3〜4月にはまったコミックがこちら。ヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』
BLのレーベルだけど、内容的にはどうなんだろう。“ボーイズ・ラブ”というとつい、青くて甘美なのとか、背徳的でエッチなのとかのイメージ(←個人的思い込み)抱いてしまうのだが、これは、どっちかってーとそーいう話ではない。ヤクザと暴力とセックス。
私はこういう設定の話は仕事柄、児童虐待の文脈で捉えてしまいがちなのだが、2巻で襲撃されて死にかけている矢代の
「俺は 全部受け入れて生きてきた
何の憂いもない 誰のせいにもしていない
俺の人生は誰かのせいであってはならない」
という静かな矜持にはひどく心を打たれた。
色ごとの描写は暴力的でガツガツしていて、あまり艶っぽくはない。基本セックスというよりは暴力描写だし、まともに愛し合っているわけではないのだから、色っぽくなくても当たり前だ。一方で愛があるはずの百目鬼のセックスは、優しくはあるが一方的で、とても残酷でもある。愛情を口にしながらも強制的で矢代の抵抗は歯が立たず、矢代にとっては継父によるレイプの記憶を呼び起こす。本能的に恐怖と吐き気を催しても、百目鬼がそれを気にかけることはない。
矢代にとっては、暗黙のルールと性欲処理にすぎないという「限度」がはっきりしたセックスがよほど安心なのだろうと思う。見ようによっては、百目鬼のセックスはほとんどレイプだ。愛があれば良いというわけではないのだが、若い百目鬼は心酔する矢代を失いたくないあまり暴走してしまう。
開けてはいけない記憶の扉が開き、矢代は自分を守るために百目鬼を捨てざるを得ない。百目鬼をカタギの世界に返す、というのも理由の一つではあるかもしれないが、そちらは表面的なものでしかない。
6巻で、抗争を偽装した三角の傘下における矢代排除の企みはひと段落し、矢代の所属した組は潰されるが、矢代は生き残る。そして、4年後。7巻は三角と盃を交わした子分であることは変わらぬながら、組を持たない裏カジノ経営者に収まった矢代が、百目鬼と再会して動き出す。4年の間に、研ぎ澄まされた刃物のようになった百目鬼は、矢代をどのように愛するのだろうか。この二人がどのように落とし前を付けるのか、現在進行中の連載からも目が離せない。
0 件のコメント:
コメントを投稿