2024年7月31日水曜日

0494 警視庁公安J アーバン・ウォー

書 名 「警視庁公安J アーバン・ウォー」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2024年3月
文 庫 448ページ
初 読 2024年7月22日
ISBN-10  4198949247
ISBN-13 978-4198949242
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/122126263   
 分室に新たなメンバーが加わった(正確には加わる)らしい。ダブル・ジェイ事件で、重傷を負った剣持警部補。警部補は、警視庁公安三課の人間で、しかもオズのメンバーだったが、かつての事件で純也を知ることになり、それから密かに分室の協力者となっていた。そして純也の依頼でメイと組んで動いていたところで犯人からの暴行を受け負傷・・・・というのがダブル・ジェイ事件までの流れ。入院まですることになって、純也に強力していたことが公安にもオズにもバレ、閑職に回され庁内で行き場をうしなっていたところを、純也が分室に引き込んだ。新たな公安ネームは「カブ」。愛車のホンダ・スーパーカブに由来するよし。
 セリはいまだ、長崎で入院中。
 さて、そんな新体制のJ分室に、陸自の異端児が仕事を持ち込む。自衛隊絡みで不審な事故死が重なっている。どうにも、ダブル・ジェイ事件以降の特務班絡みのよう。それならば、とJ分室が始動する。

 で。さて。
 裏表紙のあらすじがイマイチ。他の読み友さんも指摘のとおり、本文ちゃんと読まずに書いてるだろ。徳間書店。職務怠慢じゃないか?
 被害者の特性は「防衛大学校の卒業生」だけではないし、このシリーズで「別班」の名称が用いられたことはない。なんの本の話をしているんだ(汗)

 ストーリーに関していえば、今作がシリーズ中で一番読みやすかった。鎌形という政治家に、そんな大胆なことをする胆力があるのか、とは思うのだが。(個人的に日本の「政治家」はまったく評価していないので。)総理大臣の小日向がある意味スーパーマンなのは、設定上(純也の父である以上)しょうがないとは思うのだが・・・。朝比奈の動機も薄いっちゃあ薄いよな。なんだよ命の純化って。そんな中身のない言葉遊びのような観念が、人を動かしうるのだろうか。とはいえ、このシリーズは総じてどの話もこと「動機」についてはけっこう無理筋だし、そこにこだわると、このシリーズは読めない。ただただ、純也のスーパーマンぶりを楽しむ本。その中ではかなり面白かったと思う。

2024年7月28日日曜日

0493 絵本 この本をかくして

書 名 「この本をかくして」
著 者 マーガレット・ワイルド  絵 フレヤ・ブラックウッド  
翻訳者 アーサー・ビナード     
出 版 岩崎書店     2017年6月
初 読 2024年7月27日
ISBN-10 4265850561
ISBN-13 978-4265850563
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/122135008   

 この人の絵、別の絵本も読んだはずだけど、どのお話だったかは思い出せない。優しい筆致と色合いで描かれた、破壊された町並みが悲しい。

 生まれ育った街が、戦争で破壊される。
 敵が攻めてくる。
 大切な図書館にも爆弾が落ちて、蔵書は粉々になって、吹雪のよう散った。だけど、おとうさんが図書館から借りていた、赤い表紙の本は無事だった。おとうさんが、何度も何度も読んだ本。自分達が何者で、どこから来たのか、教えてくれる大切な本だった。お父さんが宝物だと息子に教えた本。おとうさんは、息子を連れて、本を大事に鉄の箱に入れて、避難民の列に加わる。何日も何日も野宿をしながら歩き続けて、次第におとうさんは痩せて衰弱して・・・・。
 ページをめくって衝撃を受ける。・・・おとうさん、痩せた!

 おとうさんが亡くなって、山を越えて、海を渡り、新しい国にいってからも、孤児院で暮らし、苦労したろう。そして、戦争が終わって、国にもどり、本を図書館に戻す。沢山の人が、この本を、かつてのおとうさんのように、何度も読むだろう・・・・

 絵が、とても美しい。

介護日記的な・・・その7 新しい情報は入らない。


 実家の洗面所の天井からの漏水に気付いたのが、たしか5月の中旬。
 昨日、やっと内装の復旧工事が終わった。
 この間2ヶ月強、母が戸惑わないようにと、漏水箇所に張り紙をしたり、工事の予定や、業者とのやり取りの日程を、その都度分かり安く大書きして目に付くところに張ったりもしたが、母は定期的に不安になり、時間にお構いなく、
「あのね、なんと言ったらいいのかしら・・・・・、あの・・・・」と要領の得ない電話が掛かってくること頻回、その都度「天井の水漏れのことかな?」と尋ねると、「そうなの!」と始まり、経緯の説明、業者が下見にくることの説明、原因の説明・・・・・と繰り返すこと2ヶ月。
マンションの天井裏って、結構脆弱
もっと、防音材とか張ってあるのかと
思ってたよ。
 工事をしている昨日は、
◆「なんでこんなになったのか判らない」・・・・上のお宅の床下の配管が老朽化して水が漏れたんだよ。
◆「上の人が誰が住んでいるのかまったく判らないのよ」・・・・いえいえ、40年前から同じ人が住んでるよ。
◆「まったく上の人が何も言ってこない!」・・・・もう3回もご挨拶とお詫びして戴いてるからね。1回は菓子折までいただいたからね。あなたも挨拶したよ〜〜〜
◆「あの人たち(工事している職人さん)、信用できる人なのか判らない。どうしてあの人たちが来ることになったの」・・・・いや、もう、下見と見積もりに2,3回来てるから。先週、壁紙と天井紙決めたときにも打ち合わせしたよ〜
◆「お金をおろしに行かなくちゃ!」・・・・いやいや、支払いはウチではしないんだよ。上の家からの漏水が原因だから、上のお宅の損害賠償保険で支払われるからね。・・・・・その他諸々を一日中延々ループ!! 
 おまけに、工事が気になって、ふらふらと近づいて行くし、中に入ろうとするし、床の養生の上に散らばった建材のカスを拾って捨てようとするし!
 やめろ、近づくな!とつい怒ること数回。

 これでも、実家に行く前には、「怒らない」「笑顔」「何回でも繰り返し説明」「分かり安く」と自分に命じて行くのだけどね。

 なにはともあれ、終わってよかった。

 跡形もなく綺麗になれば、漏水したことも忘れて、生活もだいたい元通りになるだろう。

 他にも心配なことは多々あれど、母の生活をかき乱す要素は極力排除したい。

 そんなこんなな日々で、ストレスがいや増し、溜まりに溜まったストレスが、スイーツと書籍として物質化した。→冒頭写真(笑)
 だって、本を触ってると、カバー掛けなぞすると、癒やされるのよ。本を読む時間が極小化しているのが残念至極ではあるのだが。
 
 母の食生活がだんだん維持できなくなってきたので、先週から週の中日の水曜夜も実家詣ですることにした。 その時には電車の中で読書時間が増える。ラッキー♬くらいに考えていたのだが、いざ、やってみると、行きも帰りも、車中で起きていられない。爆睡!
 疲れてるな〜〜〜。
 そんなこんなで、本は増えるが、読んだ本は増えない・・・・まあ、これは、母に関係なく、いつものことではあるな。

備考 この記事に関連する読メつぶ→


2024年7月21日日曜日

0492 警視庁公安J クリスタル・カノン

書 名 「警視庁公安J クリスタル・カノン」 
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2022年2月
文 庫  464ページ
初 読 2024年7月15日
ISBN-10 4198947171
ISBN-13 978-4198947170

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/121940438

 今作は、今までで一番読みやすかったように思う。
 私がついに鈴峯サンの文体に慣れたのか、著者の語り口が全体的にナチュラルになったのか。おもわず「〇〇にして△△」の頻出回数を作品ごとに数えようとしてしまったよ。・・・・途中で止めたけど。
 ここ数作、ワンパタ化していたストーリー構成も、若干す変化があったのも良かった。ほれ、案件があって、師団長が出て来て、和知も出て来て、KOBIXミュージアムやらで葬式とか大規模な会食があって、フランス人のおじさんがアレコレ好きなことを言い、最後に純也が超絶技巧を発揮して終了みたいな。

 で、ブラックチェインの再来である。
 嘘泣きする全道安の白々しさよ。そして劉春凛があまりにもおバカであった。あのブログはあんまりだろう? 愚かすぎる。それに惚れ込むクラウディア・ノーノ。愛は盲目だな。
 そして、氏家が明した真実。うわあ。ブラックチェインで感じていた違和感が伏線としてちゃんと回収されましたよ! 氏家氏には、不死鳥の如く復活してほしい。純也があんななだけに、氏家氏のある意味日本人的な秘めた人間性の温かさはとても好ましいのです。
わりかし貧乏くじを引きがちなセリさんは、今回もかなり酷い目にあったが、ちゃんと純也が救出。無事で良かった。これ以上分室初期メンバーが減ると純也のメンタルもヤバそうだから、セリさんとメイさんには今後も頑張ってほしいもの。
ところでタイトルの意味がイマイチわからないのだけど、音楽会ネタで「カノン」なのか?
クリスタルは?

介護日記的な・・・その6 認知症の人とごはん。の続き。 酒パック

で、続きの話である。

母がここ数週間、全く配食のお弁当に手をつけなくなってしまったところから。

しかし、今のところ体重は減っていない。むしろ増えている。
何かしらは食べている。だが何を食べているかが大問題。
ご飯は減っているのだが、それ以外に減っているものといえば、卵、牛乳、バナナ。そして問題が日本酒である。
 母はもともと人前では飲まない。お酒を飲んでいることは、基本隠していた。隠れていないのは本人も承知していたが、もともと一人で台所でこっそり飲む人だった。
証拠のブツ
 そんな習慣は今でも続いており、冬場に小さめな湯飲みに入れたお酒をレンジでチンして飲んで、体を温めて寝る。そんなくらいは許容範囲だと思っていたが、どうにもお酒の消費量が増えている。たぶん、900mlの紙パックが1週間で2本。時に3本。
 それって、一升だよね、と気付くのに大分時間がかかった。
 一週間に一升って、かなりな酒量ではないか?
 本人は、なんとなく隠したい衝動があるのかもしれない。(多分昔からだ。) 私が行く土日には、お酒がないことがほとんどで、紙パックも捨ててしまっていることが多かったのだが、貧乏性というかなんというか、赤いキャップが残っているのだ。

 認知症高齢者のアル中なんて目も当てられない。
 本人は、直前の事から忘れていくから、飲んだことも忘れてしまう。だから飲みたければなんの抑制もかからず、飲んでしまう。脱水になるのも心配だし、アル中になるんじゃないかと本当に心配だ。しかし、止めさせる手立てがない。お金を持たせないようにすれば、自分で買うことは出来なくなるだろうが、それ以外にも失うものが多いし、スーパーのレジで迷惑をかける可能性もある。
 強いて言えば、他人がいれば飲まないので、一人でいる時間を減らせば、飲む機会も減るのだが、張り付いているにも限界がある。

 ここに来て、本人のQOLの維持に飲酒問題が影を投げかけている。

 まともな食事をどうやって維持するか、と合わせて、悩ましい。

 食事に関しては、買い置き・作り置きの惣菜でも食べてくれるものもあるので、とりあえず週1回、私が行く日を増やして、夕食と冷蔵庫の面倒を見ることにした。

 これから当面は、週の中日に1回、介護の為の時間給を取り、週2回の訪問介護体制だ。

 仕事の方も大変なのだが、考えて見れば、自分の仕事の方をそろそろシフトダウンしていく頃合いなのかもしれない、と頭を切り替えた。
 職場の使える制度は全て活用して、これから介護にかける時間を増やしていく。場合によっては長期介護休暇も取る。周囲には同年代の女性も多く、みな、ひっそりと親の介護をしたりしているのだ。私が大騒ぎして親の介護をするのも、あんなやり方があるのか、と少しは周りの人の役に立つかもしれない。
 
 4人に1人は後期高齢者になる「2025年問題」。それって来年だよ、オイ。今だって十分に4人に1人なんじゃなかろうか。

 介護を社会で支えるの意は介護保険だけではなく、介護する職員を職場が支えることも含まれるだろう。

 そんなことを考えつつ休暇申請をすれば、貴方の体が心配、と心配してくれる人もいて、嬉しい。

 だけどまあ私自身は、往復の電車の中で本が読める時間が増えるからいいや、と結構嬉しく思わないでもない。

介護日記的な・・・その5 認知症の人とごはん。その闘い!?

 
 要介護2から要介護3への小さな階段を小刻みに登っているような母である。

 料理はもう2年前からできなくなっているのだが、残念なことに本人は自覚がない。5分前のことは忘れちゃうから、なんとなくお腹がいっぱいなら、「ちゃんと食事の支度をして食べた」と素で思っているもようである。
 困ったことに、その時お腹に入っているのが、バナナだろうが、おせんべいだろうが、まんじゅうだろうが、そこは関係ない。その血糖値を上げている正体は、ほれ、この日本酒であることもママある。

 炊飯釜に入っていたご飯が腐っていることを発見したのは、ちょうど2年前の夏。
 母のご友人から電話をもらって、お母さんがいよいよおかしい、と教えてもらった。近所に住む民生委員さんとも連絡を取ったところ、自治体内での見守りもあり、まだ、そう悪い状況ではなさそう、との話もあったが、念の為様子を見に行った。
 8月の最中、家の中はきちんと整えてあったが、窓もカーテンを閉め切り薄暗く、室温は30度を超えており、エアコンは使っていなかった。本人は暑くないと言い張る。そして、炊飯釜で腐ったご飯と、寝室のカーペットの茶色い大きなシミを発見した。

 これは後の話なのだが、母は近所のスポーツクラブの会員となっており、もう10年以上くらい、自宅ではお風呂は使わず、スポーツクラブの浴場で入浴をしていた。入浴の状況が判らないため、スポーツクラブに利用状況の確認をしたところ、その6・7月までは比較的順調に利用をしていたが、8月以降、利用回数が激減。おそらくこの8月の頃に一気に認知症が進行したものと推測した。スポーツクラブには「ちょっと認知があやしくなってきているので」と事情を話し、クラブへの往復で迷子になった場合や、施設内で心配な行動があったときのために、と緊急時の連絡先を登録し、その後、半年ほど利用状況を確認して、すっかりスポーツクラブに行くのを忘れた昨年夏頃に退会手続きをした。

 話を戻すと、お釜のご飯が腐っていたので、これどうしたの?と本人に聞くと、昨日の夜炊いた、という。とてもそうは思えないが、食べたの?と聞くと、食べた、という。ううむ。
 寝室の茶色いシミは、最初はコーヒーか醤油か、と思ったが、そもそも、飲み物を寝室に持ち込む習慣はないし、匂いもしない。汚したあと、本人なりに徹底的にゴシゴシ拭いたのだろう、私が久しぶりに実家に行って、惨状に気付いたときにはなんの匂いも感じなかった。本人もなぜこんな染みが、と記憶がない。しかし、後日締め切っていた寝室に入ったとき、蒸れた匂いにかすかに便臭が交じっているような気がして、ああ、便失禁したんだ、とほぼ確信した。
 推測ではあるが、おそらく痛んだご飯を食べて、お腹を壊したのではなかろうか。現在に到るまで排泄は完全に自立しているので、おそらくトイレまで持たない事態が発生したのだろう。本人はショックだったに違いない。必至になって掃除し、身ぎれいにし、その後、忘却したんだろうな〜。

 さて、そんな状況なので、食事については、最初から問題だった。
 とりあえず、ご飯を炊いて、1日三食×1パック×一週間分のご飯パックを冷蔵庫に作り置きすることにした。民生委員さんの紹介で、食事の配食サービスをおこなっている事業者さんを知り、とにかく夕食の配食サービスを申し込んだ。これらが、要介護認定の申請と、認知症外来の受診と、同時進行だった。
 最初の頃は、お惣菜を持ち込んだりもしたが、本人が買ったことのない惣菜は食べないことが判明した。配食サービスの開始で、すこし肩の荷が下りた。しかし「お弁当」を食べる習慣がない母とは、夕方の配食の度に「私は頼んでいない」「これはお前が頼んだのか」「いらない」「お金を払わなくちゃ」の問答を電話で繰り返した。
 今日は何を食べたのか、と見守りカメラで見守り(監視とも言うがナ)つつ、紆余曲折もありつつ、どうしても配食サービスの夕ご飯を上手に食べてくれないので、丁度1年後の昨年夏に、夕食時に30分だけホームヘルパーを入れて、夕食の配膳をお願いすることにした。
 しかし、何しろ認知症なので、毎日が初対面。その都度、「あなたは誰」「頼んでいない」の問答を繰り返し、いったんは定着を見たようにも思えたが、やはりなかなか上手くいかず、そうはいっても、ヘルパーさんの奮闘で、夕食の弁当を食べる習慣が根付いたようにも見えたので、いったんヘルパーさんを終了したのが、この1月。
 ・・・・で、半年は上手くいっていたように思えたのだが、この一月ほど、どうもお弁当を食べてくれなくなった。毎週末の金曜日や土曜日に母宅に行くと、ともすれば5日分のお弁当がそのまま冷蔵庫に残っているようになった。
 
 今度は認知症に強いホームヘルパーさんを入れようとは思ったが、本人の拒絶が強い。
 
 どうしようか、といろいろと考えている、のがイマココである。

☆ 追記
 で、その配食サービス事業の母体が、近隣の特別養護老人ホームであることを知り、その法人が「認知症デイサービス」も併設していることを知り、利用にこぎ着けたことができたのは幸いだった。僥倖に感謝しつつ、まずは自分と夫で見学し、その後、母も連れて見学。介護保険の利用開始と同時に、デイサービスの利用を始めた。
 最初は週に1,2日から。あとはデイサービスの空きができる度に1日づつ利用を増やしていき、1年かけて週5日のフル利用に持ち込んだ。民生委員さんに言わせれば、「ここまで順調にデイにつながるのは珍しい」とのこと。私からすれば、この法人さんに繋いでくれた民生員さんに大感謝だった。この法人さんが運営する特養を知ったことで、デイサービスを利用しながら、おいおい、ショートステイなども活用し、いずれはこの特養に入所したい、というロードマップが定まったことは、先行きを見越す上で、とても大きな安心感となった。


2024年7月13日土曜日

0491 警視庁公安J ダブルジェイ

書 名 「警視庁公安J ダブルジェイ 」 
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2020年6月
文 庫  480ページ
初 読 2024年7月14日
ISBN-10 4198945640
ISBN-13 978-4198945640

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/121837952

 冒頭から師団長が活躍しそうな前振りが滾っていたのに、ちょっと肩透かしを喰らったかも? しかし、現実世界でニュースで報じられ、これって大丈夫なのか?いや、そんな訳ないだろ? と不安が過った「駆けつけ警護」「共同防護」、南スーダン国連平和維持活動・・・は、やはり小説世界においても格好のネタであったらしい。むしろ小説だからこそ、リアルの片鱗に触れることができるのかもしれん。なお、いよいよこの巻から、QシリーズやKシリーズも読まないとちょっと置いてけぼりの感がある。 絆はすっかり純也の子分扱いのようだ。

 それにしても、相変わらず荒唐無稽なのは承知とはいえ、全体的にストーリーが荒くはないか? かなり無理筋に見える部分があって、なんだかなあ????って感じで、突き抜けて楽しむことができなかったのが残念ではある。
 一番の「なんだかな」は、例の「Jファイル」の中身を3人それぞれ捨ててしまっていたこと。あまりにも軽い。曲がりなりにも超高度な訓練を施された殺人部隊のファイルだよ。送り出してポイできるような官僚がいるんだろうか? また、そのファイルを官僚3人だけが持っていたという設定もとってもザル・・・・・日本の官僚組織ってたぶんそんなんじゃない・・・・と思う・・・・ような・・気がする。とにかく違和感アリアリである。

 単に荒唐無稽なだけなら、割切って楽しめるんだけどな。ううむ。

これがウワサの?
ハイパーデッキ
sig750  アサルトライフル
当然、普通の日本人が国内で持ってちゃダメ
悪いフランス人オヤジからのプレゼントだろうか?
 あとね、さすがに富士演習場で、スタンドまで見晴らせる状況で高所作業車からのライフル狙撃はないだろう。双眼鏡やら単眼鏡持った自衛官や観客がどれだけいると思ってるんだ。

 民間人に対しては護るべき存在としてとことん優しく、兵士に対しては、その矜持のありようも含め、自分に対すると同等に厳しい純也ではあるが、その生死を峻別する物差しは那辺にあるのか、というのも気になる。

 あと、今作では、セリさんが彼女と出来ちゃえばいいのに!と念じながら読んだのだが、残念ながら、願いは通じなかったもよう。

 あの状況で、自分が盗聴されていたにもかかわらず、その盗聴器を分室の備品だから、と回収してくる師団長は、相変わらず良い味出している。好きだ♪


 とにかく、事件が起きて、分室が始動し、張り込みやら潜入やら、そうこうしているうちにKOBIXミュージアムで大規模イベントやって、フランス人のオヤジが好き勝手なことを言いちらかし、ラストは純也が超絶技巧を発揮って、ストーリーの流れがいつもおんなじ・・・・・これはきっとマンネリを楽しむ作品なんだろうな、と思ってる。

2024年7月7日日曜日

0490 警視庁公安J シャドウ・ドクター

書 名 「警視庁公安J オリエンタル・ゲリラ 」
著 者 鈴峯紅也
出 版 徳間書店 2018年11月
文 庫  442ページ
初 読 2024年7月6日
ISBN-10 4198944091
ISBN-13 978-4198944094
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121709215

 前作が70年安保・大学紛争から、その後の左派過激派ゲリラにつながる物語とすれば、こちらは東南アジアのベトナム戦争、カンボジア紛争からかなり強引に引っ張ってきた話。
 そもそも純也のキャラクターが荒唐無稽過ぎるのを楽しめるかどうかが勝負なこのシリーズではあるのだけど、カンボジア紛争のクメール・ルージュから、ブラックチェインに繋ぐのもえらく力業だ。おまけに犬塚の息子、啓太の心臓まで絡める。それってどうなのさ。
 ちょっと安直だとは感じたよね。犬塚の人格を貶めてないか?と感じてしまったよ。人の金の八千万円でダーディーな臓器を「買った」犬塚・・・・ってちょっと受け入れ難い。
 息子の命のために「自分の」人生は棒にふっても構わないと決めた犬塚ではあるが、息子の体内に“殺された”臓器を入れることまで良しとするとは思えない。途中まで、犬塚は「知らなかった」ことが前提の物語だと思っていた。だけど、犬塚がアングラの臓器コーディネーターと知ってかつヤクザと関係していたって話では、前提条件が変わってしまう。
 そんなわけで、この巻は、ワタシ的にはとてもいただけない出来でありました。

 だが、まあラストの数ページで「持っていかれた」感はある。

 そこで登場するのか!
 「ホヤ」のくだりは伏線だとは思ったけど、日本の国内にグルメなフランス人を満足させるフレッシュチーズがどうしても思い浮かばなかったため、半信半疑だったのよ。
 純也があまりにもつれないので、ついに近くにまで出没したか。
 そして、爽やかなフレグランスを残して風の如く去って行くあたり、ああ、この流れでまた、ワタシは次巻に引っ張っていかれるのね、とここでも著者、鈴峯サンの「力業」を感じたのだった。