2020年12月9日水曜日

0235-36 パードレはもういない 上・下 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

書 名 「パードレはもういない 上・下」 
著 者 サンドローネ・ダツィエーリ 
翻訳者 清水 由貴子 
出 版 早川書房 1919年10月 
初 読 2020年12月

【上巻】
 上巻を最後まで読んだところで、何が起きているのかサッパリ分からん。とにかくダンテが生きていた。回復した。コロンバもズダボロだけど、なんだか元気に動いてる。そして、怒ってる。『パードレはそこにいる』ラストで、脚をやられたサンティーニは、痛む脚を引きずりながら、苦労人風に渋い味わいを醸し出していて、何故かどんどん好きになってしまう(笑)。傷ついた男が大好物なのに、ダンテがそんなに好きでないのはなぜだ??? それにしても、何がなにやらさっぱり判らないので、ひとまず上巻の整理と復習だ。以下派手にネタバレにつき、まだ読んでいない方は上巻をよんでから再訪されたい。

 前巻「ギルティネ」で衝撃のラストから一転して、中部イタリアの田舎家で暮らすコロンバから話はリスタート。なんとギルティネ事件から1年5ヶ月が経過している。コロンバは一命をとりとめたのち、退職して子供のころ暮らしてた父方の田舎の家に隠棲している。相変わらず、PTSDと闘いながら。
ダンテの心の安らぎ、ぐでたま(笑)

 そんな彼女の周りで突然に事態が動き出す。
 以下、箇条書き
  1. コロンバの家に自閉症の青年(少年というにはムリがある)トミー(トンマーゾ)が突然紛れ込む。彼は血まみれだった。
  2. 彼の両親が自宅で惨殺されていることが発見される。
  3. 翌日、ヴェネツィアからレオ・ボナッコルソがダンテを誘拐して逃亡する際に使用したヨットが、イタリア長靴の先っぽとアフリカの間の海で沈没しているのが発見される。
  4. 沈没船の中で発見された白骨遺体の治療痕から、人物が特定される。
  5. その人物の住まいであったアパートにコロンバが調査に出向く。そしてその男に成り代わって、レオが潜伏していたことが判る。
  6. そのとき、レオからコロンバに電話がかかってきて、コロンバの行動がすべてレオに把握されていることが知れる。
  7. 警察と軍がコロンバに遅れを取って件のアパートを捜査中にそのアパートが爆発し、犠牲者多数。
  8. コロンバが自宅に戻ったところ、地元の軍警察(カラヴィニエーリ)が家宅捜索に訪れ、先の夫婦惨殺の凶器が隠されているのが発見される。
  9. コロンバは、例の夫婦の自宅を調べ、この夫婦がレオの手先で自分の監視役だったことを確信
  10. 一方、コロンバ自宅の外で張り込んでコロンバを監視していた地元カラヴィニエーリの女性警官が惨殺され、コロンバに容疑がかかる。
  11. 殺された女性警官の殺害現場近くに残されていたバイクのナンバーから、所有者が判明
  12. 同じ所有者が、近隣の病院(廃院)もバイクと一緒に取得していたことが判る。
  13. コロンバがバイクでその廃院に駆けつけたところ、意識不明でベッドに拘束されたダンテを発見。
  14. コロンバの家の近郊の街の男がコロンバ殺害を企てる。
  15. 男は、死んだ女性カラヴィニエーリが自分の恋人であり、自分の息子を妊娠していたと思い込んでいたが、そのような事実はなかった。男は自殺。
  16. パードレ事件、ギルティネ事件から引き続く一連の事件は、国家機密として隠密に捜査されることとなり、コロンバにも協力依頼が。
  17. 警備を強化したコロンバの自宅にダンテも身を寄せ、いよいよダンテの推理と捜査が始まる。・・・・・・
 なんか、書き漏らしもあるがこんなところか。
 なにかが判った、というよりは、殺人や事件のタイミングも、人物の配置も、すべておそらくはレオに操作されている、という予想しか立たない状況で、下巻へGO。

【下巻】
 一気読み。読みやすかった。とはいえ、この本はkindleで読むのを推奨する。下巻でクレモナが出てきたときには、『パードレはそこにいる』で書かれていたダンテとクレモナの関係が思い出せず、kindleの検索機能で『そこにいる』を検索して拾い読み。人物も「あれこの人だれだったっけ?」と混乱するたびに検索機能で遡って関係をチェック。それでも、あの時あの人があんな行動を取ったのは何故だったのか、だれの指示でどんなコントロールを受けて? 動機は? その人物にとってその行動にそれだけの価値があったのか?とか考えだすと、細部まで理解できていない感が半端なく、これはあとで3部通して読み直すしかないな、と。

 マッドサイエンティストのパードレ、そのパードレを生み出した旧ソ連の狂気の「スカートラ」の支配者、さらに、彼らが生み出した犠牲者が次の支配者となることを欲する。レオの真の支配者は誰だったのか、ギルティネとレオは連携していたのか、レオが一番の謎かも。レオはなぜコロンバを刺したのか、レオはダンテにどのような感情を抱いていたのか・・・・うーん。私的には未消化なことはレオに集中しているのか。いや、テデスコも謎のままだろ。もしかしたらダンテはテデスコの息子なのかも?テデスコのいうところの「愛」とはなんだったのか?そういや、ダンテの夢だか記憶だかも謎だったよな。
 近いうちに再読を期してメモメモ。再読するときには年表と人物相関図を作るぞ。
 

 もー、でっかい風呂敷を広げたり畳んだり、畳んだと思ったら裏表間違えてたり!
なにはともあれ一気読みの面白さだった。ダンテ(仮)とコロンバの未来に幸いあれ。
 
 そして、ダンテ、レオ、『ペンタクルの王』は狂気の研究で生み出されたいわば傑作であったこと、ルカもそうなる素質があること、次の人類たる自閉スペクトラムの子供たち。エンタメの形をかりた社会問題提起なのか、社会問題を素材としたエンタメなのか、単なるスペクタクルで済まない重みのあるテーマも含まれていたが、ひとまず読了という事で。

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