2017年12月21日木曜日

0077−8 ファイナル・ターゲット 上・下

書 名 「ファイナル・ターゲット 上」「ファイナル・ターゲット 下」 
原 題 「The Enemy: (Victor the Assassin 2)」2012年 
著 者 トム・ウッド 
翻訳者 熊谷 千寿  
出 版 早川書房 2013年3月 
初 読 2017/12/21


 読み友さん方から、「ビジネス書のタイトルだったら『仕事の9割は段取りで決まる!』(暗殺者編)」とか、「超絶イカしたお仕事小説」との評を得ているこのシリーズ。とにかく、これだけ集中して徹底的に準備できたら、なんだって上手くいくのでは、と思える偏執狂的周到ぶりである。 

 さて、 死闘から7ヶ月にしてヴィクターが仕事を再開。「殺すにはいい朝だった。」超クールと思いきや?びっくりの展開でつかみはOK。
 これまでフリーランスで生き延びてきたヴィクターは、やむを得ぬ経緯でCIAを雇い主として受け入れることになった。しかし情報を与えられず、不利な条件での仕事を強いるハンドラーへの苛立ちは募る一方。
 次々と標的を与えられ、この仕事の後は解放するという餌でつられるが、無理を強いられた挙げ句準備時間不足で不確定要素の強い作戦に第三勢力が乱入。「疲れた。(略)最悪の結果になった。ヤムートは逃げ、第三者の監視チームを殲滅し、その際、傷を負った。」 仕事道具=銃器その他諸々、微に入り細を穿つ執拗な(笑)描写がイカしてます。いや、私は好きだけど。
 街に溶け込む服装の選択はジェントリーより洗練されてる。本人も都会的なセンスのいい服装が好みだと自覚あり。でもセンス良すぎるとかえって目立つからそこは地味目で上品なチョイスで。
 今回は彼女(?)も登場。でも彼女にするまでに何ヶ月も身辺調査をする当たりがやっぱり偏執的。ちょっとヴィクターの寂しさもうかがえるエピソードではある。前作の不器用ぶりはどうした?と思わないでもない。 
 ヴィクター、はっきり言って好みだ♪ どっちかっていうと、ツッコミどころ満載のジェントリーよりも好きかもしれない!他の皆様も書かれてますが、ビジネスへの徹底ぶりは見習いたい部分あり。準備にこれだけ徹底すれば、さぞかし仕事は楽に回るのだろう、とふがいない我が身を省みる。さて、ここまでが上巻。でも下巻を読み終わってしまったら、続刊が翻訳されないシリーズをまた一つ抱えて、ツライ日々を送ることになるのだ。

 狙撃シーンの冴え渡る描写、クールなのにどこか人間味を感じさせる会話。追い詰められるほどにヴィクターは格好良くなっていく。プロクターの詰めの甘い計画のせいで某世界最恐組織の人間を殺害する羽目になり、恨みを買ってしまう。数少ない友も敵の手に落ちる。まさに八方塞がりだが、自分を狙う殺し屋チームには冷静・冷徹に対処。手の内を明かさない調教者に対しては強引かつ超強気な手法で揺さぶりをかける。(ここ、好きだ。)
 ここに至ってやっとプロクターとそこはかとない信頼関係も見え始めて、今後の展開が実に気になるところだ。 それに加えて、傷つき敵に追われて無防備にも長距離バスの後部座席で疲れ果て眠りにおちるラストときては、次作が気になること甚だしい。あちらではすでに7作(多分)が出版されているが、本邦では2013年以降刊行が途絶えている。続きを出す気ないのかハヤカワ!!がんばれハヤカワ!!できたらグレイマンと、ヴィクターを半年間隔で交互に出版しくれると、グレイマンファンもヴィクターファンも必ず買うので、WINーWINだと思うのですが、如何でしょうか?

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