2020年7月11日土曜日

0208 巡洋戦艦リライアント

書 名 「巡洋戦艦リライアント」
著 者 ダグラス・リーマン
翻訳者 大森洋子
出 版 早川書房 1998年

 レナウン級巡洋戦艦(レナウン、レパルスに続く架空の三番艦)が主役。もちろん艦長であるシャーブルック大佐39歳が主人公なんだが、読んでいるうちに、この物言わぬ大艦が艦長に身を委ねている感じがひしひしとしてくる。
  シャーブルックは前の指揮艦だった巡洋艦ピラスを北極海で喪った。
  護衛航海中、遙かに火力に勝るドイツ巡洋艦3隻とたった1艦で交戦。救援に来ると言われていた味方の大型艦は現れず、ピラスは集中砲火を浴びて氷の海に沈む。乗員450名のうち生き残ったのは艦長含め8人のみ。 その後、怪我と喪失の痛手から回復したシャーブルックは、巡洋戦艦リライアントの新艦長として任命される。
 リライアントは、戦隊旗艦であり、ピラスが沈んだ時に救援に現れなかった巡洋戦艦の一隻だった。自殺した前艦長はシャーブルックの親友でもあり、親友の救援に駆けつけることができなかった自責の念が自殺に関係しているのか・・・とは、作中では言及されていないものの、十分考えられることではある。とまれ、冒頭から因縁深い新艦長とリライアント。
 戦隊旗艦であるからには、クセのある少将を頂き、艦の指揮権に干渉を受けつつも艦を掌握し、艦と次第に心通じる艦長。小型艦を操縦するように巨大な巡航戦艦をコントロールする描写が良い。
 さてこのリライアント、作戦行動中に舵が効かなくなったり、機器が故障したりするやっかいなお嬢(この際、「老嬢」というのは余りに失礼)である。むろん、整備不良が原因の故障ではあるのだが、おかげで撃沈を免れたり、絶好の交戦海域に出たりする。
 艦橋でそんな彼女(の艦長イス)に手を添えたシャーブルックが「落ち着け、いい子だから。お前の言いたいことはわかった」と囁く。船の代名詞がsheで、無骨な戦艦が美女にたとえられるのがこれまで日本語の語感だといまいちピンとこなかったけど、リライアントは間違いなくツンデレ淑女。別に艦これのシュミはないが、擬人化してもいいレベルでかわいいと思える。
 艦隊司令である少将は、かつてシャーブルック、自殺した前艦長のキャヴェンディッシュと3人で、大尉としてリライアントに乗り組んでいたこともある人物で、人となりは知れている。武勲よりはあの手この手の世渡りと自己演出で出世してきた我欲の強い人物である。シャーブルックは口数は少ないが自分の主張は静かに通すタイプで、もちろん少将とは水と油である。当初は静かに穏やかに、少将を立てていたシャーブルックであるが、やがて、対立が表面化するのは避けがたかった。
 さて、そんな艦隊司令と艦長を戴くリライアントはどうするのか。
なにやら頑固な意志を感じさせるリライアントは、戦隊旗艦のくせして、最後は艦長シャーブルクと対立していた司令官を艦から叩き出したよ。あっぱれである。

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