原 題 「STALKING THE ANGEL」1989年
著 者 ロバート・クレイス
翻訳者 田村義進
出 版 新潮文庫 1992年3月
初 読 2017/08/07
一人クレイス祭り続行中。C&P第2作。
正直妙な日本文化には閉口するけどまあそれはいい。コールが初めから最後まで関与しないほうが、ミミの為には良かったんじゃないの??というのは言わぬが花。
今回の仕事は盗まれた日本の古書「葉隠」の捜索。手がかりを求めて乗り込んだヤクザの事務所でいきなり刺青やら小指のない男やらと遭遇して乱闘寸前。ノリは三文アクション映画である。そうこうしている内に依頼者の娘ミミが誘拐されてしまい、護衛に失敗したと落ち込むコールが実にカワイイ。
内心心配して様子を見に来るパイクはさらに良い。
事件は例によってどんどん深刻化。ついには殺人に発展。事態を阻止できなかったことをコールは悔やんでさらに落ち込むが、そんなコールに守護神パイク。
酔っ払ったコールがパイクに電話を掛けた30分後には瞬間移動したかのように居間にいて、台所でオムレツとイチゴジャムトーストを作り「こっちへこい」。黙って食べたコールに「話せるか?」そして、コールの話を微動だにせずに聴くのだよ。
C&Pの何がいいって、この二人の関係性がいいのだ。コールもパイクも基本的にサバイバーで、辛ければ辛いほど、それを言葉にできなくなる。(幼少時から周りの他者(親や大人達)に助けられた経験が乏しいから。)それをわかってるパイクはまずはコールに食事を食べさせて、コールの心のハードルを下げてから「話せるか?」と問うんだよね。さりげないシーンが胸に来る。
今回のパイク語録。
C「まずいな。飛行機に乗るつもりかもしれない。」
P「だいじょうぶだ。撃ち落とせばいい」ほんとに出来そうで怖い。
「葉隠」は秘伝なんで読んで覚えたら本は燃やせと伝えられていて、だから原書は残っておらず伝承されているのは写本で、しかも何冊もあるんだ、とか、写本である以上、文化財的価値はさておき、精神的価値は、そこらの出版物と大して変わらず、そんなもののために日本人は殺し合いはしないだろう、とかはこの際どーでも良い。
サムライは紅白のハチマキはしないし、ソバ入りのミソスープは勘弁してほしい。でもいい。どーせ亜米利加人の描いた軽めのミステリーなんだから!コールとパイクが格好良ければそれで良いのだ!
【再読C&P祭り!『指名手配』刊行記念】
初読時はコールが好きすぎて興奮状態だったが、今回はさすがに落ち着いて読めた。
その分、コールの男っぷりと優しさが染みわたる。依頼人の娘ミミの境遇に本気で腹を立て、心底心配して力を尽くそうとするコール。事件の結末は苦すぎて、どれだけ酒を飲んでも足りないが、「苦痛を取りのぞいてくれる者が愛してくれる者なら、それはあなただ。」というジリアンの言葉は最大の慰めだろう。ハガクレやヘンな日本文化には今回も目をつぶる。
「そこに置いてあるウィーバー社製のバーベキュー・グリルの下に、ネコはうずくまっていた。大きくて、意地が悪くて、真っ黒。片方の耳は立っているが、もう一方の耳は横に倒れていて、そこにクモの巣のような白い傷跡が残っている。誰かに撃たれたのである。それ以来、まともではなくなった。」
コール若かりし頃から同居している黒猫さん。「わたしも11ヶ月ヴェトナムにいたが、・・・」「ヴェトナム以降、おまえさんは自分自身の子供の部分にしがみついてきた。」2作目は、過去の従軍体験への言及は少なめ。カルヴァーシティの射撃場の主リックは、海兵隊に12年いて、そのうち8年間は射撃班に所属。そんな彼が嬉しそうに目を細めて眺めるパイク。そういえば、コールの年齢その他はあらかた推測できているが、パイクは何歳なんだろう。
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