
書 名 「君を転生させないために(1)」
著 者 佐伊
出 版 新書館 2025年6月
単行本 304ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221440
ISBN-13 978-4403221446
『竜王の婚姻』で出会った佐伊さんの作品。
『竜王の婚姻』のスケールの大きい大河っぷりに敬服し、こちらも読んでみようと入手してあった。この度、やっと読了できた。
そもそもBLとして創作されている作品ではあるが、1巻目はまだそれほどそっち方面は進展しないので、これ、BLでなくて、普通の中華ファンタジーでも良かったのでは?とちょっと思ったんだけど。2,3巻まで通読したあとではとてもそうは言えませんな(^^;)
呪術の設定とか、世界観がよく作り込まれていると思う。イメージは古代中国の西域の小国二つって感じだろうか。大中華って感じではない。国の規模や組織も小さい。規模的にはむしろ日本の平安朝とか、朝鮮王朝大河ドラマくらいな印象。王宮と市井も近いし、王族と民間人も近い。国も小さく、数日の騎行で国と国を行き来できている。
登場人物の名前が、漢名風なのに、全部カタカナなのはちと辛かった。登場人物がさほど多くならなかったのが幸いだったが、これ以上多くなったら、多分誰が誰だか分からなくなった(苦笑)。あと、個人的な感覚の話ではあるが、
「大夫」を“たゆう”と読ませるのだけは、どうしても受け付けられない。花魁や文楽じゃないんだから、ここはどうしても“たいふ”と読みたい。ていうか、どうしても“たいふ”“だいぶ”としか読めず、ルビを無視して勝手にそう読んでいた。
で、1巻目は主人公である「延(えん)」国の年若い呪術師ソラが、延国王の命令で敵対する隣国「耀(よう)」に行くところから。
耀の国王シゲンは前世で呪いを受けて転生した忌人(きじん)で、呪いのために死ぬことができず、すでに110歳を超えている。体は老い腐り、異臭を放っているのに死ぬことができぬ。しかし忌人の呪いを緩和するには「解呪」という技が必要だが、それは呪術師しか施すことができない。耀国はすぐれた呪術師が絶えているため、隣国延に呪術師の派遣を求めてきた、という。ソラは、家族を質にとられた形で、あわよくば耀国王シゲンの命を奪う下命を受け、耀国に入った。その耀国で、ソラが見たもの、聞いたもの。感じたこと。シゲンの身の呪いと、耀国と延国の歴史。シゲンがこれまでに成してきた国づくり。そして、蠢く陰謀と呪術。
これは、大呪術合戦・一大スペクタクル・歴史ファンタジー大河か!?と思いきや、実はこれも壮大な前振り?であった。
書 名 「君を転生させないために(2)」
出 版 新書館 2025年7月
単行本 272ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221459
ISBN-13 978-4403221453
2巻冒頭から大きく事態が動く。耀王宮に延の間者が入り込んでいることが分かる。そして、1巻で、主人公の呪術師ソラが密かに仕掛けた罠が始動する。さて、間者はあの2人の内のどちらか・・・、と思っていたが、さすがにどちらかまでは分からなかった。私の予想ははずれ。そっちか! 正体の分からない延の術者との呪術の掛け合いで激しく消耗したソラは、シゲンの呪いの暴発に「解呪」を施すも、浄化の力及ばす、シゲンから吸い取った呪いを我が身に遺してしまう。
忌人であるシゲンは身に纏った呪いが相手の命を奪ってしまうために、常人には触れることができず、孤独な生を生きてきたが、護符を身に刻んでいるソラだけは普通にふれあうことができた。シゲンはソラを深く求めるようになり、ソラもまたシゲンを愛すように。シゲンの呪いに犯されて先のない命であることを悟ったソラは、忍び寄る死に怯えつつ、残った時間をすべてシゲンを慈しむことに注ぎ込みたいと願うのだが。
当初は、シゲンの宿命の敵はソラなんじゃないかとも思っていたのだが、ラウレンの様子が変わってきたところで、これは違うな、と。そして、2巻が終わるところまでは、シゲン&ソラvs延国呪術師(ラウレン、その他)の呪術大戦的なスペクタクルになると予想し、シゲンとシゲンの呪いを身に受けたソラが助かる道は、もうシゲンに呪いを掛けた呪術師を仕留めるしかない。敵の延国呪術師を破ることで、シゲンとソラが呪いから解放されて、二人幸せになるんだろう、と思って(思い込んで)読んでいたのだが。
書 名 「君を転生させないために(3)」
出 版 新書館 2025年8月
単行本 256ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221467
ISBN-13 978-4403221460
ついに、ラウレンが耀国に乗り込んでくる。シゲンへの輿入れ、もしくは人質として。そして、ラウレンを盲信するソラに対して、シゲンをはじめとする耀国の人間は、なにやら思うところがありそう。このあたりから、ソラが政治の中枢の動きから蚊帳の外に置かれ、ソラパートとシゲンパートが分離。
そして物語はシゲンとシゲンの敵との闘争で大激震するかと思いきや、ラウレンの自滅で案外そっちはあっさりと決着し、その後、物語はロミオとジュリエットみたいな怒濤の愛に突き進む!
そして、読み終わってみれば、これは呪術合戦などではなく、清廉な愛の物語だった。
ちょっと肩透かしをくらった感じがしないでもないんだけど、なにより、一生懸命悩み、愚直に現実に直面し、危急の時には迷わず行動するソラがなんとも健気で美しく、ソラとシゲンの愛が深く、清く、麗しいのだ。
「シュウキ=ラウレン」がちょっと小物っぽかったな、とか、シゲンが自分で自分に掛けた呪いの「延」はどうなったんだろう、とか、なぜ、忌人の転生は1回限りなんだろう、とか、こまかいハテナはいくつかあるんだけど、とても美しいラブストーリーだった。呪いを受けて死ぬと悲惨な転生を遂げる、という設定が、どのように生きるのか、どのように愛するのか、そしてどのように愛する人を死なせるのか、という大きな命題になって、主人公たちが悩み、苦しみ、決断し、愛する。これがとてもリアルに感じられた。
ラストの後日譚的な「君が転生するために」で、個人的に気になっていたカイリとメイロウの初恋カップルも無事成婚に至ったし、貴方が次の世でも幸せであるように、と言祝ぐソラの思いに、読んでるこちらまで、せつなくも甘やかで幸せな気分になることができた。素敵なストーリーだった。
この物語では語られないけど、愛しあうソラとシゲンがやがて、長くはない生を終え、二人身を寄せ合い、最後まで相手への思いやりと愛を語らいながら、一緒に息を引き取るシーンを想像しちゃって、なんだか読後感はしんみりしてくる。
(あと、心の声。ロウゼン、受けかよ・・・・)


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