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2026年3月21日土曜日

0586〜89 精霊を宿す国

書 名 「精霊を宿す国(1)青嵐」
著 者 佐伊          
出 版 リブレ 2023年8月
単行本 312ページ
初 読 2026年03月02日
ISBN-10 479976389X
ISBN-13 978-4799763896
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133790956


 これまでに、『竜王の婚姻』『君を転生させないために』と佐伊さんの作品を読んできて、三作目の「精霊を宿す国」を遂に入手した。
 この作品、これまでに読んだ中で一番好きだ、と思う。
 一読目は、とにかく何が起こるのか、どうなるのか?と先を知りたくて、駆け足で読み飛ばしたので、ラストまで読み終えてから、最初に戻ってじっくりと精読した。なにしろ登場人物が多いし、血縁関係や縁戚関係が入り組んでるので、読みながら人名や用語や設定をメモった。それもまとめようと思っていたが、著者の佐伊さん作の設定集/人物集が「なろう」の作品サイトの冒頭にアップされてるのに気がついたので、そちらを有り難く活用させていただいた。

 でもって、一度最後まで読んた後に最初から読むと、物語冒頭のキリアスの行動がいかに、いかにヒドいか良く分かる(^^ゞ 
 初読時とは全然印象が違うので再読オススメだ。

 オルガの出生から現在まで、いかに多くの人がその健やかな成長を切望し、遠くに、近くに見守ってきたか。そしてそれをいかにキリアスが踏みにじったか!初読時とはまるでちがう切なさをひしひしと感じる二読目である。
 依代と操者の二人一組で一体の精霊を操作する、そしてその二人の「共鳴」の過程はセックスに通じる感覚である、ってことで全編ややエロい描写が散らばってるが、なにしろ、それも「修行」の一貫なので笑い事ではない。エロ全開のラグーン師匠は大変いい味だしてる。(笑)

 で、さて、一巻目は、14歳になった主人公オルガがおっかなびっくり、精霊師になる修行のためにお山(千影山)に入るところから。
 お山に生息する精霊「こだま」はまんま、宮崎駿の『もののけ姫』のイメージで。そして傍若無人な第一王子キリアスとの出会い。大切に育てられた国王の長男が、ちゃんとその血筋ゆえに、育ちゆえに、能力ゆえに、大いに傲慢ワガママに育っている。お手軽ファンタジーにありがちな由緒正しい品行方正な王子様❤️ではないのだ。こんなところも何気にリアルである。
 王位継承権を奪われたからには、ぜったに神獣師になってやる、と手段を選ばず、最短距離で「青雷」をひそかに身のうちに宿すオルガを、強引に我がものにしたキリアス。本当にダメな子なんだが、そのあとはひたすら精進するあたりはやはり、ただのダメっ子ではない。ちゃんとクルトにお仕置き喰らってるしな。ちゃんと努力も出来るし、譲れないところ以外では、師匠の教えに従う素直さもあって、そういうヤツが好きな師匠連中の評価は爆上がりしてるし、ただただ年齢相応な(よりやや幼い)だけのオルガが比較されて可哀想ではある。

 そして、なぜオルガは青雷をその身に宿しているのか。オルガの出生の謎は、まだこの巻ではチラ見せ。そして、オルガとの出会いでは、とにかく恐ろしいばかりのカディアス王(キリアス父)。これから巻が進むごとに、彼が舐めた理不尽な辛酸であるとか、彼の愛情のありようであるとかが分かってくるのだけど、とにかく最初はもう、カディアス王との出会いはトラウマ級の恐怖体験でしかない。

 オルガよ、よく耐えた。そしてオルガは己の父の名前と己が血筋を知るのだ。
 メインのストーリーと併走して、ライキとクルトの紫道、ゼドとセツ、ユセフスとミルドの百花の物語も。ミルドなんか、純愛を通りこしてただの変態・・・・(失礼!)にしか思えないんだけど、それも突き抜ければ一周巡って? あのユセフスが折れて? ・・・・まあ、割れ鍋にとじ蓋的な? ユセフスも、よくわからない人物ではあるのだけど、これからだんだんじわじわと味わい深くなってくるからな。


書 名 「精霊を宿す国(2)黄金の星」        
出 版 リブレ 2023年9月
単行本 312ページ
ISBN-10 479976411X
ISBN-13 978-4799764114
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133790959

 1巻の終わで、鳳泉の操者になれ、との国王の意を受けたキリアスは、すでに半年もオルガと別離の状態で修行を重ねている。こいつ、一生懸命でもまだまだ身勝手だな〜と思う。早く覚醒しやがれ。そして、ちゃんとオルガ本位になりやがれ(笑)

 物語は、光蟲のイーゼスとハユル、時を一世代遡って、ダナルとルカの物語、さらに前代の鳳泉のガイとリアンの物語も。まだ若いカディアスと、王宮を覆い尽くす不穏。先読という存在が、こんなに不安定で大丈夫なんだろうか? これで、ちゃんとこの国は維持されるのであろうか? と、大いに心配になる。とにかくそれぞれのパートで語られる物語が終始一貫して切ない。そして、どこをどう切り取ってもこれ以上はないってくらい苦労人のカディアス。よくこんな状況で16歳で即位し、耐えてきたな。やっぱりこの物語で一番存在感が大きいのは、カディアス王だろう。この物語は、いわばカディアスが即位してから退位するまでの、一代記でもある。
 現在の時点での王宮での事件と場末の娼街での騒乱でついにオルガとキリアスは共鳴し青雷の能力は全開になる。そして、オルガが16歳を迎え、青雷はオルガを離れていく。 オルガは鳳泉を授戒する定めのキリアスの半神足たるべく歩んでいく。これから、いよいよ物語は核心に近づいていく。


書 名 「精霊を宿す国(3)赤い炎の翼」         
出 版 リブレ 2024年1月
単行本 336ページ
ISBN-10 4799765760
ISBN-13 978-4799765760
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133790963


 色街を襲った大火は、光蟲、紫道、青雷が治め、そして青雷がオルガ16歳の約定の日を迎えて去った。来るべき試練の前にオルガを両親に会わせたいと願ったキリアスがオルガと友に辺境を訪れるところからの王都への召還。
 つかのまの穏やかな日々。心休まるオルガの里帰りと、波乱の予感しかないキリアスの里帰り(王宮)。
 この巻で、オルガ出生に繋がる過去の物語が明かされる。
 それにしても、少年期から延々と続く、危機を一人耐えたカディアスである。いくら神獣師達に囲まれ守られていたっていったって、そもそも傲慢不遜な能力至上主義の連中である。助けになってるんだか、圧迫になってるんだか。よくカディアスは心折れず、投げ出さず、耐えたな。それこそが王たる所以か。カディアスとトーヤの愛にも泣かされる。
 カディアスに比べたら、キリアスなんて、ほんのひよっこ。キリアスの悩みなんぞ如何ほどのものだろう。

 それにしても、だ。アジス家の悪習が諸悪の根源ではないか。
 やっぱり、先読みとの意思疎通にすら難がある依代でなかったなら、もっと違った物語があったはず、と思ってしまう。
 そして、いよいよ次巻では、鳳泉の授戒と、最終決戦である。


書 名 「精霊を宿す国(4)新しき空と神の獣達」
出 版 リブレ 2024年2月
単行本 320ページ
SBN-10 4799766104
ISBN-13 978-4799766101
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133844400


 3周くらい読んだ。ついに完結。オルガとキリアスが鳳泉を授戒したものの、なかなかその力を万全に発揮できるようにはならない・・・・ってところで、若干のお笑いパートも差し挟みつつ、セフィストとの闘いが終局に至る。
 セフィストと真っ向から戦ったのは、ルカ。そしてその闘いを全力で支えた半神のダナル。おおむね、格好良いところはこの二人に持って行かれてました。とにかく、ダナルの愛が尊い。そして、セフィストを討伐するのではないところにもひとつの愛がある。


 そして、隣国との決戦に、鳳泉は間に合うのか。カディアス王が出陣し、ユセフス、イーゼス、ライキもその後を追い国境へ。最終決戦に青雷が参加しなかったのは、たぶん五つの神獣は輪番で代替わりせざるをえないのだから仕方ないんだけど、やっぱり、五大神獣そろい踏みの闘いは観てみたかったかも。しかし、足の悪いユセフスまでが前線に展開した総力戦は読み応えがあった。
 
 それにしても、カディアス王の治世は波乱に満ちていた。ラストの新王セディアスによる青雷の正戒シーンは、その父カディアスの初めての正戒であったゼドとセツの際の、あの幸福な風景を思い出す。時は螺旋のように巡り、やっと正常で安定した姿をヨダ国は取り戻す。

 読後も、余韻が尾をひき、しばらく物語世界で揺蕩っていた。小説というか、ファンタジーというか、ここではない別の世界にしばし飛ばされた気分。こういう作品を書ける人って凄いなー、と心底羨ましいと思ってしまった。

2026年2月28日土曜日

0583—85 君を転生させないために

書 名 「君を転生させないために(1)」 
著 者 佐伊        
出 版 新書館 2025年6月
単行本 304ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221440
ISBN-13 978-4403221446
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/133704298   

『竜王の婚姻』で出会った佐伊さんの作品。
『竜王の婚姻』のスケールの大きい大河っぷりに敬服し、こちらも読んでみようと入手してあった。この度、やっと読了できた。
 そもそもBLとして創作されている作品ではあるが、1巻目はまだそれほどそっち方面は進展しないので、これ、BLでなくて、普通の中華ファンタジーでも良かったのでは?とちょっと思ったんだけど。2,3巻まで通読したあとではとてもそうは言えませんな(^^;)

 呪術の設定とか、世界観がよく作り込まれていると思う。イメージは古代中国の西域の小国二つって感じだろうか。大中華って感じではない。国の規模や組織も小さい。規模的にはむしろ日本の平安朝とか、朝鮮王朝大河ドラマくらいな印象。王宮と市井も近いし、王族と民間人も近い。国も小さく、数日の騎行で国と国を行き来できている。

 登場人物の名前が、漢名風なのに、全部カタカナなのはちと辛かった。登場人物がさほど多くならなかったのが幸いだったが、これ以上多くなったら、多分誰が誰だか分からなくなった(苦笑)。あと、個人的な感覚の話ではあるが、
「大夫」を“たゆう”と読ませるのだけは、どうしても受け付けられない。花魁や文楽じゃないんだから、ここはどうしても“たいふ”と読みたい。ていうか、どうしても“たいふ”“だいぶ”としか読めず、ルビを無視して勝手にそう読んでいた。

 で、1巻目は主人公である「延(えん)」国の年若い呪術師ソラが、延国王の命令で敵対する隣国「耀(よう)」に行くところから。
 耀の国王シゲンは前世で呪いを受けて転生した忌人(きじん)で、呪いのために死ぬことができず、すでに110歳を超えている。体は老い腐り、異臭を放っているのに死ぬことができぬ。しかし忌人の呪いを緩和するには「解呪」という技が必要だが、それは呪術師しか施すことができない。耀国はすぐれた呪術師が絶えているため、隣国延に呪術師の派遣を求めてきた、という。ソラは、家族を質にとられた形で、あわよくば耀国王シゲンの命を奪う下命を受け、耀国に入った。その耀国で、ソラが見たもの、聞いたもの。感じたこと。シゲンの身の呪いと、耀国と延国の歴史。シゲンがこれまでに成してきた国づくり。そして、蠢く陰謀と呪術。
 これは、大呪術合戦・一大スペクタクル・歴史ファンタジー大河か!?と思いきや、実はこれも壮大な前振り?であった。

書 名 「君を転生させないために(2)」      
出 版 新書館 2025年7月
単行本 272ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221459
ISBN-13 978-4403221453

 2巻冒頭から大きく事態が動く。耀王宮に延の間者が入り込んでいることが分かる。そして、1巻で、主人公の呪術師ソラが密かに仕掛けた罠が始動する。さて、間者はあの2人の内のどちらか・・・、と思っていたが、さすがにどちらかまでは分からなかった。私の予想ははずれ。そっちか! 正体の分からない延の術者との呪術の掛け合いで激しく消耗したソラは、シゲンの呪いの暴発に「解呪」を施すも、浄化の力及ばす、シゲンから吸い取った呪いを我が身に遺してしまう。

 忌人であるシゲンは身に纏った呪いが相手の命を奪ってしまうために、常人には触れることができず、孤独な生を生きてきたが、護符を身に刻んでいるソラだけは普通にふれあうことができた。シゲンはソラを深く求めるようになり、ソラもまたシゲンを愛すように。シゲンの呪いに犯されて先のない命であることを悟ったソラは、忍び寄る死に怯えつつ、残った時間をすべてシゲンを慈しむことに注ぎ込みたいと願うのだが。

 当初は、シゲンの宿命の敵はソラなんじゃないかとも思っていたのだが、ラウレンの様子が変わってきたところで、これは違うな、と。そして、2巻が終わるところまでは、シゲン&ソラvs延国呪術師(ラウレン、その他)の呪術大戦的なスペクタクルになると予想し、シゲンとシゲンの呪いを身に受けたソラが助かる道は、もうシゲンに呪いを掛けた呪術師を仕留めるしかない。敵の延国呪術師を破ることで、シゲンとソラが呪いから解放されて、二人幸せになるんだろう、と思って(思い込んで)読んでいたのだが。

書 名 「君を転生させないために(3)」      
出 版 新書館 2025年8月
単行本 256ページ
初 読 2026年2月28日
ISBN-10 4403221467
ISBN-13 978-4403221460

 ついに、ラウレンが耀国に乗り込んでくる。シゲンへの輿入れ、もしくは人質として。そして、ラウレンを盲信するソラに対して、シゲンをはじめとする耀国の人間は、なにやら思うところがありそう。このあたりから、ソラが政治の中枢の動きから蚊帳の外に置かれ、ソラパートとシゲンパートが分離。
 そして物語はシゲンとシゲンの敵との闘争で大激震するかと思いきや、ラウレンの自滅で案外そっちはあっさりと決着し、その後、物語はロミオとジュリエットみたいな怒濤の愛に突き進む!
 そして、読み終わってみれば、これは呪術合戦などではなく、清廉な愛の物語だった。
 ちょっと肩透かしをくらった感じがしないでもないんだけど、なにより、一生懸命悩み、愚直に現実に直面し、危急の時には迷わず行動するソラがなんとも健気で美しく、ソラとシゲンの愛が深く、清く、麗しいのだ。

 「シュウキ=ラウレン」がちょっと小物っぽかったな、とか、シゲンが自分で自分に掛けた呪いの「延」はどうなったんだろう、とか、なぜ、忌人の転生は1回限りなんだろう、とか、こまかいハテナはいくつかあるんだけど、とても美しいラブストーリーだった。呪いを受けて死ぬと悲惨な転生を遂げる、という設定が、どのように生きるのか、どのように愛するのか、そしてどのように愛する人を死なせるのか、という大きな命題になって、主人公たちが悩み、苦しみ、決断し、愛する。これがとてもリアルに感じられた。
 ラストの後日譚的な「君が転生するために」で、個人的に気になっていたカイリとメイロウの初恋カップルも無事成婚に至ったし、貴方が次の世でも幸せであるように、と言祝ぐソラの思いに、読んでるこちらまで、せつなくも甘やかで幸せな気分になることができた。素敵なストーリーだった。

 この物語では語られないけど、愛しあうソラとシゲンがやがて、長くはない生を終え、二人身を寄せ合い、最後まで相手への思いやりと愛を語らいながら、一緒に息を引き取るシーンを想像しちゃって、なんだか読後感はしんみりしてくる。

(あと、心の声。ロウゼン、受けかよ・・・・)

2026年2月11日水曜日

0578—80 傭兵の男が女神と呼ばれる世界1〜3 (アンダルシュノベルズ)

書 名 「傭兵の男が女神と呼ばれる世界1」
出 版 アルファポリス 2020年9月
単行本 304ページ
初 読 2026年2月4日
ISBN-10 4434278754
ISBN-13 978-4434278754
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133260505

 引き続き野原耳子さん作品。
 これまた異色も異色なBLでビックリ! 有り得なさそうなものを取り合わせてブッ込んで面白くしました!って感じだけど、これがとにかく面白い。断然面白い。
 なにしろ、無骨な傭兵だ。AK47抱えてジャングルを縫い、手榴弾放り投げる戦士。元自衛官。既婚・子供あり。(ただし訳あり)
 そんな、男臭く、汗臭く、ジャングルの泥まみれ、砂漠の砂まみれみたいな迷彩服の男が、なんと異世界に飛ばされる。それも女神として!! つーか、異世界側が女神がやってくるという神のお告げ?に従いお出迎えしたら、現れたのがこいつ、尾上雄一郎だった。もう、名前からして男臭い(笑)。尾上(おがみ=男神?)は女神に掛けてるのかナ?
 雄一郎の抵抗も虚しく、女神として召喚されたんだから、男だろうがおっさんだろうが、お前は女神なんだ、と異世界側には強弁(笑)されてしまう。お前のこの世界での使命は、軍を率いて「正しき王」を勝利させること、そして「正しき王」の子を産んで国母となること(!)。自衛隊上がりの傭兵だから軍を率いて・・・の方はなんとかなるにしても、「国母となれ!」は37歳中年男に無茶振りもいいところである。
 しかもこの異世界は王位簒奪戦の真っ最中で、自分の目の前のひ弱な泣き虫少年が王位簒奪の憂き目にあっている正当な王位継承者「正しき王」であると言われ、なにもかもが納得いかないうちにいきなり砲撃にさらされ、やむを得ず戦闘開始。
 技術的には連発銃が戦力になりつつあり、大砲は戦力化されており、航空機以前の世界観。ドライセ銃からスペンサー銃をイメージすればイイ感じかな? 世界史年代的にいえば19世紀中頃、アメリカ南北戦争くらいの軍装を思い浮かべればだいだい合ってる? まるっきり甲冑、ロングソードってわけでもなさそうなところが、元陸自・傭兵の尾上雄一郎が戦闘指揮能力を発揮できそうな絶妙な塩梅である。
 そしてあれよあれよというまに、元の世界に帰るためにもとりあえず「王の子」を産むことを納得させられ、夜ごとの3Pになだれ込む。激しい。いろんな意味で激しい。

 一巻目は、異世界召喚からの戦闘。雄一郎が初夜(?)で犯され、徐々に「正しき王」ノアと「仕え捧げる者」テメレアに絆されつつ、まずは反乱軍に侵攻された王城を奪還するところまで。昼は過酷に戦い、夜は夜とてベッドの上で男2人に侵略される、男・尾上雄一郎37歳の戦記であるとともに、全てを失い絶望した男が何を思い、何を取り戻していくのか、そんな雄一郎の内面からも目が離せない。(こんなBLがあるとは・・・・目から鱗が落ちそうな一冊である。)


書 名 「傭兵の男が女神と呼ばれる世界2」 2021年7月
単行本 299ページ
初 読 2026年2月7日
ISBN-10 4434291106
ISBN-13 978-4434291104
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133284932

 反乱軍の居場所を探るために偵察に出した兵とテメレアが戻らない。唯一戻った女性士官のイヴリースの背中には矢が突きたっていた。
 その方面には、女神を信奉する部族の街があったはずなのに、なぜ? テメレア奪還のために出撃する雄一郎である。そして、なんと雄一郎の他にも、もう一人の「女神」がこっちの世界に現れていた。ノア側とノア兄側、それぞれが「女神」を擁し、隣国の最新兵器も登場して戦局はいよいよ厳しい。そこで、雄一郎側は、ノア兄側と同盟している隣国ゴルダールの内乱を誘発する策にでる。
‎ 
 元いた世界で妻と子供を失い、すべてに絶望し、心なんぞ死滅したような雄一郎の、その実は細やかな心情が描写されるのが良し。死にかけたり・生き返ったり・倒れて寝込んだり、それなのにやっぱり犯され喘がされ、戦争よりもベッドの上が激しい。シャグリラの実という、女体化を促進する実を摂取しているうちに、なんとなくヒゲが薄くなり、体が柔らかくなってきた。そして、2人の夫?愛人?恋人?を求めずにはいられない体になりつつある。しかし、王位継承のための戦争はまだまだ混沌として続く。雄一郎の外套の襟元にとめられたピンの赤い石(サザレ)が不穏。それを留めたゴートはいずこに? まだまだ波乱の気配を漂わせながら、話は3巻へ


書 名 「傭兵の男が女神と呼ばれる世界3」 2022年5月
単行本 515ページ
初 読 2026年2月8日
ISBN-10 4434303244
ISBN-13 978-4434303241
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133362698

 隣国ゴルダールの前王の双子の子を見つけだし、現ゴルダール王を打ち破り、ジュエルドとゴルダールに平和な未来をもたらすことを約束したノア一行。行く先々でアオイが現れるが、このアオイの造形とか、アオイの位置づけなんかは結構チープな感じがする。まあ、悪役として分かりやすくはあるが、もうちょっと魅力的な悪役でもいいような気がする。ともあれ、雄一郎の過去の出来事が、ついに雄一郎の口から語られる。そして、ゴートの裏切りによって、腹を刺されて凍った湖に落ちた雄一郎は、再び死線を越えて現代の日本に。

 この作品では、戦争が平和な世界を築くための「必要悪」として語られるけれど、第二次大戦の記憶が遠ざかり、そして近隣の大国中国をはじめ、東欧、南米と全世界がキナ臭くなってきた今、戦争や犠牲を、そういうふうに単純化してしまってよいのか、という読み手(私)の思いを、作中の雄一郎自身が、受け入れ難く思っているところにも共感できたりする。雄一郎はやむを得ず戦うことを選ぶが、本当は、妻と子供を爆死という悲惨な形で失った雄一郎の嘆きが全てなんじゃないか? とも思う。
 令和が次の殺戮の女神の時代でありませんように、なんて、選挙の野党の惨状を見ながら考える。今が、ヒットラーが国民選挙で選ばれ、ナチスが台頭した時代と同じでないと、だれが言える?
 こんな感じで、読んでる自分の気持ちが現実と物語世界を行き来しつつ、「黒の女神」雄一郎の勇姿を追う。
 女神隊を鼓舞する雄一郎なんて、ほんとヤバい。せめてもの救いは、雄一郎が自覚を持っていて、戦争に酔っていない現実感覚を持っていることだ。そして、なにはともあれ、大量の戦争の犠牲者の屍を礎として、平和なジュエルドの、ノア王の治世はもたらされる。


 私としては、子供を産んでからの雄一郎が大好きだ。結果として(番外編までいれると)7人の子持ちになっちゃうわけだが、相変わらず一人称は「俺」でぞんざいな口調なのに、子供達からは「母様」と呼ばれ、母として根気強く子供達を育てる雄一郎を好ましく思う。なんていうか、戦争が終わってしまえば軍人の出番はなく、内政も外交もノアとテメレア任せで、雄一郎はせいぜい暇つぶしの盗賊退治の他は、母親業しかやることなくなっちゃったんだろうとも思ったりするが。

 番外編については、賛否両論ありそうだけど、ゴートの執着と雄一郎の未練は私的には「アリ」だと思った。『雄一郎がどれだけ自分を憎んでも、疎んでも、それでも僕もテメレアも雄一郎を見捨てない。雄一郎がどんなことをしても最後には許す。雄一郎が好きだから。誰よりも大事だから』というかつての言葉を、ちゃんと守る2人の夫であった。私としては、自分自身でも受け止めきれない妻と娘の悲劇の痛手を抱えつつ、ゴートの喪失に寄り添い、ゴートの行き場のない怒り(裏切り行為)も受け止め、ずっとゴートを側に置き続けた雄一郎の懐の深さを、事実もろともゴートにぶつけたいと切望したよ。ノアとテメレアは、ゴートに言っちゃえばよかったのに!(そしたらきっと、ゴートは再起不能なまでに打ちのめされたと思うよね。) さて、誰の子になるかはワカランが、雄一郎に8人目の子が生まれないかどうかは、神のみぞ知る??? ちょっと期待してしまったり・・・・

 久しぶりに読後も主人公が頭の中を歩き回る感じを味わっている。だいぶ雄一郎に入れ込んだ。読後数日たっても、まだ物語世界から抜き出せきれていない。私は本当に傷ついた男が好きなんだよなあ。。。。。

2026年1月31日土曜日

0577 再生 Kindle版

書 名 「再生」
著 者 野原 耳子   
出 版 電書バト 2024年7月
Kindle 337ページ
初 読 2026年1月28日
ASIN B0CZQRDXZB
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/133068952   

 基本、書誌データは紙本で登録することにしているのだが、これは電書オンリー。紙本はない。(ちょっと残念)
 ソープで女の子に交じって体を売っている喜一(きぃ)。自分で幸せを捨ててきた、という喜一。だけど真実は・・・・。これBLなのか。むしろ文芸書?文学? とにかくリリカル。心情描写の一つ一つがリリシズムに溢れてる。きぃちゃんは、どこか壊れている。きぃちゃんの体の中から、割れたガラスが軋むような音が聞こえてきそうだ。やっと保っている喜一の輪郭が、ガラスが砕けるように崩れるのではないかと、読んでる間中ずっと心配だった。

 幸せが砕け散ったあとに残った一人は、どうやったら生きていくことができるのだろう。男に体を売ることで、緩慢に死ぬようにやっと生きている喜一の崩れかけた意識が、友人のれっちゃんが受けた暴力をきっかけに一瞬ピントが合う。その瞬間に溢れでる歯止めがきかない加虐性の描写もすごい。喜一の心が幸せと不安と不幸の間をせわしなく行きかう様が丁寧に鮮明に言語化されていて心に響く。
 主人公の名前が「きぃ」なのも凄い。他の呼び名なんて、考えられない。一郎でも太一でも裕太でも(なんでもいいんだけど)なくて、「喜一(きいち)」で「きぃ」なのだ。
 ヤクザの真砂さんや、ソープの店長の田中さんが「きぃ」と呼ぶ。それだけで優しさが滲む。きぃの周りの人がみんなやさしい。そのやさしさの中で、きぃが自分を取り戻したとしても、きぃの壊れたコップの心はやっぱり傷だらけのまま。“金継ぎ”のようにより美しく、強くはならないけど、傷ついても、完全には元には戻れなくても、痛みを抱えたままでも、人は生きて行くことができるし、幸せを感じることすらできる、そんなメッセージを感じる。

 なんだかすごいものを読んだ。先日、『俺の妹は悪女だったらしい』を読んで、野原耳子さんという作家を知り、これは掘り出し物かも?と思って野原耳子さんの他の作品を探してみたのだ。そしたらコレよ。なんか、すごい。今時のデジタル時代の(という言い方が既に古いけど)文学の裾野の広さを感じる。

2026年1月25日日曜日

0575—76 バッドエンドを迎えた主人公ですが、僻地暮らしも悪くありません 上・下 (ピスタッシュ・ノヴェルス)


書 名 「バッドエンドを迎えた主人公ですが、僻地暮らしも悪くありません 上・下」
著 者 仁茂田 もに       
出 版 新書館 2025年9月・11月
単行本 上巻 320ページ/下巻 336ページ
初 読 2024年?月(アルファポリスにて)
ISBN-10 上巻 4403221432/下巻 4403221483
ISBN-13 上巻 978-4403221439/下巻 978-4403221484
読書メーター
 上巻:https://bookmeter.com/reviews/132968692
 下巻:https://bookmeter.com/reviews/132968718

 引き続きハッピーエンドしか読みたくない病を発症中。
 仁茂田もにさんは、そんなときに安心して読める、好きな作家さんのおひとりである。最初に読んだのが、「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない 」で、それ以降、電子書籍版や、pixivや「なろう」やアルファポリスにアップされている作品も好んで読んでいる。
 とくに気に入っているのが、「王と王妃」と「七年前に助けた子どもが、勇者になって求婚してきた」。この2作品は、電書化されていなくて商業出版ベースに乗ってないので、読みかえしたくなったときには、pixivファンボックスやなろうに出かけて再読している。

 この「バドエン主人公」は、アルファポリスで連載されていたときに追いかけて読んでいた。今回商業出版バージョンを入手したのは、Amazonからオススメされて、つい読み返したくなったからだ。お気に入りの作家さんを買って応援するのは読者の勤め。心を込めて?ポチる。 

 後書きによれば、「今流行りのキャッチーなものを書いてみよう」と思って書かれた作品とのこと。「今女子に流行りの日記ってものを書いてみようと思って書いたんだよ」という紀貫之/土佐日記の冒頭を思い出した。(笑)

  主人公が転生したのは過激BLゲームの中。登場人物は男だけ、なんなら世界中男しかいない設定。世界は平面・天動説。世界の裏側には暗黒の女神の世界があって、世界が破れたら大変なことに。冒頭から始まる断罪劇、チート主人公、超美形な相方で役満。ってか美形しかおらん。ちょこっと出て来るだけのやつは「モブ」で一把一絡げな感じも潔い。振り切れた世界観だから、ただただ楽しもう!と思って楽しんで読む。
 仁茂田もにさんの作品の登場人物たちは、どんなに逆境でも心折れない嫋やかさがあって好きなんだよ。読んでいてすごく癒やされる。「悪役令息」役のジュリアンと再会してからの流れなんかも面白かった。ちょっとフィン隊長が死んでしまうのではないかとドキドキしたよね。アルトが負傷したときも、刺客に襲われた時も、危機一髪でちょっとハラハラしたけれど。それでも誰も死なない大団円。ハッピーエンドをありがとう♥️

2026年1月17日土曜日

0574 俺の妹は悪女だったらしい (一迅社ノベルス)

書 名 「俺の妹は悪女だったらしい」
著 者 野原 耳子    
出 版  一迅社  2025年12月
単行本 372ページ
初 読 2026年1月16日
ISBN-10 475809781X
ISBN-13 978-4758097819
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/132828897

 死に戻り・巻き戻し系ファンタジーBL。
 現在、実生活で母の入院やら何やらで、もはやオーバーフロー状態で、脳ミソが『そして2人は幸せに暮らしました』以外の物語を求めていない(苦笑)。
 そんな私的需用にマッチした、絶対にこいつら幸せになるだろ、と確信できる作品。主人公が得物の戦斧を振るって全力で立ちはだかる困難を薙ぎ払う!

 純情で強情で、純朴で剛力(なにしろ大人2人で運搬必須な大斧を振り回す)な護衛騎士(作中ではロードナイト)と、冷酷で腹黒な執着系君主。今表紙絵を見てふと思ったンだが、キルヒアイスとラインハルトの類型っぽい感じもある。
 主人公ノアが溺愛する妹のダイアナがだんだんイイ性格に育っていくのも、じつは伏線っぽいところがある。とにかく必至で努力する主人公ニアが、実は主君だけではなく妹にも溺愛されている変則三角関係。フィルとダイアナの間にも、なにか腹黒な取り決めがあったらしいと思われるが、そこは読者にもナイショなところ。(だったんだけど、なろうにアップされている番外編でネタばらしされてました。) 死に戻りしたのが1人だけじゃなかったのがミソ。
 ストーリーは内容的に二部構成で、「2人はいったん恋愛成就して幸せに」なっただけでは済まないところと、後半の驚愕の事実からの疾走感がとても良い。聖女はちょっとチープな感じだったけど。死に戻った理由もちゃんと明かされているのも良いし、読んでる途中では「?」だった本書タイトルもちゃんとラストで回収。戦闘シーンは多くないものの、要所要所でちゃんと主人公の大斧が活躍する。
健全な肉体にこそ、健全な精神は宿る、という主人公の信念もよし。そういえば、性的描写もそれほど多くない? 商業出版化で多少出力調整されているのかも・・・と思ったのは私の穿ちすぎ。

 BLを読むたびに、私にとってBLの需用ってなんだろう。とつい考えちゃうのだが、女性キャラクターの恋愛だと、どうしても女性側に移入しがちなのにもかかわらず、女心や恋愛描写には違和感があるのに、BLだと、完全に自分から切り離してお気楽に読めるからなんだろうな〜と思う。なんていうか、男女の恋愛ものって、イヤがうえにもジェンダーを刷り込まれる感じがしてダメなのよね。(女はこうやって男に抱かれろ!みたいな?)まあ、そんな理由付けをしなくちゃ読めないくらい、いい年してBLを読むのって小っ恥ずかしいところがあるんだけど、なにはともあれこの本は面白かった。

2025年11月18日火曜日

0571 捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです3

書 名 「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです 3」

著 者 カレヤタミエ
出 版 TOブックス 2025年11月
単行本 352ページ
初 読 2025年11月15日
ISBN-10 4867947784
ISBN-13 978-4867947784
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/131573887

 「なろう」サイトですっかり既読ではあるが、書籍にまとまったものを読むのもまた、楽しい。
 つぎつぎと新技を繰り出すのを見るのがたのしいメルフィーナの領地改革ストーリーではあるが、今作はぐっと、御夫君であるオルドランド公爵アレクシスが生きる厳しい世界も描かれる。
 北部に巣くう魔物、プルイーナとその眷属サスーリカと、冬毎に戦い続ける使命と、その能力故に背負った宿命を、メルフィーナもついに知ることに。そんなで、この巻はかなり重い空気をまとっている。ああもう、はやくラブラブカップルになっちゃえよ!

 表紙の青い長髪ののっぽは、『象牙の塔」の第一席の大魔法使いで自称(?)錬金術師のユリウス。この世界?それともユリウスの中?では、魔法使いより錬金術師の方が格上っぽい。

 にしてもメルフィーナ、作中では理知的ですっかり落ち着いた風情だが、若干16歳。ちょっと老成しすぎでは?と思わないでもない。

 あと、これまで、あらゆる取り組みを成功させてきていて、さすがに上手くいきすぎだと思ってしまうんだけど、トラバサミの作成や蒸留酒作りなんかは、さすがに知識や概念だけで一発成功はむりじゃねか?まあ、面白いからいいんだけど。

4巻は来春刊行。うれしい。座して待つ。

2025年6月22日日曜日

0559・0560 竜王の婚姻 上・下

書 名 「竜王の婚姻 上」
著 者 佐伊       
出 版 ‎ MUGENUP 2024年4月
単行本 544ページ
初 読 2025年6月20日
ISBN-10 4434337041
ISBN-13 978-4434337048
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128631885 

 Kindle版をAmazonにオススメされ、アンリミだったので好奇心でクリックしたのが運の尽き?(いやそれは著者に失礼だよな!)
 正直、最初は舐めてかかってました。ごめんなさい。
 よくある異世界BLで竜に嫁した不遇な主人公が溺愛される系だろうとの安直な予想を見事に裏切る、超骨太大河ファンタジーだった。なにしろ本は厚い、内容は重い、先は気になるで、ついついの駆け足飛ばし読みになってしまった。(これまた著者に失礼な!)。

 最初はオメガバース?と思ったが、むしろ独自設定。惹香嚢(じゃこうのう)という発情期に強烈なフェロモンを発する子宮類似器官を持つ人々が少数ながらいる世界。世の中を構成するのは人間、獣人、そして惹香嚢持ち。性的には女性、男性、両性、そして男性であっても妊娠できる惹香嚢体。小国(従属国)の惹香嚢体の第四王子が、宗主国の皇帝(実は獣人)に輿入れする事態に端を発する物語だが、主人公は全然愛されないまま話は何年も進むし、竜王と婚姻するのは主人公じゃないし、でどんどん期待を裏切られる展開にぐいぐい引き込まれる。「神山」を頂点とするヒエラルキー社会の硬直化した末期的様相や、獣人に対する差別意識や、神山に対抗するレジスタンスや、奇病の延命法を巡る壮絶な陰謀、意志を奪われた人間、それぞれの人間の立場や苦悩が描かれ、同時に登場人物のキャラが立ち、程良く強くて自立している主人公が苦難に立ち向かい、と実に濃厚で重厚な読み応えたっぷりな大河ファンタジーである。小山田あみ氏のイラストとは、モノクローム・ロマンス文庫の「ヘル オア ハイウォーター」シリーズ以来の再会で、これまた濃厚。主人公の絵柄は自分のイメージとは若干違ったが、じゃあどんな?と言われたら困るかも。

 それにしても、この話、書記官で執政を補佐してるはずのジグルトのやらかしがとにかく酷いんでないかと。主人公のセナへの個人的反感が根底にあるからか、とにかくいろいろと情報をネグって、セナ絡みの必要な情報を皇帝に上げないから、皇帝が見事に後手に回って、非常によろしくないのだ(笑)。だから、この話が進む、といえなくもないけど。最悪なのは出産時に無視放置だ。そうなった王側の事情は番外編で明かされるが、さすがにまずい。全体的にさらりとその主因となったジグルトのしでかしは流されてるけど、本人自覚しているように、これは万死に値するぞ。おかげて、セナと皇帝は関係を深めるチャンスを逸してしまうし、護衛官の白銀狼イザクにセナの気持ちをもってかれちゃう遠因にすらなっている。まあ、この三角関係の捻れは話の核心ではあるので、ジグルトは役目を果たしていると言えなくもないけどね。

書 名 「竜王の婚姻 下」
著 者 佐伊       
出 版 ‎ MUGENUP 2024年4月
単行本 544ページ
初 読 2025年6月20日
ISBN-10 443433705X
ISBN-13 978-4434337055
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128631885   

 あれほどのボリュームの上巻がアンリミであるわけだ。先が気になり読まずにはいられない。下巻をKindleで読んだあと、やっぱり紙本を手元に置きたい、と上下巻購入したので、結局下巻は2冊分購入したことに(笑)。
 とにかくアレコレあって、物語はどんどん、どんどん破局に向かってなだれていく。鱗病の蔓延、惹香嚢体の命運、最愛の男イザクは絶命し、竜王すら死に瀕し、八方塞がるなかでの唯一の望みとなるのはセナ自身の体のみ。自分の死を選ぶことで、世界の命運は繋ぎ止められるかもしれない。この決断に至る主人公が潔すぎる。ファンタジー世界だからこそ可能な、現代社会が惑う様々な社会問題のごった煮の中で、子供を愛し、人を愛する主人公の芯が物語の背骨になって、この無骨な物語を成立させている。ほんと飛ばし読みで申し訳なかったが、物語の先を読みたい気持ちに字を目が追うスピードが追いつかなかったよ。上下巻をほぼ1日で通読した。そして紙本を入手してみれば、上下巻あわせて厚さは6センチ、ページは2段組のボリュームだった。で、そのあと一週間かけてじっくり読み直した。
 
 番外編の皇帝(上皇)の気持ちが切ない。150年後の竜王の命によって贖われる世界。そういう竜王を育て上げたセナと、竜王の伴侶アスラン、その二人と竜王を、そして二人が世を去ったあとには一人で守り続けたであろう王に祝福を。

0546・0558 捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです(単行本)

書 名 「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです 1」
著 者 カレヤタミエ
出 版 TOブックス 2025年1月
単行本 352ページ
初 読 2025年2月22日
ISBN-10 4867944211
ISBN-13 978-4867944219
読書メーター
 https://bookmeter.com/reviews/126248779

 「小説家になろう」年間第1位(2024年4月~10月現在)。ついに書籍化! とのこと。
 私は、「小説家になろう」のサイトを徘徊していて、ちょっと気になって読み始めて、あまりに面白いので一気読みした。これだけ面白くて力のある著者さんであれば、それ相応の敬意を表すべき!と思って書籍版も購入。(ちょっと勘違いして(?)、Kindle版もDLした。)

 最近、ぽつぽつとライトノベルを読むようになったが、これは面白い。蘊蓄もなかなかのもの。

 攻略ゲームの中に日本人の女子高生が転生、って設定はあまりにも「なろう系」だし、タイトルも書店の本棚に並んでいたら絶対に他の本と区別がつかないと確信が持てるけど、こういう宝石が埋まってるんだな、あの界隈には!との認識を新たにした。
 侯爵家の令嬢に生まれながら、出生に疑念も持たれて疎まれつつ育ち、結婚年齢に達したとたん公爵家に嫁がされたのに、初対面で「お前を愛するつもりはない」と言い渡される。結婚生活も営むつもりはないから、ほどほどに贅沢して体面を保って勝手に社交でもしながら生活しろ、と夫となった公爵アレクシスに言い放たれるメルフィーナ。そこは絶望するところだが、アレクシスから辺境の領地の領有権をもぎ取り、翌日には領地に向かって出立。荒れた開拓地と貧しい領民を目の当たりにし、持ち前の知識で領地開発と農業改良に乗り出す。
 もちろん、まるで経験のない女子が知識だけで農業はじめて、あまりにもトントン拍子なのは否めないが、メルフィーナの行動力と優しさと、豊富な知識と、内面の深さ、お付きの二人や公爵アレクシス、公爵の護衛騎士のオーギュストなどなど、登場するキャラクターがそれぞれに個性が立っていて、非常に物語を面白くしている。なにしろ、主人公メルフィーナが、公正で真摯で尊い。
 転生ものって、こんなに面白くなるんだ! と目からウロコが落ちた。

 なお、番外編の2本も良し。おちゃらけた見かけのオーギュストが良い味出してるのよね。こういうキャラは大好きだ。(グレイマン・シリーズのザックっぽい。)
 今年中に続刊も出るようなので、(すでに読んでしまってはいるが)楽しみにしている。
 ラノベらしく結構イラストが挿入されているけど、文章そのものにイメージ喚起力があるので、挿絵は自分の中のイメージとぶつかってしまった。もともと、なろうサイト内の作品には挿絵はないので、文書だけで勝負するのも良いのではないかと思う。
 なお、後書きによると、著者のペンネームの「カレヤタミエ」は かれや・たみえでもなく、かれやた・みえ、でもなく「かれやたみえ」なんだそう。読み方ムズいぞ。

 *〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜**〜・・・〜*

書 名 「捨てられ公爵夫人は、平穏な生活をお望みのようです 2」
著 者 カレヤタミエ
出 版 TOブックス 2025年6月
単行本 400ページ
初 読 2025年6月21日
ISBN-10 4867945986
ISBN-13 978-4867945988
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/128632378



「なろう」サイトですでに通読済み。単行本化のお楽しみは、今回はどこまで収録かな?というのと、巻末の付録短編。
 2巻はノーフォーク農法の取り入れの思案からはじまり、メルフィーナ誘拐からの農奴獲得を口実に窮民救済、火鉢の導入と冬支度、メルフィーナが作ったエールは美味く、サウナは極楽。セルレイネの寄宿、ソーセージとベーコンとハム製造、そして砂糖の製造着手まで。相変わらずいちいち記述がマニアックで面白い。そして美味そうです。強いて難癖つけるなら、いくら知識があるとはいえ、実践経験がないのにぶっつけ本番で失敗のないところ、かなあ。でもそこはファンタジーってことで目くじら立てず、楽しもう、という気分に十分になれるだけの説得力はある。
 ブレないメルフィーナにすこしづつ絆されていく公爵様が個人的には密か(でもない)見所。巻末の参考文献も見応えあります。著者さん、よく勉強してるな〜、と思います。




2025年2月24日月曜日

0545 ないもの探しは難しい (Ruby collection)

書 名 「ないもの探しは難しい」
著 者 metta
出 版 KADOKAWA 2025年1月
文 庫 304ページ
初 読 2025年2月22日
ISBN-10 4041138531
ISBN-13 978-4041138533

読書メーター https://bookmeter.com/reviews/126236959

 X(旧ツイッタ−)で、仁茂田もにさんのリポストで、この本のドイツ語版が配信されているとの情報を得、海を渡っている日本BL!(オメガバース)に好奇心が爆発してDLして読みました。
 冒頭から、文章のテンポがすごく良くて、気持ちいい。主人公の、健気だけど湿っぽくはなく、元気でめげない雑草のようなたくましさがとても好ましい。ろくに発情しない薄いΩであるとの設定なので、あまり濡れ場は濡れ濡れしていないというかあっさりめ。イラストは概ね好みだけど、読んでいると主人公の片割れアルファのダリウス卿は、大柄でガタイが良くて厳ついイメージを抱いていたので、この表紙のダリウスさんは、ちょっと線が細くて優し過ぎかも?
 それはさておき、タイトルどおり「ないもの」を探すのほど難しいものはなく。
 さしたる特徴もない普通の人が、細心の注意を払って身を隠したらどうなるのか。
 それを探し出すのは、もはや番アルファの執念しかない。
 途中で和解する兄や、主を叱咤する執事のマシューさんの性格も好み。とても面白かったデス。彼らのムスメのシグリットのまったく秘めてない恋と執着の行方も、なかなか楽しみではあるね。

2024年12月1日日曜日

0521 獅子帝の宦官長 寵愛の嵐に攫われて (エクレア文庫)

書 名 「獅子帝の宦官長 寵愛の嵐に攫われて」
著 者 ごいち         
出 版 MUGENUP(エクレア文庫)2022年12月
文 庫 290ページ
初 読 2024年11月
ISBN-10 4434310445
ISBN-13 978-4434310447
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/124539378


 KindleアンリミでAmazonの画面に上がってきたのを興味本位で読んでしまったんだが・・・。いやこれがなかなか大したものだった。いちいち、引っかかってもしょうがないのだが、こーいうのにBL(ボーイズラブ)ってほんとどうなの?と今だに思ってる(苦笑) 明らかにボーイズじゃない。だって皇帝三十路だし、宦官長もアラサーよ? だからってM/Mって訳でもないし。(文化的に違うよな。)なんなの、なにせよニッチなジャンル。だが本質はエロだ。官能小説?それが一番しっくりくるか。
 そもそも宦官ってところですでに背徳感満載なわけだが、これがもう、淫靡というかエロが濃い。どろりと濃い。SEX描写はちょっと読み疲れて途中斜め読みになる。主人公イルハリム、流されているだけ、と言えなくもないが、じゃあ流されない生き方なんて可能なのか?という時代や文化設定だし。流されるままの彼がしかし、嫋やかで清純で、一生懸命なのが麗しい。勢いで、連載されていた『獅子帝の宦官長Ⅱ』もKindle分冊版で読了。折しも最終刊。これはもう、大河ドラマだ。どことなく、韓流宮廷大河の趣を感じる。

 作者のごいちさんの他の作品も気になって探してみるが、商業化されているのは、この2作品のみのよう。活動しているアルファポリスで他の作品も読み漁ってきたが、どれも非常に面白い。いや、才能がある人っているもんだなあ、としばし堪能した。個人的には、『王宮に咲くは神の花』も大河ドラマ級のスケールで読み応えがあったが、『愛しの妻は黒の魔王!?』が主人公や脇のキャラ立てが好みでとても面白かった。平安王朝物の『九重の姫♂は出世を所望する』も雅でよろしかった。ごいちさん、作品ごとに雰囲気を書き分ける文才が見事です。


    

2024年11月10日日曜日

0520 あなたの糧になりたい (ディアプラス文庫)

書 名 「あなたの糧になりたい」
著 者 仁茂田 もに      
出 版 新書館 2024年11月
文 庫 240ページ
初 読 2024年11月10日
ISBN-10 4403526136
ISBN-13 978-4403526138
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/124161855

 比較的最近になってBLを読み出してから、作品を求めてpixivなどを読み漁り、オメガバースとかDOM/SUBなんて世界観が生まれていることも知った。最初はこういう「枠組み」に違和感を感じたんだけど、慣れるに従って、考えて見れば、架空の生き物であるドラゴンがいるファンタジー世界なんかも、大勢の創作者や読者で世界観を共有して、素晴らしいファンタジー作品から、二次創作まで展開されているわけだから、BLというジャンルでそのような架空の世界観を作者や読者で共有することだってアリだろう、と気付いた。
 最初は、♂と♂がSEXするためのただの装置じゃないか、と眇で眺めていたんだよ。でもいったんそういう世界観が構築されると、そこにその世界なりのジェンダーが生まれるし、それ故の悩みや葛藤や悲劇も生まれ、つまりは物語が生まれるのだ。物語あるところに、良い小説もある。

 仁茂田もにさんは、そういった良い小説を生み出す作家さんだ、と私が思うおひとりである。たまたまAmazonで偶然作品を知り、もにさんの作品を求めてアルファポリスにも読みに行った。どれもすごく良い。BLは共通項だが、キャラクターや時代や設定もさまざまで、それぞれに面白い。何よりキャラたちが良い。それぞれに個性的で、ひとりひとりが誠実なのが、とても良い。みんな応援したくなる。
 で、この作品『あなたの糧になりたい』は、つい最近までアルファポリスで公開されていたので、そちらで一度読了している。
 このお話は、オメガバースBLとしてはちょっと異色だと思った。
 尽くすオメガに溺愛アルファって書けばありがちに聞こえるけど、アルファが売れない画家で、オメガに養われてるってところがすごく新鮮。
 喪失の絶望すら絵の糧になることを願う主人公の律(Ω)の我の強さも異色っちゃあ異色だし、運命の番を歯牙にもかけないところも面白い。また、この運命が良い男で。
 絵を通してしかコミュニケート出来ていなかった人間関不得手の二人が、お互いを失った長い時間を経て、やっと愛を知り、お互いに向き合うことを学んだ。・・・そして二人は幸せになるのだよ。リアルなような童話のような、普通の恋愛小説と何がちがうっていったら、そりゃ、SEX描写ががっつり入っていることだけど、それはなんか、私にとってはそれほど大きな事じゃないような気がするんだよね。気持ちがリアルかどうかが私的にはポイントなんだと思う。何はともあれ、仁茂田もにさんは良い。他の作品もぜひ、商業化して出版してほしいです。



2024年10月27日日曜日

0513〜14 Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1,2 (アンダルシュノベルズ)

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない1」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年1月
単行本 336ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434333135
ISBN-13 978-4434333132
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/121069284

 アマゾンでオススメされて、結構長く試し読みできたもので、読んでしまったら先が気になって気になって、まんまとお買い上げ〜。しかも予備知識なしに読み始めたら、1巻最後まで読んだのに未完だったという罠。
 先が気になって仕方がない。
 続きはアルファポリスなるもので読めると知り、アプリをDLし、最後まで読みましたとも。まんまと掴まってしまった。仁茂田もにさん、面白いし、素敵だ。

 表紙のとおりオメガバース。普通に魔法が存在する王国、登場人物の名前は全てドイツ語風。主人公ユーリスはΩ♂。王太子の婚約者になったアデル、婚約破棄されたリリエル、すでに他国に嫁いだ第一王子ヴィルヘルムもすべてΩ♂。オメガバースBLだから仕方ないのだが、男女比が悪すぎる気がするが、そこに突っ込むところじゃないよな。一巻目(というか上巻)は謎も含みも満載。しかしそれよりも、拗れに拗れたユーリスとギルベルトの誤解がいつ解けるのかが気になりすぎた(汗)。描写が丁寧で、読みやすく、キャラが立っていてテンポもよい。

 自分に自信がなく体力に劣るユーリスだが、実は相当優秀。考えてみれば、かつての第一王子の侍従の中でも年長で筆頭格だったわけだし、跡取りの長子として教育され、長年王宮内に起居して奉公し、2回も王太子妃候補の教育係に任じられるのは伊達ではない。自分に向けられるやっかみや羨望に気づいていない箱入り純粋培養が不幸の元だ(笑)。でも箱に入れておきたいギルベルトの気持ちもわかるよな。

書 名 「Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない2」
著 者 仁茂田もに        
出 版 アルファポリス 2024年10月
単行本 352ページ
初 読 2024年6月02日
ISBN-10 4434346490
ISBN-13 978-4434346491
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123852190

 2巻(下巻)は、恋愛に関してはダメダメなアロイスとリリエルの恋模様も絡めて、クライマックスになだれ込んでいく。
 上巻がおもにユーリス視点で現在と過去をうまくミックスさせていたが、下巻はギルベルト視点で、上巻でユーリス視点で語られた過去の出来事が再演される。これまで、この手の創作小説で人物視点をコロコロ変える手法は、安直だなーと思っていた。だがしかし、ここまで丁寧に描き込めば、それが面白いと思える。そうだよね、他人の思惑なんて実際判らないし、人間関係って誤解だらけだよね。とすごく納得感がある。
 にしても、それぞれに生真面目で実直で有能なのに、こと恋愛に関しては超おくてで恥ずかしがりで怖がりのカップルが、なんとか恋愛成就してよかった。本当によかった。
 長年にわたり数多の求婚を仕える主に握り潰されていたせいで、自分では一つも結婚話が来ない魅力のないオメガだと思い込んでいたユーリスが憐れだよねえ。

 なお、上記の書誌情報は紙本のものですが、実際はKindle本で読了した。

 アルファポリスで公開されてる番外編もすごく良いので、必読!です。

2024年9月17日火曜日

0505 五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました 4

書 名 「五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました  4」
著 者 須王 あや       
出 版 TOブックス  2024年9月
単行本 336ページ
初 読 2024年9月6日
ISBN-10 4867943029
ISBN-13 978-4867943021
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/122918421

 なんと、アップするのを忘れていたので、遅ればせながら記事を上げる。
 異世界転生・年の差・魔法・ラブラブほのぼのファンタジーの4巻目です。愛しく可愛いレティシア5歳と、それはそれは神々しいまでにお美しい王弟殿下17歳の年の差カップル。とはいえレティシアの中の人は27歳元OLだったりするため、さほどの精神年齢の差はない模様。この作品も私の心の絆創膏。

 王太后陛下の勘気を被ったのを口実に、フェリスの領土であるシュヴァリエに引きこもり、年に1回の薔薇祭を楽しむ二人だったが、ちょっとフェリスが王都の様子が気になったりしたため、こっそりお忍びで戻るフェリスにレティシアも同行。そうしたら、なんと、フェリスの目を掠めるように、レティシアが誘拐されてしまい。
 危機一髪ではありますが、とにかくフェリスが圧倒的力量なんでさっさと事態は収束。リリア神の拗れたやきもちが事態を悪化させてる。今後、この調子で登場人物ならぬ神様が増えていくのだろうか。人界も神界もなんだかこれからゴタゴタしそうな予感。

 これからどういう風に展開するんでしょうね? ふんわりラブラブで結婚式まで行くのか、大事件が起こって竜王陛下も顕現してスペクタクルー!って感じになるのも楽しそうですが。続きが楽しみです。(個人的には、フェリス様に竜体になってみてほしい。)

2024年9月13日金曜日

0501 転生竜騎士は初恋を捧ぐ【イラスト付】 (ブルームーンノベルズ) Kindle版【全1-6セット】

書 名 「転生竜騎士は初恋を捧ぐ」
著 者 仁茂田もに    
出 版 ジュリアンパブリッシング 2024年8月
文 庫 287ページ
初 読 2024年9月8日
ASIN ‏ : ‎ B0DC68BMR3
読書メーター 
https://bookmeter.com/reviews/123030194   

 単話版が一話550円なので、1〜6話(完結)で1300円はかなりお得感があります。(^^ゞ
 舞台は架空のヨーロッパ近世〜近代。石炭の利用と蒸気機関が世の中を変え始めた頃合い。
 竜がいて、竜騎士団があって、竜の飛行戦隊が組まれているあたりは、『テメレア戦記』のような設定。舞台は架空のドイツっぽい感じ。国土的にはフランスとドイツを合体した感じだろうか。領土の南は南国の気候。北は峻険で寒冷な山地。大陸統一戦争に乗り出した国で転生した竜騎士と竜の調教を担当する『竜師』の主人公。どうやら竜も転生組のよう。フツーにBLです。なんなら竜も脇役だけど、主人公の恋人(?)の騎竜である4枚羽の黒竜がとても格好良い。竜にひかれて読んだといっても過言ではない。 

2024年5月21日火曜日

0486 海賊王子と初恋花嫁 (Ruby collection)

書 名 「海賊王子と初恋花嫁」
著 者 須王 あや   
出 版 KADOKAWA  2019年2月
単行本 400ページ
初 読 2024年5月20日
ISBN-10 4041076951
ISBN-13 978-4041076958
読書メーター  

 先日読んだ『五歳で竜の王弟殿下の・・・』の須王あやさんの商業デビュー作・・・だろうか?
 全編、海賊王子のカイが、ひたすらに初恋の相手で、幼馴染みのイシュルを口説いている。カイはいい男だし、イシュルはただただ健気で、儚げだが、儚いだけではなく、心の強さがあるし、柔軟で折れないのが良い。とにかくしあわせになりたい人と、幸せになりたい時に最適な読書。敢えて難癖つけるとしたら、ちょっと海が凪すぎてるのでは、と思ったが、そこは風の精やら海の乙女が守護してるので、荒れようもない。海洋冒険小説好きにしてみると、ありえないほど海が穏やかだ♪
 船については、帆船というよりは、帆付きのガレー船のイメージで読んだ。
 あと、砂漠の国の皇子様のイシュルの肌が白いので、とっても日焼けが心配で(笑)。日除けのベールとか被せてあげたくなります。

2024年5月5日日曜日

0482〜84 五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました1〜3 (Celicaノベルス)

書 名 「五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました」
著 者 須王 あや     
出 版  TOブックス 2023年7月
単行本(ソフトカバー)400ページ
初 読 2024年3月23日
ISBN-10 4866998911
ISBN-13 978-4866998916
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/119719650

「王弟殿下におかれましては、ご機嫌うるわしう・・・」
 なんと哀れな姫君。
 両親を失って、後ろ盾もなく、たった五歳で、十二歳も年上のディアナの王弟殿下に腰入れなどと・・・。 

 最初の3行で、掴みも最高です。一気に世界に引き込まれます。須王あやさん、文才あるわ。
 1000年前に竜王神が顕現して、当時の王女とともに国を興した大国ディアナ。その竜王陛下の直系子孫で、先祖返りみたいに竜王陛下に生き写しなのに、そのために義母である王太后に疎まれて、とかく生きにくさを抱えて生きてきた王弟殿下のフェリスと、その義母の「陰謀」でフェリスに輿入れすることになった隣国サリアの先王の娘レティシア。5歳と17歳の歳の差婚。歳の差は政略結婚にはありがちだとしても、流石に5歳の花嫁は規格外。おまけにその5歳の中の人は現代日本で27歳で事故死した娘で、17歳の王弟殿下の方は、竜王譲りの美貌と魔力と知性と幼少時からの苦労で老成しまくってる。そんな二重三重のミスマッチがきちんとこの歳の差カップルの中に収まって、レティシアの可愛さに氷と称される鉄壁のガードが崩れて笑い転げるフェリスの喜びや、そんなフェリスが大好きになったレティシアの幸福感が読者に伝染して、なんとも幸せな気持ちになる。いやこれ、かなりの拾い物です。

 初対面で、レティシアに優しくしてくれたフェリスに、

 いい人だ。
 私も、この優しい王弟殿下をお守りしよう。 

 と、心に誓うレティシア。やさしさが溢れて、泣きそうだ。


書 名 「五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました2」
著 者 須王 あや     
出 版  TOブックス 2023年11月
単行本(ソフトカバー)400ページ
初 読 2024年3月24日
ISBN-10 4866999969
ISBN-13  978-4866999968
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/119740245  

 街に流布された悪意ある噂が王太后の逆鱗にふれて、謹慎蟄居を命じられてしまったフェリス。国王陛下の差配でその日のうちに謹慎蟄居は撤回されるも、これを機に、とレティシアを伴って自領にひっこんだ。おりしもフェリスの自領のシュヴァリエは特産の薔薇の盛りで「薔薇祭」が開催され、土地の人々が敬愛する領主の婚姻で祝祭ムードに溢れている。
 そのフェリスのお膝元の街にも、なにやら異国の異分子が紛れ込み、不穏な策動が・・・
 ちょこっと黒フェリスが顔を出して荒事っぽいことも起こったりして、幸福感を扱いあぐねて笑いころげてるばかりでないのもよし。
 レティシアが奪われてしまった愛馬を取り戻せたこともよし。
 この巻も、優しさと労わりと愛情と真心にあふれてます。

書 名 「五歳で、竜の王弟殿下の花嫁になりました3」
著 者 須王 あや     
出 版  TOブックス  2024年5月
単行本(ソフトカバー)400ページ
初 読 2024年5月3日
ISBN-10 4867941719
ISBN-13 978-4867941713
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/120499141

3巻目発売。もはや私の心の包帯と化しているこのお話。
 今作はレティシアの幸福を阻まんとする母国サリアの叔母王妃が、よくない企みを発動する。レティシアの愛馬のサイファをサリアに迎えにきたフェリスに対面したサリア王妃は、ろくな知識もないままに厄介者の冷や飯食いの王弟だと思い込んでいたフェリスが、美形で有能な王子だと知る。とたんにレティシアに与えるのが惜しくなって、自分の娘とレティシアの交換を画策。だがしかし、この悪い策謀に対して、伴侶をこよなく愛するディアナ王家の気質を遺憾なく発揮しているフェリス様の怒りが爆発。

「それを書面にせよ。そちの裏切りを、サリアとディアナに知らしめよ。書けぬと言うなら、首は落として、腕だけ残して、腕に命じる」

 もう、このセリフに惚れ惚れしましてん。「腕だけ残して、腕に命じる」ですよ!冷酷これに極まれり。これもまたフェリス様の本性の一部ですよ! 首を落とした後、腕一本だけ残す間に残った部分はきっと粉砕されちゃうんだ。とか書いてないことまで想像してその黒さにぞくぞくしますわ。
 この巻、レティシアの前では優しい白猫をかぶってるフェリスの黒い面も堪能できる。白フェリス?と黒フェリスの塩梅が絶妙です。須王あやさん、上手いよな〜と思いながらしっかり緩急を堪能。なお、男前?な王太后様がすんばらしかった。見直したよ。

何と了見のおかしなサリアの王室よ。  

そもそもディアナの王弟相手に、現王女でなく、やっかい者の姫を寄越そうなんて政治センスのない王室だ。 

もともと常識がないのであろう。 

「……どのみち、もうフェリスはあの娘を気に入った。ディアナの王族が誰かを気に入ったら、それを奪うことなど、サリアの王妃ごときに出来ぬ」

 日頃、なにかと目障りな恋敵の息子に嫌がらせの手を緩めない王太后様だが、さすがの生粋のディアナ娘は、ディアナ王族の特質を見切っている。そして、ディアナの王家としての気概も見せる。フェリスに対してはかなり変な行動をとりがちだが、きちんと賢い王族でもあるところに、初めて高感度がアップした。

2024年4月30日火曜日

0477〜81 『望んだものはただ、ひとつ』シリーズ5作

書 名 「望んだものはただ、ひとつ」 シリーズ
著 者 十時(如月皐)     
初 読 2024年3月読書メーター https://bookmeter.com/reviews/120502817 以下 

 十時さんの書く物語は、生真面目で切なくて優しく、きちんと愛情が報われて癒される。だから、たまにふと、思い出して、思い出すと繰り返し読みたくなる。何回も読みたくなる本て、かなり貴重だと思う。政治や政略や戦術の話はわりと稚拙で、ちょっと残念なところはあるのだけどそれを補ってあまり有るものが、ある。残念なのは、漢字の間違いが少なくない。同音異義語の間違いがほとんどなのだが、読んでいると、変換ミスというよりは素で間違えているような気がする。そんなで、最初、別のシリーズを読んだときには、「日本語がとても上手な韓国人作家さんなのか?」とも思った。(たぶん違うと思うけど。) 多少、残念な面はあれど、感性や素性が良い、というか、なんというか品の良さのある作品を書かれるので、かなり推してる。
 いや、同じレベルであっても上手にファンタジーしている作品はたくさんあると思うのだ。
 なんというか、中途半端に具体的なところがかえって作品を毀損してるっていうか、リアリティをもたせようとしたがためにかえって失敗しているのかもしれない。 あと、どうしても(個人的には)表紙が小っ恥ずかしい。しかし、こうして並べて見てみると、イラストはなかなか綺麗で、けっして嫌いではない。なので、ひょっとしてタイトルのフォントのせいか?という気がしてきた。
 あれこれとレビューを書いているとどうしても辛口にはなってしまうんだが、十時さんの創作は基本的に好きだ。主人公の真面目さや、切なさや、登場人物の心の強さがとてもよい。以下各巻。

0477 一作目 望んだものはただ、ひとつー水晶に選ばれた王妃ー
 宰相補佐官として、日々政務に精励するシェリダン。
 国王のアルフレッドは、後宮に50人もの側妃を入れるも、正妃を定めないことが国政の大きな負担になりつつあった。そこで、宰相の意見をいれて国につたわる秘儀「水晶の儀」で王の正妃を定めることに。そしてその儀式で水晶によって王の横に映し出されたのは男性であるシェリダンだった。
 ・・・てところから、拉致されるように王妃の部屋に軟禁され、強引に犯され、あれよあれよというまに王妃に仕立て上げれられてしまう。しかし、王アルフレッドの愛は真実で、だんだんシェリダンも自分の立場を受け入れていく。そして、次第にシェリダンの実家との確執や、シェリダンの心の傷も明らかになっていく。シェリダンがアルフレッドに絆されていく過程をうふふ、と楽しむべし。

0478 二作目 臨んだものはただ一つー迫りくるサーヴェー
 側妃たちからの信頼も得て、正妃としての立場も固まったシェリダン。
 ある日、新たに同盟を結んだサーヴェ公国から使者として公子と公女が来訪。しかし、公女はアルフレッドの正妃となることを目論見、公子はシェリダンを掠め取ろうと画策していた・・・って、シェリダン危機一髪ってのはストーリー的には良いのだが、さすがに大国の王/王妃に対して、弱小国の取れる行動じゃないし、手引きした閣僚が間抜けすぎるし、シェリダンのサーヴェ公国の公害についての分析も、いったいいつの時代を想定しているやら、でかなり微妙なのだ。

0479 三作目 望むものはだたひとつーサチュアの罠ー
 国内の地方視察に赴いたアルフレッドとシェリダン。その地方で精神を病むものが増えているとの事前情報に、視察の目を光らせる。中央に隠れて麻薬「サチュア」を栽培して私欲を肥やしていた州侯は、秘密をシェリダンに見破られるのをおそれてシェリダンに「サチュア」を盛る。シェリダンは中毒に陥って・・・・と、シェリダンの幼少時の心の傷と麻薬が見せる幻覚を絡ませるあたりは上出来なんだけど、中毒になりました→特効薬が開発されました→飲んだ途端に良くなりました、ってのが安直すぎやしないか、と。罪に問われた州侯の二人の異母姉妹(両方ともアルフレッドの側妃)へのシェリダンの対応なんかは、すごく良い。

0480 四作目 望むものはただひとつー狙われた佩玉ー
 まあ、近隣の新興国から周辺の国々が狙われるわけだ。おびき出されて捉えられ、国王が幽閉されて、国を要求される。アルフレッドとその近隣友好国数カ国の王と王妃も騙されて捉えられ・・・て時点で、ありえん。のこのこ友好的ではない国に各国の王がぞろぞろと出向いて、むざむざととらわれるとか、本当に安全保障上ありえん。そして、国元でアルフレッドの帰りを待っていたシェリダンに、佩玉(王権の証?)を要求する使者がよこされ、シェリダンがアルフレッド奪還のために策を立てる・・・・についても、かなりざっくりと安直でいやいやいやいや、流石に・・・・無理じゃないかと。一方で、アルフレッドの兄で、病弱なために早々に政局からリタイアしていた大公が、薬効の甲斐あって政務に復活してきたり、その大公の二人の妻のうち第二夫人が後宮とシェリダンに波乱をもたらしたり、という小技も効いていて、なかなか面白いのだ。シェリダンとアルフレッドの睦みあいにも心癒されるので、それだけで及第ではある。

0481 五作目 望むものはただひとつーリーベスの崩城ー
 シリーズ最終話? 今作は大それた政変などはなく、いわばシェリダンの日常に潜む危機的な。 シェリダンの元に、過去のシェリダンに対する陰謀の咎で城を追われた兄とその妻が助けを求めてやってくる。救いの手を差し伸べたシェリダンに当然恩を仇で返す所業。シェリダンが自身の過去と傷つきにどうやって向き合い決別するのか、という話。陰謀もこの程度のスケールなら安心して読める。たがしかし、兄が愚かすぎてびっくりだ。
  

2023年1月9日月曜日

0403〜07 『君に誓う』シリーズ5作

書 名 「君に誓う」 シリーズ
著 者 十時(如月皐)     
初 読 2023年1月3〜6日
読書メーター https://bookmeter.com/reviews/111201726 以下
 pixivをさまよっていて偶然捕獲したBL本。全てKindleアンリミで読めました。シリーズ5作を正月一気読みってどうなん?っていうか、栗本薫『矢代俊一シリーズ』で締めて、BL本で明けてしまった2023年に、我ながら先が思いやられる。
 とはいえこの作品、細かい突っ込みどころ(明らかな誤字とか、熟語の間違いとか)は多々あれど、中学生の頃にコバルト文庫をワクワク読んだような気分で全5作8冊を楽しく読ませていただきました。この間、pixivを読み漁り、オメガバースやらDom/Subって世界があるのか!とか最近?の二次創作はずいぶん練れてるし、層が厚そうだな、とか、いまや同人界も紙本ではなくネットメインなんだな、とか諸々と勉強になった。この彷徨はまだしばらく続きそう。

 しかし、どの巻も表紙がけっこう個人的には恥ずかしい。こう、両手で顔を覆って、指の隙間からチラ見する感じの恥ずかしさ(笑)。(こちとら中年だし。)
 総評としては、自費・同人的な同好の士向けの“ぬるさ”が残る、商業ベースに乗っかった電子出版物。プロとしての厳しさには今一歩足りないか。語彙の足りなさとか、言葉遣いの甘さとか、貴族的社会を扱ってるのに尊敬語と謙譲語がきちんと書けていないような、とか、知らないんだろうな〜っていう四字熟語の間違いや、書き手さんが世間知らずなのかな、と察せられる感じなど散見されるとはいえ、作品に、頑張れーー!と応援できる素直な可愛さや品の良さがある。作風は読メでどなたかが言っていたが、ハーレクイン的なラブロマンス。こういう純情一途なラブストーリーは嫌いじゃない。

0403 第一作『君に誓う 上/下』
楓×朔眞(志摩大公夫妻)の馴れ初めから馴染むまで。大公達の“後宮”的な「サロン」を舞台にしたドタバタも。





0404 第二作『君に捕らわれる 上/下』
主人公は雪月花(ゆずか)×葎(りつ)(駿河大公夫妻)。『君に誓う』では落ち着いた姐御(いや、お兄さん?か?)の風格を漂わせていた雪月花が、こんなハチャメチャな花嫁だったとは!な、はっちゃけぶりです。



0405 第三作『君に恋う 上/下』
楓×朔眞(志摩大公夫妻)メイン。代替わり間近な、それぞれ名家の次期当主である冷泉国光と北大路泰都のお見合い騒動に巻き込まれるサロンと大公妃の面々。




0406 第四作『運命じゃないけれど・・・・』
どっちかってーとスピンオフっぽい感じもする四作目の主人公は、大公妃達ではなく、第3作お見合い大作戦で登場した桜宮彰人。3作目では濡れ衣を着せられて割を食っていた彰人であるけど、北大路家の跡取り泰都からのプロポーズを受け、無事ご成婚。心に傷を持つ彰人と泰都のすれ違いラブ。シリーズ中では彰人がヒロインとしては一番小粒。苦悩も小粒だけど、一生懸命で可愛いので良し。おまけの番外編、彰人の“巣作り”行動が可愛すぎる。

0407 第五作『人はそれを運命と呼ぶのだろう』
第3作目で番(つがい)相手を公表した冷泉国光とその思い人の和仁(かずひと)の濃厚ラブストーリー。登場人物の中では一番不幸といって過言ではない和仁が主人公。不憫すぎてちょっと泣ける。
シリーズ作品中では一番、波乱万丈かも。終盤登場するヤクザさんはちょっとステレオタイプすぎて笑いがくるのだけど、ここまで読まないと、第三作の国光の行動とか、第四作の泰都の行動とかの理由が分からないので、5作目まで読了してやっと物語全体が腑に落ちてすっきりする。

 結構辛口なレビューを入れながらも、このシリーズは面白いし、幸せな気持ちになれてほっこりする。実のところは何回も読みかえしているお気に入りです。