2023年10月22日日曜日

0444 SENTIMENTAL JOURNEY<矢代俊一シリーズ22>

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/116766094   

Amazonより・・・アメリカ・ツアーでニューヨークを訪れた矢代俊一はバンドメンバーと別行動でかつての恋人と会い、また金井恭平との逢瀬を時を持つ。しかし、ツアーの歓迎パーティ会場に現れたニューヨーク在住のピアニストとのトラブル、懸念されていた森晃一の力不足が露呈するなど不穏な要素をはらみつつデトロイト、ロサンゼルスとツアーは進んでいく。それはグループにも矢代俊一本人にも先送りにされていた問題の総決算を予感させるものでもあった。矢代俊一シリーズ第22巻。

  相変わらず良く書けてるなあ。Amazonのリード。
 ものすごく美しくまとめるとそんな感じです。

 読み始めて改めて思ったのは、俊一が人を判断する基準が「自分を心配してくれるか否か」「自分のわがままを聞いてくれるか否か」「自分を中心に動いてくれるかどうか」になっている、ということ。俊一は、自分が居心地悪いと機嫌が悪くなり、それをいいよいいよ、と受け止めて甘やかしてくれる強い男を自分の周りに引きつける。そして自分を囲わせる。風間いわくセイレーン。美形の天才だからそれが許される。甘やかす者と甘やかされるもの。このキャラクターを嫌味なく、違和感なく書いちゃう薫サンにびっくりだよ。しかも薫サン、魔性の女だか男だか、奔放な性やら情熱やらを描こうと思って、こう書いているわけではない、という気がする。いやこれ、やっぱりなんの悪意もなく素で書いてるよね。だから薫サンも素でこんな感じだったんじゃないか?想像してしまうのだけど。

 それにしても、俊一の忙しいこと。
 俊一を敵視するゲイの三流ピアニストに気持ちを掻き乱され、英二にやきもちを焼き、風間をしつこく誘惑し、そうこうしているうちに俺はミューズに愛されてるんだ!と何100回目かの気付きを得て、恭平との別離を覚悟するかと思えば、その恭平との一夜の契りで熱烈に愛を語らう。でも、英二と一緒にいれば英二に絆されて、恭平との別れを強く決意。そして俺はミューズの使徒なんだ!と何101回目の気づきと喜び! 傍目でみれば、単にその場の状況に流されてるだけなんだが、そこは薫サンが臆面もなく書き抜いてる流れで、なんとかストーリーの体裁になっているような、・・・いやなっていないだろ。

 まあしかし、読者不在であることは間違いない。
 自分の、自分による、自分のための・・・・「小説」ともいえないような言葉の羅列だ。
 これが小説だと思えないのは、エンターテイメントではないから。初めから「読者」がいない。作品を通じて相対する者の存在は、求められていない。この点は、初期の作品とは明らかに一線を画しているとは思う。この一連の作品が同人誌で発表されたことが表しているように、これは教祖が信奉者に垂れた高説みたいなもので、ありがたがる人がありがたがれば良い、金色に塗られた壺とか泥人形みたいなもの。私はそれを見せられて「こんなの仏像じゃない!」と怒ってる勘違い人間なのだと思う。
 それは、たとえば贋作だって買う方が本物だと思えば芸術作品さ、といって高値で売りつける悪徳美術商か、もしくは贋作を真作だと思い込んで売ってる鑑定眼のない古物商みたいなもんで、これを「小説」だと言って世に出して、読者はこれを「小説」と勘違いして読んでいるのだ。

 作中でベーシストのサミーが俊一に語る。
 『———カネ(金井)も晃市も、なんといったらいいか———地上に生きる、形而下の種族なんだ。それは決定的なことだ———どれほど魂が深くなっても、ついにかれらは地上にしか生きられない。だがお前は———あえて云わせてもらうなら俺もまた、そしてお前の父上ももちろん……我々は、地上には生きない。地上の価値や成功は我々にはどうでもいい。宇宙の神秘、ひとの心の不思議と悲しみ、運命と摂理の偉大さ、この世がこのようであること———その悲しみと歓喜と狂おしさ、それが我々の心をとらえ、そして表現へとおもむかせる。———その深い思いはついにかれらは知ることがない。かれらを幸せにするのは簡単だ———不幸にするのも簡単だ。簡単に幸せになれる心は、結局———簡単にしか生きられないんだ」』

 我らは芸術の使徒たる人種なのだとベーシストのサミーに語らせる薫サン。なぜこの台詞がいっこうに感動的ではなく、あまりにも陳腐なものになってしまうのか。それは、彼らが芸術の使徒であっても、薫サンがそうではないからだよ。

 本当に表現に魂を捧げた表現者であるならば、あんな駄文の数々を世に送り出したりしないはずだからだよ。

 今回、晃市のピアノの「浅さ」問題が作中で表出しているんだが、奇しくも今回辛い目をみた晃市が、案外薫サンと同類なのかもしれない。頭がよくて、要領が良くて、早わかりして、早弾き(早書き)が得意だけど、実は自分に自信がなくてコンプレックスの塊で、自分の望む容姿はしていなくて。・・・・でも、はるかに晃市の方が謙虚だ。なにしろ晃市は努力してるから。

 でも、私自身も一体なんでこんなに駄文メーカーの栗本薫に執着してるんだろうな、とは思う。

 各章の末尾に、作品を書いた年月日が付されているんだが、今回最後の数章には、「2007年●月●日 昭和大学病院1617号室にて」と、記されている。病床でこれを書いて、薫サンにも思うところがあったんだろう、人生とか命とかにしみじみと言及している文が結構ある。でも作品のなかに、書いた人間の状況を滑り込ませてくるって、あざとさを感じるよね。自分が批判していることが、なんだか悪いことをしているような気持ちにさせられるもの。 

 人の妻であり人の母であった一個人を、こうやって貶めることになんの意味があるのか。もしかしたら、私の「思慮のない駄文」で不愉快になったり、傷つく人も、怒るひともいるかも知れない。 
 でも、この「小説」みたいな何かを「小説」やら「作品」として世に出すことに意味を見いだしている人たちがいて、それで収益も得ていて(しかも、私も金を払ってる!)るんだから、この「小説」とは思えない何かを私が「作品」として扱って批判することもまた、正当なことだと思うのだ。 

 そうはいっても、今作。前2冊と比べると、格段に読みやすくはあった。
 おそらく、舞台がアメリカツアーに移って、形容するものが沢山あったからだと思われる。例の脳内ダダ漏れグダグタが、相対的に減って、普通の情景描写が増えているのが、読みやすい原因。あと、俊一父の出番が減って、あの気持ち悪い父子の交わりってか語らいが減ったのもその理由の1つ。ただし、前述のとおり、内容は推して知るべし。

2023年10月18日水曜日

0443 機龍警察 火宅

書 名 「機龍警察 火宅」
著 者 月村 了衛 
初 読 2023年10月15日
【単行本】
出 版 早川書房 2014年12月
単行本 245ページ
ISBN-10 4152095091
ISBN-13 978-4152095091
【文庫本】 
出 版 早川書房 2018年8月
文 庫 304ページ
ISBN-10 4150313385
ISBN-13 978-4150313388

 月村了衛は、人の世に現実にある暗黒を、エンタメに載せて白日の下に晒す。
 機龍警察・短編集。のっけから重い。そして人の世は冥い。

火宅———法華七喩の一つ。煩悩と苦しみに満ちて安らぎを得
ない状態。またその状態を燃え盛る邸宅に喩えて云う。
 由起谷の恩師とも言える叩き上げの刑事。消えた証拠。

 読んでいて、オチは判ってしまった。
 うだつの上がらない刑事が突然昇進し始めて、昇りつめた。現場では部下に好かれて、尊敬されていた叩き上げの刑事の内心の汚濁と苦悩。なぜそのハンカチをずっと持っていたのか。おそらくは由起谷が考えたように、それは本物の証拠ですらなかった。もしそれが事件の行方を左右する正真正銘の証拠であったならば、彼は決してそのようなことはしなかったのではないか・・・・・と思いたい私は、やはり人の正しい行動を信じたいんだろう。この男が、孤独なまま病んで死んでいくことで、結局人生の帳尻があうのかもしれない。

焼相———人は死ねばその本然の相に帰す『空』と『無常』とを、死体を克明に観察すること
    によって知る修行「九相観」に於いて、骨が焼かれ灰になった状態を指す。
 このタイトルは・・・・(^^ゞ あまりにもまんまでちょっとコワい。
 大勢の子供を人質にした突発的立てこもり爆弾事件。ライザのバンシーがメイン。他の2機がバックアップ。冷静でおっかな頼もしい姿とライザに比して、ユーリは若干末弟風味。子供達の姿を見送るライザの慈母の如き横顔。彼女が殺したのと同じだけ人を助けたなら、少しは救われるだろうか。

輪廻———衆生が煩悩と業によって三界六道に生き死にを繰り返し、永遠に迷い続けること。
 少年兵。第二次大戦の日本の、ではなく。現実にアフリカで深刻な問題となっている。反政府ゲリラ組織が農村を襲って子供を誘拐して兵士にする。女の子もその対象となるだけでなく、大人の兵士と結婚させられて子供を産ませられる。まず近親者を殺させたり、手足を切断させたりさせ、殺人や暴力への抵抗感を奪う。そのような現実に機甲兵装とサイバネティクスが加味されたらこうなるだろう、という、あってはらぬ、しかしいかにもあり得そうな近未来の現実。そんな境遇で運良く死なずに大人になることが出来た元少年兵の、どこにも救いが感じられない暗黒。

「そこでだ」 

現行法で裁けない罪に対する沖津の対処。こういう上司に仕えてみたいもの。 


済度———菩薩が迷いの境界にいる衆生を教え導き、悟りの彼岸へ救い渡すこと。
 南米、ベネズエラでライザは沖津と出会う。行きずりの女兵士とその妹。妹を守る姉の姿になにを感じたか、もしくは幾ばくかの思いを託したか。にしても、タイトル“済度”はちょっとやり過ぎを感じる。もう少し殊勝なタイトルでも良かったのに。

雪娘———スネグーラチカСнегурочка(露)ロシアの民間伝承に云う、雪から生まれた少女の
    精霊。西欧におけるサンタクロースに相当するジェド・マローシュの娘、あるいは
    孫娘とされる。
 ユーリが出てくるとストーリーの空気感が違う。朝からの雪を見上げて憂鬱になるなんて芸当は、雇われの他の2人にはできんだろう? ユーリはほんのり中二病風味なので相変わらずカワイイ。 あ、でもライザは雨の日は憂鬱になるか。
 『スネグーラチカ』――雪から作られ、愛を知らず、夏の日差しに溶けるさだめの雪娘。雪がちらつく朝、東京の下町で起こった殺人事件は、かつてのモスクワで起こった事件とオーバーラップする。モスクワ民警時代のユーリを絡めた掌編。

沙弥———悪を止め悟りを求める意の梵語の音訳。出家したばかりの少年僧で、比丘となる以
    前を指す
「白面」「白鬼」と渾名された、とことん素行の悪かった由起谷の高校時代。母が自殺し、一人残った由起谷は将来になにも見いだせない。親友はなんと「警官になる」というが。さりげなく在日韓国人差別の問題も取り込んでいる。

勤行———仏道の実践徳目である波羅蜜の一つ精進波羅蜜と同一視され、時を定めて仏前で読
    経、礼拝、焼香などの儀式を行なうこと。おつとめ。
 官僚の面目躍如な宮近の二日間。この間睡眠なし。この話はかなり好き。
 確かに、夜を徹しての答弁作成は勤行だよな。これに価値を見いだせなかったら中央官庁の官僚はやってられないだろう。いや国会のことは知らんけどな。
 ある意味、様式美を整える作業であって、くそ忙しい最中にこの作業にふと疑問を持つと、議会制民主主義ってなんだろう?と役人としては根源的かつ致命的な疑念に到るのでかなりヤバい。徹夜明けでふらふらと参議院の廊下の絨毯を踏む宮近が心許なくて、好きにならずにはいられない(笑)
 なにはともあれ、宮近パパの奮闘が報われてよかった。

化生———四生の一つで、母胎や卵からでなく、自らの因縁、業力によって忽然と発生するこ
    と。また天上と地獄、餓鬼の衆生はこの化生によって生まれるとも云う。
 他の短編が、いかにもスピンオフといった感じなのに比べて、これは限りなく本編に近い。
 いつも由起谷と肩を並べて捜査班を率いている夏川視点。贈賄が疑われていた巨大商社の営業職の自殺と、日中の政官民が勧める巨大プロジェクト、極秘で開発が進む最先端軍事技術・・・・。龍機兵のアドバンスを脅かす技術開発に神経を尖らせつつも、それをおくびにも出さない沖津。しかし上司のごく微細な気配の剣呑さに気づく夏川、その夏川の鋭敏さを捜査官の資質として高く評価していることを明言する沖津。いや、沖津の人心掌握術も大したもの。

2023年10月14日土曜日

0441-42 機龍警察 自爆条項〔完全版〕上・下

書 名 「機龍警察 自爆条項〔完全版〕」  
著 者 月村 了衛   
出 版 早川書房 2017年7月
文 庫 上巻384ページ/下巻304ページ
初 読 2023年10月9日
ISBN-10 上巻4150312850/下巻4150312869
ISBN-13 上巻978-4150312855/下巻978-4150312862
読書メーター  https://bookmeter.com/reviews/116618454 
 極近未来の兵器(機甲兵装=パワードスーツ)+世界情勢(テロリズム)+傭兵アクション+警察小説+ヤクザ物+傷ついた男(女)という超ニッチかつもろ私好みな小説シリーズ第二作目。

 一作目は、いきなり衝撃的な戦闘と殺戮のシーンで度肝を抜かれた。
 未だ謎が多く、日本の暗部に横たわる敵はいまだ正体を見せず、不完全燃焼気味なところは今作含めて、じっくり今後納得させられる予感。
 そして今作も冒頭に衝撃の殺戮シーン。なんのためらいもなく、ただそこに居合わせた人が殺されていく。穏やかであったはずの日本に、否応なく暴力が跋扈する世界が浸透しつつあることを読者に知らしめる。
 
 そして、今作は龍機兵搭乗員の傭兵三人のうちの一人であるライザが主人公。
 無表情・無機質で虚無を抱えるライザの過去が明かされる。
 北アイルランドの首都ベルファスト、かの地域に蔓延る強烈な宗教対立と暴力と同族内での蔑視。その中で頭が良くて多感な少女がどのように育たざるを得なかったか。自尊心の在りどころを求めた結果もたらされたのは父母、そして妹の死。悔恨と自責はライザに自死を選ばせることすら赦さない。
 アイルランドって、よく名前を耳にするようで、その実ブッシュミルズを始めとするアイリッシュウイスキーの故郷くらいの知識しかない地域。おぼろげな知識はケルト神話ベースのファンタジーか文学の断片由来で、正確かどうかははなはだ怪しい。その紛争の悲惨な歴史は、平和ぼけした日本人の想像を超える。すべてが世界の裏側のことで人ごとに感じられる日本人の感覚を、作中の夏川警部補が言い当てている。そして、その混沌をエンタメ作品として読者に突きつける月村了衛!
 もう一つ。タイトルの「自爆条項」およびその附則。
 それを、淡々と受け入れている姿は、しかし履行することなく任務を全うする自信もあるのだろうな。

 メカニカルなアクション描写と、捜査員一人ひとりの苦悩と、日本的な泥臭い組織力学と、スケールの大きい紛争史を、それぞれにクセのある竜機兵搭乗員や沖津の個性で1つにまとめ上げている月村了衛の力量に脱帽。ストーリーがバラバラにならないのが凄い。その押さえ込まれた熱量に圧倒されて一体自分は何を読まされてるんだろう?と慄く。

〈追記 2023.11.12改〉
 コレを読んでいる間に、イスラエルとガザの紛争のニュースが。
 愛読している小説の影響で、自分がイスラエルびいきなのは自覚がある。そうだとしても、日々方報道されるガザの惨状は一方的な殺戮の様相を呈していて、一体イスラエルは、パレスチナ人国家をこの世から抹殺するつもりなのか、と暗澹とした気持ちになる。いうも虚しいが、かつて、中東和平の大見出しとアラファト議長の写真が新聞の一面を飾った日の記憶を思い出し、あのニュースが当時の喜びと希望であったのに、いまはそれが爆散していることを見せつけられる。『自爆条項』の作中で、ベルファスト合意が覆され、IRFが台頭しているのはフィクションだが、中東和平の一方の代表であったアラファト議長がその後求心力を失い、中東和平が瓦解し、いまはハマスが台頭しているのは、紛れもない現実だ。

 今現在イスラエルとパレスチナで起きていることについて、いったい誰がどれだけ悪いのか? 強いていうなら三枚舌のイギリスと、ユダヤ人に空前の虐殺を加えたヨーロッパが悪いだろうよ?
 第二次大戦後、ヨーロッパ各国は、生き残ったユダヤ人の主権国家への渇望に便乗して、体よく面倒なユダヤ人をパレスチナに追い払ったとしか思えない。もちろん現実にはそんな単純な話ではないはずで、あえて単純化し極論すれば、ということにはなるが。

 しかし、そんなことより、イスラエルにまずは戦いを止めよ!と言いたい。とりあえず殺すな。それ以外のことはその後で考えよ! 命以外のことは取り返しがつく、と思いたい。そう言いいたい。
         *     *     *

 ユダヤ人虐殺が始まる前の1933年、ヨーロッパに950万人のユダヤ人がいた。そのうち少なくとも600万人が1945年までの間に極めて組織的に殺害された。子供にいたっては9割が殺害された、という数字もある。
 これだけの人数の人々が、ろくに組織的な抵抗もできずに羊のように従順に家や財産を奪われ、貨車に詰められて収容所に送られ、虐殺された。そのことへの反動が、イスラエルの強硬で暴力的な姿勢に現れているのだろうか。悲惨極まる体験から、ユダヤ人が主権国家を渇望し、その力で自分の身は自分で守ると思い定めたとしても、それを責めることはできないと思う。だが、それでもイスラエルがパレスチナ人に対してしていることは犯罪的だ。
 パレスチナの苦難に対して、イスラエルは責任を負っている。イスラエルに、パレスチナの人々の生活や、人生や、命を奪う権利はない。

         *     *     *

 一方で私は、パレスチナの一般市民を盾に、あの狭い地域で大量のミサイルを製造し、また、持ち込んで、しかも先制攻撃をしかけたハマスを赦すことはできないとも思っている。ハマスに、パレスチナ人を守る思想があるとは思えない。彼らの大義のために弱者である子供や一般市民を巻き添えにしているだけではないか。
 パレスチナ人が密集して暮らす狭い地域で人々を盾に武器を製造し、持ち込み、守るべき人々に犠牲を強いているハマスはまごうことなきテロリストであり、今現在のパレスチナの悲劇のトリガーとなったのはハマスであると私は思っている。

         *     *     *

 この本を読みながら考えていたことだが、戦闘に自分の存在価値をおいていると、命の価値は相対化されていくらでも軽くなる。戦いの目的や使命と思い定める対象によって死ぬのが自分だったり自分以外の市民だったり、他国の兵士や国民だったり、異教徒や異民族だったりするだけだ。 宗教は、闘争を正当化するための口実に過ぎない。そこに神はいない。
 私は命を軽んずることを肯定する思想を嫌悪する。
 そして、人の命を大切にしない、人の命は大義の前では消耗品にすぎないという発想は、宗教思想が原因なのではなく、人間性の発展の度合いに起因すると思っている。人命を消耗品程度にしか扱わない国家や宗教の基盤にあるのは神の教えや思想ではなく、文明の発展度の低さである。どんなに崇高な宗教思想があったとしても、人間は自分の知力を超えてそれを理解することはできない。
 成熟した民主主義はいったいどこにあるのか。それは、人類の普遍的な価値となることができるのだろうか。

日々雑感 腰痛


 ここのところ腰が痛くなることが年に数回ある。ギックリ、ではなく、例えば椅子に座ってパソコンいじったり、本を読んだりしていて、次に腰を伸ばした時にはもうなんだかおかしくなっている。
 今回は仕事に支障が出るレベルだったので、近所の割と評判の良い整形外科を受診した。
 で、私のレントゲン写真を前に先生の曰く。
 腰椎が一個多いんだと。
 通常は5個あるのが普通なんだが、私は第六腰椎まである。早速ネットで調べると、結構こういう人はいて、通常の5個の人80%、6個の人15%、4個しかない人5%の割合だそう。
 正確には第六腰椎という言い方ではなく腰仙部移行椎というらしい。つまり仙骨→腰椎に移行、もしくは腰椎→仙骨に移行してる椎骨。脊柱の一番下は骨盤の中央を構成する仙骨に接続しているが、この仙骨はもともと脊椎だったひと繋がりの5個の骨が一塊りに結合して構成されているのだとか。その先っぽには退化した尻尾の尾てい骨がある。この仙骨の一番上のS1と言われる骨が腰椎化して6番目の腰椎(L6)になっているのが仙骨→腰椎。第5腰椎が仙骨と一体化している場合が腰椎→仙骨のパターンで、腰椎が4個の人になる。私の場合は仙骨にめり込むみたいな感じで六番目の腰椎があって、元々の仙骨の間に何やらモヤモヤと関節が形成されている。レントゲン写真を見ながら、そんな説明を受けた。椅子に座って骨盤の底部が圧迫されると骨盤の上部が締まってその関節が圧迫され炎症が起こる・・・らしい。これはひょっとして「ベルトロッティ症候群」と言われる状態なのか?先生は具体的な症名は言わなかったが、今後受診したときに聞いてみよう。病名がつくと、なんだかスッキリした気分になるような気がする。
 だがしかし、湿布も痛み止めも対症療法でしかない。対策は骨盤内の筋肉を鍛えるのみだそう。しかし、今使っているデスクチェアが私の腰と相性が悪いのはすでに明らかなので、とりあえず体圧分散できる腰痛対策クッションを買おうと思う。

こちらのブログが分かりやすく勉強になりました。

2023年10月1日日曜日

2023年9月の読書メーター

 7〜8月に読書量が激減したため、今年の年間100冊読書はほぼ絶望の見込みとなった(T-T)
 9月に入り、やや読書量は復活傾向であるが、どうしたって本を読むスピードより入手するスピードの方が速い。仮に1日1冊読めたとして、読メに『積ん読』登録してある本だけでも、丸
3年かかる。実際には3日に1冊でも私にとっては相当早いペースなので、10年はかかる計算。その上、父の残した文学作品も読みたいとは、まず達成不能なレベル。ううむ。ううーーむ。本当に今更だが、人生誤った感が半端ない。

9月の読書メーター
読んだ本の数:8
読んだページ数:2090
ナイス数:453

フラジャイル(26) (アフタヌーンKC)フラジャイル(26) (アフタヌーンKC)感想
緩和ケア。朝加せんせいのだいぼうけん編。前巻は大スペクタクルな感じだったけど、ひたむきに人に向き合う、医療に向き合う。こういう話は胸にくる。私、死ぬのを楽しみにしてるんだよね。人が死んだ後に何があるのか、無いのか。魂はあるのか。死後に行くところはあるのか、三途の川や綺麗な花畑はあるのか。死は人生最後の大冒険だと思って、楽しみにしようと思ってる。人生に一番最後まで残るはずの「怖いこと」が無くなったら幸せなことだと思う。そしてそれは宗教でなくても出来るんだよねえ。
読了日:09月30日 著者:恵 三朗

宇宙兄弟(43) (モーニング KC)宇宙兄弟(43) (モーニング KC)感想
今回は、激アツでしたね。これでもかってくらいのトラブルの連続が、「どうぜ絶対兄弟で帰還するんでしょ」っていう予定調和に激震をかけてくる。さて、宇宙船から宇宙船に飛び移る前代未聞のミッション遂行なるか、ってところで次巻へ。
読了日:09月30日 著者:小山 宙哉

幸運には逆らうな (創元推理文庫)幸運には逆らうな (創元推理文庫)感想
今作も安定の面白さでしたね。ヒバート親子と用心棒のマニーがけっこう格好良くて好きです。フォーチュンがやって来てまだ2ヶ月にもならないというのに、今回はシンフル町外れのバイユーの小島で大爆発。しかも爆発したのが覚醒剤密造工場ときたもんだ。マフィアなりの論理で町を愛するヒバート親子とフォーチュンが手を組んで、町の浄化に乗り出す。いよいよキレの増す沼地三人組(笑)。解説によれば、次作はついに、フォーチュンがカーターに身バレするらしい。楽しみ〜♪
読了日:09月28日 著者:ジャナ・デリオン

ハンチバックハンチバック感想
芥川賞受賞作ということで知った本と著者。受賞していなかったら手に取ることはなかったと思う。この本の表紙は帯を取って見て欲しい。重力と闘いながら生きている、せむしの人間。作品と同じように、すごい生命力を感じる。YouTubeで受賞インタビューを拝聴した。著者は怒りをもって書いた、復讐だった、と言う。しかしこれからは愛の作家になっていきたい、と。今作はあまりにも赤裸々で怒りに満ちていて、その怒りをぶつけられるような読書だったが、終章で様相が変わった。この先、彼女の愛に満ちた作品を是非読みたいと思った。
読了日:09月18日 著者:市川 沙央

守娘 上 (MFC)守娘 上 (MFC)感想
コレも登録もれ。台湾の漫画家さんの作品。纏足をしなかった足の大きなおてんばな娘が主人公。
読了日:09月18日 著者:シャオナオナオ
守娘 下 (MFC)守娘 下 (MFC)
読了日:09月18日 著者:シャオナオナオ



スモークブルーの雨のち晴れ 3 (フルールコミックス)スモークブルーの雨のち晴れ 3 (フルールコミックス)感想
コレは登録もれ。家のことも淡々としているように思えた前巻だけど、やはり、本当に処分する段になると切なさもひとしお。お父さんの蔵書も、取っておくもの、処分するもの、人手に渡すもの・・・・。それでも前に進んでいく二人が、とても大人だと感じました。
読了日:09月18日 著者:波真田かもめ

AS TIME GOES BY <矢代俊一シリーズ21>AS TIME GOES BY <矢代俊一シリーズ21>感想
『毒を喰らわば皿まで企画』その21。ニューヨーク渡航前の数日を俊一の心象で語る。薫サンが力説すればするほど、俊一が特別だとは全く思えない。ついに風間サンは俊一の理解者ポジに納まり幸せいっぱい。透がかつての島さんとの愛憎の日々を堕としつつ、俊一を籠絡している。何かに内部を喰われたゾンビみたいで気持ち悪い。今となっては『朝日のあたる家』が名作なレベル。金井も英二も父も相変わらずで、何もかもがキモい。音楽シーンがほぼないので、ツライ一冊だった。次はやっとニューヨーク。あと3冊かあ。。。
読了日:09月04日 著者:栗本薫