原 題 「Flood」 1985年
著 者 アンドリュー・ヴァクス
翻訳者 佐々田 雅子
出 版 早川書房 1994年9月
初 読 2018/08/12
ニューヨーク最底辺の特異な連中が、自分の生きる隙間を守る為に蠢いている様が、時にリアルに時にはファンタジーのように語られる。
書き込みが過ぎてかえってリアリティーが薄れているきらいもあるが、これだけ徹底してディティールを書き込まなくては「フィクション」にできなかったのだろう、と思う。
ヴァクスは児童虐待専門の法律家で、その実態を世間に知らしめるためにフィクションの体裁で書いた。現実はもっと凄惨だろう。
それはさておき、フィクションであるからには、バークとその仲間達がとても魅力的である。
バークは強いのだか弱いのだかよく分からないが、自分なりのルールと矜持に従って、サヴァイバー特有の、危険を察知する独特の感性を頼りにニューヨークの底辺を泳いでいる。聾唖の武道の達人、短軀の黒人の自称「予言者」、知的な美人の男娼、そして『性交園』というとんでもない名前の中華料理屋を営む「ママ」。
最後の作戦が愉快。あれをラストの仕上げに持ってくることで、「殺し」はバークの本来の仕事じゃないって示してるのかな、とちょっと思った。
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