著 者 Robert Crais
初 読 2017/8/30
だがこのシリーズ、本邦未訳の7作目『Indigo Slam』から10作『The Last Detective』までの4作は名作として誉れ高い。コールとパイクの、お互いに対する堅い友情と献身が刻まれているのこの作品群を読まずにいるのは、あまりにも惜しい。そこで、無理を承知でペーパーバックを入手した。(私は英語力が低い。)でも辞書を引くのが面倒だったので、読んだのはもっぱらKindleで。ありがとう辞書機能。以下ざっくりあらすじ。
ルーシーがロスに引っ越してきた。コールが引越しの手伝いに精を出していると、パイクから呼び出しがかかる。友人のトラブルに手を貸して欲しいという。パイクがプライベートのトラブルを持ち込んでくるのは例のない事で、訝しみながらもコールは駆けつける。パイクはコールをフランク・ガルシアと引きあわせる。トラブルとは彼の一人娘であるカレンの失踪だった。ガルシアから、パイクがカレンのかつての恋人であり、いずれパイクは自分の一族に加わると思っていた、と聞かされたコールは驚く。
捜索を始めて程なく、カレンが死体で発見され、事態は犯人の捜索に移るが、犯人がパイクを偽装したことによって殺人の容疑はパイクに向けられる。
終盤、パイクは銃撃戦で重傷を負ったまま姿を消す。逮捕されれば残る人生を刑務所で過ごさなければならない、と言うパイクをコールは敢えて逃がすが、パイクはだれもが失血死を予期するほどの傷を負っていた。また、コール自身も跳弾によって負傷する。コールは病院で応急手当を受けるが、医師は肩の手術が必要だと言う。
翌日、コールは顧問弁護士のチャーリーに伴われ市警本部に出頭する。殺人犯(パイク)の逃亡を教唆・幇助した罪を受け入れてコールは犯罪者となり、私立探偵のライセンスを失うのは確実となった。それを受け入れたのは、自分の法廷闘争に拘っていてはパイクを捜索する時間が失われるからだった。翌日、肩の再建手術を受け、退院するとすぐに、コールはパイクを探し始めるが消息はつかめない。事件の渦中にあってコールはルーシーとだんだん疎遠になっていく。やがてコールの事務所に探偵免許と銃器所持許可を剥奪する州からの公式通知が届く。
ガルシアがコールを夕食に招待した。ガルシアがコールに渡した封書の中には、コール名義の私立探偵のライセンスと武器の携帯許可証が入っていた。ルーシーがコールのライセンス回復の為に、コネのあるガルシアに働きかけていたのだ。「我々は君を愛している」「そしてあの美しい女性も、君を愛している」ガルシアは言う。コールは声をあげて泣く。自分の為にではなくパイクのために。
失踪していたパイクの居場所が分かり、コールはその場所に駆けつけるが、その後からロス市警のSWATが到着し、ライフルが二人を取り囲む・・・。
個人的には銃撃戦の後、病院で応急手当を受けたコールがやっと家に帰り、ためらいつつルーシーに電話を掛けるシーンがツボ。ダイヤルするだけでも傷が痛む、と思いつつルーシーの声を聞きたくてコールは電話をする。しかしルーシーは必ずしもコールが期待した優しい声を掛けてはくれない。体の右半分が全部痛む。「傷が痛いんだ」と言ってしまえ!と思うが、そういう言葉が出てこないのがコール。電話のあと黒猫がやってきてコールの包帯を舐める。恋人がいても、やっぱりコールをなぐさめてくれるのは黒猫だけ。コールの根深い孤独が垣間見える。