原 題 「Let it Bleed」1996年
著 者 イアン・ランキン
翻訳者 延原 泰子
出 版 早川書房 2007年6月
初 読 2018/03/09
その死の選択に釈然としないリーバスは、事件の背景に分け入っていく。更に不可解な自殺事件があり、彼の捜査活動には政治的妨害が。
未訳4作を間に挟み、知らないエピソードの断片が気になるが、特筆すべきは彼を信頼する部下がいる!ホームズは部長刑事となり、若手のシボーンはひたむきにリーバスを慕っているではないか!
呑んだくれの五十男で、軍隊でも結婚でも失敗しての警察官人生は既に余生の趣さえあるリーバスだが、その感性や矜持は若々しく、青臭ささえ感じられる。このアンバランスが良い。
今作ではそんな彼を動かす動機というか、信念のようなものも垣間見え。
上司として舞い戻ったかつての恋人ジルが保身に汲々とする一方で、リーバスの選んだ身を守る方法は権力への迎合ではなく徹底抗戦。
このあたりは流石の軍隊上がりで、肝が座ってる。うじうじするところとやるときゃやるぜ、のヘンなバランスがリーバスの魅力でもある。
✓ 「働くために生きているのであり、本当の意味で生きるために働いているのだ。勤労を善とする、あの悪評サクサクの、プロテスタント風労働観を持っている。」日本人と気が合いそうだ。
✓ 「人の命一つと代えられるものはない」
✓ 「サー・イアンは悪党と同じ基本原則に従って生き、働いている。利己的でありながら、みじんもそれを表に出さず、・・・」
✓ 「これはウイリーとディクシーのため、トム・ギレスピーのためにやるのだ、・・・そして、体制がどのようにして動き、体制の中でどのようにして嘘やペテンや盗みが行われるか知らない人すべてのためにやるのだ。しかし何よりも自分のためにやるのだ。」
✓ 「厚顔無恥な連中によって傷つけられた自分の良心は・・・」
彼の心が、血を流し続けているのだ。
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