著 者 グレッグ・ルッカ
翻訳者 飯干 京子
出 版 講談社 (2006/1/13)
初 読 2019/04/12
上巻冒頭、ボディガードとして有名になり、一流と認められた代償として、ろくでもない仕事もこなさざるをえないアティカス。依頼者にぶち切れるところからスタート。次の仕事は、英国の社会活動家の警護。そして、“ドラマ”が忍び寄る。
上巻後半は殆ど姿の見えない“ドラマ”とアティカスの一騎討ち、というよりワンサイドゲーム。
ひたすら指示に従っているようで、何か確かな繋がりを紡いでいるような展開。令嬢を間に置いた仲間達とのジョークの応酬や心温まるひとときもこれで見納めとなる予感をひしひしと感じる。
一方でブリジットとの破局の仄めかし。ココがホントのターニングポイント。下巻新章からは、アティカスは向こう側にいってしまうのだろう。
さて下巻は、上巻とはまったく違うステージ。
“ドラマ”ことアリーナに拉致されたアティカス。そして、アリーナの依頼は、自身の警護だった。アティカスとの戦いで“テン”からも狙われることになったアリーナは、ボディーガートというよりは、仲間を欲していた。だからといって、アティカスがこういう風に巻かれるのか、と思わないではないが。
アティカスはアリーナの隠れ家で、アリーナと暮らすことになる。最初は不本意に、そしてやがて、アリーナに心惹かれて。で、そこに、踏み込んでくるブリジットとクリス。
暗殺者を題材にする危険に無自覚に踏み込むクリスの軽さ。
殺し屋を引き連れて隠れ家に意気揚々と攻め込んでくるブリジット。
おいおい、勘弁してくれ!不公平って何が?クリスの死の責任はスルーか?これは痛い。アティカスがアリーナ側に飲み込まれる展開がいささか説得力に欠ける気がするし、こっちをエピソード盛り盛りにして、ドラマティックに仕立ててくれてもよかったのにと思わないでもない。それに、アリーナの動きが封じられてしまったのもちょっと残念。
銃とは切ってもきれぬ縁とは言え、善良な市民であったはずのアティカスが、分不相応?な敵と渡りあったせいで、手に負えない凶運ともいうべきものに巻きこまれていく、その事に無自覚無抵抗な所が、ナタリー父に忌み嫌われる所以。
本人が被害に遭うだけならただのアクションだけど、きっちり周囲の人間を巻き込んで死人を量産するところがルッカのドSなところだ。
さあアティカス、お前は明日、何処に行くのか?
私の読みが足りないのかもしれないけど、アティカスがCIAに開帳した闇金の動きを何処で入手したのだろう?アリーナの情報だけじゃ足りない気がする。
もうひとつ。アリーナとの共同戦線で、遠距離射撃で仕留めるつもりがなければ、なぜ危険を冒してアリーナに現場を下見させたのか。
私は初めからアリーナが狙撃するんだと思ってたんだけど、それをアティカスが考えていなかったってのが理解できん。
限界を超えても信念を譲らない青臭いアティカスに小一時間くらい小言を垂れたいとは思うが、まあ、それも魅力のうちなのだから仕方ない。
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