著 者 月村了衛
出 版 早川書房 2017年9月
単行本 496ページ
初 読 2023年11月27日
ISBN-10 4152097094
ISBN-13 978-4152097095
読書メーター https://bookmeter.com/books/12283179
どうにも忙しく、じっくり腰を据えてハードカバーを読む時間をとれなかったため、思いあまってオーディブルに手を出した。
だって、Kindle版もまだ高い・・・・(T-T)
女声の朗読も、声色を使った台詞回しも、“はっ”とか“うっ”とかの息をのんだり、呻いたりの擬音(?)も、不慣れな私には聞いているのがとてもツライ。だがしかし、炊事をしながら、掃除をしながら、縫い物をしながらでもちゃんとストーリーは頭に入ってくるし、時間を複線で使ったようなお得感は苦手を差し引いても素晴らしい。
と、言うわけで、3日がかりで全部聞き終え、あとは何日かかけて文字を追い直す。
警視庁各課との捜査協力体制が敷かれて登場人物がざくざくと増え、汚職・贈賄・巨額脱税と予告殺人の並行捜査。手が足りないので国税庁も巻き込んで。狙うのは国策プロジェクトとも言うべき“クイアコン”。革新的な量子通信技術の実用化=次世代通信規格化を目指す巨大プロジェクトに絡む「敵」、そのクイアコンを隠れみのに蠢く策謀、それを狙う中国共産党とその諜報組織、「敵」が雇った殺し屋“狼眼殺手”、そして「敵」の敵たる和義幇と、彼らが契約した暗殺者集団、そして、またしてもIRF処刑人がライザを狙い・・・・・と、あまりにも複雑で、ストーリーの七転八倒ぶりときたら、読んでいて頭が煮えそう。
銀狼のエピソードとか、ちょっとうざったかったが・・・・、って言うか銀狼ことエンダの動機の分析がアレってどうなの、とか言いたいことはある。あと、いちいち痩せ犬の七ヶ条を持ち出すユーリもかなりウザい奴だと私は思うのだけど、でもまあ、ここにツボらない人間は機龍警察を読む資格はない、よな。多分。
今回は、沖津の私生活の一端(あれが、私生活と言えるのであれば、だが)が明らかになったり、沖津の信念と覚悟の一端をチラ見せしたり、龍機兵の秘密の一部が特捜部のメンバーに明かされたり、とシリーズ全体の中での進捗もある。あと、前巻で惨い目に遭った城木の挙動がいちいち気になり、「信じてる。城木さん、私は信じてるからね。」とドキドキしていたんだが。
この点については、予想を裏切る事態で収束・・・・・というよりは、次巻に持ち越しとなった。突入要員3人も、幾多の作戦行動を経て、だんだんチームとしてまとまってきたよう。
それにしてもだ。ライザの「私は警察官だ」はやめれ。やめてくれ。
今作で自覚したが、こういうところ、私は月村了衛とは決定的に合わない。私は熱血は苦手なの。ハードボイルドが良いの。武士は食わねど高楊枝、ぐらいが丁度良いの。
ライザの独白などは、背筋にゲジゲジが歩いてるんじゃないかってくらい、ぞわぞわしてきゃーってなります。文字を読んでいる分には、こういうところは敢えてサラっと読むのであまり気にならないが、じっくり朗読されてしまうと、かなりキツいことが今回判った。(笑)
それでも面白い。読まずにはいられない。当然次巻も読む。それが機龍警察。そして月村了衛。