原 題 「The Twelfth Card」0000年
著 者 ジェフリー・ディーヴァー
翻訳者 池田 真紀子
出 版 文春文庫 2009年11月
初 読 2021年6月15日
文 庫 上:383ページ 下:430ページ
ISBN-10 上:416770580X 下:4167705818
ISBN-13 上:978-4167705800 下:978-4167705817
殺し屋と共犯の配置といい、読者を騙す気満々のジェフリー・ディーヴァーである。
中盤まで、どうもお話に乗り切れず、面白さを感じられなかったのだが、多分理由は二つある。
その① ディーヴァーの引っかけを警戒しすぎている。(笑) ちょっとした言葉やセリフの端々が気になりすぎ。
その② ディーヴァーの黒人文化の解説が面白くない。政治的公正が社会全体として求められるせいだろうか。内側に入っているようで他者的。情熱的なようで、冷静。解説的なんだよな。
殺人犯の身体的特徴(足を引きずる)を似せていることが、読者を混乱させようとする気、満々。表紙の〈吊された男〉の隠喩も気になる。目の前で証言を取っていた女性を射殺されて、衝撃を受けたセリットーの先行きはどうなるのか? 登場したてのルーキー警官、プラスキーがまさかの初回撃退?といろいろと心配。(もっとも、この後のシリーズを先に読んでいるので、彼らが元気に活躍しているのは知っているのだが。) シリーズ最初に出てきたルーキーは誰だったっけ? ジェリー、彼みたいにいなくなりませんようにと、願わずには居られないのだ。だけど、いまだにジェリーが隻腕のカッコイイ切れ者刑事になってライムの前に立ち現れるのを心底期待している。
さて、下巻に入ってからは、テンポもよく、一件落着したかに見えたところで、あと五分の一ほどページが残っているので、さらにどんでん返しか?と思うと案の定。
今回は、と読者を騙すためだけに配置されたグラフィティ・キングがとにかくあざとすぎるし、新犯人の動機があれだと、弱いような気もする。自分の「職」ではあるが、自分の財産では無いわけだし、あの男は職や地位にしがみつくには少々スレすぎているように思える。
一方で、最初は年齢にそぐわない冷静さと知性を見せていたジェニーヴァがどんどん歳相応の少女になってきたのは好ましかった。全体を通してみれば、なかなか面白かったな。ラストのライムの黙想が秀逸。(ハンス・ウルリッヒ・ルーデルの『急降下爆撃』の〆の1行を思い出す。)
“自分を完全な人間とみてそのように生きるか、不完全な人間とみてそのように生きるか、それを決めるのは、自分自身だ。”
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