ラベル 扶桑社 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 扶桑社 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年9月10日金曜日

0291 狼たちの城 (海外文庫) 扶桑社ミステリー

書 名 「狼たちの城」 
原 題 「Unter Wolfen」2019年 
著 者 アレックス・ベール 
翻訳者 小津 薫  
出 版 扶桑社 2021年6月 
文 庫 480ページ 
初 読 2021年9月10日 
読書メーター https://bookmeter.com/books/17991951   
ISBN-10 4594088031 
ISBN-13 978-4594088033
 オーストリアの作家アレックス・ベールによる、ナチス・ドイツもの。ちなみにアレックス・ベールは本名ダニエラ・ラルヒャーという女性作家。さてこの本、面白いはずなのに、と思う反面、物語に入り込めずもどかしい。それは多分、いくらフィクションといえども荒唐無稽に過ぎる展開ゆえ。

 東部(ポーランド)への集団強制移住を宣告されたニュルンベルグのユダヤ人達。病弱な老親、未婚の長男で主人公のイザーク、離婚して幼い2人の子どもを抱える妹の6人家族は、数日後の移送への不安に苛まれている。一家の主として家族の面倒を見なければならないイザークには、今回の東方への移送には、表向き言われていることだけでなくなにかイヤな予感がしてならない。
 一方、ニュルンベルグでユダヤ人絶滅計画に携わっているゲシュタポのユダヤ人問題課長。その男が自宅としていた改築されたニュルンベルグ城内の居室で、愛人の有名女優が殺された。その捜査に、ベルリンから特命を受けてある捜査官が派遣される。
 ゲシュタポの醜聞を狙って事件を起こしたと見做されて検挙されたレジスタンス。この四つが絡み合ってストーリーが展開するのだが。
 とにかく、主人公のユダヤ人青年イザークの巻き込まれ方も、その後の行動も行き当たりばったりで、それがはらはらさせられると言えなくもないが、こういう“はらはら”はあまり面白くないんだよなあ、と。練りに練って計算され尽くして、それでもわずかな計画のブレから発生するスリル、からは格段に落ちる。行き当たりばったりの結果、幸運と敵に運命を委ねすぎだ。「彼らが気付かなければ」というのが多すぎる。
 食事の時に、自家製ハムの有名店でハムやソーセージの料理を選ばず、コーシャにちかい魚を選んでしまう。うっかりユダヤ教の食前の祈りが口から出る。親衛隊員なら必ずあるはずの血液型の入れ墨がないことを見られてしまう。囚人の名前を聞いて明かに童謡する。ゲシュタポ本部で、知り合いのユダヤ人の老女に名前を叫ばれてしまう(!)
 いやあ、これは無理だろ(笑)

 タイトルは、ゲシュタポ高官の住まいに改装されたニュルンベルグ城———事件の舞台と、ナチの根城たるゲシュタポ本部を掛けたのかな、と思うがせっかくの中世の古城ニュルンベルグ城の影が薄くて残念。こちらでの謎解きにもっと力点を置いたらもう少し地に足のついた面白さになったのではないかな。ミステリーと歴史サスペンスとユダヤ人問題、の三兎を追って全部逃げてった感じだ。

 オーストリアが、ナチス・ドイツに併合された現代史と自国のユダヤ人問題とどのように向き合っているのかに興味があるので、正直、ドイツよりオーストリアのユダヤ人問題をテーマに書いてくれればよかったのに、とも思った。

 フィクションはフィクションであるべき、とは思うものの、600万人が無造作に虐殺された現実は80年たった今でも痛切に重い。作者のスタンスは那辺にあるのか、とか気になってしまうのもストーリーに没入できない理由の一つ。比較してもしょうがないが、良くも悪くもダニエル・シルヴァくらい歴史問題と自分の政治的スタンスが明確だと、読者も読みやすいのだけど。

追伸・・・310ページ8行目に脱字一字あり。

2021年9月5日日曜日

0290 ベイジルの戦争 (海外文庫) 扶桑社ミステリー

書 名 「ベイジルの戦争」 
原 題 「Basil's War」2021年
著 者 スティーヴン・ハンター 
翻訳者 公手 成幸(くで しげゆき) 
出 版 扶桑社 2021年8月 
文 庫 304ページ 
初 読 2021年9月4日 
読書メーター https://bookmeter.com/books/18304756   
ISBN-10 4594088228 
ISBN-13 978-4594088224

 「巨匠ハンターが描く傑作エスピオナージュ」という帯の謳い文句に大いに心惹かれたのだが。
 スティーブン・ハンターの第二次大戦もの、しかもエスピオナージュということでかなり期待して臨んだ—————が、なんというか大味。 読み始めての印象は、『エニグマ奇襲指令』。イギリス、フランス、ドイツがドイツ占領下のフランス国内でドタバタやるとなると、こういうテイストになってしまうのだろうか?
 ナチ嫌いのアプヴェーアの大尉マハトと部下のアベルのやり取りはそれなりに楽しい。上司の大尉を“ディディ”と愛称でよぶアベルは結構な皮肉屋だが、のびのびとした育ちの良さを感じる。
 途中から出てくる単語「ミサゴ(OSPREY)」がなんなのか、よく解らないままに、話は進む。極秘の諜報網を指すのかか、もしくはスパイのコードネームか。物語全体としては、ベイジルが従事したとある稀覯本(というがその原稿の風変わりな複製)の写しの入手、という作戦自体がある意味読者に対する陽動のようなもので、最終的には件のオスプレイの正体に迫っていくわけだが、明確にだれがどうと示されたわけではなく、私の頭が悪いのか、全体がなんとなく曖昧模糊としているような、いないような。
 たとえば、私が大好きなハリイ・マクシムのように、主人公ベイジルの為人と楽しむ本というほどには主人公が魅力に溢れているわけでもなく、どちらかというと少年冒険小説の読後感。ただただあの時代への憧憬のようなものを感じる。ブリーフィングと実際の作戦行動のシーンを交互に差し挟むのも、ちょっと技巧に走りすぎ、かなあ。美人女優のラストの夫とのホテルのくだりが必要だったのか、よくわからん。私が粋というものを解していないからだろうか? 読者をたのしませてやろう!という作者の気持ちは良くわかった。ちなみに解説によれば、作者スティーブン・ハンターはベイジルを多いに楽しまれたようだ。
 まあ、たまにはハズレもあるさ、な一冊でした。
 それと、脱字を一箇所発見。119ページ7行目。


2021年5月15日土曜日

0270 摩天楼のサファリ(扶桑社ミステリー)

書 名 「摩天楼のサファリ」 
原 題 「Jungle of Steel and Stone」1988年 
著 者 ジョージ・C・チェスブロ 
翻訳者 雨沢  泰 
出 版 扶桑社 2006年12月 
初 読 2021年5月15日 
文 庫 345ページ 
ISBN-10 4594052959 
ISBN-13 978-4594052959
 なんとなく本棚から呼ばれて、着手。2018年に「EQMM90年代ベスト・ミステリー 夜汽車はバビロンへ」 を読んだときに、気に入って、入手してあったチェスブロ。2年半ほどねかして、程良く熟成気味である。
 日本ではあまり紹介されていない作家なので、Amazonでも古本がごく安い値付けで、有り難いやら勿体ないやら。
 主人公は、元CIA工作員で陸軍特殊部隊だった、という異色の画家で、コードネームは大天使(アーク・エンジェル)って、何の符丁かな? もう一人の大天使(ガブリエル)も気になるが、あちらの新刊はあと1年後。

 さて、こちらの大天使殿は、東南アジアで戦い抜いた歴戦の兵士。CIA上官の奸計により掩護していたラオスの部族を見殺しにされて反発した結果、逃亡兵として上官から全ての経歴を剥奪され、不名誉除隊となる。この上官は現CIA作戦本部長となっており、ヴェイルに対する殺害指令は現在も取り消されていないものの、ヴェイルの利用価値のため、執行猶予となっている。現在ヴェイルは意識不明・植物状態の恋人をラングレーの医療施設に預けており、いわば彼女の命と自分の身柄と自由を交換した形。
 この男、先天的な脳の障害から他人の夢を渡り歩く特殊能力(超常能力)がある、というのが、この本の設定の特異なところ。
 鮮明に記憶した自分の夢をモチーフに描いた絵が認められて、マンハッタンで新鋭画家として生活している。・・・・これは、グレイマンとガブリエルの源流か? なにはともあれ、ヴェイルがクールだけど情熱を秘めた優しい正義漢なのだ。こう言ってはなんだが、コートランド・ジェントリーみたいにずっこけてない。(まあ、ヤツはそこが可愛いいんだけどな。)滅法良い男である。

 さて、ストーリーであるが。
 アフリカ、カラハリ砂漠で生きるブッシュマンの一部族、ク・ング族の部族の神像(木造彫刻)が部族の野営地から盗み出され、ブラックマーケットを通じてニューヨークの美術品オークションに出品された。
 落札したのが、ヴェイルのパトロンでもあるロシア人画廊主。この画廊に展示されていた木像を、ニューヨークまでやって来たク・ング族の若者が警備員を殺して奪い、逃走する。
それを、ヴェイルが目撃して、否応なく若者の捜索に乗り出すことになり。

 なにしろ、登場からいきなり格好よいのだ。こりゃあ、ヴェイルに惚れるねえ。1988年の作品なので、これが2006年にもなって日本で翻訳出版されたのは奇跡にも近い出来事である。 作品世界のテイストはホラーファンタジーとアクション&アドベンチャーのミックス、やや非現実より。コミカライズするなら篠原烏童さんでお願いしたい。『純白の血』とか、『ファサード』のイメージがぴったりだ。ヴェイルの設定を造り込み過ぎてるのが非現実に寄る原因だけど、それはいい。だって格好良いから。

 問題はレイナで、こういう一昔前のハードボイルドにありがちな、扱いにくい子猫的な女は好みではない。過去のトラウマ告白した次の瞬間に男をベットに誘うこのありえなさ! ここぞってときに作戦行動の邪魔をして、行動計画に無自覚にダメージを与えるヤツ。それが女だから許容されるっていうのが、ねえ。まあ、時代的には無理からぬのだろうか?
 なにはともあれ、ヴェイルが格好良い。それに尽きる。


2019年10月3日木曜日

0185−86 エンジェルズ・フライト 上・下

書 名 「エンジェルズ・フライト 上」「エンジェルズ・フライト 下」 
原 題 「Angels Flight」1999年 
著 者 マイクル・コナリー
翻訳者 古沢嘉通 
出 版 扶桑社 (2006/1/1) 
初 読 2019/10/03 
 ボッシュは、内心ではタムに関するエドガーの結論に異論をいだいていたものの、・・・おいボッシュ!貴様ァ!
 アクは強けれど私の中では正義の人の範疇だったアーヴィングがついに暗黒面に落ちるか。
 一方ずっと反目しあってたチャスティン、彼は意外に良い奴なのか?
 これは良い演出だ。これから絆が生まれるのかやっぱりいけ好かない奴のままになるのか。わくわく。そして、エレノアとの破局はやっ!
 現場のバス停にはイーストウッド主演「我が心臓の痛み」の広告。
 「ほら、ちっともイーストウッドに似てないじゃない」とはキズの弁。
 それ言わせるのか!それ書いちゃうのかww やるなぁコナリー。 

 それと、登場人物一覧は結構なネタバレ感なので見ないほうが良い。

 下巻になって、めっきり出番が少なくなってどうした?と思っていたヤツが、まさか!な展開となる。今回は「皆殺し」の二つ名をコナリーに献上したい。そして、暗黒面に落ちるかと思ったアーヴィングはまだ、崖っぷちに屹立してる。このあたりが大物と小物のちがいかねえ。なんにせよ面白かった。やっぱりボッシュはいいねえ。

2019年9月28日土曜日

0183−84 わが心臓の痛み 上・下

書 名 「わが心臓の痛み 上」「わが心臓の痛み 下」
原 題 「Blood Work」1998年 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 (2002/11/1) 
初 読 2019/09/28 


 大分前に読み始めてから放置してた。
 マッケイレブ、好きなキャラなのになんでのめり込めないんだろう?まさかこの本がマイクル・コナリー読破計画の前半の峠になろうとは。
 例によって女性キャラがいけ好かないからか。映画を先に見ていたせいか、表紙への違和感はあまり無い。ただし読書中は表紙の男を10歳は若返えらせ(大病・術後の老け込みを差し引き)した人物像(なぜか若い頃のイーストウッドの顔にはならない) で。
 FBI捜査官のテリー・マッケイレブ。心身をすり減らすような仕事に身を置き、心臓発作で倒れてリタイア。心臓移植しか助かる道はなく、珍しい血液型故にそれも難しいと思われていた。だがしかし、運良く適合するドナーが現れ、彼は病院の外に戻ってくることができた。
 しかし、そのドナーの姉が現れ、実はドナーは犯罪により殺されていたことが判り、しかも、その事件を解決してほしいとの願いに、マッケイレブは困惑するが。

 下巻に入ってからの動きと展開がスピーディー。どんどん引き込まれる。だが、献血に気づくシーンがちょっと強引かなと思う。コーデルの献血手帳だかカードだかで血液型に気づく、くらいのスモールステップが入った方が良かった。
 病院のPCのスクリーンセーバーがフライングトースターで、懐かしさのあまりフライングトースターの歌が脳裏で止まらなくなる。
「マイクル・ヘイラー・ジュニア」が名前だけ登場。
 そして最高潮に達した時にマッケイレブの口から飛び出す「おわかりか」。私の中の何かが昇天した・・・

 全般的に、マッケイレブの感に頼りすぎだよなあ。せっかくのプロファイラーなんだから、もうちょっと理詰めでも良かったのに。特にラストの対決と誘拐された2人の救出が・・・
 カノーリを忘れるな、のオチが付いていないような気がするんだが、あれは何だったんだろう。

 ああ、例によって文句たれてますが、面白かったです。
 特に下巻の疾走感が良いです。ウィンストンがブレないのがまた、いい。これから先出てくる事あるのだろうか?

2018年12月20日木曜日

0157−58 トランク・ミュージック 上・下

書 名 「トランク・ミュージック 上」「トランク・ミュージック 下」 
原 題 「Trunk Music」1997年 
著 者 マイクル・コナリー 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 (1998/6/1) 
初 読 2018/12/20 


 戻ってきたボッシュ。しかし、彼の女運の悪さがにじみ出るようなこの巻。
 有能な新上司(女性)、有能な新部下(女性)に恵まれ、嬉しくなったのもつかの間、悪運としかいいようのないかの女が再登場。なんでこんなのに未練抱いてるンだよ〜。あんたはちっとも悪くないぞ。なんだろ、世の女の不幸は全部自分のせい、みたいな腐れたロマンチシズムを感じるぞ。目を覚ませ!その女に近寄るな!

 なんていってもしょうがないか。なにしろ、今月発売の最新刊ではマディが大学生になってるんだからな〜。最新巻読みたいのをぐっとこらえて、刊行順。

 ボッシュは家を建て直してウッドローウィルソン・ドライブに戻っている。カーウェンガ・パス、マルホランドドライブなんて地名や道路名に血が騒ぐ。グーグルのストリートビューでウッドローウィルソン・ドライブを走って、ボッシュの家の場所に当たりをつける。(ついでに、コールの家も探してみる。)
 ハリウッド・ボウルから聞こえてくる音楽は、ボッシュの幼少時の思い出を喚起 する。
 それにしても、今回の殺人現場は、ボッシュの家から車で15分とかかるまい。殺人多発地帯である。

 だが、一番の事件は メイクラブがついに「愛を交わした」に進化したことだ!

 それにしても、いや〜今回もまた波乱万丈な事で。今回も失職すれすれでひやひや。これが自分の身に起こったら絶対鬱になる。やっぱりハリーはタフだ。
 後半、筋が込み入ってきてだんだん自分が理解できているのか分からなくなってきた。FBIリンデルは良い味出してる。そしてエレノア。だんだん良い女に思えてきた自分が、なんだか悔しい。いーや。あの女はダメなやつだ。私は騙されないぞ!

《追伸》 「ナイトホークスの複製画が欲しいのだけと壁と金がないの(T ^ T)

2018年12月14日金曜日

0155−56 ザ・ポエット 上・下

「ザ・ポエット 上」書 名 「ザ・ポエット 下」 
原 題 「THE POET 」1996年 
著 者 マイクル・コナリー 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 (1997/10/1) 
初 読 2018/12/14 
 

マイクル・コナリー完全制覇計画 前半の壁。ここを超えないと先に進めない。
何しろコナリーは刊行順!がお約束。

 殺人事件を追う刑事であった双子の兄が死んだ。本当に自殺なのか?兄を失った新聞記者ジャック・マカヴォイが主人公のノンシリーズもの、とはいえレイチェルも登場し、何しろ犯人はポエットだし。上巻から登場している変質殺人者が犯人のわけなかろう。どこにいるんだ、真犯人。
 だがしかし。
 くぉんのクソ馬鹿野郎があああ!とジャックのスタンドプレーに激怒。とにかく主人公ジャックがどうにもいけ好かないが、きっとコナリーもいけ好かれる主人公を書こうと考えたわけじゃなかろうから、致し方ない。小児性愛者によると見られるばらばら殺人事件とその周辺で起こる警察官の「自殺」はどちらが主でどちらが従なのか。犯人は同じか別々か。怪しい登場人物は怪しすぎるのではなから除外。真犯人ポエットはだれだろう?

 忘れたと思っていた「メイクラブ」に「うんにゃ」も登場。こちらもいい加減にせい! 
 それにしてもいつも思うのだが、どうしてコナリー作品のヒロインはこうも魅力的で無いのだろう?いっそのこと、女なんて出さずに男臭くやればいいのに。

2018年11月26日月曜日

0153 EQMM90年代ベスト・ミステリー 双生児

書 名 「EQMM90年代ベスト・ミステリー 双生児」 
出 版 扶桑社 (2000/9/1) 
初 読 2018/11/26 

1ダヴィデを探して ひとつ聞くがね。それは難しい問題なのかね?マッドよ? 

2 双生児 兄はADHDタイプ、弟はアスペルガータイプかな、と思うた。最後まで皮肉。 

3金儲けの上手い奴は頭が良いんだと、気づけないところが所詮は・・・ 

4ヒコーキ事故の話。短編らしく、捻りはない。捻れているのは航跡だけだな。 

5動いているハーバード 流石のランキン、面白い! リーバスの続きを読まなくては。

6ヒマラヤ杉の野人 ダグ・アリン すっごく良かった!読み応え抜群。これは、他の著作も探さなきゃ

7善行 お母ちゃん・・・ 

8 つぎはお前だ この余韻はたまらない。 

10クリスマスの正義 
良い話ダナー。クリスマスの誰かを幸せにしたくなる、よくわからない空気感がふんだんに。 ラスト1話でなんだか良い話を聞かされたような気にさせられて、若干面白くない気がするのは私がひねくれているからだろうか。

2018年10月27日土曜日

0146 EQMM90年代ベスト・ミステリー 夜汽車はバビロンへ

書 名 「EQMM90年代ベスト・ミステリー 夜汽車はバビロンへ」 
出 版 扶桑社 (2000/9/1) 
初 読 2018/10/27 

 レズニック&グラビアンスキ!いい!も〜、色男+いい男+ネコ‘sって最高の組み合わせじゃまいか。短編でも長編読んだくらいのインパクトある。紹介してくれた読み友さんありがとう!

 文庫タイトルになってるブラッドベリの「夜汽車はバビロンへ」は主人公がジタバタしてるけどどうもパッとしない。あとヴァクスの短編は主人公が悪すぎで胸くそ悪いぞ。ラストの「ルミナリア〜」は、ばーさんの平穏な生活がどうなってしまうのか気が気ではなかったが、いやはや。年寄り怖い。

 〈各短編にコメント〉
1 ホールインツー 短編読んでるのを忘れてドキドキしてたら一瞬で終わった。 

2 引きまわし 悪辣なやり口が胸糞だ!

3 銀幕のスター 夢想の世界でフワフワしてるので気が気ではなかったが。そうだよね、女ってこういう風に強くなれる生き物。 

4 名もなき墓 まがう事なきハードボイルド!ヴェイル格好いいぜ。 長編が気になる。 

5 衣装 ・・・すごい面白かった。だけどこれもミステリなのかな?

6石の家の悲劇 この時代だからこその作品。

7追憶 〈追憶〉と名付けられた宝石と人間模様。追憶は美しいか切ないと相場が決まってるが、必ずしも真実ではない。自分に都合のよい過去の思いでにとらわれるよりは前を向け、と若者を諭すジャーナリストの女教授が気持ち良い。

8この葬儀取りやめ サイコーに面白い。レースに出場する犬が中毒しないことを祈る。 

9キリストの涙 由緒正しい冒険譚。多分著者の小説のスピンアウトだと思うが、邦訳はされてないっぽい。残念。

・・・・・・2年前に読んだアンソロジーだが、コメントを読んでもさっぱり内容が思い出せない。私の記憶って。。。。

2018年6月15日金曜日

0123 インターンズ・ハンドブック

書 名 「インターンズ・ハンドブック」 
著 者 シェイン・クーン 
翻訳者  高里 ひろ 
出 版 扶桑社 2018年4月 
初 読 2018/06/15 

 インターンを装って企業に入り込み、企業トップを暗殺する暗殺者。それを業務とするHR社の社員にしてトップエリート(つまり暗殺者)。25歳の引退を前にして、後進に業務を手ほどきする手引書を作成する、という体裁で事態は始まる。設定が面白い。スピードを付けて一気読み推奨。
 淡々とでも陶酔気味に自分語りをする殺し屋。
 孤児だったのを引き取られ、殺し屋とするべく育てられる。そして、その道のトップエリートに。殺しだけではない。一流企業に入り込むためのスキルだって必要なのだ。そうはいっても、これが手引書で終わるわけがない。

 凄腕のくせに次から次へと襲撃されて殴られ折られ縛られて。。。コイツホントに大丈夫?と思うけどさ。

 サクサクと話が進むのだが、ディーヴァーを読み慣れたこの脳は、いつどんでん返しされるか気が気では無い。
 頭のなかを、引っかけパターンが駆け巡る。
 実はアリスはターゲットを誤認させるための壮大な罠とか?
 FBIの メールヘッドとかいかにも怪しいし、いや実は海兵隊やらマフィアもボブが放った「殺し屋を殺せ」的な?
 読んでいて気が休まらない(笑笑)。
 そして終盤!そうきたか!そしてそう行くか!!
 もう、どーか読んで下さい!謹呈
(突っ込みどころ満載なんだけど、許してやるぜ!って気になりまっす。そして、シェイン・クーンの新刊は、創元推理文庫から出ている『謀略空港』 これも読まねばなるまいよ。)

2017年11月25日土曜日

0071−2 ラスト・コヨーテ 上・下

書 名 「ラスト・コヨーテ 上」「ラスト・コヨーテ 下」 
原 題 「The Last Coyote」1995年 
著 者 マイクル・コナリー 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 1996年6月 
初 読 2017/11/25
【コナリー完全制覇計画No.4】
 ボッシュ、嫌いな上司パウンズをぶん殴って強制休職処分と心理カウンセリングを義務付けられてる。ずっと一匹狼で何とかやってきていたのに、シルヴィアに人生を浸食されたあとポイされて、わびしい中年男になりかけているようだ。半壊した家にこだわるのは自分の内的世界の崩壊をこれ以上進めない為だな。だからあの女はやめておけ、と。。。。
    カウンセリングに臨んだボッシュは青少年養護施設に不本意に収容された少年そのものの「不服従」を貫き。ボッシュは強権的に自分に踏み込まれるのが大嫌いなのだろう(経験的に)。もっともそんなこと好きな人間はいないだろうが、大抵の人は長い物には巻かれるもの。
 「みんなまやかしだ。」ハリー少年の心の声が、40歳を過ぎたボッシュの口から発せられているような気がする。パウンズへの嫌がらせも兼ねてほぼ違法と思われる行為を繰り返すんで読んでいる方がハラハラ。バレたらクビじゃすまなかろうに。齢は40半ばでも、やっぱり少年のような純なハリーにドキドキする。
 そしてついに来た。好感度の高いヒロイン!
 自己愛たっぷりのうざさも正論吐きの嘘くささもないさっぱり味だ。これはイケるかもしれない。速攻で恋に落ちるボッシュ、なんたる恋愛体質(笑)。いくら主人公とは言えヒロインは必需品じゃあないだろうに。とはいえ今度こそ上手くいくといいね、と願わずにはいられない。

 さて、脱線モードのフロリダをよそに、ロスでは大変なことが起きていた。奴が殺されてしまった!?まさか俺のせいか?ってか俺が容疑者かよ!ポッケの中には持っていてはいけない黄金のアイテム。ボッシュ危機一髪、というか完全に自業自得。
 辛抱強くボッシュをかばうアーヴィングのおかげで、なんとか危機を切り抜け、さらに母を殺した犯人を追うボッシュ。例によって最後のひねりがあって、その真相は切ない。
 アーヴィングの気持ちがいまいち計り知れない。ボッシュへの愛情も感じるし、本人の意図などまったく関わりなく撚り合わされてしまった人間関係を持て余しているようにも感じる。この二人の関係がこのまま進めば良いのに、と思う。(そうはならないと知っているだけにちと切ない。)
  ハリー少年には、母マージョリーの死後、少なくとも二人の力のある男(生物学上の父と社会的な父になり損ねた男)がいたはずなのに、まったく顧みられなかったのだ。彼らの一人だけでも少し手をさしのべてくれていたら、彼の10代はまったく違ったものになったかもしれない。もっともそれが幸せにつながるかどうかは別問題だし、そうだったら、そもそもボッシュシリーズの主人公は存在しなくなっただろうが。

【ヘンな台詞シリーズ】 「おわかりか」は相変わらずの乱用ぶり。もう気にするのはやめようと思いつつ、気になる〜。「うんにゃ」もやっぱり気になる。マッキトリックとボッシュが言い感じに語り合ってるのに「うんにゃ」!や〜め〜れ〜〜〜! 

【ボッシュ考その1/愛を知る男】
 本書の解説はちと理解が浅いんじゃないか。ということで、ここでボッシュ考。
 ボッシュを「愛情を知らずに育った」と説明するのは相当な見当違い。ボッシュの不幸は愛を知らないことにあるのではなく、10歳までの愛情豊かな生活を、突然公権力が破壊したことにある。彼の母はとても慎重に、愛情深く息子を育てていた。10歳までのハリーの記憶は愛情と幸福感に満ちている。発達心理の点からすれば、幼少時の愛着関係が築かれているということはその人の精神の安定にとって極めて重要だ。ボッシュが孤独であっても他人に依存せずに生きていけるのは、彼が愛を知っているからだ。

【ボッシュ考その2/組織人】
 組織になじめない男、と決めつけるのもちょっと違うと思う。ボッシュは10歳以降ずっと集団の中で生きている。集団の中での身の処し方にはある意味長けている。
 例えばポリスアカデミー時代、パーカーセンターの廊下に大胆ないたずらを仕掛けて同期のヒーローになる。集団の中で自分の立場を確保することが上手い。
 『ブラック・ハート』では、アーヴィングが設置した特捜部の中で、自然にリーダーとして振る舞う。市警では仕事のできる現場の人間から信頼されている。
 彼の組織の中にあって組織の力学に抵抗する頑なさや攻撃性は、少年時代に彼の人生の理不尽な支配者であった公権力への抵抗の延長戦だ。ボッシュは一生を現場で生きていくと思い定めた組織人として、組織を腐らす人間の欲望や、組織を硬直させる教条主義を嫌悪する。彼は組織の権力に抵抗する一匹狼ではあるが、そこを取り上げて組織に馴染めないと定義するのはちょっと違う。むしろ私は同じ組織人として彼の生き様を見習いたくすらあるのだけど。(ただし違法行為を除く!)

  【ボッシュ考その3/マザコン】 ボッシュが恋愛体質なのは、孤独故の依存ではなくて、単にマザコンなんだと思う。きっとお母さんと二人で幸せだったころの心地を無意識に求めてるんだろうなあ。

2017年11月13日月曜日

0070 ブラック・ハート 上・下

書 名 「ブラック・ハート 上」「ブラック・ハート 下」
原 題 「The Concrete Blonde」1994年
著 者 マイクル・コナリー
翻訳者 古沢 嘉通
出 版 扶桑社 1994年5月
初 読 2017/11/13

【コナリー完全制覇計画No.3】
 裁判と事件捜査の同時進行。4年前ボッシュが市警本部から更迭される原因となったドールメーカー事件と、その模倣犯の仕業とおぼしき殺人。新たな殺人はボッシュを被告とする裁判に絡みながら過去の事件に新たな局面をもたらしていく。
 陪審員制度は被告原告双方が希う『正義』(真実とは異なる)をどちらか一方のみに与える不完全な仕組みでしかなく、その仕組みを巧みに操った方が『正義』を手に入れる。そんな法廷闘争で無傷ではいられないものの、ボッシュは自分が求める“殺人被害者の救済”という正義をひたすら追いかける。 
 社会の底辺で生きる女達にとことん寄り添っていくボッシュの揺るぎなさ。なぜならそれがボッシュにとって唯一の正義だから。そんなボッシュの辛い過去まで報道陣や傍聴人の前で暴きたてるショーアップされた陪審員裁判。

 前作で恋人になったシルヴィアは、ボッシュの心の奥底まで理解したいと要求するが、一方でボッシュが決して目を背けまいと自らに命じている殺人事件の犠牲者達の写真からは目を背ける。それはボッシュから目を背けるのと同じなのに。自分が理解し得ないことを理解しないところはエレノアに通じるものがあるか。なんかこういう女は嫌いだ。
「うんにゃ」も「おわかりか」もいいんだよ。それが「誰か」の口癖なら。でもいろんな登場人物がのべつまくなしに、「うんにゃ」とか「おわかり」とか言ってしまうとヘンだよね? 

 今回はボッシュ、事件と裁判の両方に苛まれてその合間にはシルヴィアの家に参じるため、家でゆっくりジャズを聴く暇もなく、BGMのジャズ要素は乏しかった。

2017年11月8日水曜日

0068 ブラック・アイス





書 名 「ブラック・アイス」 
原 題 「The Black Ice」1993年 
著 者 マイクル・コナリー 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 1994年5月 
初 読 2017/11/08 

【コナリー完全制覇計画No.2】
 のっけからいきなり死んだ同僚の未亡人に恋するボッシュ。おい!ほんとに気の(手の)早い男だな。だからといって、そこでメイクラブはいくらなんでも非常識だろう?ちょっと見損なっちゃうぞ。
 今回はメキシコの麻薬王が相手なだけあってか、かなり捜査手法が荒っぽい。というか完全に違法捜査、越権。警察の範疇を超えているんじゃ?
 前話で私刑はお呼びじゃないってレビュー書いたのに、早まったかな?
 一話目から引き続きどうにも辛い翻訳。「こしらえた」「メイクラブ」「日曜たんび」
 サンドイッチも、殺人事件調書も、捜査メモも全部「こしらえる」の一語で片付けるのってどうよ。日本語表現はもっと多彩でいいと思うんだけどな。それにメイクラブ!多彩以前だ。 アメリカって個人主義の文化だという先入観があったが、この本読む限り組織の同調圧力が強い。腐りかけの組織の中でなんとか腐らずに泳いでいく一匹狼ボッシュ。とりあえず応援しておこう。あんたがどれほど恋愛体質な男であったとしても、だ。

 「この男のことがほとほとよくわかった。パウンズはもはやお巡りではない。 役人なんだ。くずだ。犯罪を、流れる血を、人々のこうむる被害を、記録簿にとどめるための統計数字としてしか見ていない。そして年末に、その記録簿が、パウンズにどのぐらいよくやったかを告げるのだ。人間が告げるのではない。心のなかから出てくる声が告げるのでは無い。それは市警の多くを毒し,街から、そこの住民から遠ざけている非人間的な傲慢さだった。」

◇引用/チャンドラー『長いお別れ』、ヘッセ『荒野のおおかみ』
◇音楽/コルトレーン、フランク・モーガン

《メモ》
p.67 「ロックウェルの絵に描かれた警官のような気になったのだ。まるで自分が大きな影響をあたえたかのような気分に。」


2017年10月31日火曜日

0066ー7 ナイトホークス 上・下

書 名 「ナイトホークス 上」「ナイトホークス 下」 
原 題 「The Black Echo」1992年 
著 者 マイクル・コナリー 
翻訳者 古沢 嘉通 
出 版 扶桑社 1992年10月 
初 読 2017/10/31
【コナリー完全制覇計画No.1】 処女作とは思えない玄人っぽい緻密な作り込みが素晴らしい。もっと草臥れた感じの尖った刑事を予想していたが、ボッシュのイメージにブルース・スプリングスティーンを拝借したら、これがなかなか合っている(自画自賛)。読み始める前に期待値を高めすぎていたので、実際読んでみたらそれほど惹かれなかったらどうしよう、シリーズ全部揃え終わってるのに!と警戒していたが、杞憂だった。 
 自分の周囲の悪意や害意を知りつつもそれに惑わされず、淡々と一人で捜査を進めていく、一匹狼である。
 シャーキーの取り調べのシーンが良い。娼婦や非行少年に向ける視線が優しい。
 過去の傷、わずかばかりの楽しい記憶、つい愛情を求めてしまう心寂しさ。先に読んだクレイスのコールとどうしても比べてしまうが、二人ともマルホランドの丘陵の、市街を見下ろす丘の上に周囲の豪邸とは似つかわしくない慎ましい家を構えていて、そこに家があることを大切にしている。コールが自分の家を手を掛けて整えているのは、それが子供時代についぞ与えられることのなかった家庭の象徴だからだと思うが、ボッシュにとってもやはり、ホームは憧憬の表れなのだろうと思う。

  ハラハラするようなスリルと謎解き、ではなく染みいるようなボッシュの存在感と孤独感が、じつに良い。
 「ということは、あなたのことを考え違いしていたのね」 
「ドールメイカー事件のことを言っているのならそのとおりだ。きみは俺について考えちがいをしていた」ボッシュはその生い立ちから他人に対する期待値が非常に低い。 それが周囲をイライラさせたり組織から浮く原因なんだけど、人が本質的に孤独であることを知っていて、それを受け入れているが故の彼の「孤独感」は実は一つの理想だと感じるところがある。
 自分が見舞われた理不尽を「不正」と感じ、それに私刑を与えることを決意したエレノアは、殺人犯を射殺したボッシュを自分と同類の、自分の中の正義を私刑に託す人間だと考え、もしくはそうであることを願ったのだろう。なぜなら、自分一人きりなのは孤独だから。
  彼女は自分の兄の為に憤っていたのではなく、自分の中の兄という偶像を破壊されたことを自分の為に怒っている。そして、ボッシュに対してもまた、自分の偶像を投げかけている。彼女の孤独とボッシュの孤独は、本質的にまったく別物なんだけど、ボッシュはそこに気づけてるかなあ。まだ第1作目だけど、ボッシュ、完全にツボったので、これから二十何年分の彼の人生とおつきあい開始(笑)。
 【蛇足ながら】
  翻訳のヘンな平仮名には最初ちょっと閉口した。 “蛍光灯をべつにすると”、"雑草の中にたおし”、“なかにはいっていない”・・・・なぜ、ひらがな??と最初しばらく、イラっとしました(笑)

2017年8月19日土曜日

0049 サンセット大通りの疑惑 探偵エルヴィス・コール

書 名 「サンセット大通りの疑惑 探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「Sunset Express」1997年 
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 高橋玖美子 
出 版 扶桑社 2000年3月
初 読 2017/08/19

 C&P6作目。
 純なコールが迂闊にも強者の悪意に騙される。
 それだけだと読むのがツラいが、ルーシーとの恋が絡んでコールが騙されるのも止むなしと思わされるところが上手い。コールの恋の為なら子守も辞さないパイク超万能!
 利用された事に気づいた後半の巻返しは爽快だが「そこから派生したあらゆることが、自分の人生にこれほど長く尾を引く深刻な打撃を与えようとは思いもしなかった」というプロローグを読み返すにつれ、グリーンを撃ち殺したくなるのはパイクだけじゃない。
 その後のコールの災難を読んだ後となっては奴を締め殺してやりたい。

 クレイス祭りも終盤。残すところは『破壊天使』と『ホステージ』、コール&パイクはこれで邦訳は読み切った。本当はここからの4作をじっくり邦訳で読みたいのに。このシリーズはここからシリアスモードに突入するんだよ!
 『天使の護衛』の後のパイク主役シリーズもなかなか良さそうなのに。ああ、残念。この巻には、思わず励まされるような良い台詞が沢山あった。
 P「たぶん。だが、不都合があれば俺たちが正す」 
 ギブス「それでも、連中はまちがってて、われわれは正しい。その過程で銃弾を浴びなきゃならないのなら、浴びるまでだ」
 「大事なのは司法制度の悪い部分じゃなくて、いい部分だ。悪い部分は正していかなきゃならない」
 「あなたが正義と呼びたいものをわたしたちに与えてくれるのは、人間だけだわ」

 ここのところ、ほぼ仕事から逃避するように読書にのめり込んでいたが、最後の最後でコールに元気づけられてしまった。しゃーない。私も頑張るかあ。(ちなみに司法とは関係ない) 
 ついでに守護神パイクの恋愛指南
 「こいつが寂しがるだろう」(コールを見ながら、ルイジアナに戻るルーシーへ)
 「頭がどうかしてるぞ。最後の夜なのにこんな話をしている場合か」

2017年7月31日月曜日

0046 死者の河を渉る―探偵エルヴィス・コール

書 名 「死者の河を渉る」
原 題 「Voodoo River」1995年
著 者  ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 扶桑社 2000年1月 

この巻、最初からコールは人恋しさ全開で、なんだか子犬のようだ。 今回は有名女優の実親捜しの依頼。依頼人から紹介されたルイジアナの女性弁護士ルーシーにコールは恋をする。コールの胸のときめきが伝染してこっちまで胸が苦しくなる。ルーシーと8歳の一人息子の輪に加わるコールが幸せのお裾分けをもらったよう。 一方シリーズ当初はベトナム帰りの社会不適応者にしか見えなかったパイクであるが、もはや超人レベル。 コールが空港で、ルーシーを事件捜査のパートナーとして紹介しただけで、コールの恋人だと理解してルーシーの手にキスって、一体どんなセンサーを搭載してるの(笑)、てか、女性の手にキスをするような機能を完備していたとは!事件そのものは、36年前の殺人に端を発し、現在の不法移民に関わる犯罪がからみ、暗い河が象徴する社会の暗部、不法移民に関わる裏組織との取引やハードな銃撃戦など、息つく暇もなく読み応えがある。 自分に課した依頼人への忠誠と、社会悪に対する正義感が対立して、葛藤するコールの誠実さが好きだ。その悩めるコールを気分転換させるために運動に誘って、話相手をするパイクの言葉が、これまた良い。「愛情は、差し出された時に拒絶する余裕があるほど、ざらに転がっているものじゃない。」パイク語録に追加しておこう。

2017年7月29日土曜日

0045 ぬきさしならない依頼―ロスの探偵エルヴィス・コール

書 名 「ぬきさしならない依頼―ロスの探偵エルヴィス・コール」 
原 題 「FREE FALL」1993年 
著 者 ロバート・クレイス 
翻訳者 高橋 恭美子 
出 版 扶桑社 1996年10月

 いよいよ筆致鮮やかなC&Pシリーズ第四作。
 今度は恋人の素行調査の依頼。
 ただの浮気かと思いきや事態はどんどん深刻化、事は警官による黒人青年暴行死事件の真相へと発展。1992年のロス暴動を下敷きに1993年にこの本を書いたクレイスもタフだと思う。
 依頼人のジェニファーに個人的にかなりむかつく。
 純粋なのかもしれんが身勝手すぎるだろ。人を巻き込んでおいてそれか?1,2発張り倒したい。コールは女性に優しいからそんなことは絶対にしないけどね。
 今回は殺人の濡れ衣を着せられ、逮捕→拘留→脱走→拳銃にモノを言わせたのち、司法取引の流れ。パイクが相変わらず格好よい。
 C「付けられている」
 P「撃ち殺せ」
 単純すっきり。
 「正直に答えてくれ、ルー。わたしの容疑を聞いたとき、本当にやったと思ったか」
 ポイトラスは首を横に振った。「思わなかった。グリッグスもだ」

 聞かずにはいられなかったコールの心情がやいかに。
 終盤の特殊部隊の軍事行動ばりの悪党掃討作戦は著者のファンサービスか? 元海兵隊というだけで連帯できる単純野郎どもめ。なんだかうらやましいぞ。

2017年7月21日金曜日

0042 ララバイ・タウン

書 名 「ララバイ・タウン」
原 題 「Lullaby Town」1992年
著 者  ロバート・クレイス
翻訳者 高橋 恭美子
出 版 扶桑社 1994年7月

 C&P3作目。シリーズ初読。
 トレンチコートの似合う無口で渋い男が出てくるのがハードボイルドだと思ってたらどうやら違うらしい。ロサンゼルスの陽光のもと、マスタードのシミ付きミッキー柄スウェットシャツでコールが登場、過剰な軽口が体言止めで畳みかけてくる。
 仕事の依頼は、ハリウッドの有名映画監督(たぶん、スピルバーグと同じくらい?)ピーター・アラン・ネルソンの、無名時代の妻と子供の捜索。ピーターは甘やかされた芸術家肌の有名人にありがちな抑制の効かない男で、今回は10年も逢っていない息子の事を思い出し「父親」になりたくなったらしい。
 仕事を引き受け、足取りを追い、案外簡単にピーターのかつての妻と息子の居場所に辿り着く。それでは簡単すぎるな、と思っていたら、その元妻カレンが、務めている銀行で、ニューヨークのマフィアのマネーロンダリングに関与していることが判ってくる。
 マフィアのしがらみからなんとか彼女を引きだそうとしているうちに、ピーターが乱入して事態を引っかき回し、結局カレンもピーターもまとめて助ける羽目になる。
 コールは、女性や子供や社会的弱者に対してフェアで、しかもとことん優しい。これは損得抜き。そして彼らを脅かす敵には容赦無い。
 コールは、不遇な中から自分で自分を育てたタイプの人間で、彼の強さも弱さも、そこに由来する。そのゆらぎが最大の魅力で、つい引き寄せられる。
 コールとパイクはニューヨークで上等の宿をとり、美術館に出かけ、美味い食事をする。それで少しは人生が楽になると知っている。コールを支えるパイクがこれまた良い。
「おれが行くまで生きているように。」