2017年1月31日火曜日

0024 バラヤー内乱

書 名 「バラヤー内乱」 
著 者 ロイス・マクマスター・ビジョルド 
翻訳者 小木曽絢子 
出 版 創元SF文庫 2000年12月

 母は強し。最初から最後までそういうお話だった。初対面の時はヴォルラトィエルの血にまみれ、その次は政敵の生首転がしてニンマリされたら、そりゃ流石のイリヤンも逆らえなくなるわ。戦士志願では、仕込み杖にもたれてすっかり落ち着いた紳士になっていたコウデルカも、青くて落ち着かなくってかわいい。

2017年1月21日土曜日

0023 名誉のかけら

書 名 「名誉のかけら」
著 者 ロイス・マクマスター・ビジョルド
翻訳者 小木曽絢子
出 版 創元SF文庫 1997年10月

 マイルズの両親の馴れ初め話。途中コーデリアがやすやすとバラヤーに現れた辺りはちょっと簡単過ぎない?と思ったけど、まあいいか。 マイルズが両親から何を受け継いだのかよくわかる。この親にしてこの子あり、胃弱は父親似だね。
 劇的な盛り上がりってのはなくて、全編なだらかな丘陵地帯みたいな充実感。ピョートル将軍もアラールも、みんな大好きになった。これもお気に入りのコウデルカの負傷の経緯も明らかになった。厳格な帝政とお馬鹿な民主制って対比はスペオペの定番だけど、世の人は実は明確な支配に憧れるものなのだろうか?

2017年1月16日月曜日

0021-22 メモリー(ウォルコシガン・サガ)

書 名 「メモリー 上」「メモリー 下」 
著 者 ロイス・マクマスター・ビジョルド 
翻訳者 小木曽絢子 
出 版 創元SF文庫 2006年7月

 イリヤンの思いがけない災難を軸に、マイルズの人生が大きく転換した。
 自分は何者か、という青春の悩みからやっと脱却して大人になったとも言える。やれやれ。
 イリアンの公人としての人生はマイルズの人生と重なっている。イリヤンの思い、グレゴールの兄弟愛、イワン、アリスの、ヴォルコシガン親子の深い愛情、そういう想いが濃厚にミックスされて、マイルズを次の人生のステップに押し上げたような。なんというか癒しのための一冊だ。
 イリヤンがただの小父さんになっちゃったのはご愛嬌といおうか。彼には余生を楽しんでほしいな。マイルズのこれからがますます楽しみです。

2017年1月13日金曜日

0020 ソラリス

書 名 「ソラリス」 
原 題 「SOLARIS」1961年 
著 者 スタニスワフ・レム
翻訳者 沼野充義
出 版 早川書房 2015年4月

 かなり難解で、特に学術論争の辺りは読み進むのが大変。もう一回読み直してからちゃんと感想を書きたい所だけど、初読の印象だけ。どなたかのレビューでも読んだが、当時の社会主義陣営の空気感を色濃く映している。それに感じるのは、人間の知性を遥かに超越し、人間には理解し難い存在を対置しながらも、人間存在へ寄せる圧倒的な信頼。
 そういう人間存在への確信みたいなものは、やはり、時代の空気のようなもので、今は中々見出せないな、と。あと、昔観たはずのタルコフスキーは殆ど覚えてなくて、未知の惑星ソラリスを想起するのに、貧弱な映像的な想像力を酷使した。

2017年1月9日月曜日

0019 戦士志願

書 名 「戦士志願」 
著 者 ロイス・マクマスター・ビジョルド 
翻訳者 小木曽絢子
出 版 創元SF文庫 1991年1月

 一気に読了。面白かったよ、なにこの桃太郎展開。行く先々で舌先三寸で家来を見つけ、首を突っ込む必然性の無い戦いに突っ込んでいくハチャメチャぶり。国元の騒動も片付けて、出来ちゃった軍隊も落とし前つけて、ご褒美ももらって大団円。日本昔話なみのメンタリティなのに、そこをマイルズの魅力胆力と、ボサリの何しでかすかわからない不気味さでぐいぐい持っていかれた。最後までボサリが哀れだった。荒唐無稽なストーリーだけど、ヴォルコシガン親子の深い愛情が通底しているからこそリアリティが感じらる。読んでよかった。

2017年1月2日月曜日

0018 彼の歌の示す処(はるこん・SF・シリーズ)

書 名 「彼の歌の示す処(はるこん・SF・シリーズ)」 
著 者 アン・レッキー 
翻訳者 環 望
出 版 はるこん 1916年4月

 とりあえず挿し絵は無い方が良かった。
★「ヘスペリアに栄光あれ」異世界転生モノっぽいSF。ヘスペリアは火星にあった王国らしい。ヘスペリアの王子が反逆者に一矢報いるため反逆者の過去に干渉しようとする。だが恐らくその行為が禁忌に触れ、火星の文明は砂塵と帰す。火星の太陽光でどうやって緑の植物が育つのかとか考えちゃ駄目。短篇なんだから色々と大目にみましょうね、という作品。
★「沼地の神々」 これは短篇にも関わらず随分と読み応えがある。村の沼地に住む比較的若い神々と偶然地表に出ちゃった太古の強大な神々の話。人間は神々と契約し、神々は契約相手の人間を害さないように慎重に振舞っている。そんな神々と上手に付き合って難局を切り抜ける女の子。神々の設定が全てなんだけど、多くを説明してないのにちゃんと理解させる所に著者の巧さを感じる。
★「彼の歌の示す処」 地球の先住種族が火星を目指すお話。野生と科学技術がどうやって共存しているのかちょっと不思議。彼らが火星に辿り着いて文明を築いていたら?