれほどそっち方面は進展しないので、これ、BLでなくて、普通の中華ファンタジーでも良かったのでは?とちょっと思ったんだけど。2,3巻まで通読したあとではとてもそうは言えませんな(^^;)

 呪術の設定とか、世界観がよく作り込まれていると思う。イメージは古代中国の西域の小国二つって感じだろうか。大中華って感じではない。国の規模や組織も小さい。規模的にはむしろ日本の平安朝とか、朝鮮王朝大河ドラマくらいな印象。王宮と市井も近いし、王族と民間人も近い。国も小さく、数日の騎行で国と国を行き来できている。

 登場人物の名前が、漢名風なのに、全部カタカナなのはちと辛かった。登場人物がさほど多くならなかったのが幸いだったが、これ以上多くなったら、多分誰が誰だか分からなくなった(苦笑)。あと、個人的な感覚の話ではあるが、
「大夫」を“たゆう”と読ませるのだけは、どうしても受け付けられない。花魁や文楽じゃないんだから、ここはどうしても“たいふ”と読みたい。ていうか、どうしても“たいふ”“だいぶ”としか読めず、ルビを無視して勝手にそう読んでいた。

 で、1巻目は主人公である「延(えん)」国の年若い呪術師ソラが、延国王の命令で敵対する隣国「耀(よう)」に行くところから。
 耀の国王シゲンは前世で呪いを受けて転生した忌人(きじん)で、呪いのために死ぬことができず、すでに110歳を超えている。体は老い腐り、異臭を放っているのに死ぬことができぬ。しかし忌人の呪いを緩和するには「解呪」という技が必要だが、それは呪術師しか施すことができない。耀国はすぐれた呪術師が絶えているため、隣国延に呪術師の派遣を求めてきた、という。ソラは、家族を質にとられた形で、あわよくば耀国王シゲンの命を奪う下命を受け、耀国に入った。その耀国で、ソラが見たもの、聞いたもの。感じたこと。シゲンの身の呪いと、耀国と延国の歴史。シゲンがこれまでに成してきた国づくり。そして、蠢く陰謀と呪術。
 これは、大呪術合戦・一大スペクタクル・歴史ファンタジー大河か!?と思いきや、実はこれも壮大な前振り?であった。

書 名 「君を転生させないために(2)」      
出 版 新書館 2025年7月
単行本 272ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221459
ISBN-13 978-4403221453

 2巻冒頭から大きく事態が動く。耀王宮に延の間者が入り込んでいることが分かる。そして、1巻で、主人公の呪術師ソラが密かに仕掛けた罠が始動する。さて、間者はあの2人の内のどちらか・・・、と思っていたが、さすがにどちらかまでは分からなかった。私の予想ははずれ。そっちか! 正体の分からない延の術者との呪術の掛け合いで激しく消耗したソラは、シゲンの呪いの暴発に「解呪」を施すも、浄化の力及ばす、シゲンから吸い取った呪いを我が身に遺してしまう。

 忌人であるシゲンは身に纏った呪いが相手の命を奪ってしまうために、常人には触れることができず、孤独な生を生きてきたが、護符を身に刻んでいるソラだけは普通にふれあうことができた。シゲンはソラを深く求めるようになり、ソラもまたシゲンを愛すように。シゲンの呪いに犯されて先のない命であることを悟ったソラは、忍び寄る死に怯えつつ、残った時間をすべてシゲンを慈しむことに注ぎ込みたいと願うのだが。

 当初は、シゲンの宿命の敵はソラなんじゃないかとも思っていたのだが、ラウレンの様子が変わってきたところで、これは違うな、と。そして、2巻が終わるところまでは、シゲン&ソラvs延国呪術師(ラウレン、その他)の呪術大戦的なスペクタクルになると予想し、シゲンとシゲンの呪いを身に受けたソラが助かる道は、もうシゲンに呪いを掛けた呪術師を仕留めるしかない。敵の延国呪術師を破ることで、シゲンとソラが呪いから解放されて、二人幸せになるんだろう、と思って(思い込んで)読んでいたのだが。

書 名 「君を転生させないために(3)」      
出 版 新書館 2025年8月
単行本 256ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221467
ISBN-13 978-4403221460

 ついに、ラウレンが耀国に乗り込んでくる。シゲンへの輿入れ、もしくは人質として。そして、ラウレンを盲信するソラに対して、シゲンをはじめとする耀国の人間は、なにやら思うところがありそう。このあたりから、ソラが政治の中枢の動きから蚊帳の外に置かれ、ソラパートとシゲンパートが分離。
 そして物語はシゲンとシゲンの敵との闘争で大激震するかと思いきや、ラウレンの自滅で案外そっちはあっさりと決着し、その後、物語はロミオとジュリエットみたいな怒濤の愛に突き進む!
 そして、読み終わってみれば、これは呪術合戦などではなく、清廉な愛の物語だった。
 ちょっと肩透かしをくらった感じがしないでもないんだけど、なにより、一生懸命悩み、愚直に現実に直面し、危急の時には迷わず行動するソラがなんとも健気で美しく、ソラとシゲンの愛が深く、清く、麗しいのだ。

 「シュウキ=ラウレン」がちょっと小物っぽかったな、とか、シゲンが自分で自分に掛けた呪いの「延」はどうなったんだろう、とか、なぜ、忌人の転生は1回限りなんだろう、とか、こまかいハテナはいくつかあるんだけど、とても美しいラブストーリーだった。呪いを受けて死ぬと悲惨な転生を遂げる、という設定が、どのように生きるのか、どのように愛するのか、そしてどのように愛する人を死なせるのか、という大きな命題になって、主人公たちが悩み、苦しみ、決断し、愛する。これがとてもリアルに感じられた。
 ラストの後日譚的な「君が転生するために」で、個人的に気になっていたカイリとメイロウの初恋カップルも無事成婚に至ったし、貴方が次の世でも幸せであるように、と言祝ぐソラの思いに、読んでるこちらまで、せつなくも甘やかで幸せな気分になることができた。素敵なストーリーだった。

 この物語では語られないけど、愛しあうソラとシゲンがやがて、長くはない生を終え、二人身を寄せ合い、最後まで相手への思いやりと愛を語らいながら、一緒に息を引き取るシーンを想像しちゃって、なんだか読後感はしんみりしてくる。

(あと、心の声。ロウゼン、受けかよ・・・・)

2026年2月23日月曜日

0582 石礫 機捜235


書 名 「石礫 機捜235」
著 者 今野 敏   
出 版 光文社 2024年11月
文 庫 392ページ
初 読 2026年2月23日
ISBN-10 4334105033
ISBN-13 978-4334105037
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133647212

  一作目がなかなか面白かったので、文庫化したところで入手して、1年・・・・つい積んでしまった、のをこの度読了。

 見当たり捜査のプロフェッショナルのシマさんこと縞長と、若手の高丸の凸凹コンビ。覆面車で都内を流す「機捜」の活躍である。
 隠密捜査、竜崎シリーズが捜査を高所から眺める視点なら、このシリーズは、最末端から事件を見る。
 若干幸運や偶然に頼りすぎでは、と思わないでもないが、田端課長や葛木係長などおなじみの面々も登場し、話はテンポ良く、サクサクと進む。一冊数時間で読めちゃう読みやすさは相変わらず。
 縞長・・・・がなんとなくシマエナガを連想してしまうのは私だけ?

2026年2月22日日曜日

0581 この悪夢が消えるまで ( イヴ&ローク 1)

書 名 「この悪夢が消えるまで」
原 題 「NAKED IN DEATH」1995年
著 者 J.D.ロブ(ノーラ・ロバーツ)    
翻訳者 青木 悦子    
出 版 ヴィレッジブックス 2002年12月
文 庫 452ページ
初 読 2026年2月20日
ISBN-10 486332667X
ISBN-13 978-4863326675
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133609416

 イブ&ローク1冊目。2050年代、近未来のニューヨーク。冒頭、犯行に使われた旧世紀の銃器〈スミス&ウェッソン〉についてのフィーニーの蘊蓄「・・・銃禁止令が制定され、会社は2223年頃に生産を中止した。」というのは誤訳か誤植か? 21世紀後半に差し掛かるところの物語、と思って読んでいたので、いきなり200年も時代がすっとんで軽く混乱する。

 ロマンス小説の女王ノーラ・ロバーツがJ.B.ロブの別名義で、1995年に描いた21世紀後半は、コンピュータは音声入力、エアカー(航空交通)が一般化して、高級車は陸空両用、銃は規制されて所持するのが難しくなり、銃による殺人は激減(全米で年間100件とな)、警察官は拳銃の代わりにレーザー・ガンを所持している。世界最古の職業、娼婦は「公式コンパニオン」という名称で合法化。合法・公認化できちんと(?)教育・管理もされて、いわゆる管理売春は一掃されているよう。顧客のリスト化、定期健診など?も義務付けられている。SEX産業は人間にとって必要かつ健康的な産業になっているという設定。
 キッチンには〈オート・シェフ〉というマシンがあり、なんでも調理して提供してくれるらしい。コーヒー豆は超高級品で、庶民は代用コーヒーを飲んでいる。肉も高級品のようで、イブがレストランで頼んだのは野菜のパスタ。そういったちょっとした舞台装置に慣れちゃえば、あとはごく上出来なロマサス。地の文で突然ロークの心の声が混じるのがちょっと唐突感があるけど、これも慣れれば問題ない。

 ちなみにロークは2023年生まれだそうで、今現在(2026年)は2歳になっているハズ。1995年にロバーツが思い描いた70年先の世界は、現在からみた30年先よりはだいぶ先を行っている。

 ミステリアスでハンサムで有能な経営者で大富豪、庇護欲があって、ちょいワル風味な男ロークは、セントラルパークに面した200年前の石造りの4階建て豪邸に、執事にかしづかれて住んでいる。フルネーム不明で知られた名前は「ローク」だけ、という謎めいた人物。だが、決して恵まれた育ちではなかった。イブの方は、ニューヨーク警察の警部補で、きわめて有能かつ芯の通った強さであるが、幼少時に虐待を受け心に傷を抱えている。そういう心理面の壁もあって、イブはそうそうロークの思い通りにはならないが、恋愛面ではロークがやや競り勝つ。というこれがあれか、スパダリってヤツか。 もっとバリバリなハーレクイン風味なのかと思って敬遠してきたのだが、読んでみると、ちゃんとしたサスペンスだし、警察ものとしても、イブとフィーニーのバディぶりも良いし、一癖ありそうな上司ホイットニー良い風味だ。さすがは60巻まで続くだけのことはある。

 そんなこんなで、第1巻目は、イブとロークの出会いから2人が恋に落ちるまで。
 イブは8歳までの記憶がなく、だけど、父親に性的虐対を受けていた過去の傷を抱えている。ロークも少年時代は不遇だった様子が窺える。過去と心に傷を持つからこそ強くなりえた2人が出会い、これから、さらに信頼と愛を深めていくのだろう。

 物語のテーマは、小児性愛と近親相姦で、そこに特権階級が絡み、これまたアメリカ的だと思った。

 もう、米国ミステリー界は、PTSD持ちじゃない主人公っていないんじゃないかと思うくらい、「被虐体験」「過去のトラウマ」持ちだらけなんだけど、そこをどうやって描いて行くかが腕の見せ所なのかもしれんね。
 イブに関しては、怒濤のようなラスト(犯人をブチのめす)からの、緊張と恐怖から解放されてほぼ幼児化したイブとイブを甘やかすロークとの会話になんだか全部もっていかれた。
 ともあれ、まだ1巻。どこまで息がつづくかわからないけど、とにかく続きを読もう。

2026年2月11日水曜日

0578—80 傭兵の男が女神と呼ばれる世界1〜3 (アンダルシュノベルズ)

書 名 「傭兵の男が女神と呼ばれる世界1」
出 版 アルファポリス 2020年9月
単行本 304ページ
初 読 2026年2月4日
ISBN-10 4434278754
ISBN-13 978-4434278754
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133260505

 引き続き野原耳子さん作品。
 これまた異色も異色なBLでビックリ! 有り得なさそうなものを取り合わせてブッ込んで面白くしました!って感じだけど、これがとにかく面白い。断然面白い。
 なにしろ、無骨な傭兵だ。AK47抱えてジャングルを縫い、手榴弾放り投げる戦士。元自衛官。既婚・子供あり。(ただし訳あり)
 そんな、男臭く、汗臭く、ジャングルの泥まみれ、砂漠の砂まみれみたいな迷彩服の男が、なんと異世界に飛ばされる。それも女神として!! つーか、異世界側が女神がやってくるという神のお告げ?に従いお出迎えしたら、現れたのがこいつ、尾上雄一郎だった。もう、名前からして男臭い(笑)。尾上(おがみ=男神?)は女神に掛けてるのかナ?
 雄一郎の抵抗も虚しく、女神として召喚されたんだから、男だろうがおっさんだろうが、お前は女神なんだ、と異世界側には強弁(笑)されてしまう。お前のこの世界での使命は、軍を率いて「正しき王」を勝利させること、そして「正しき王」の子を産んで国母となること(!)。自衛隊上がりの傭兵だから軍を率いて・・・の方はなんとかなるにしても、「国母となれ!」は37歳中年男に無茶振りもいいところである。
 しかもこの異世界は王位簒奪戦の真っ最中で、自分の目の前のひ弱な泣き虫少年が王位簒奪の憂き目にあっている正当な王位継承者「正しき王」であると言われ、なにもかもが納得いかないうちにいきなり砲撃にさらされ、やむを得ず戦闘開始。
 技術的には連発銃が戦力になりつつあり、大砲は戦力化されており、航空機以前の世界観。ドライセ銃からスペンサー銃をイメージすればイイ感じかな? 世界史年代的にいえば19世紀中頃、アメリカ南北戦争くらいの軍装を思い浮かべればだいだい合ってる? まるっきり甲冑、ロングソードってわけでもなさそうなところが、元陸自・傭兵の尾上雄一郎が戦闘指揮能力を発揮できそうな絶妙な塩梅である。
 そしてあれよあれよというまに、元の世界に帰るためにもとりあえず「王の子」を産むことを納得させられ、夜ごとの3Pになだれ込む。激しい。いろんな意味で激しい。

 一巻目は、異世界召喚からの戦闘。雄一郎が初夜(?)で犯され、徐々に「正しき王」ノアと「仕え捧げる者」テメレアに絆されつつ、まずは反乱軍に侵攻された王城を奪還するところまで。昼は過酷に戦い、夜は夜とてベッドの上で男2人に侵略される、男・尾上雄一郎37歳の戦記であるとともに、全てを失い絶望した男が何を思い、何を取り戻していくのか、そんな雄一郎の内面からも目が離せない。(こんなBLがあるとは・・・・目から鱗が落ちそうな一冊である。)


書 名 「傭兵の男が女神と呼ばれる世界2」 2021年7月
単行本 299ページ
初 読 2026年2月7日
ISBN-10 4434291106
ISBN-13 978-4434291104
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133284932

 反乱軍の居場所を探るために偵察に出した兵とテメレアが戻らない。唯一戻った女性士官のイヴリースの背中には矢が突きたっていた。
 その方面には、女神を信奉する部族の街があったはずなのに、なぜ? テメレア奪還のために出撃する雄一郎である。そして、なんと雄一郎の他にも、もう一人の「女神」がこっちの世界に現れていた。ノア側とノア兄側、それぞれが「女神」を擁し、隣国の最新兵器も登場して戦局はいよいよ厳しい。そこで、雄一郎側は、ノア兄側と同盟している隣国ゴルダールの内乱を誘発する策にでる。
‎ 
 元いた世界で妻と子供を失い、すべてに絶望し、心なんぞ死滅したような雄一郎の、その実は細やかな心情が描写されるのが良し。死にかけたり・生き返ったり・倒れて寝込んだり、それなのにやっぱり犯され喘がされ、戦争よりもベッドの上が激しい。シャグリラの実という、女体化を促進する実を摂取しているうちに、なんとなくヒゲが薄くなり、体が柔らかくなってきた。そして、2人の夫?愛人?恋人?を求めずにはいられない体になりつつある。しかし、王位継承のための戦争はまだまだ混沌として続く。雄一郎の外套の襟元にとめられたピンの赤い石(サザレ)が不穏。それを留めたゴートはいずこに? まだまだ波乱の気配を漂わせながら、話は3巻へ


書 名 「傭兵の男が女神と呼ばれる世界3」 2022年5月
単行本 515ページ
初 読 2026年2月8日
ISBN-10 4434303244
ISBN-13 978-4434303241
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133362698

 隣国ゴルダールの前王の双子の子を見つけだし、現ゴルダール王を打ち破り、ジュエルドとゴルダールに平和な未来をもたらすことを約束したノア一行。行く先々でアオイが現れるが、このアオイの造形とか、アオイの位置づけなんかは結構チープな感じがする。まあ、悪役として分かりやすくはあるが、もうちょっと魅力的な悪役でもいいような気がする。ともあれ、雄一郎の過去の出来事が、ついに雄一郎の口から語られる。そして、ゴートの裏切りによって、腹を刺されて凍った湖に落ちた雄一郎は、再び死線を越えて現代の日本に。

 この作品では、戦争が平和な世界を築くための「必要悪」として語られるけれど、第二次大戦の記憶が遠ざかり、そして近隣の大国中国をはじめ、東欧、南米と全世界がキナ臭くなってきた今、戦争や犠牲を、そういうふうに単純化してしまってよいのか、という読み手(私)の思いを、作中の雄一郎自身が、受け入れ難く思っているところにも共感できたりする。雄一郎はやむを得ず戦うことを選ぶが、本当は、妻と子供を爆死という悲惨な形で失った雄一郎の嘆きが全てなんじゃないか? とも思う。
 令和が次の殺戮の女神の時代でありませんように、なんて、選挙の野党の惨状を見ながら考える。今が、ヒットラーが国民選挙で選ばれ、ナチスが台頭した時代と同じでないと、だれが言える?
 こんな感じで、読んでる自分の気持ちが現実と物語世界を行き来しつつ、「黒の女神」雄一郎の勇姿を追う。
 女神隊を鼓舞する雄一郎なんて、ほんとヤバい。せめてもの救いは、雄一郎が自覚を持っていて、戦争に酔っていない現実感覚を持っていることだ。そして、なにはともあれ、大量の戦争の犠牲者の屍を礎として、平和なジュエルドの、ノア王の治世はもたらされる。


 私としては、子供を産んでからの雄一郎が大好きだ。結果として(番外編までいれると)7人の子持ちになっちゃうわけだが、相変わらず一人称は「俺」でぞんざいな口調なのに、子供達からは「母様」と呼ばれ、母として根気強く子供達を育てる雄一郎を好ましく思う。なんていうか、戦争が終わってしまえば軍人の出番はなく、内政も外交もノアとテメレア任せで、雄一郎はせいぜい暇つぶしの盗賊退治の他は、母親業しかやることなくなっちゃったんだろうとも思ったりするが。

 番外編については、賛否両論ありそうだけど、ゴートの執着と雄一郎の未練は私的には「アリ」だと思った。『雄一郎がどれだけ自分を憎んでも、疎んでも、それでも僕もテメレアも雄一郎を見捨てない。雄一郎がどんなことをしても最後には許す。雄一郎が好きだから。誰よりも大事だから』というかつての言葉を、ちゃんと守る2人の夫であった。私としては、自分自身でも受け止めきれない妻と娘の悲劇の痛手を抱えつつ、ゴートの喪失に寄り添い、ゴートの行き場のない怒り(裏切り行為)も受け止め、ずっとゴートを側に置き続けた雄一郎の懐の深さを、事実もろともゴートにぶつけたいと切望したよ。ノアとテメレアは、ゴートに言っちゃえばよかったのに!(そしたらきっと、ゴートは再起不能なまでに打ちのめされたと思うよね。) さて、誰の子になるかはワカランが、雄一郎に8人目の子が生まれないかどうかは、神のみぞ知る??? ちょっと期待してしまったり・・・・

 久しぶりに読後も主人公が頭の中を歩き回る感じを味わっている。だいぶ雄一郎に入れ込んだ。読後数日たっても、まだ物語世界から抜き出せきれていない。私は本当に傷ついた男が好きなんだよなあ。。。。。

2026年2月1日日曜日

2026年1月の読書メーター

 何気に穏やかに新年を迎え、今年はちゃんと初詣にも行き・・・と、まがりなりにも順調な滑り出しと見えた1月でしたが、9日に母が入院し、とちょっと波乱がありました。そういえば、2025年のまとめで書き忘れていたのですが、読書メーターを始めたのが2016年秋頃で、昨年は10周年、今年は11年目だったのでした。ちなみにこのブログは2020年9月に始めたので、ブログの方も昨年は5周年だったんですが、なんだかいろいろと合って感慨に耽る暇もなかったのでした。
 そんなこんなな1月は、いろいろと悩ましいこともあり、もう、「お気楽読書しかしたくない!」という感じだったので、ひたすらハッピーエンドを求めてラノベ/BLに傾倒。読メにもブログにも書かない(書けない?)Net小説も隙間時間に読み漁りました(汗)。
 おかげ様で、野原耳子さんという才能に巡りあえたのは幸せ。
 1月1日に読み始めた「わたしのおとうさんのりゅう」は、いまだ読了せず。なんとなく、父母の関係で身につまされそうな本は、気持ちが避けがち。
 今年も読書目標は年間100冊ですが、この100冊は、本当は漫画を含まず、という内規があるので(笑)いまだ達成できたことがありません。さて今年もがんばろー!

1月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:2389
ナイス数:417

再生再生感想
喜一(きぃ)の壊れた世界の心象を丁寧に描写していく。めちゃくちゃリリカルだけど、暴力描写もある。BLカテゴリだけど、文芸書?文学?みーちゃんとのままごとのような愛が突然の暴力で粉々にされたあと、心が壊れた喜一はどうやって生きて行こうとしたのか。喜一の周りの人達も、それぞれになにかを抱え、背負っている。「きぃ」と呼びかける声の優しさが心に沁みる。この本電書のみだけどハードカバーで文芸書棚に並んでいても文句ない。いっそ私が賞をあげたい。野原さん、すごい才能だと思う。おすすめです。
読了日:01月28日 著者:野原耳子

王と正妃~アルファの夫に恋がしてみたいと言われたので、初恋をやり直してみることにした~王と正妃~アルファの夫に恋がしてみたいと言われたので、初恋をやり直してみることにした~感想
オリジナル本登録ありがとう!このお話大好きなんです。表紙のイラストも綺麗でほんと好き。若くはない恋愛、生真面目な王妃(Ω♂)の気持ちが刺さりまくりますね。なんとか無事に生まれた末弟(Ω)が5人の兄達に溺愛されまくる未来が見えます。
読了日:01月24日 著者:仁茂田 もに

バッドエンドを迎えた主人公ですが、僻地暮らしも悪くありません(下) (ピスタッシュ・ノヴェルス)バッドエンドを迎えた主人公ですが、僻地暮らしも悪くありません(下) (ピスタッシュ・ノヴェルス)感想
主人公が流刑になっていた僻地に断罪劇の敵方の王太子と婚約者がやってきて、主人公アルトが世界を救うっていう役割を自覚して下巻に。光の神子の「知識」を持ったジュリアンと「力」を持ったアルト、光の神子は実は二人居たんですって展開でも面白かったかも、とか妄想しながら後半のジェットコースターを愉しむ。無愛想・朴訥・裏表のないフェリクスが、アルトを守るために腹黒陰謀執着系に成長。フィンが死にそうでハラハラしたけど、無事にちゃんとハッピーエンドした。断罪劇の真相なんかは王太子もそれなりに頑張っていたのね、と納得。
読了日:01月23日 著者:仁茂田 もに

バッドエンドを迎え主人公ですが、僻地暮らしも悪くありません(1) (ピスタッシュ・ノヴェルス)感想
引き続き「ハッピーエンドしか読みたくない」病発症中にて、ネットで読了済みのこの本を再読。今流行りのキャッチーなのを書いてみよう、と思って書かれた作品とのことで「女子に流行りの日記ってものを書いてみようと思って書いたんだよ」という某日本古典文学の出だしを思い出した(笑)。で、いきなり断罪劇から始まるっていう、ラノベ界隈にいくらでも転がってる展開だし、主人公は当然チートだし、転生したのは過激BLゲームで世界は平面・天動説。美形だらけの突き抜けた世界観でながら、これがちゃんと面白い。さすが。
読了日:01月23日 著者:仁茂田 もに

分水:隠蔽捜査11分水:隠蔽捜査11感想
タイトルの「分水」。捜査の流れがはっきりと変わる地点があるってことかな。謎はほとんどなく、ただ捜査の手順を追いかける。目星をつけて、さらに追跡し、証拠を固めて落とす。そこに絡んでくる有力政治家の家系と地縁。そしていつにも増してウザい八島!こういうやつってクシャクシャ丸めてポイって捨てたいよな。竜崎は自分の知ってる1番優秀だった上司の顔で脳内再現。いやああの人は本当に優秀だったよなー。あっという間に出世の階段を駆け上がっていった。毎度思うが組織に1人、竜崎が欲しい。今回も示唆が沢山。一気読みでした。
読了日:01月18日 著者:今野 敏

俺の妹は悪女だったらしい (一迅社ノベルス)俺の妹は悪女だったらしい (一迅社ノベルス)感想
純情で強情で強くて純朴な護衛騎士と冷酷で腹黒執着系主君。死に戻り巻き戻し系ファンタジーBL。妹のダイアナがだんだんいい性格に育つ(笑)。必至な主人公兄が、実は主君だけではなく妹にも溺愛されている変則的三角関係?と死に戻りしたのが主人公だけじゃないのがミソ。ひねりが利いていて、読んでる途中は???だったタイトルもラストで回収。腹黒さんが沢山いて、ファンタジーとしてなかなか面白い作品で、死に戻りの原因もちゃんと説明されているのが良し。主人公の得物が戦斧ってのは珍しいような気がするし、なかなか派手で良い。
読了日:01月17日 著者:野原耳子,凩はとば

聖母の深き淵 (角川文庫)聖母の深き淵 (角川文庫)感想
『海は灰色』刊行記念。山内練登場作品再読祭り中。練ちゃん初登場作品。一作目よりずっとミステリー。息子を産んで落ち着いている緑子はわるくない。麻生の「愛している」と練の「愛している」それぞれを知る緑子。初読時よりは落ち着いて読めるけど、麻生と練の物語はここから始まったのかと思うと感慨深い。まあ練に煙草押しつけたりロシアンルーレット仕掛ける胆力のある人間は緑子くらいしかいないよ。緑子も散々な目には遭っているが、やられっぱなしでないのが凄いところ。女が生きて行くためにはとりあえず3倍返しくらいは必要だと思う。
読了日:01月08日 著者:柴田 よしき

読書メーター

2026年1月31日土曜日

0577 再生 Kindle版

書 名 「再生」
著 者 野原 耳子   
出 版 電書バト 2024年7月
Kindle 337ページ
初 読 2026年1月28日
ASIN B0CZQRDXZB
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133068952   

 基本、書誌データは紙本で登録することにしているのだが、これは電書オンリー。紙本はない。(ちょっと残念)
 ソープで女の子に交じって体を売っている喜一(きぃ)。自分で幸せを捨ててきた、という喜一。だけど真実は・・・・。これBLなのか。むしろ文芸書?文学? とにかくリリカル。心情描写の一つ一つがリリシズムに溢れてる。きぃちゃんは、どこか壊れている。きぃちゃんの体の中から、割れたガラスが軋むような音が聞こえてきそうだ。やっと保っている喜一の輪郭が、ガラスが砕けるように崩れるのではないかと、読んでる間中ずっと心配だった。

 幸せが砕け散ったあとに残った一人は、どうやったら生きていくことができるのだろう。男に体を売ることで、緩慢に死ぬようにやっと生きている喜一の崩れかけた意識が、友人のれっちゃんが受けた暴力をきっかけに一瞬ピントが合う。その瞬間に溢れでる歯止めがきかない加虐性の描写もすごい。喜一の心が幸せと不安と不幸の間をせわしなく行きかう様が丁寧に鮮明に言語化されていて心に響く。
 主人公の名前が「きぃ」なのも凄い。他の呼び名なんて、考えられない。一郎でも太一でも裕太でも(なんでもいいんだけど)なくて、「喜一(きいち)」で「きぃ」なのだ。
 ヤクザの真砂さんや、ソープの店長の田中さんが「きぃ」と呼ぶ。それだけで優しさが滲む。きぃの周りの人がみんなやさしい。そのやさしさの中で、きぃが自分を取り戻したとしても、きぃの壊れたコップの心はやっぱり傷だらけのまま。“金継ぎ”のようにより美しく、強くはならないけど、傷ついても、完全には元には戻れなくても、痛みを抱えたままでも、人は生きて行くことができるし、幸せを感じることすらできる、そんなメッセージを感じる。

 なんだかすごいものを読んだ。先日、『俺の妹は悪女だったらしい』を読んで、野原耳子さんという作家を知り、これは掘り出し物かも?と思って野原耳子さんの他の作品を探してみたのだ。そしたらコレよ。なんか、すごい。今時のデジタル時代の(という言い方が既に古いけど)文学の裾野の広さを感じる。