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2025年12月21日日曜日

0573 初雪 海は灰色 第一部

書 名 「初雪 海は灰色 第一部 」
著 者 柴田 よしき      
出 版 角川書店 2025年12月
文 庫 288ページ
初 読 2025年12月20日
ISBN-10 4041169135
ISBN-13 978-4041169131
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/132244150

 待って、待って、待って、待ち続けた待望の続刊。
 「聖なる黒夜」から「私立探偵・麻生龍太郎」を経て、道を分かったはずの麻生と練が、再び語らう。

 「聖なる黒夜」を読んで頭ん中がうわーーーーーっとなって、続き!続き!こいつらこれからどうなっていくんだ〜〜〜とネットを徘徊し、柴田よしきさんが続話をWEBで連載していたことは知ることができたが、その時点で、もう「海は灰色」はWEBから下げられていて、愛読者のブログなどでおぼろげに輪郭が分かるだけの、まぼろしの作品と化していた。いつかは、いつかは刊行されるに違いない、と思って待ち続けてはや〇年。このたびついに刊行され、やっと手にとることが叶った『聖なる黒夜』続刊である。

 てっきり、練のあの事件の真相を追う話だと思い込んでいたんだが、出だしはなんと、龍太郎の逃げた奥さんを探す旅だった。そこに練が乱入、その上2人が滞在する鄙びた温泉街で殺人事件と傷害事件が起こる。正統派な推理小説仕立てながら、根城の新宿を離れて身軽な風情な練と、前科がついて、裏街道をとぼとぼと行くしかなくなった龍太郎が、一緒に同じ事件を追う、という、なんというか、『聖黒』ファンにとっては、ボーナストラックみたいな、なんだか時期的にはクリスマスプレゼントみたいな作品であった。
 私は練ちゃん贔屓なもんで、麻生龍太郎ははっきりいって憎々しく思っていたのだが、なんかこの作品を読んでそんな気分も霧散した。2人の腐れ縁はこれからも切っても切れないし、龍太郎にとって、今生きている練は、暴風雨の後に一輪健気に咲き続けている小さな花なのか、と思ったら、ついうっかり、龍太郎の練を愛しく思う気持ちに移入してしまったよ。練は「練」なのだけど、なんとなく泥の中に咲く「蓮」を連想した。

 練にとっては、龍太郎は練の過去も現在も等しく知っているほぼ唯一の存在なんだな、と考えると、練の龍太郎に対する執着も分かるような気がする。練の胸に止まっているウスバシロチョウの意味も、そもそもそこにウスバシロチョウを彫っていることだって、知っているのは龍太郎以外に誰がいるのか。そういや、作中で練が温泉に入るくだりで、練が背中に彫りモンがあるような記述だったが、練って背中に何かしょってたっけ?どうにも思い出せない。『聖黒』の細部の記憶がだいぶおぼろげになったところで、『RIKO』から刊行順に読み直すのも乙かもしれんな。

 このほとんど救いのないような練・龍の2人がこれからどうなっていくのかは、続刊を待つしかない。ちなみに続刊の発行は、26年12月、つまり1年後だそう。またまた長いな〜〜〜。いっそのこと揃ってから一気読みしたいくらいだが、読者はこの本を待ってたんだ!という心意気を示すためにも、予約で買いました。ついでに、Kindle版も購入したので、2冊買いだ。それくらい応援している。続刊をあと1年、待ちます。なお、作者様のXによれば、この作品は3部作になるそうだ。そして、第二部以降は大幅なリライトになると。はい。お待ちしております。『海は灰色』刊行してくれてありがとう!

2024年11月4日月曜日

0517 赤レンガの御庭番(エージェント)

書 名 「赤レンガの御庭番」
著 者 三木 笙子         
出 版 講談社 2019年2月
文 庫 256ページ
初 読 2024年11月2日
ISBN-10 4065147050
ISBN-13 978-4065147054
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123992103

 9月からこっち、ずっと読んできた三木笙子さんの本は実は既読本だったのだけど、これは初読。とても面白かったです。
 舞台は帝都探偵絵巻と同じころかな?と思える明治後期。
 徳川吉宗の代から続く御庭番の家系出身の義母がいる家に引き取られて育った入江明彦は、アメリカに留学し、勉強はそっちのけで本場の探偵術を身に付けて帰国。血のつながりはないとはいえ子供の頃から可愛がってくれた叔父が税関長を務める横濱で探偵事務所を開く。
 開港以来発展を続ける港湾都市横濱の異国情緒ある風情と、港湾労働者は威勢良く、町に暮らす人々にはすこし首都から離れたのんびりとした港町の気風が漂う空気感が何やら懐かしい。しかし、繁栄あるところには陰もある。港町の裏に跋扈する犯罪組織と、陰のある美しい女もとい青年。そして明彦に従卒のごとくかしづく文弥少年、逗留先のホテルオーナーでお喋りで世話好きな夫人。
 主人公の明彦の性格がとても良い。その育ちからして決して明るいだけではないのだが、どこか突き抜けているところが、これまでに読んだ三木さんの本の主人公達とはひと味違う。軽妙洒脱ながら情に深いが、流されない。明彦と文弥、これまた陰を背負わずにはいられない生い立ちのミツの会話もテンポが良くて楽しい。私が横浜びいきだというのもあるかもしれないが、これまでの作品とはちょっと味わいが違って、楽しく読書した。

第一話 不老不死の霊薬 
 横浜に不老不死の薬を売る者がいる。無論本物であるわけがない。犯罪の気配がするが、その「不老不死薬」の顧客がやんごとなき御婦人方であるらしく、警察沙汰にしたくない。そこで叔父から明彦に仕事が回ってくる。西洋美顔術と横浜で顔と名前の知られた西洋人医師、そして謎の「美女」ミツもからむ。鏡のエピソードなんかはちょっと生煮え感があるような気もしたが、なかなか展開が読めなくておもしろかった。

第二話 皇太子の切手 
 「ブルー・モーリシャス」と言われるコレクター垂涎の稀少切手が貼られた手紙を所持していた外国人夫妻の家が火事になり、「ぶるー・モーリシャス」もろとも失われる。失意の夫妻だが、実は保険金詐欺?
 その裏に見え隠れする、犯罪指南役の結社「灯台」。明かされるミツの出生。切手にまつわる犯罪はわりあい、筋が読みやすかった。ミツとの距離もすこし縮まったかな。

第三話 港の青年 
 「港の青年」と銘打った演劇が横濱の女性達のハートと捉える。今で言う「推し」というか。そこに、演劇のモデルとなった男を捜して横濱にやってきた男の妹が登場。港町は彼女の兄を探す手伝いをしようと、騒然となる。だがしかし、実は演劇の台本は、完全なる創作だった。陰に見え隠れするのは「灯台」の存在。派手な「兄捜し」の真の目的はなにか?

第四話 My Heart Will Go On
 今や「灯台」潰しの尖兵であることが明白になっている明彦の周りが物騒になってくる。文弥は階段から転落して大怪我。ミツも税関長である叔父も、身動きがとれなくなる。ついに「灯台」の首領との一騎打ちを覚悟した明彦であるが、その首領は意外なところにいた・・・・。ここで終わってしまうのは勿体ないキャラ立て、舞台立てだが、こういうところ、三木さんて惜しげがないというか、思い切りがいいというか。

 ここから、キャラクターの関係性を深めていって欲しい、とつい思ってしまうが、そこを余韻にして話が終わるのは、三木笙子さんらしくもある。なんにせよ、私はこのお話、とても好きだった。

2024年10月31日木曜日

0516 水の都 黄金の国

書 名 「水の都 黄金の国 」
著 者 三木 笙子        
出 版 講談社 2016年7月
単行本 229ページ
初 読 2016年8月
再 読 2024年10月28日
ISBN-10 4062201518
ISBN-13 978-4062201513
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123818050

舞台は明治期のヴェネツィア。どこか不思議な雰囲気が漂う異国舞台のバディもの。三木笙子さんのお話はどれもブロマンスってほど濃くはない。どこかほんのりしているけど、しかし、真情に溢れてる。
 東北の小藩の、下級武士の家の生まれの誠次郎は、跡取りでもないため、自分の身は自分で立てないとならない立場。時は明治で、学問をして何とか自分の身の立て方を考えようとまずは東京に出る。今身に付けるは語学、と自らの才覚と対人スキルで独学でイタリア語をものにし、ついでにイタリアでの語学教師の職に就く。その仕事は誠次郎より早く世に出て、官費でフランスとイタリアに留学し、ヴェネツィアで病を得て早逝した親友の清人の仕事を引き継ぐものだった。
 誠次郎の親友清人は、ヴェネツィアの人々に信頼され、強い印象を残していた。なかでも、誠次郎の下宿先の青年ルカは「キヨ」に心酔し、亡くなった清人をずっと偲んでいる。
 そんなルカと誠次郎の友情を横軸に、誠次郎のもとに持ち込まれる事件を縦軸に、そして今はなき清人の存在が通奏低音のように響くストーリー。

 なにしろ、誠次郎の性格が良い。もの凄く出来るってわけではないがちゃんと冴えていて、それなりに苦労もしてきて、おごらず、昂ぶらず、周囲の人のことをきちんと考える。地に足のついた誠実さ。ルカは、日本人が想像するイタリア人ぽくなくて(笑)、暗めで寡黙、ちょっと辛辣。今は亡き「キヨ先生」に心酔していて、亡くなった清人の記憶がだんだん遠くなっていくことを悼んでいる。一つ一つの事件は、そんなに大事件ではないが独りで抱えるには重たくて、それを受け止め、受け流していくには、やはり友が必要なのだ。

第1話 黄金の国
 偽金作りの悪党が、金貨の精巧な金型を手に入れて、金貨を作らせるために腕の良い鍛冶屋に目を付けた。しかし、そこで思わぬ事態が起こる。
第2話 水の都の怪人
 ヴェネツィアの町に、金貨をばらまく怪人が出現。街の人々はだんだん、熱狂が高まって行く。ルカと誠次郎が下宿する酒場(バーガロ)の主が大切にする絵に隠された謎。
 ヴェネツィアは何もない潟の上に人間が創った街である。そのためには沢山の杭を海に打ち込み、その上に建物を建てる必要があった。それが清人の心を捉えた。と誠次郎が言う。
「俺はそこに、人間の意志を感じるんだよ。海の上に美しい街を作りあげようとする人の意志を」
 私は、そこに、三木笙子さんの意志を感じる。何もないところに、美しい物語を創ろうとしている人の意志が伝わってくるように思うのだ。
第3話 錬金術師の夢
 小説家が創ろうとしたもの。それは物語ではなく・・・・・
第4話 新地動説
 夫婦でヴェネツィアを訪れていたアメリカ人夫婦。その夫がかき消すように失踪してしまった。・・・・ところからの、誠次郎の推理。
エピローグ
 もし夢が叶わなくても。在りし日の清人。夢が叶わなくとも不幸ではない。その夢はヴェネツィアの一部になるのだから。

2024年10月15日火曜日

0511 怪盗ロータス綺譚

書 名 「怪盗ロータス綺譚」
著 者 三木 笙子        
出 版 東京創元社 2022年11月
単行本 304ページ
初 読 2024年9月30日
ISBN-10 4488028799
ISBN-13  978-4488028794
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123627668


 表紙がとても素敵です。
 大好きなyokoさんの装画。色もシックで、なんとなく浮世絵の色使いなんかも思わせる和色。
 『怪盗の伴走者』で、ついにロータスこと蓮と行動を共にすることを選択した省吾。2人でしばらく欧州で奇術師とそのマネージャーとして活動していたようですが、このたびしばしの休息のため、日本に帰国し、帝国ホテルに逗留中。とはいえ変装しているので、蓮はともかく省吾はどうも落ち着かない。けっして騒ぎを起こすな、と念を押す省吾に、二つ返事な蓮であるが、しかしこういう男のところには、自分で面倒をおこさなくても、向こうから転がり込んでくるものなのだ。ため息をつきながら現状を容認するしかない省吾である。・・・てか、省吾がきちんと幸せそうに・・・しているな。蓮と一緒にいることがまんざらでもなさそうで、自然体でよろしい。私は君が元気でいてくれたらそれでいいんだ。

グランドホテルの黄金消失 
 日本に帰国して、2人が逗留していたのは帝国ホテル。そこに、金塊を載せた暴走馬車が駆け込んでくる。馬車が壊れて、その日のうちの横浜マルマル銀行東京支店の金庫への持ち込みを断念した持ち主は、目の前のグランドホテルに一晩金塊を持ち込むことに。そしてその翌朝、金塊が消失?!
 困った支配人が、顔なじみの蓮のところに、相談にやってくる。

特等席 
 蓮と省吾が周到に罠と仕掛けを張り巡らして、大がかりな詐欺を企てる話。何が起こるのだろう、と思いながら読んでいて、途中でこれは手玉に取られている方か、と思い至る。騙される側に移入するっていうのは、ちょっと新鮮な体験だった。途中からは誰が蓮で誰が省吾だ?と考えながら読む。それも面白い。

埋める者 暴く者 
 箱根にのんびり温泉に浸かりに行ったはずが、やっぱり事件の解決を持ち込まれる蓮、そして省吾。状況をコントロールしているはずが、だんだん相手に手玉に取られて、だんだんのっぴきならない状況に陥る様子が、『注文の多い料理店』みたいでワクワクする。最初と最後を切なく締めるのも粋。男は最愛の女の墓所を護り続けていたのだな。

すべて当たり籤
 駄菓子屋で子供が喜ぶくじ引きに事件あり。駄菓子屋の店主がトラブルに巻き込まれた、そして現在進行形で何かが狙われている・・・・というところは前話のごとく、先の展開の予想が付かず、推理小説を読むみたいに(ってか、これ推理小説だったか。)みたいにわくわく。だがしかし、そう来たか! それは意外だった。お兄さんはどうしたのよ? 簡単に騙される私は、つくづく推理小説読みじゃあないんだよなあ。と実感。
 
光と影のおむすびころりん
 これはすこし分かりにくかったかな。おむすびころりんの童話のごとく、どんどん縁と偶然がつながって最後にはすごいものに辿り付いたけど。舞台が「縁切り寺」っていうのも逆説的で面白い。

 さて、結論として、省吾は一抹の不安を抱えながらも、蓮とうまくやっているし、とりあえず後悔もしていないよう。もうちょっとだけ、蓮の弱みを観てみたい気がするので、そこは続編があればお願いしたい。



 

2024年9月29日日曜日

0508 怪盗の伴走者

書 名 「怪盗の伴走者」 著 者 三木 笙子        
出 版 東京創元社  2015年4月
単行本 256ページ
初 読 2024年9月26日
ISBN-10 4488017894
ISBN-13 978-4488017897
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123326691
《文庫》
出 版 東京創元社 2017年9月
文 庫  284ページ
ISBN-10 4488421148
ISBN-13 978-4488421144
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/123369200

 よかったのか?これで本当によかったのか!?
 これから先、安西は親友であるはずの蓮のそばで、心穏やかに過ごすことができるのだろうか? なんだか不安だ。

 一中(現・日比谷高校)から一高(現・東京大学教養学部)、東大法科大学と理想的なエリートの道を歩み、父と同じ検事になった安西ではあるが、その道は本人が心から望んだものであったかどうか。むしろ、母の呪縛によって敷かれたレールであったろうけど、安西は心情を語っていないので、本人がどのように自分の人生を受け止めていたのかは、判らないのだ。 ただ、検事の道を歩むことで、子供の頃には見ることのできなかった父の姿と相対することはできたのではないか。
 そんな安西が検事の道を捨て蓮に従うことは、安西に何をもたらし、何を奪ったのか。

 蓮は、策略によって、安西の心と人生を掠めとってしまった。連が安西と共に生きたいと願うこと自体は、悪いことじゃない。しかし、安西が自分と共に来るように仕向けるため、安西の心を操作したことは、やっぱりやってはいけないことだ、と私は蓮に言いたいよ。
しかし、この2人の行く末や関係については、あと一冊この後日譚の『怪盗ロータス奇譚』が残っているので、それを読んでから考えることにしよう。
 さて、でもとりあえず、この作も連作形式なので、第一話から。

第一話 伴走者 
 安西省吾と、蓮の出会い。省吾が尋常小学校から尋常中学校に進学したところなので、13歳〜14歳というところか。省吾は麹町の自宅から、京橋区築地三丁目の第一中学校に歩いて通学している。ちなみに、都立日比谷高校沿革によれば、明治20年6月14日京橋区築地3丁目15番地に新校舎落成、移転とある。場所は調べきれなかったけど、築地本願寺や海軍兵学校があったあたりか。たぶん省吾が中学に通っていたのは明治20年代末くらい。なお、明治32年には中学校令が全面改正され、尋常中学校の名称が「中学校」に改称されている。
 一方の蓮は、深川の米問屋で奉公しているという。頭の良さや育ちの良さを感じさせるが、尋常小学校を出た歳で奉公に出されたからには、生家が没落するなど、なにかあったのだろう。しかし蓮は自分の境遇にことさら不満もいわず、生気の塊が飛び跳ねるがごとく働き、その才気によってその歳で、すでに米問屋の主人にも一目おかれるようになっていた。省吾の通学と蓮の商売の道行きが交差する、日比谷のお堀端の柳の下の休息所で2人は出会った。母と2人の生活に鬱屈しがちだった省吾は、眩しいばかりの生気溢れる蓮と出会って、話をすることで、気鬱になりがちな単調な生活から救われていた。

 なお、この話で登場する「氷水屋」は氷を細かく砕いて砂糖水や蜜をかけた食べ物を売る行商で、当時はもう庶民に一般的になっていた。現代人が名前から想像する「こおり水」ではない。むしろかき氷に近いか。氷の商売は「世界記憶コンクール」の第二話にも出てくるが、氷にまつわる商いの変化も、明治らしい話だと思う。

 しかし、この話の主題は、氷ではなく、米。米相場の話だ。
 米相場の仕組みは、蓮の説明を読んで考えてもちょっと頭がこんがららってしまうが、米相場(米の先物取引)は、すでに江戸時代の享保15年(1730年)には幕府の公認を受けており、近代的な商品先物取引が制度として始まっている。日本は、黒船が来航して開国し、突然資本主義経済が流れ込んで社会が大変革したわけではなく、江戸時代から、着々と資本主義経済の母体となる商取引を成熟させてきていたからこそ、明治維新が成立しえたのだ。・・・・と、いうことなんかは、まあ、この話に出てくるものではなくて、まだ中学生くらいの年頃の蓮が、情報操作によって人心を動かし、当時米の買い占めによって急騰していた米相場に冷や水をぶっかけて、多くの人を助けた、という話。蓮の才気と、それを眩しく思い、彼の友人であることを幸せに思う省吾の、少年時代の話であった。

第二話 反魂蝶 
 少しさがって、第一話の数年後。
 第一中学校在学中の省吾と、何をしているのかはちょっと判らない蓮が、奇術師の一翔斉天馬のもとを訪れる。天馬から蓮への相談事は、英国の銀行家、下院議員で著名な蝶のコレクターでもある準男爵の来日の受け入れ準備に端を発した騒動。人を騙し、山村の集落に混乱を持ち込んでまで日本の幻の蝶を追い求めた人物を探し出して、だまし取った金を返させたいというもの。
 連と省吾の推理、そして蓮の奇術により、犯人を自白に追い込む。

 蓮は、自分が特異な人間であり、それゆえに、孤独であることをすでに知っている。そして、省吾であれば、蓮と共に「走れる」であろうことを確信している。一方の省吾は、いずれ、能力の上でか、気持ちの上でかはわからないが、自分が連と一緒に走れなくなることを、すでに予感しているのだ。

別名「浅草十二階」基本設計者は英国人技師のウィリアム・
K・バートン。内部には日本初の電動式エレベーターが設置
され、また電話の宣伝のため各界に電話設備も設けられた。
第三話 怪盗の伴走者
 さらに時が下がって、現代(というか、「帝都探偵絵巻」の時点)。
 高広と礼、安西とロータス(省吾と蓮)、そして、明治初期の来日英国人で、浅草の凌雲閣を設計した人物とその友人の小説家。
 それぞれの友情の物語が交差する。
 怪盗ロータスが凌雲閣に侵入し、絵を盗もうとしたが失敗した————という記事を、雑誌記者の佐野がすっぱ抜く。
 しかし、あのロータスが狙うような絵なのか? そもそもあのロータスがそんな失敗をするのか?と信じられない思いの高広。そして礼。しかも、誰にも言っていないが、高広はそれに先立ち、凌雲閣でロータスと会っていた。
 一方の安西も高広を訪れ、自分がロータス逮捕の指揮を執ることを打ち明ける。
 高広は佐野と協力して取材というなの捜査に当たることとなり、ロータスが再犯予告した日時に、凌雲閣に安西、高広、佐野が相対し、そこに礼が正面突破で乗り込んで来たところで、ロータスが動く。というところで、冒頭の感想に戻る。
 




2024年9月23日月曜日

0507 人形遣いの影盗み

書 名 「人形遣いの影盗み」
著 者 三木 笙子       
出 版 東京創元社 2011年2月
単行本 246ページ
初 読 2011年2月
ISBN-10 4488017665
ISBN-13 978-4488017668
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123233952
《文庫》
出 版 東京創元社 2013年9月
文 庫  316ページ
ISBN-10 448842113X
ISBN-13 978-4488421137


 明治40年代を映しとった短編連作「帝都探偵絵巻」の3冊目。このシリーズの初読は10年以上前(新刊だった頃)なのだけど、そのときよりも、再読した今のほうが感動が大きい。ミステリータッチではあるが、謎解きよりも、人々の優しさや、良かれと思った気持ちがすれちがったとき心に堪える淋しさ・哀しさや、それを埋めよう、癒やそうとする人間模様に、切なさを感じる。なにより、人は誠実に、真摯に生きるべきなのだというメッセージがある。著者の三木笙子さんの生真面目な心ぶりを感じる。一篇一篇が美しくて、それぞれに味わいがある。

第一話 びいどろ池の月
 邸内に水を引き込んで作った池の周りに部屋や渡り廊下を配し、水郷の雰囲気にガラスをふんだんにあしらった茶屋は、想像するだにどこか異国情緒が漂う、妖しい異世界のようだ。束の間、世知辛い世の中を離れて茶屋に遊ぶ男たちともてなす芸妓、池に沈んで密かな光を映すびいだま。三味線の弦を撥がはじく硬質な音や、芸妓の唄声、興の乗った客の声が映画の背景のごとく聞こえてくる。
 事件は芸妓の花竜の目を通して、初め散漫として捉えどころがないが、礼と高広が種明かしをするに及んで、スッキリとまとまった姿を見せる。ラストの親子の会話のきりりとした心情が良い余韻を残し、父のセリフの切なくほろ苦い後味が良かった。

第二話 恐怖の下宿屋
 帝都一の下宿屋は、泥棒などの犯罪者にとっては恐怖の下宿屋でもあった、と。いながらにして犯罪者に自主させる高広の下宿の大家、桃介さんの話。茄子づくしの食事がとにかく美味そうだ。礼は果たして本当に高広に会いにいったのか?? 腹が減ってただけのような気がするぞ?

第三話 永遠の休暇
 松平家のお家騒動、というか兄弟愛。ちょっと風呂敷が広すぎて、頭が付いていかなかったけど、実際ご長男はどこにいるのだろう。それにしても描く絵に自分一人しかいない絵。しかもそんな絵ばかりとは。本棚の中はロビンソン・クルーソーだけ。この人の孤独を思う。実際のところ島流しであるし、なにも謎ではなく、ただ、隠したかっただけ。と、同時に礼の恩師である洋画家、嵯峨画伯の選択。礼の絵が日本画でも油彩画でもなく、アールヌーヴォーのデザイン画であることを知る。たとえば、一條成美(いちじょう せいび)のようなイメージだろうか。

第四話 妙なる調べ奏でよ
 礼が詐欺師に騙されている? 高広の過保護パワーが炸裂するこの話。礼は騙された訳ではなく、騙されたかった。美しい話、心躍る夢にひととき身を委ねたかったのだ。礼の気持ちが切ない。この話は大好きだ。いっそのこと、ホームズの翻訳版権を至楽社でとってしまえよ。高広が翻訳して、礼が挿絵を描いて、帝都マガジンで連載してしまえよ!!と思ったのは私だけではないはず。 実際には、シャーロック・ホームズは明治30年代にはぼちぼちと翻訳され、日本でも紹介されていたようだが、登場人物が日本人に置き換えられていたり、日本人にも読みやすいように翻案されていたりしたらしい。もし帝都マガジンで連載していたら、きっとドル箱になったのに。残念だ。

第五話 人形遣いの影盗み
 ジャワの影絵芝居、ワヤンクリが題材。ロータスが登場。
 ジャワの影絵人形師は黒魔術の使い手でもあり、影に宿った人の魂を抜き取って、その人を呪い殺してしまう。そんな思い込みに捕らわれた御婦人が、高広の義母に相談し、相談を受けた妻の名誉を重んじた高広の義父が、高広に解明を依頼する。なぜか、礼とセットにして。
 突然高広の下宿に酒瓶片手に訪れて、妻の女心が判らん、と愚痴をいう高広父が、相変わらずかわいい。事件の仕掛けそのものは、かなり大がかりでそれをする意味があるのかな?とかもうちょっと合理的で確実な手があるのでは、などとつい思ってしまうが、そこに突っ込むのは無粋。これはロータスの舞台なので、派手になるのは致し方ないのだと理解する。

第六話 美術祭異聞 ※この話は文庫本とKindle版のみの収録
 ふたたび、森恵くんと友人の唐沢君が登場。美術学校で久しぶりに開催される美術祭の係になったという2人が、至楽社の高広と礼のところに、学校当てに届いた脅迫状についての相談を持ち込む。友情とライバル意識と芸術を愛する心。だしにされた恋心がちょっと可哀想だが、それが次の愛に代わってくれたら、と願わないでもない。

2024年9月19日木曜日

0506 世界記憶コンクール

書 名 「世界記憶コンクール」
著 者 三木 笙子     
出 版 東京創元社 2009年12月
文 庫 240ページ
初 読 2009年12月
ISBN-10 4488017584
ISBN-13 978-4488017583
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123170646
《文庫》
出 版 東京創元社 2012年5月
文 庫  300ページ
ISBN-10 4488421121
ISBN-13 978-4488421120

 心優しい貧乏人の雑誌記者の里見高広(実は出自は良い)と、美人画を得意とする超売れっ子で当人も絶世の美男である絵師の有村礼(性格はワガママ)のコンビが織りなす時は明治の探偵絵巻。なかなか性格のよろしい高広の養父(里見基博司法大臣)もちょくちょく登場する準レギュラーでこれまた良い感じだ。ミステリー調ではあるが、主題は人の優しさと人の世の切なさ。キャラやストーリーもさることながら、描き出される当時の時代感がとても良い。様々な職業や市井の生活のありようなんかが、とても雰囲気よく描かれている。三木笙子さんは丁寧に考証されているのだろうと思う。

第1話  世界記憶コンクール
 高広行きつけの質屋「兎屋」の息子はたぐいまれなる記憶力の持ち主だった。その息子のもとに父である質屋の店主が不思議なチラシを持ってくる。曰く記憶力の持ち主求む・・・・
 突飛な条件で人を集め、その裏で何が行われようとしているのか。高広のもとに持ち込まれた相談に、「さあ謎を解け!」と目をきらきら輝かせる礼。話を聞いていくと、その礼にも想起されるものがあった。『赤髪連盟』。礼が熱愛するシャーロック・ホームズの中の一話である。

第2話 氷のような女
 高広の養父である、里見基博の若かりし頃の物語。妻のよし乃の出会いの物語。当時の氷売買の様子なんかが詳しい。あの時代に北海道から天然氷を輸送していたのを知って驚き。調べて見ると、そもそもは明治の初めは外国人居留地で氷の需要があり、米国から輸入していたという(通称「ボストン氷」)から更に驚く。このあたりは、この話に触発されて調べたらニチレイさんのHPのコラムに詳しかったのでご参照あれ。→https://www.nichirei.co.jp/koras/ice_history/001.html 
 で、ストーリーの方は、なんとも生臭い、というか、悪人が悪人らしくてイヤだわ〜。基博が志高く政治家を目指しているのがとても気持ち良い一方で、ダメな奴はやはり、どこにでも、いつの世にもいるのだな。ラストで「誤解なんだ」とむくれる司法大臣の里見基博が、歳月を重ねてもラブラブなのが微笑ましい。
 そして、もう一つ、史実として大いに驚きだったのが、基博が司法大臣となった話中の30年後、つまり明治40年代には、すでに機械製氷が主流となっていたとの記述。時代の流れの速さと技術革新のスピードを知り、改めて驚嘆した。その当たりの流れもニチレイさんのHPのコラムが詳しい→
 あらためて、明治という時代のすごさを感じる。

第3話 黄金の日々
 『人魚は空に還る』の中の一話『点灯人』の森恵(もりさとし)君主役の話。苦労人の恵も晴れて上野の美術学校の予科生になり、学友たちと切磋琢磨の日々を送っている。学生時代のキラキラとした輝きそのもののような日々はまさに《黄金の日々》。恵を応援する大人たち、礼と高広も恵の学生生活が嬉しそう。青春って麗しい。
  
第4話 生人形の涙
 生人形(いきにんぎょう)って、非常にリアルですごい。あれ、木彫りで作ってるんだろうか。それとも乾漆? 粘土? それとも紙と糊? 電気機械商の南金六町の先代で、からくり人形製作にハマっていたというのは、多分東芝の創業者のことだよね。
 ラストの話の放り投げっぷり、というか余韻のある終わり方は、とても三木笙子さんらしい。この話が、高広と礼の出会いであるよう。
広重 名所江戸百景 竹河岸
 
第5話 月と竹の物語 ※文庫本とKindle版に収録
 銀座の尾張一丁目の小間物屋・・・・といっても、珊瑚細工や金工品などの高級装飾品を扱う「なよ竹」が、店頭広告のために礼のかぐや姫の絵姿を描いてもらった。礼が高広に語るには、いつになく制作に力が入ったらしい。といっても、礼が心血を注いだのはかぐや姫ではなく、その背景の竹であるとのこと。隅田川の河岸にある竹問屋の「武豊」に通い詰め、何度も習作を重ねたようだ。
 店頭のショーウィンドに飾られたかぐや姫の絵の足元には、物語によせた竹の切り株。その中にはなんと金塊が飾られた。
 その礼の絵の前に居座りぼーっと絵に魅入る男が一人。
 やがて、事件が起こる。
 例によって、さあホームズ、解決するのだ!とばかりに迫られる高広(笑)・・・・何しろ、礼の絵もさることながら、本物の金塊を飾ったのかと、それが驚きだ!
 銀座探訪の素敵なHPを見つけたのでご紹介。「銀座公式Webサイト」のコラムです。オススメです。

2024年9月16日月曜日

0504 人魚は空に還る

書 名 「人魚は空に還る」
著 者 三木 笙子    
出 版 東京創元社 2008年8月
単行本 231ページ
初 読 2009年12月
ISBN-10 448801738X
ISBN-13 978-4488017385
《文庫》
出 版 東京創元社 2011年10月
文庫 ‏ : ‎ 298ページ
ISBN-10 4488421113
ISBN-13 978-4488421113

初読は2009年なので15年ほど前。彼女の「世界記憶コンクール」が出版された時にたぶん、同時に読んでいる。実は「世界記憶コンクール」の方を先に読んだ記憶があり、そっちの方が先に刊行されていたと記憶違いをしていたが、この「人魚は空に還る」が三木笙子さんのデビュー作である。
 三木さんは、明治時代の風物やとくに職業や産業の様子を詳しく書かれるので、この本を読んでいると、時代設定が明治のいつ頃なのか、明治はどういう時代だったのか、当時どれほど早く、東京という街が発展したのか、などなどいろいろと知りたくなってくる。そんなわけで、明治時代の年表やら、とくに活版印刷や西洋出版の発展がどのくらい早かったのか、やらをいろいろと調べながらの読書になった。(それらは別のノートにまとめる予定。)なにしろ、先日『小公子』を読んだ際に、かの小説が明治13年(1880年)には日本で翻訳され、雑誌に連載されていたと知って、驚愕したことろだったので。
 なお、この本の5章「何故、何故」で登場する絵双紙のように、この国では江戸時代からすでにカラー刷りの読み物の文化があり、明治の頃の雑誌も、当初から表紙はカラー印刷が多かったようだ。だからこそ、礼の絵の需要もあると言うもの。
 登場人物は、絶世の美男で、美人画を得意とする超絶売れっ子絵師である有村礼と、その友人であり(ほとんど下僕(笑)状態の)雑誌記者、里見高広、という二人の良い男。短編連作である。
 作品の中の既述から、時代が明治40年代初めであることが判る。

京都工芸繊維大学が2019年に開催した展覧会の
チラシ。草の根のアール・ヌーヴォー 明治期
文芸雑誌と図案教育』
 有村礼はコナン・ドイルのシャーロック・ホームズに耽溺しているが、自分では英語を読めないため、高広に逐次翻訳して読み聞かせてもらっている。その代わり、高広の勤める雑誌に格安で表紙絵や挿絵を描いてやっている。高名な絵師である有村礼が、弱小出版社に格安で絵を描いてくれている、という一見割にあわない取引に初めは引け目をかんじていた高広だったが、やがて、礼から友人と見做されていると知り、だんだん二人の関係も馴染んでくる。
 しかし、礼のほうでは、巷間で事件が発生すると、高広にホームズ役になって事件を解決することを要求し、自分はワトソンを気取る、というのが高広にとっては困りもので・・・・ホームズパスティーシュとも言えるかな。
 
第1話 点灯人
 高広の勤める雑誌社(至楽社。といっても、人員は社長兼編集長の田所と記者の高広のみ。)に、尋ね人の広告掲載を求めて小学校4年生の少女が訪れる。行方が知れないのは彼女の兄、府立第三中学(旧制中学なので、現在だと高校生)16歳。ちなみに旧制府立第三中学は、現都立両国高校。
 ※当時の学制は、尋常小学校6年→中学校5年→高等学校3年(大学予科・現在の大学一般教養課程に相当)→大学という流れ。
 彼女の兄である森恵(さとし)は、素晴らしい彫刻の才能を持っていて、最近広告図案の公募で一等賞をとり、大金の賞金を手にしたばかりだった。高広は、編集長で有る田所の安請け合いで、人捜しをすることになる。

第2話 真珠生成
 金魚売りから買い求めた金魚鉢の鉢底石の中から、大粒の真珠が見つかった。それは先頃、老舗の真珠店である銀座の美紀本店から盗難した、三粒の真珠のうちの一粒だった。美紀が残る二粒の真珠の行方に懸賞金をかけたことから、世間は俄に真珠探しに沸き立つ。そして、なぜ、どうやって真珠が盗まれたのか、たまたま、真珠の盗難に高広の父が居合わせたこともあり、高広と礼は真珠の行方を追う。
 「真珠」の持つ美とはなんなのか。美の価値とはなんなのか。未熟な人間である自分は、いつか、そういう美しい価値を身に纏うことが叶うのか・・・・
 謎解きよりも、そのような希求が、胸にくるものがある。

第3話 人魚は空に還る
 浅草の見世物小屋にかかった芝居が世間の評判を攫う。なんとしたら、生きている人魚を展示する芝居だったからだ。やがて、人魚の不老不死伝説にちなんで、「人魚水」なる化粧水が飛ぶようにうれるようになり、あろうことか八百比丘尼伝説を信じ込み、人魚を食わんとするものまで現れて・・・・
 人魚は空に還りたい、と望み、アンデルセンの童話のように、海の泡ならぬ空の泡になる。

第4話 怪盗ロータス
 芸術品を好んで盗み、その現場に小さな睡蓮の木彫りを残すことから巷で『睡蓮小僧』と名付けられた盗賊はその命名がいたくお気に召さず『怪盗ロテュスと呼びたまへ』と新聞社に手紙を寄越した。フランス語のロテュスはさすがに呼びにくいので、英語読みにして『怪盗ロータス』と呼ばれるようになった一風変わった盗賊は、まるでアルセーヌ・ルパンのよう・・・。
 怪盗ロータスと検事の安西、初出。

第5話 何故、何故 (文庫・電子書籍のみ掲載)
 文庫化されたときに追録された小品。ボーナストラックみたいなもの? 高広は礼とともに、礼の大叔父である絵師、歌川秀芳の住まいを訪ねる。元は武家の長屋だったという叔父の新しい住まいは大川端にあり、その居間からは川面が見渡せるはずだったが・・・・・
 大叔父宅の川向こうの質屋で起こった盗賊騒ぎの顛末を、ついうっかり高広が推理する。

《追記》
 この人の小説を読んでいると、心を削るようにして文章を紡いでるのではないか、と心配になることがある。書いているご本人が、強く強く、物語を書く、ということに希求するものがあるのだと、その言葉や行間から感じるからだ。 
 一言に小説といっても、非常に職業的に、技術的に書いていると思える作家さんもいるし、心の奥底から魂を紡ぐようにして書いていると思える作家さんもいる。そういう作家さんの文章は、誠実で美しく、泣きたいほど優しかったりする。この繊細な作家さんは魂を削りすぎて、体調を崩してしまわないかと心配になる。どうか、元気でこれからも作品を生み出してほしいと願っている。

2024年9月13日金曜日

0500 帝都一の下宿屋

書 名 「帝都一の下宿屋」
著 者 三木 笙子       
出 版 東京創元社 2018年8月
単行本 241ページ
初 読 2024年9月12日
ISBN-10 448802792X
ISBN-13 978-4488027926
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123046596
 2018年8月に出版された本である。
 三木笙子さんの本は、だいたい新刊が出ればすぐ買うので、なんと6年も寝かせてしまったことになる。申し訳ないことだ。

 短編連作であるが、明治の東京の下宿屋を舞台に、穏やかな人間模様が描かれる。ブロマンス、というほどの熱量はないが、とても優しい。ミステリではあるが、凶悪だったり、阿漕に過ぎる人間は出てこず、大概人も死なない。
 私にとっては、この本も心の包帯系である。

紙に文字を書いただけの、何の役にも立たない作り話が、この心を温めてくれる。

 「それを読んだとき、心の中に灯りがともるような」小説こそ、まさに三木笙子さんが目指すものなのだろうと思う。

川瀬巴水《東京十二題》より
大根河岸 大正9年作
 下宿屋静修館に起居する居候の面々の中には、かの里見高広もいる。
 こちらは、「世界記憶コンクール」から始まる帝都探偵絵巻の主人公。こちらの物語もオススメだ。

 私はミステリはさほど得意ではないので、謎解きはさっぱりなのだが、三木さんの本は、ミステリの体裁ながら、さほど謎解きには力を置いていない(と、思う)。謎を解こうとする登場人物の描き方が、控えめで、それでいて芯があって誠実だ。
 明治の街や職業をよく考証しているのも素晴らしいと思う。この時代の町の様子や風物や空気感、人の体温や気持ちをことさら優しく感じる物語である。
 ちなみに、装画はyocoさんた。これまた素敵な絵を描く御方で。帯も白く美しく、「本好き」の心をくすぐる一冊だ。

永遠の市 
 明治時代のお仕事小説の感がある。広告代理店と、老舗の醤油問屋。偽物が出ないようにと最新の注意を払って作られた醤油のラベルが貼られて、なんと粗悪品が出回っていると。
 下宿屋静修館の住人である小説家の仙道湧水は、どういうからくりで、だれが偽物を捌いているのか推理する。
川瀬巴水《東京二十景》より
大根河岸 昭和5年作

障子張り替えの名手 
 ある鉱物の精錬法で画期的な手法を考案し、特許申請間際だった書類が金庫から無くなった。おそらく内部の犯行。いったいだれが盗んだのか。

怪しの家 
 静修館の下宿人5人と大家の桃介、それに以前の下宿人の蒔絵師があつまって、有る家にまつわる謎解きをする。高広も登場。そして実は、真相を知っている。さすがの記者の役得。

妖怪白湯気
 これも、とってもお仕事小説っぽい。明治の風呂屋事情と、風呂屋にまつわる仕事。どこにでも商機はあるものだ。よくもそんなニッチな仕事が、と変なところで関心する。

 いずれも、三木さん、よく調べてるなあ、と関心しながら読んだ。

2023年4月10日月曜日

0419 ドント・ストップ・ザ・ダンス (講談社文庫)

書 名 「ドント・ストップ・ザ・ダンス」 
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2016年8月(単行本初版 2009年7月)
文 庫 560ページ
初 読 2023年3月10日
ISBN-10 4062934647
ISBN-13 978-4062934640
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/113021593
 園長探偵ハナちゃんシリーズ、最終作になる5作目。読んでしまうのが名残惜しい。だからって、読了に一ヶ月以上掛かったのは、読み惜しんだからではなく、仕事の超繁忙期と家庭の事情と、体力の都合ゆえ。疲労困憊で、週末毎に実家に通う往復の電車でも、イスに座ったとたんに泥のように寝落ちしてしまう日々で、毎日読めたのは数ページだったから。読み終わったときには冒頭のエピソードは忘れかけている始末だった。
 とは、もっぱらこちらの事情で。

 我らがハナちゃんは借金返済と愛する園の子供達のため、今日もがむしゃらに走るのだ。

 前作は短編連作だったが、こちらはがっつり長編。ハナちゃんの保育園に通う小生意気な5歳児の父は、今現在は売れていない小説家。妻には逃げられ、小説は書けず・売れずで、バイトのダブルワーク、トリプルワークでなんとか日々の糧と息子の保育料を稼いでいる状態。それなのに、何者かに襲われて意識不明の重体となってしまって。他には身よりのない子供を園で世話しつつ、逃げた母親を探し、一方で美味い稼ぎになるはずだった城島からの探偵仕事は、どんどんきな臭くなっていく。ヒットマンの影がちらつくころには、進むも引くもならない窮状に陥るハナちゃん。そして早朝の新宿駅のホームで背中をどつかれて、列車が進行してくるなか、ハナちゃんが宙に舞う!?
・・・・と、なんともテンポもよろしく、これでもか、と窮地の波状攻撃なのは通常運転といえなくもない。聖黒界隈で一番、不遇な男であるハナちゃんは今日も命からがらだ。
 
 それにしても、柴田よしきさんのこの聖黒関連のシリーズは、なぜか私の土地勘のあるエリアが舞台になっていることが多い。この作では東急田園都市線の青葉台駅が登場。最近は月にに数回は行っている。なぜならば、実家詣でのコースだから。駅前のショッピングセンターは東急スクエア。2フロアを占める大型書店はブックファースト。2階の雑貨ショップ併設のカフェは無印良品だ。

 凶悪犯罪と、園児のパパへの暴行事件&家庭内争議、という大型二本立てで進行するのかとおもいきや、事件はさくっと一本にまとまり、大人達が子供時代を過ごした児童養護施設で起こったある事件に行き当たる。前の作品のレビューで児童福祉の知識が寸足らず、などと批判的なことを書いたが、作者の柴田よしきさんが、このテーマに大切に取り組んでいる感じがして、大変失礼だった、とちょっと反省している。

 この作品で、聖黒の練ちゃん登場作品は読み切ったことになる。あとは、もやはネットでも読むことができない『海は灰色』の刊行を待つばかり。今年は柴田よしき氏の作品刊行ラッシュらしいので、そのうちの一冊が『海は灰色』でありますように、と切に願っている。

2022年10月9日日曜日

0396 ア・ソング・フォー・ユー (講談社文庫)

書 名 「ア・ソング・フォー・ユー」 
著 者 柴田 よしき
出 版 講談社 2014年12月
   (単行本初版 2007年9月)
文 庫 560ページ
初 読 2022年10月7日
ISBN-10 4062767503
ISBN-13 978-4062767507

 園長探偵ハナちゃんシリーズ、第4弾。
 短編集かと思いきや、2からは短編連作っぽい作りになってる。
 赤ん坊はなぜ、そこに捨てられたのか。
 捨てたのは誰なのか。
 「子供はみんな幸せであるべきだ。子供たちを幸せにすることができないのなら、俺たち大人なんて、生きてる価値なんかない。」その通りだね。ハナちゃん。そして子ども時代が幸せなら、大抵の大人は大人になってからも幸せになれるはず。・・・なんて書いてから、練のことを思い出して「そうでもないか・・・」と思ってしまったよ。
 悲しい・・・・・

1. ブルーライトヨコハマ
 ハリウッドセレブとなった日本人女性からの、奇妙な依頼。呪いの藁人形の持ち主だった当時の少年の捜索。
 しかし依頼は依頼。一枚の古い写真から、当時高校生だった男子学生の学校を割り出し、卒業アルバムから本人を特定し、昔の住まいを訪ね、地道に情報を集める探偵ハナちゃん。今回は危険もなく、ぽっと胸が温かくなるラストも良い。

2.アカシアの雨
 アカシアの雨からは短編連作。ハナちゃんの保育園があるビルと、その隣のビルのわずか20センチくらいの隙間に捨てられた生後間もない赤ん坊。
 そして、城島のもの凄く美人な姪っ子から舞い込んだ意外性のある依頼・オカメインコの捜索。
 赤ん坊は無事保護されたが、ハナちゃんは赤ん坊を捨てたのが誰か、気になってしかたない。赤ん坊を捨てたのは子どもだったらしい。もし、その子が赤ん坊の母だったら?その子は、今どうしているのだろう?
 おまけにハナちゃんは美人のオカメインコの飼い主の言動にただならぬものを感じてしまう。オカメインコの居所は掴んだが、はたして、その美人の飼い主を救うことはできるのか?

3.プレイバックPART3
 新宿の靴磨きカンちゃんの災難。 赤ん坊を捨てた人物はいまだ判らず。ゲームセンターの女の子は誰? 
 カンちゃんのパートナーの巨体のミヤさんがとても素敵。まさかの偶然で、カンちゃんに怪我させた女の子と、子連れの売春婦と、捨て子の赤ん坊がつながって。 
  あまりにも理不尽な世の中に、ハナちゃんは涙する。

4.骨まで愛して
 ここに至って新たな依頼が2件も! 一件は恋人から、「お骨を探してほしい」との奇妙な依頼。もう一件はなんとカネゴンこと美形の女顔の広域指定暴力団の若頭から。渋谷で練に捕獲されて、連れて行かれたのは大久保の老舗の組事務所。そこにいた組長の正体にハナちゃんは驚愕。
 赤ちゃん—赤ちゃんを捨てた少年—赤ちゃんを産んだ女・・・・とただただ金にもならぬ人助けをしただけなのに、結局練に理不尽に絡まれて、やらされた仕事は、後腐れ無く使える鉄砲玉のスカウトとは。
 ハナちゃんの無念が忍ばれる。

5.エピローグ
 そして麻生登場。
 マックでマヨネーズ垂らしながらバーガー喰ってただけだけど。 
 なんとなくくたびれた中年男になっている龍太郎は、元々私のイメージ通りではあるのだが、直前に読んでいたRIKOシリーズでは足の長いハンサム男だったりするので、ちょっと自分の中のイメージにはブレが生じる。 
 ハナちゃんは捜査一課の元名刑事とは面識がないらしい。麻生の方はどうなのかな?かつて同僚を射殺して警察を去った、暴対の刑事の顔は知らないのだろうか。麻生が頑固な分、元刑事のハナちゃんが身代わりで練にもてあそばれて、割を食っているような気がしてならんのだけど。

   あと、練がハナちゃんより年上って、やっぱりハナちゃんの勘違いじゃあないのかな? 

2022年9月6日火曜日

0387 シーセッド・ヒーセッド (講談社文庫)

書 名 「シーセッド・ヒーセッド」
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2008年7月(単行本初版 2005年4月)
文 庫 512ページ
初 読 2022年9月6日
ISBN-10 4062761009
ISBN-13 978-4062761000
読書メーター https://bookmeter.com/books/543629

 このシリーズだと、練ちゃん何歳になってるんだっけ?40代だってハナちゃんが言っているけど、あと繰り返し、ハナちゃんがあと数年で21世紀だと言っているので、作品世界では1997か8年くらい?だと思ってるのだけど、そうすると練だって40代にはまだなってないんじゃない?
ここでもう一度、聖黒のレビューで書いた時系列を掲載してみよう。










時系列(全体)
 1985年夏          世田谷事件(練が麻生に逮捕される。) 練26歳
 1986年4月        練・府中刑務所で服役中
 1986年7月    〃
 1986年10月      覚醒剤中毒者による小学生刺殺事件発生
 1987年4月   練・仮釈放・武蔵小金井の保護司を頼り、印刷会社に勤める。
 1987年8月   練・印刷会社の同僚に脅迫され、武蔵小金井のアパートを飛び出して新宿に。
          生きるために体を売るようになる。
 1988年            田村出所
 1989年2月15日早朝
         ブレーキの調子が悪かったため韮崎が乗り捨てた車の回収を命じられた部下が、
                         その車を運転し運転し、飛び出してきた赤ん坊(真子)を抱いた母親(望月
                         路子)をはねる。
 1989年2月15日早朝
         同日・小田急線参宮橋近くの線路で自殺を試みた練が韮崎に拾われる。
 1989年5月    韮崎の弁護士が交通事故の示談工作。
 1989年7月    覚醒剤中毒の男に子どもを殺された女が、武藤と韮崎が同席していたところを
         拳銃で襲う事件発生。
 1989年9月    練は韮崎の住まいに居候している。
 1989年9月      北村が殺害される。
 1992年    北村の娘が北村の遺骨を納骨する。
 1995年10月    韮崎が新宿のホテルで他殺体で発見される。 練36歳


今作は、短編3作の連作
ゴールデンフィッシュ・スランパー・・・・・アイドル歌手に送りつけられた脅迫状の送り主を探すお仕事。ストーカー事件のようでいて実は、苦しい過去が。
イエロー・サブウェイ・・・・・なんと、練が置き去りにされた赤ん坊の母親の捜索をハナちゃんに依頼。
ヒー・ラブズ・ユー・・・・・最初はストーカーの片棒担ぎのように思えた尾行だったが、実は真面目で苦しい恋につけ込まれた脅迫事件に関わる調査だったと分かり、アフターケアと称して依頼主の苦境を助けるハナちゃんが、なんとも素敵。

 練の住む高級マンションの玄関先に置き去りにされた生後2ヶ月くらいの女の子の赤ん坊。置き手紙には「あなたのものなので、あなたに返す」と書いてある。疑惑の一夜には、練は泥酔していて記憶にない、と。取り巻きの斎藤などは、件の赤子を遠慮しいしい「社長のお嬢さん」扱いしているのがちょっと面白い。赤ん坊を押しつけられて困惑している練、ってのもなんというかかわいい。ここに麻生さんが居たら、「俺が育てる!」とか言っちゃいそう。いや、それはないか。。。練ちゃんに突如勃発したトラブルをがっつり押しつけられる園長ハナちゃん。今回は探偵業と保育業のフルコンボでとことん練に利用されている。
 そこはハナちゃんの努力と根性で、絡んだ糸を解きほぐし、赤ちゃんの母親も、ついでに父親と思しき人物も見つけ出し、母親を説得して赤ちゃんを返し、報酬も得ることができたが、意外にも、それでことが収まっていなかった人物が一人居たわけだ。それも騒動の大本、張本人が。
 いったんは母親の元に返った赤ん坊との親子鑑定をやりたい、と言い出す練。とうに家族との縁は薄くなっている練だが、一体赤ん坊の存在に何を求めたものか。この間何があったんだろうか? 

「事情が変わったんだ」山内は、少し妙な表情を見せた。何か企んでいる顔には間違いないのだが、どこか、戸惑っているような目つきをしている。

 その事情ってのはなんなのさ! と、ちょっと麻生さんを探して首を揺さぶって見たい気がする。
 自分が「一代雑種」だと言う練は、やはり、ヤクザの世界にも馴染みきってはいないのよね。死んだはずの自分を生かしてくれた韮崎への思いや、先代とのしがらみが練をヤクザの世界につなぎ止め、練をヤクザに擬態させてるけど、本当は寂しいのだろうなあ。

「それは、つまり、俺は消えた方がいい、ってことか。この世に生まれて来た痕跡は何ひとつ残さず、綺麗さっぱりと消えた方がいい人間だ、そういうことか」山内の声に怒りはなかった。ただ淡々と、静かにそう言った。

 こういうときは、素の練ちゃん。ああ、切ない。こういうこういう顔を見せられるハナちゃんすごいよ。
 そんな練と麻生の「聖黒」後のしがらみを描いた「海は灰色」はいつ読めるのだろうか。すでに角川のネット書店では取扱いがないようなので、書籍化を待つしかない。


 

2022年8月31日水曜日

0384 フォー・ユア・プレジャー (講談社文庫)

書 名 「フォー・ユア・プレジャー」
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2003年8月
文 庫 544ページ
初 読 2022年8月31日
ISBN-10 4062738171
ISBN-13 978-4062738170


「若」。わか。刑事だったのに汚職で懲戒免職くらった辞め警の斎藤が、今は山内練の腹心の部下に収まっている斎藤が、練を「若」と呼ぶ。
 若頭だから「若」なんだろうけど、なんか、それだけで、愛というか思慕が溢れてるんだよ。
 だけど、その男、心は他の辞め警のものなんだぜ? さらりと描いている脇のはずの斎藤の慕情が、なんとも切ないのだ。結局、保育園園長で凄腕探偵なハナちゃんが活躍するこの話は、美形で傷ついてて壊れてて、ケタケタと笑って平気で残酷な振る舞いをするあの男の物語、なんだな。だから、ここには登場しない麻生さんよ、つまらないプライドは捨ててさっさと練を抱いてやれよ、と。

 そんな練に、今日も振り回されているハナちゃんのかいがいしい努力が涙ぐましい、ハナちゃんシリーズ2冊目なのです。今作はより一層グレードアップした難題がハナちゃんを襲う。
 一回寝ただけの行きずりの男を捜してくれ、という無茶な依頼をしたのは、どこかタカビーな天然女。飛び込みで保育園を訪れた無茶な父親からやむを得ず預かった乳児が深夜の急変で救急車を呼ぶ騒ぎになり、その育児に無知な父親に罵倒され、最愛の恋人の理沙はなにか困った様子だったのだが、ハナちゃんには相談できないまま姿を消してしまい、その理沙の妹のトラブルが、理沙失踪の原因かと追いかければ、なんとまたしても殺人事件に巻き込まれる。
 その上、極悪ヤクザの山内にはケタケタと笑いながら無理難題をふっかけられ、解決の為に与えられた時間は24時間しかないのに、マトリの捕り物に巻き込まれ! 全部が全部つながって円満解決したについては、さすがにできすぎ、というかやり過ぎだろ、と思ったがそれはまあ、よい。読んでほんわか幸せな気分になるための小説だしな。
 胸の蝶の刺青で読者にちょっとどきっとさせるあたり、柴田センセは芸が細かいのお。あと、太宰治の「走れメロス」の真っクロ黒な洒落が洒落になってませんでした。今作もハナちゃんには同情しかありませんでした。頑張れ園長先生!


 

2022年8月20日土曜日

0383 フォー・ディア・ライフ (講談社文庫)

書 名 「フォー・ディア・ライフ」 
著 者 柴田 よしき         
出 版 講談社 2001年10月
文 庫 496ページ
初 読 2022年8月22日
ISBN-10 4062733064
ISBN-13 978-4062733069

 彼の名前は花咲慎一郎、愛称は「ハナちゃん」。ただそれだけで漂うほんわかな雰囲気で、そもそも大成功してるよね、この本。
 そのハナちゃんは、新宿の裏町の無認可保育園の雇われ園長で、新宿の夜の女達が預けにくる子どもたちを守るために孤軍奮闘している。保育園の経費を賄うために、睡眠時間を削って、あぶない探偵仕事を頼まれながら。
 そのハナちゃんの経歴が、じつは警視庁の元刑事で、同僚を射殺して職を追われていたり、その保育園が、某暴力団の先の組長の妾だったおばあさんが経営するものだったり、その園の建物が乗ってる土地の所有権が、某イースト興業つう超絶ブラックで反社な会社に移って、美貌の睡眠薬中毒の社長(兼暴力団若頭)に土地の買い取りを巡って顔面蹴り上げられたり、とまあ、とにかくただ事ではない。
 『聖なる黒夜』やその続編の短編では、まだ表社会と裏社会の狭間で揺れていた練も、ここでは、もはや真っ黒黒な正真正銘のヤクザである。だがしかし、その彼がチラ見せする優しさや弱さに、またそそられるのだ。ああもう、麻生さんなにやってんのよ。なんで一緒に闇落ちして、練を抱いてやんないのよぉぉぉぉぉ、という私の心の雄叫びを聴きやがれ(笑)

 ハナちゃんの事件簿、ももちろん面白いのだが、それよりも、『聖黒』『RIKO』『ハナちゃん』で構成されているこの界隈の群像が面白い。某下町のうらぶれたビルに職住共用で悶々と悩みながら暮らす硬派でホモの元刑事の探偵やら、極悪非道な美形のヤクザやら、そしてかつて大物ヤクザの愛人だった美人の医者なんかが蠢いているのだ。あ、あと私は百々井さんが結構好きだな。で、それはさておき、ハナちゃんである。

 子どもを預ける母たちから取る保育料だけでは到底園の経営は維持できないから、ハナちゃんは給料をもらうどころか、園の赤字補填のために探偵の裏稼業で稼ぐ日々。頼まれ仕事はヤクザの殴られ役に始まり、家出少女の捜索、家出少年の追跡・・・・だったはずなのに、なぜか厄介な事件に巻き込まれていく。だがそのネタがね。
 いや、これは、もっぱらワタクシ事なんだが、栗本薫の「僕らの時代」を読んだ次に、あえて「僕らの気持」を読まずにこの本を手にとったのにこのネタかよ!・・・・と。いささかげんなりしたのは事実だ。
 いや、ハナちゃん大好きです。おもしろいよ!オススメ!
 だけど、ゲイの恋愛に、往年の大漫画家ネタに、コミケに二次・・・・と、なんかトッピング盛りすぎじゃねーか?????とも思ったのだ。もう、胸焼けしちゃう。ま、面白いんだからいいけどね!


2022年8月19日金曜日

0382 新装版 ぼくらの時代 (講談社文庫)

書 名 「新装版 ぼくらの時代」
著 者 栗本 薫     
出 版 講談社 2007年12月
文 庫 448ページ
初 読 2022年8月19日
ISBN-10 4062759330
ISBN-13 978-4062759335
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/108406787   
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【旧版】
出版社   講談社  
単行本初版 1078年9月/文庫本初版 1980年9月
初 読   1983年頃?
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 「推理文壇」っていう言葉があるんですね。
 ミステリー界、ではなく「文壇」。私だけかもしれないけれど、この文壇って言葉には、えらくアカデミックで高尚で、考えようによってはうさんくさい感じがしてしまう。
 なるほど、栗本薫は処女小説でこの「推理文壇」なるものに、超新星のごとく出現したのだ。たしかに、それでけのインパクトのある、若々しく瑞々しいのに、こなれている、これは良作、もしかしたら名作かもしれん。
 高校生・大学生の父親世代に、まだ「戦争帰り」がいる時代なのだ。私自身よりもちょい前くらいの世代か。たしかに、戦中生まれだった私の父がもう数年早く生まれていたら、学徒出陣していた可能性もあったわけだ、と今ごろになって、思いのほか「戦争」は昔の話ではないのだと気付いたりもする。このあたり、初読の時にどう感じたかはちょっと思い出せない。
 ここのところ、栗本薫の晩期の作をずっと読んできて、こうして、〇十年ぶりにあらためて処女作を読むと、この段階で、ほぼ完成した作家だったのだと改めて思う。と、いうかここが絶頂期なんじゃないのか? ただし、語彙の使い方、漢字のひらき方に(私の感覚からすると)妙なものもあり、そういったところを、処女作からもてはやされて「大目に見てもらえ」て、業界から持てはやされて、これでOKと絶大な自己肯定感を得てしまったのが、薫サンの長い凋落の始まりだったのだろうか。ここで、この時に、キビシイ担当編集さんにがっつり、小説書きのお作法を仕込んでもらっていたら・・・・・いや、仕込まれたのだろうか? 書き上げたら読み直してみなさいとか、推敲しなさい、とか。漢字の使いかたとか? 推敲する習慣だけでも、きちんと身に付けてくれていたならば、早書きだけが能の作家には成り下がらなかったろうに。(迂闊、軽率は直らなかったかもしれないけど。)

 テレビ局、マスコミ、スター、などというキラキラした世界が最初から好きだったんだな、とも思う。のちの「島サン」に通じる原田ディレクターや、「良」なんかのスターにつながる若くて脆弱なスターの造形も、「探偵」役の造形も、原型は全部ここにある。それに、後の一連の東京サーガで登場するテレビ局「KTV」が、「極東テレビ」だということも再確認。

 ストーリーは文句なく面白い。タイプの違う2人の探偵役の役どころも面白い。トリックというか、トリックは無かった、というかのストーリーのひねりもなかなか練れている。
 戦後の焼け野原から再興したトウキョウの街と、それを汗水垂らして作りあげてきた「大人」の矜持、その押しつけに反抗するこども、反抗の証しともいえるロックと長髪。そしてやがて「もう若くないんだ」と彼らも髪を切って就職していくんだな、と某名曲を思い出す旧版「ぼくらの時代」と「ぼくらの気持ち」の表紙がなつかしい。なにはともあれ、面白かった。

2022年8月14日日曜日

0381 身も心も〈伊集院大介のアドリブ 〉 (講談社文庫)

書       名 「身も心も〈伊集院大介のアドリブ 〉」 
著    者 栗本 薫    
出    版 講談社 単行本:2004年8月/文庫:2007年3月
文    庫 496ページ 
初       読 2022年8月14日
ISBN-10 4062756714
ISBN-13 978-4062756716

 伊集院大介、ジャズの貴公子矢代俊一に出会う。
 言わずとしれた(?)栗本薫の一大シリーズ「伊集院大介」の事務所に、「キャバレー」の矢代俊一が、事件の依頼に訪れる。最初の出版は2004年。東京サーガとしては、「朝日のあたる家」完結後、次に書かれた作品か。物語の時点は俊一39歳。
 作品世界の時期的には俊介氏の『嘘は罪』と同時期。ちなみにこの話には関係ないが、今西良は服役中。俊一を伊集院大介の元に手引きした竜崎晶は伊集院大介シリーズの準レギュラーなのかな?伊集院大介シリーズは、大昔に一冊くらい読んだ気もするが、以降まったく読んでいないので、登場キャラはよく分からない。なにはともあれ、薫サンが「東京サーガ」と大括りにしている作品世界の、「伊集院大介ブランチ」と「キャバレーブランチ」がこの作品でクロスする。

 ちなみに、伊集院大介は、痩せ型長身、低血圧、寝食にはあまり興味がないタイプのようで、これは栗本作品によく登場する類型。矢代も、透もおんなじタイプ。薫サンはこういうタイプの男性がひとつの理想なんだろう。(ひょっとすると薫サンのダンナ様もこのタイプではないか?と写真を拝見して想像しているのだが。)

 さて、矢代俊一が大介の事務所に持ち込んだトラブルは、脅迫・ストーカー案件。ライブの前になると必ず「〇〇を演奏するな」という脅迫が届くようになった、という。ストーカー慣れしている俊一も、時間が経つにつれだんだん気味が悪くなってきて、あげくにライブの最中に照明が落下し、ピアニストの高瀬が大怪我をするに及んで、さすがに看過できなくなった模様である。しかし、これまでの経験から警察が取り合ってくれるとも思えず、晶のつてで、「名探偵」のところに事件を持ち込んだ。と。

 事件としては、結構簡単だ。名探偵・伊集院大介でなくとも
✓犯人は、矢代のスケジュールを詳細に把握している。(外部に未公表な情報を把握)
✓矢代本人に対する強い執着がある。
 ってだけで、だいたいあたりがついてしまう。
✓照明器具への細工も、ちょっとプロっぽい、というか会場や設備を熟知していないとできなさそう。(ただし、本当に事件なのかどうかは、中盤すぎても不明)
って時点で、容疑者2〜3人に絞れちゃう。あとは、予想外の伏兵がいて大どんでん返しがあるかないか?
 
 あと、細かい表現について、薫サンにとやかく言っても詮無いのは分かってるんだけど、どうしても気になってしまったことがいくつか。
✓「〒ポスト」は、さすがに小説の文章として無いんじゃあないか?しかもこれは、マンションのエントランスなんかにある個人の郵便ボックスのことだ。道ばたにたたずんでいる赤いヤツのことではない。パソコンの予測変換にやられたか?
✓「エアージンなんてやったことあるのかなあ」とか俊一が言ってますが、数年後の岡山のライブで39度の熱をおしてステージにたってぶっ倒れたのは、この「エアージン」を演奏していたとき。結構演奏している風だったけど、これ以降第三次矢代俊一グループを結成して(まともなピアノとベースを入手できてから)レパートリーに加えたのかな?
✓俊一の天敵ジャズ評論家の「松本温」ずっと、なんて読むんだろうと思っていたら、冒頭の登場人物紹介で「温(おん)」とふりがながある。やっと分かった♪と思っていたら、作中で「あつし」とルビ。どっちだよ(怒)

 で、この本であるが、正直、伊集院大介の推理が光るミステリー、ではなく、ひたすら、矢代俊一のキャラクターを、伊集院大介や金井恭平が語り上げる、そっちのほうがメイン。大方のページ数はこれに費やしている。(推定九割!) 謎解きは一向にすすまず、そもそも大したことなさそうな予感すら漂う。要は矢代俊一賛美に、伊集院大介が駆り出されたかたち。こりゃあ、大介ファンは面白くないだろうなあ。それとね。

 中盤のカネさんのセリフ。
『あいつはもともと金持ちの坊ちゃまだったし、いろんなものを最初っから、持ちすぎてたんだよ。だから、カネも欲しくねえし、野望もない。ただ臨むものはもっともとてつもねえ野望———音楽とひとつになりてえ、っていう野望だけでさ。そのことがわからねえ俗世の人間は、本当は矢代俊一に近づかないほうがいい。たいてい、さいごのさいごにしっぺ返しをくらって、えらく裏切られたような気分になるからな。そのことで、とても怒る、それこそ激怒するやつもいるよ。そういうやつらは、矢代にだまされた、と思う。てめえらの強欲や、表面のうわっつらしか俊を見なかったことは棚にあげてな。————』

 なんとなく、薫サンは自分を重ねてるんだろうな、という気がする。“自分には才能がある。求めるものがある。それは凡俗とは違うんだ、だれも自分を理解してくれない、それは自分が悪いのではなくて、周りが俗だからなんだ”って自分を肯定したい気持ちが一杯、いっぱい、溢れてる。

 私の薫サンへの関心の一つは、「なぜ、それこそ小説家デビュー前から連れ添ってきた良ではなくて、俊一に乗り換えたのか」なんだけど、思えば『朝日のあたる家』で、良は自分が本当の歌手でないことに気づき、そして自分は本当の歌を歌いたい、と自覚して、自分の意志で、茨の道を進むことを選択するわけだ。良は、薫サンが連れ添うには厳しすぎる選択をしてしまったんだな。薫サンにはもはや、良は書けなかったんだろう。だから、薫サンは良をうっちゃって、「天才」って甘い夢を一緒に見続けることができる俊一にお乗り換えしたんだろうと思うよ。
 そう考えてみると、薫サンの描く主人公達はたいてい、溢れる異才を糧に生きてる人達なのかもしれない。だから、良が努力の道を選んだ瞬間に、もはや、良は薫サンに捨てられる運命だったんだろう。私はどっちかっていうと透押しで、良はどうでもいいのだけど、透のためにも、良をよい方向にもって行ってあげたかったと思う。
 
 いずれにせよ、この本は、矢代俊一をよいしょっともういちど表舞台に持ち上げるために、伊集院大介をダシにした。そんな話だと理解しておりますです。


2022年4月21日木曜日

0340 聖なる黒夜 下(角川文庫)

書 名 「聖なる黒夜 下」
著 者 柴田よしき       
出 版 角川書店 2006年10月
文 庫 591ページ
初 読 2022年4月17日
ISBN-10 404342809X
ISBN-13 978-4043428090

 練が愛おしい。とにかく、愛おしい。むねを掻きむしりたくなるくらいに。そして麻生がウザいのだ。なんだよこのナルシストめ!そして、麻生も及川も、麻生の同期の山背も、どいつもこいつも話しすぎだ。いい年した男どもがぺらぺらペラペラと紙が燃えるみたいにしゃべりやがって、「沈黙は金」ってのを知らねえのかよ!・・・・と、つい練ちゃんみたいなべらんめえ調になる。出てくる男どもがどうにもお喋りで、女々しくて、いやなの〜!基本黙って行動する練ちゃん意外、全員ウザい!!!・・・・でも、面白かったです。滅法面白かったです。当然、RIKOシリーズも、私立探偵、も所轄刑事も、園長探偵も読みますとも。

 しゃべりすぎ、ってのは脇に置いておいて、ラストで麻生と及川が協力して練を追う、この疾走感は良い。なんだかんだで、及川も良い奴なんだよなあ。なんで練ちゃんも及川もあんなのに惚れるんだろうなあ。そして、最後に韮崎の復讐を遂げようとする練が、犯人の女に示す優しさで、また、胸が締め付けられる。練の悲劇、不安定さ、情の深さ、能力の高さ、鋭利な感性、極めつけの不運。人間の人生が、崩れるなんてほんのちいさなきっかけがあればよい。そして墜ちた人間であっても、人間である以上、もがいて生きつづけようとし、その足掻きがさらに、周囲に波紋を及ぼさずにはいられない。
 ストーリー的には、偶然に偶然が重なり、出来すぎと感じないでもない。でも良い。練に出会えたのだから。

時系列(全体)
 1985年夏    世田谷事件(練が麻生に逮捕される。)
 1986年4月  練・府中刑務所で服役中
 1986年7月    〃
 1986年10月   覚醒剤中毒者による小学生刺殺事件
 1987年4月  練・仮釈放
 1987年8月  練・武蔵小金井の保護司の元を飛び出して新宿に。
 1988年     田村出所

 1989年2月15日早朝  鉄道自殺を試みた練が韮崎に拾われる。
 1989年2月15日早朝  同日、調子が悪かったため韮崎が乗り捨てた車を運転した部下が飛び
        出してきた赤ん坊(真子)を抱いた母親(望月路子)をはねる。

 1989年5月    韮崎の弁護士が交通事故の示談工作。
 1989年7月    覚醒剤中毒の男に子どもを殺された女が、武藤と韮崎が同席していたところを
        拳銃で襲う事件発生。
 1989年9月    練は韮崎の住まいに居候している。
 1989年9月       北村が殺害される。
 1992年    北村の納骨
 1995年10月     韮崎がホテルで他殺体で発見される。

登場人物(上巻)
麻生龍太郎 本庁捜査一課(殺人課)の警部。妻に逃げられたヤモメ男。
及川純   本庁捜査四課(対暴課)の警部 麻生の大学時代(剣道部)の先輩。
      オシャレで潔癖症のゲイ。
宮島静香  麻生の部下。捜査一課の紅一点。 
山背(山さん)   麻生の部下 、主任。
相川    麻生の部下 
山下    麻生の部下 
有田(キンちゃん) 麻生の部下 
茂田(シゲ) 麻生の部下
榎本一郎  現・町田署捜査二課長。元世田谷署。 
川口孝吉  現・柴又署捜査一課長。麻生の以前の同僚。
 
韮崎誠一  被害者 ヤクザ 関東連合春日組のNo.2。
山内 練  韮崎の恋人、兼 企業舎弟(パートナー) イースト興業社長。
      東工大の元大学院生で修士課程修了間際の頃、婦女暴行と強姦未遂で麻生に
      逮捕された。
      一度は自供したものの、裁判で無罪を主張し、有罪・実刑判決となった。
      その後、底辺を這うような経緯ののち、鉄道自殺しようとしたところを 
      韮崎に助けられる。
長谷川環  練の秘書。
金村皐月(芸名 久遠さつき) 元ジャズシンガー 韮崎の女No.1 
      一時期、韮崎から練を預かっていた。
野添奈美  内科の開業医 韮崎の女No.2
皆川幸子(芸名 篠原ゆき)  元アイドル歌手 韮崎の女No.3
      恋人がいて、韮崎が殺されたホテルで愛人と密会していた。
生田咲子  元アイドル歌手 韮崎の女No.4
      韮崎とホテルにチェックインした女。
江川達也  韮崎の男娼。東中野で囲われていた。

塚原富子  代々木五丁目あたりの下町のおばちゃん。
望月路子  赤ん坊(真子)を韮崎に轢き殺された女性。韮崎に裁判を仕掛けていた。
      夫の死後、保険金を持って行方がしれなくなった。
高山春子  新宿のデパートのブティックの店員。(=望月路子)
須山知美  高山春子が務めるブティックの店長

新藤洋次郎 高安法律事務所弁護士。春日組側

藤浦勝人  練の世田谷事件の際の国選弁護人
香田雛子  練の姉 
田村             練の府中刑務所での同房  武藤組
北村    同上 湯川組若頭(春日組と対立)、稲村芸能オーナー、韮崎に殺された 
伊藤、尾花、井野、宮田、高岡  練の府中刑務所での同房 
諏訪    春日組若頭 組長春日の娘婿

岩下圭吾  練の従兄弟 

登場人物(下巻追加)

神田陽子  北村の娘。准看護師 
黒田百合  ススキノのソープ嬢。江川達也の元ガールフレンド 
井野美雪  新宿署捜査一課の新人刑事 
植田陽介  神崎組のナンバー3
川上    韮崎の子分。
瀬尾良恵  覚醒剤中毒の男に小学生の娘を殺されて、復讐にでた女性。
梶原    警視庁捜査二課の刑事。麻生の同期
小山内槙  麻生の恋人。
槙原要介  瀬尾良恵の娘と一緒に犠牲になった小学生