原 題 「The Hunter (Victor the Assassin Book 1)」2010年
著 者 トム・ウッド
翻訳者 熊谷 千寿
出 版 早川書房 2012年1月
初 読 2017/12/14
いきなり訳もわからないままに、パリの町中で熾烈な銃撃戦。冷徹な凄腕の殺し屋にさらに暗殺集団がけしかけられたことしか判らない。いきなり引き込まれる。 この男、毎年少なくとも年末までには懺悔をすると決めているらしい。かなり敬虔なカトリックらしい。
「この先ずっとCIAのターゲットのまま生き続けるのだけは、死んでもいやだった。」これは、コートランド・ジェントリーへの当てつけか?いや、案外敬意かもしれん。
そのコート・ジェントリーが直感と直情の人であるなら、ヴィクターは論理と理性の人。尾行をまく手順も戦闘能力も同等だが、ヴィクターはまるで精密機械。
それが隠れ家にアンティークのグランドピアノを置き、ショパンを弾いて緊張を解すなんて粗雑なアメリカ男にはとても真似できまい(笑)。殺し屋の性格にもお国柄が現れてる。
そのピアノも、敵の襲撃で木っ端微塵になってしまうところがアクション映画そのもので映像的。ご多分に漏れずSVRやらロシア人が登場して、いよいよ混戦の模様を呈するあたり既視感があるが、こういうのは、面白ければ良いのだ。そして、十分に面白い。
ロシアパートが一番好きだ。ヴィクター(ヴァシーリー)はロシア生まれの暗殺者なのか?元KGBの工作員なのかな?この話だけじゃ回収しきれないであろう伏線たっぷりでシリーズ化の意欲を感じる設定チラ見せ(笑)。そそられる〜〜〜♪
完璧主義、冷徹無比、暗殺者という職業に徹して何カ国語も駆使し自分を消し、徹底して無感動・無表情なヴィクターが、レベッカとの関係の中でだんだん人間味が出てくる。職業的本能と思いきやただ不器用なだけなのか?
「これしかまともに出来ることがなかった」とはたしか、ジェントリーも似たようなこと言ってたような?ついグレイマンと対比してしまうのはやむを得まい。
ただ生きる為に自分の技量を用いて来た男が、その能力を賭けて主体的に欲したものは、復讐。
3人の敵対する男が極小のエレベーター前空間であり得べき事か鉢合わせ。
ぶん殴られ、ぶん回されるアニスコヴァチが見事なざまあ見ろ的小物ぶり。その後のカーチェイスの疾走感が凄くて映像がありありと脳裏に浮かぶ。殺し屋とヴィクターがお互いに敬意を示すシーンにこれ、映画で見たいわ〜。
アルヴァレズが良い味出してる。有能で勤勉で、報われても報われなくてもベストを尽くす苦労人。アルヴァレスとヴィクターは気が合いそうな気がするんだけどなあ。この二人の共闘を読んでみたい。続編に期待する。
ドライでクールなプロフェッショナルなヴィクターさんの活躍をもっと見たいのですが2作止まり、竹書房さんとかハーパーコリンズ・ジャパンさんで拾ってもらえないですかねえ。(猿吉君)
返信削除ようこそおいで下さいました、猿吉君様。読みたいですねえ。続きを。常々言っているのですが、グレイマンと半年ごと交互に出してくれたら、絶対どちらの読者も引っかかるのに!早川は商機を逃してませんかね?それとも版権取れない事情でもあるのか。。。。こんなに伏線もりもりで放置される読者の身になってほしい!
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