2024年6月24日月曜日

0489 償いのフェルメール (ハーパーBOOKS)

書 名 「償いのフェルメール」
原 題 「Collector」2023年
著 者 ダニエル・シルヴァ    
翻訳者 山本 やよい    
出 版 ハーパーコリンズ・ジャパン 2024年6月
文 庫 568ページ
初 読 2024年6月24日
ISBN-10 4596637202
ISBN-13 978-4596637208
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121477812

 せっかく、シャムロンが引き留めるのを振り千切り、〈オフィス〉を引退して速攻ヴェネツィアに移住したのに。やっと家族との生活と心の平穏を取り戻し、オリジナルの絵を描く才能さえ取り戻しつつあったというのに!(ほぼ自主的に!)また諜報の世界に引き戻されたガブリエルである。分かってたけどね、こうなるコトは。
 だいたい、いくら少数精鋭とはいえガブリエルの部下は数が少なすぎる。エリ・ラヴォンやミハイルや、ダイナが定位置から動いただけで、もはやロシア側に察知されるのでは? ガブリエルがヴェネチアの修復現場から数日以上姿を消しただけで、影で何らかの動きがあると見做されるのでは? どうしてガブリエルの挙動がロシア側にバレないのか、それが不思議でしょうがない。だけど、そこに引っかかると全てが面白くなくなるので、敢えて気にしないことに。
 内容も、大いなるマンネリの域に達したと言えなくもない。なにしろ今回もまた、有能な女性をスカウトして、対ロシア諜報戦だ。だがしかし。そんなささやかな不満(?)を吹き飛ばす終盤のスリルたるや、大したもの。いやあ、今作も面白かった。

 さて、あらすじである。以下ネタバレ。
 ヴェネツィアで、キアラや子供達と穏やかにすごすガブリエル。聖堂で絵の修復に取り組む彼のもとに、おなじみカラビニエリの美術班を統率するフェラーリ将軍が訪れる。有る場所で見つかった盗難絵画の鑑定を依頼したい、と。なにか裏がありそうだと思いつつ、ガブリエルが伴われた場所は殺人現場。そして美術館から盗まれて行方が知れなかった有名なゴッホ自画像の隣には、空の額縁とキャンバスが剥がされた木枠が残されていた。ガブリエルは、その盗まれた絵を取り戻すよう、フェラーリ将軍から依頼される。

 だが、盗難絵画を追いかけるうち、殺された絵画の所有者がかつて南アフリカで核開発に関係していたこと、そして〈オフィス〉協力者であったことを知る。そして、南アフリカが開発した旧式の核弾頭が、絵画の盗難に隠れて、ロシアの手に渡ったと思われることも判明。

 ウクライナ戦争を決定的な勝利で終わらせるために、ロシアが戦術核を用いるのではないか、と西側(米国)は怖れている。ロシアが秘密裏に入手した旧式の核弾頭が「ウクライナからロシアに対する」先制核攻撃に使われること(もちろんロシア側の偽旗作戦として)を察知したガブリエルは、ふたたび〈オフィス〉に戻り、オフィスの人員・技術と、自分が持つ人脈を集結して、ロシアと対決することを決意。

 と、まあそんな話。

 それにしても、今作は“コマノフスキー”が最高に格好良かったです。後半、ドキドキして、イヤな予感しかしなくて、読み進むのが辛かったわ。

 ガブリエルはもう70歳です。以前も書いたが、ハリー・ボッシュと同じ歳です。ボッシュだって、白血病だの、人口膝関節だの言っているというのに、ガブリエルときたら頑健すぎていささか不気味だ。キアラともまだまだお熱いみたいだし。

 今回、過去の登場人物も沢山でてきて、いったいいつの話なんだか、いささか混乱してきたので、人物リストを作っておく。常連の主要人物は省略で。


イングリッド・ヨハンセン………フリーランスのITスペシャリスト 
アストリッド・ソーレンセン……イングリッドの変名
マルティン・ランデスマン………過去作『報復のカルテット』に登場した、スイスの大富豪で投資会社の経営者。
セルゲイ・モロソフ………………過去作『赤の女』イスラエルに拉致された元SVR工作員。イスラエルの収容所で捕虜生活を継続中。
マウヌス・ラーセン………………〈ダンスクオイル〉のCEO  

グリゴーリー・トポロフ…………ロシア対外情報庁(SVR)の暗殺者  
ニコライ・ペトロフ………………ロシア連邦安全保障会議 書記。ワロージャの側近  
ゲンナージー・ルシコフ…………ロシアのトベリ銀行頭取(過去作に登場していたかは思い出せない)
ワロージャ/ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ…………ワロージャはウラジーミルの愛称。言わずとしれた恐ロシアの独裁者。ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン。

ラース・モーデンセン……………デンマーク国家警察情報局(PET)の長官 
エイドリアン・カーター…………CIA長官。ついに!エイドリアンが長官に昇進!長い道のりだった。
ポール・ウェブスター……………CIAコペンハーゲン支局長
テッポ・ヴァサラ…………………フィンランドの保安情報機関の長官

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