2020年9月30日水曜日
0222 奇跡の巡洋艦
2020年9月29日火曜日
レジナルド・ヒル ダルジール警視シリーズ リスト
2020年9月27日日曜日
いちおう、ブログ移転と構築完了
2020年9月25日金曜日
父のこと
父は体が悪く、私がものごごろついたころにはもう仕事はしておらず、いつも家にいた人だった。とはいえ、ベッドや布団に寝込むほどではなく、毎朝きちんと、折り目のついたスラックスにニットシャツ、春秋はその上にニットのカーディガン、冬はカシミアのセーターを着て、ゆったりとリクライニングチェアに横になっている、というのが一番記憶に残っている姿だ。囲碁が趣味で、碁盤の前になら4,5時間座っていることもあった。父の弟も碁を打つので、その叔父が訪ねてきたときも、たいていは二人で碁盤を囲んでいた。
読書家で、駅前の本屋さんのご主人が御用聞きのように配達に回っていたので、月に一回くらいは定期購読の本とその時々の注文書を届けてくれていたように思う。と、ここまで書くと、なにやら立派な庭付きの日本家屋の縁側に面した書斎兼寝室に佇む病弱な主、的な昭和な情景が私の目にも浮かんでしまうが、実際に住んでいたのは狭い2DKの公団タイプの職員住宅だったし、決して悠々自適だったわけでもない。
そんな父が、少なくとも病を得てから40年以上、日々何を思って暮らしていたのか、私にとってもいまだに謎なのだが、すくなくとも、普通に仕事をすることができないと諦めてからは、「障害があっても、自分にできることは何でもしよう」というような前向きな方向には、諸般の事情から、進まなかったことは間違いないと思う。基本「何もしない」という方向性を極めていた。すっぱり世の中とのかかわりを絶って、必要最低限の数人の親戚付き合いと生涯で2、3人の碁打ちの友達くらいとしか、他人との付き合いもなかった。
父が自分の役割と自任していたのは、私に関わることだけだったかもしれない。
車での保育園の送迎やら、小学校の授業参観、宿題の面倒、家事の手ほどきなとは、父の受け持ちだった。だからといって、べたべたとかかわるではなく、私にとっての父は、家の空気とか座敷童にちかい存在感だった。なにしろ、私が生まれたころからそうだったので、それが普通ではないことにはながらく気づかず、中学生の時になって、父のことを何気なく話した同級生にえらく申し訳なさそうに同情されて、はじめて、いわゆる「普通の」家庭ではないらしいことに気づいて不思議な気がした。
父の日常といえば、天気の良い日の午後4時頃に、1時間くらいの散歩にでかけるのが日課ではあった。幼い頃は、私もよく一緒に行った。手をつないでいたのか、いなかったのか、記憶にない。その日ごとにテーマがあったらしく、行きと帰りに同じ道を歩かない、とか、角をかならず右に曲がる、とか、分かれ道は下り道を選ぶ、とか私を飽きさせない工夫があった。駅前の出入りの本屋さんは定番のコースで、本屋に行って本を物色し、同じ商店街の中にある喫茶店に入って、よくマロンパフェを食べさせてもらった。
定期的に配達してもらっていた本は、囲碁雑誌のほかは、定期配本になっていた世界文学全集、ドストエフスキー全集、日本の古典全集と、手塚治全集(!)などだった。ジャングル大帝、リボンの騎士、火の鳥、ライオンブックスなどから、きりひと賛歌などの社会派作品まで、手塚治虫はほとんど読み尽くした。本は財産だ、というのが持論で、本は基本買って読み、読み終えた後も手元に置いた。考えてみれば、気軽に図書館にいけるものでもなかったし、そもそも近くに図書館はなかったのだが、読んだ本が父の過ごした時間の証だったのかもしれない。
あれを読め、これを読め、と勧められることはあまりなかったが、読みたいといった本は買ってくれた。小学校に上がって最初に自分の意志で買ってもらった本は、たしかポプラ社かどこかの「おおかみ王ロボ」と「名犬ラッシー」だった。私が「ベルサイユのばら」にはまっていたときに、これを読め、とオルツイの「べにはこべ」を差し出したことはあった。フランス革命を賛美していた娘に差し出す本のセレクトとしてはなかなかセンスが良かったと今でも思う。
父のことは、今にいたってもよくわからないままだ。何を思い、何を考え、何をあきらめて生きていたのか。満足していたのか、していなかったのか。諦観が服を着ていたような人ではあったが。居心地のよい部屋と椅子と、本とクラシック音楽と鉢植え。父の周りにあったものは覚えていても、父の内心は一向にわからない。亡くなってからもう、20年経つ。若いころの闘病でさんざん病院で酷い目にあっていたせいか、病院では死なないと決めていて、私が生まれた頃の最後の入院以降は、ずっと家で過ごした。亡くなる何年か前に、呼吸状態が悪くなって一度緊急入院したが、在宅酸素を携えて断固として退院してきた。私が幼いときと同じように、朝、きちんと身なりを整え、朝食にグレープフルーツを少々食べ、家族の出かけた後の居間で、一人でリクライニングチェアに掛けたまま亡くなった。そういえば父が亡くなるしばらく前、叔父が父の様子伺いに来た時、父はそのころ宮沢賢治を好んで読んでいたのだが、夢見るような様子で「俺は宮沢賢治の世界が分かったよ。あれは“青”なんだ」と語ったそうな。
当時、かなりの低酸素状態で実は朦朧としていたらしい。うつらうつらと夢を見て、母に「木を植えているんだ」と話したこともあったと聞いた。父と面立ちのよく似た、父を尊敬してくれていた叔父も数年前に亡くなった。
父が最後に座っていた椅子は、今、我が家の書斎にあって、大切にしようという私の意に反して我が家の猫達が爪をといでいる。
いつか、父の理解した宮沢賢治の「青」の世界を、究明できる日がくるとよいのだが。
2020年9月22日火曜日
氷川丸に逢いたい
2020年9月20日日曜日
ブログのタイトルをちょこっと変更。
2020年9月19日土曜日
作業中
2020年9月7日月曜日
0221 砲艦ワグテイル(創元推理文庫)
原 題 「Send a Gunboat 」1960年
著 者 ダグラス・リーマン
翻訳者 高橋泰邦
出 版 東京創元社 1982年2月
はっきりと年代は書いていないが、女王陛下の砲艦(HMG?)と名乗っているからには1952年(エリザベス女王の即位)以降か。そういえば、ロルフが朝鮮戦争にも参戦したらしいことが書いてあったので、1953年以降、ほど近い頃の話だと思う。酒に逃げる余裕があるのが平時の証かもしれん。同じ寝取られでも「輸送船団を死守せよ」のマーティノーが苦悩を抱えたまま自沈攻撃に及んだことを考え合わせると、泥酔して艦をドッグの側壁にぶつけるのは平和のなせる技かもしれないし、アル中艦長は戦争中のモチーフではないのだろうな。何はともあれ面白い。リーマン、流石です。
0220 掃海艇の戦争
原 題 「In Danger's Hour」1988年
著 者 ダグラス・リーマン
翻訳者 大森洋子
出 版 早川書房 1993年
2020年9月1日火曜日
2020年8月の読書メーター
読んだ本の数:9
読んだページ数:4086
ナイス数:866
砲艦ワグテイル (創元推理文庫)の感想
ついに出た(´∀`)。伝統のアル中艦長!初っ端の危機には、気弱で屈折した退役間際の副長ファローが思いの外いい奴で泥酔したロルフ艦長を渾身で世話してくれたのでホッとした。いやあ、命令書持って参謀が来艦というのにいきなりの艦長ご乱行で、どうなる事かと(汗)。WW2終結後、勢力拡大を図る中国共産党。国民党旧勢力が支配する小島に英国人集落がある。中共の動きが怪しいので事を構えずに英国人を脱出させたい。ロクな港もない小島に接近できるのは、退役間際の河川用砲艦である老艦ワグテイル号。艦長は左遷されてきたアル中である。
読了日:08月30日 著者:ダグラス リーマン
志願者たちの海軍 (ハヤカワ文庫NV)の感想
カナダ人の予備役大尉で航海長のフレイザー、警察官から海軍入りして小型艇に乗り組みたかったアイブス、掃海艇乗務から機雷除去のエキスパートになって、聖ジョージ勲章まで受けたアランビー。志願の動機は生き甲斐、やりがい、はたまた生存戦略。3人の男達が集ったのはオールダンショー少将麾下の特殊部隊『ブロザローの海軍』。ハスキー作戦の前哨戦から始まり、Dーdayを経て終戦までを闘い抜く。戦争が日常の男達の群像。どこか薄幸そうだったアランビーは恋人を喪いついに報われず。酷薄な陸軍士官の描写にリーマンの海軍びいきがちょっと
読了日:08月28日 著者:ダグラス リーマン
燃える魚雷艇 (徳間文庫)の感想
記念すべきリーマン処女作。さすがに若い頃の作だからか、翻訳の違いなのか、描写が丁寧。主人公クライヴ・ロイス中尉、志願予備役でなんと任官3ヶ月目の20歳!このまだ未熟な中尉が魚雷艇に着任するところから始まり、一人前の魚雷艇艇長に成長するまでを、もちろん恋愛付きで、懇切丁寧に描写してます。彼が尊敬するハーストン艇長もまた若い、23歳。ですがすでに歴戦の勇士の貫禄を備え、ロイスを導き、艦を指揮する。小さな魚雷艇のこと、士官は艇長と先任の二人のみ。あとは下士官と水兵。つまり、ロイスは初心者なれど先任士官なのだ。
読了日:08月23日 著者:ダグラス リーマン
掃海艇の戦争 (ハヤカワ文庫NV)の感想
世間の耳目を集める大型の作戦、ハスキー作戦やノルマンディー上陸の影で、味方の艦船の航行のためにひたすら下働きの機雷除去を続ける小型艦。戦闘に向かう攻撃艦や上陸用舟艇のために、まず安全な海路を開かねばならない。小型艇とはいえ80余名が乗る掃海艇の艇長は、イアン・ランサム少佐28歳。年の離れた弟が地中海で戦死したとの報にも、胸が潰れる思いを押し隠し、冷静に艦を指揮する練達の艇長。艇を愛し、部下思いで、個性豊かな乗組員の悲喜こもごもを交えつつ指導育成する指揮官としての姿も読みどころである。
読了日:08月22日 著者:ダグラス リーマン
AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争 (光文社新書)の感想
読むというよりは見る。戦前のモノクロ写真をデジタルと関係者の証言でフルカラー化。とても綺麗で、かつ臨場感を持って甦った戦前ー戦中の写真。圧巻だったのは真珠湾で爆発する駆逐艦。胸につまったのは子供と女性たちの笑顔。モノクロだと歴史の彼方に隔絶された感じがする戦争が、にわかに身に迫ってきた。戦争など遠い昔だとつい感じている人に是非見てほしい。
読了日:08月16日 著者:庭田 杏珠,渡邊 英徳
神の棘II (新潮文庫)の感想
【CNC(Crime Novels Club)参加中】WWⅡ終戦75周年。さて、なぜ、そんな行動を取るのか、上巻でチラリと触れたレジスタンスとの真の関係は何だったのか?アルベルトの行動がイルゼの証言で明らかになる。しかし「自由」になった後も何故武装SSに志願したのか。なぜ戦い続けたのか。ドイツ人としての矜持?責任感?マティアスを尋問する体裁をとりつつ、治療を施しSSが解放せざるをえなくなるまで庇護下においた。アルベルトが本当に守りたかったのは、イルゼとマティアスの二人だけだったのだろうか?
読了日:08月15日 著者:須賀 しのぶ
神の棘Ⅰ (新潮文庫)の感想
まずはこのテーマを日本人が書いてよいのか、と驚くとともに、作者に敬意を表する。キリスト教、世俗権力化した宗教、第一次大戦後のドイツ社会の混乱と世相、なぜ、ナチスが生まれたのか、ユダヤ人迫害、レジスタンス。正義はなく、通底するのは人間の弱さ、醜悪さ。そこに切り込んでいった著者の意欲は買う、だがしかし。残念ながらマティアスの造形が軽いのです。もっと深みのある人物にできなかったものか。決定的な事件を目撃した原因が居眠り、というエピソードもにわかには信じられない軽さなのだ。とにかく、行動が浅はかなのが残念至極。
読了日:08月12日 著者:須賀 しのぶ
起爆阻止の感想
リーマン御大80歳、35作目の作品で、年寄りの昔語り宜しく筆の遊ぶまま悠々自適な書きっぷり(笑)。細かく時間を刻んで話が前後するので読んでいると迷子感が半端ないが、とまれ面白い。主人公デイヴィッド・マスターズ少佐は老成して見える29歳。時折触れる頬の傷跡。元潜水艦乗り。かつて新造艦の指揮官として出航、港の鼻先で初潜行したその時、触雷して艦が沈没。艦橋のマスターズは海に投げ出されて助かったが、部下は全員が艦と運命を共にした。一人生き残った罪悪感。初めての指揮艦と年若い部下達。港は掃海してあったはずだった。
読了日:08月09日 著者:ダグラス・リーマン
国王陛下のUボート (ハヤカワ文庫 NV (396))の感想
なんと、英国軍艦Uボートである。とりあえず今回の据え膳、死んだ親友の妻ゲールがダメだ。地中海で夫の指揮する潜水艦が消息を絶つ。おそらくは機雷。後から帰還したマーシャルが弔問に訪れた時にはすでに再婚して転居済み、相手はエリート士官のシメオン中佐。それなのにマーシャルを呼びつけて、死んだ夫ビルと結婚したのはマーシャルが結婚してくれなかったから、今も私、あなたが好きなの。でも私は家庭が欲しかったのよ。それってそんなに悪いこと?だから今の夫と結婚したの。でもあなたがその気なら・・・・って、なんだこの女?
読了日:08月06日 著者:ダグラス・リーマン
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