著 者 ジャック・ヒギンズ
翻訳者 菊池 光
出 版 早川書房 1997/4
初 読 2017/10/20
作戦が失敗し部隊も犠牲になったきっかけは、部下が子供を助けて命を落としたこと。そのことがどこか誇らしげなシュタイナ中佐だった。そもそも、作戦が成功するか否かは、大して問題ではなかったのだ。
ナチスに反感を抱き、ドイツの敗戦を確信しながら、何の為に戦うのか。この戦争は命を落とす価値があるのか。彼らは自問しつつ、それでも戦いの中に身を投じ、すべてを賭して戦う。
戦争の無残と敵味方に分かれて殺し合うことの虚しさ、そして誰もが自分の人生を歩む人間であることを描き切った名作。オルガニストの兵士や、バードウォッチングが趣味な兵士、平時の素顔を知ってしまったことで、いっそう、戦争のむごさが身に染みる。緻密に編んだはずの編み目が少しづつ綻んで、一気に破綻していく過程が悲壮だ。
人間の無能と衝動だけは予測がつかない。
そしてマックス・ラードル中佐に惚れた。軍服の着こなし、まるで制式であるかのような眼帯、黒手袋。完璧だ。保身もするし、ヒムラーの前では心臓がバクバクする人間味がまた良い。鷲が飛び立つ前までにラードル中佐を求めて3回も読み返してしまった(笑)。中盤の一文“ラードルは後日妻に語ったように” からラードルが生きて妻に再会出来たらしいことが分かるので、読んでいてせめて気持ちが救われる。マックスとクルトの友情が良い。マックスの体を気遣うホーファの忠誠、冬季戦線で失った部下達への思い。台詞の一つ一つに心を打たれた。名作です。でも中盤は、リーアムのおいたが過ぎるのが読んでいて辛く、読書スピードが落ちる。敵地に先行したリーアムが衝動の赴くまませっせと地雷を埋設してるし!!フラグ立てるし!!マックス、これは人選ミスだよ。でも終盤は、そんなリーアムでさえ格好良く見えてきて、自分に驚いた(笑)。
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