著 者 オースン・スコット・カード
翻訳者 田中一江
出 版 早川書房 2013年11月
初 読 2017/12/07
字がデカい。そしてこの薄さで上下巻。この本が文庫一冊1600円だったとしたら絶対に買わない。ハヤカワに足元見られてる気がする。(多分気のせいではない。)
77年の作品。インターネットや「デスク」という名のタブレットPCの描写や、騙りを駆使した煽り・炎上行為などネットワーク社会の予測は見事だと思う。軍のコンピューターが人間のコントロールを受けずに独自に動いているらしい描写もあり、そのあたりどうなっているのか気になるところ。
好みの話をすれば、この話は好きじゃない。いくら天才児とはいえ、6歳の子供の扱いじゃない。天才三兄弟の兄は悪魔、姉は天使、エンダーは人間の類型。左肩と右肩の囁きの間で成長していく人間譚とも。
でもでも冒頭の喧嘩とか兄との確執とか、6歳児の描写としてはエグくてドン引きする。いやいや無理だろこのシステムは。エンダーがせめて10才ぐらいの設定だったら無理なく読めたと思う。それでも 強引に納得させられ、最後にはうっかり感動までさせられそうになったという、なんだか著者に力業でねじ伏せられたような読書体験(笑)。
星間戦争を完遂するためのシステムとしては色々と問題ありそうな気がするんだけど、ついうっかりまあいいか、って思わされてしまった。6歳児になんてことを!とか思う私のような読者には、最後に児童虐待裁判云々でガス抜きまでするし。ちょっとえげつない。グラッフ大佐がいろいろな意味で安全弁になっている。
ラストはSFというよりはファンタジー。なぜエンダーと女王が感応できたのか謎だけど、バガーの感応力は特定の知性に絞ればそういうことも可能なのかも。もしくはニュータイプ?
まあ、そんなことは本筋には関係ないか。
人間は、殺さないことを選択することによって自分が殺されることもあえて受け入れるか、もしくは殺すことを選択しその結果の重みを引き受けるか、の択一であって、自分を守る為なんだと(内心)叫びながら虐殺して、「殺したくなかったんだ!相手がいけないんだ!」と主張するのは卑怯者の詭弁でしかないのだけど、エンダーは最後に、自分の行為の責任を受け入れる。この時点でまだ彼は生物学的には子供ではあるが、精神的には大人になったということなのだろう。その選択は重い。
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