2018年8月5日日曜日

0134 女王陛下の航宙艦

書 名 「女王陛下の航宙艦」 
原 題 「ARK ROIYAL」 2014年
著 者 クリストファー・ナトール 
翻訳者 月岡 小穂 
出 版 早川書房 2017年6月 
初 読 2018/08/05 
 
 取り敢えずこれだけは言うぞ。邦訳タイトルが良くない!原題は『Ark Royal』、HMS Ark Royal》はイギリス海軍伝統の空母の名称だ。であるから、この船も宇宙空母もしくは航宙母艦だが、そもそも原題タイトルはあえてHMSが付いていない、としか思えないのに、そこを敢えて「女王陛下の」、とやるとはどんな覚悟なのかと小一時間。イギリス海軍の(この場合には宇宙軍の)艦船にはすべてHMSが付くとおぼしいのに、全部に「女王陛下の」と枕詞を付ける気か?・・・・・、と店頭平積みを見た瞬間、またかよ、といささかウンザリしたにもかかわらず、つい買ってしまったのだったが・・・・・まあ、いいや。毒を吐くのはこれくらいにしておかないと。

ではさて、ストーリーですが。
酒が飲みたい。とにかく酒が飲みたい。ほぼアル中の飲んだくれの老艦長率いる老朽航宙母艦が人類の最後の望みの綱となる。人類は、突然の宇宙人の攻撃に立ち向かえるのか?という人類存亡の危機がイギリス風味のやや安穏とした口調で語られる
 現在の国際情勢をほぼそのままで、人類は外宇宙に進出している。だから宇宙軍も「地球軍」ではなくあくまでイギリス軍、ロシア軍、中国軍、、、、となって協調性がない。
 そんな中メキシココロニーやロシアコロニーが宇宙人の攻撃を受けて各軍協力を余儀なくされる。とはいえ、その当たりの描写はとことん乏しい。
 艦長の座を狙う気満々だったやり手若手のフィッツウィリアム副長は、当初の思惑こそ浅はかだったが、老艦長に仕えると覚悟を決めてからは有能で忠実な部下としての本領を発揮、艦長を支えて艦務に邁進。この辺りは、伝統だよなあ、と思う。部下の有能さと艦内の人間関係は気持ち良い。
 しかし、戦闘描写は冗長で行き当たりばったりの感がある。これはひょっとして、物語中に登場するおバカな従軍記者達並みに、自分が状況把握が出来ていないせいなのか?と疑惑が頭をもたげる。
 行く先々で予想された異星人からの反撃がなくその幸運に助けられるが、いくら人間常識の範囲外の敵が相手とはいえ、幸運すぎないか?続刊を読むかどうかはちょっと悩ましいところ。とはいえ、ファーストコンタクトものとして、言語も文化も思考様式も異質でまったく意思疎通もできない異星人と、戦争するにしても講和の道を模索するにしても、ありきたりな宇宙戦争でない話を読ませてほしいもの。
 このシリーズを9冊出すのなら、「栄光の旗のもとに」ユニオン宇宙軍戦記も続刊の出版をお願いしたい。それはもう。是非。
【一応の覚え書き】
 なぜか同時期一斉に、宇宙戦記もの、3部作の1巻目がハヤカワから刊行。
『栄光の旗のもとに』『暗黒の艦隊』『女王陛下の航宙艦』
 この、アークロイヤルは、艦長のキャラが、『暗黒の艦隊』ジャクソン艦長とかぶる。副長フィッツウィリアムと『栄光の〜』の艦長マックス・ロビショーがもろキャラ被り。艦隊行動については、彷徨える艦隊と被る。まあ、それぞれの本を読んだ順番に影響されているのだが、総じて、『女王陛下の航宙艦』が「何かに似ている」という印象を抱く。それでも、個人的には面白ければ良いので、よろしく頼みたい。(何をだ?)


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