2021年9月5日日曜日

0290 ベイジルの戦争 (海外文庫) 扶桑社ミステリー

書 名 「ベイジルの戦争」 
原 題 「Basil's War」2021年
著 者 スティーヴン・ハンター 
翻訳者 公手 成幸(くで しげゆき) 
出 版 扶桑社 2021年8月 
文 庫 304ページ 
初 読 2021年9月4日 
読書メーター https://bookmeter.com/books/18304756   
ISBN-10 4594088228 
ISBN-13 978-4594088224

 「巨匠ハンターが描く傑作エスピオナージュ」という帯の謳い文句に大いに心惹かれたのだが。
 スティーブン・ハンターの第二次大戦もの、しかもエスピオナージュということでかなり期待して臨んだ—————が、なんというか大味。 読み始めての印象は、『エニグマ奇襲指令』。イギリス、フランス、ドイツがドイツ占領下のフランス国内でドタバタやるとなると、こういうテイストになってしまうのだろうか?
 ナチ嫌いのアプヴェーアの大尉マハトと部下のアベルのやり取りはそれなりに楽しい。上司の大尉を“ディディ”と愛称でよぶアベルは結構な皮肉屋だが、のびのびとした育ちの良さを感じる。
 途中から出てくる単語「ミサゴ(OSPREY)」がなんなのか、よく解らないままに、話は進む。極秘の諜報網を指すのかか、もしくはスパイのコードネームか。物語全体としては、ベイジルが従事したとある稀覯本(というがその原稿の風変わりな複製)の写しの入手、という作戦自体がある意味読者に対する陽動のようなもので、最終的には件のオスプレイの正体に迫っていくわけだが、明確にだれがどうと示されたわけではなく、私の頭が悪いのか、全体がなんとなく曖昧模糊としているような、いないような。
 たとえば、私が大好きなハリイ・マクシムのように、主人公ベイジルの為人と楽しむ本というほどには主人公が魅力に溢れているわけでもなく、どちらかというと少年冒険小説の読後感。ただただあの時代への憧憬のようなものを感じる。ブリーフィングと実際の作戦行動のシーンを交互に差し挟むのも、ちょっと技巧に走りすぎ、かなあ。美人女優のラストの夫とのホテルのくだりが必要だったのか、よくわからん。私が粋というものを解していないからだろうか? 読者をたのしませてやろう!という作者の気持ちは良くわかった。ちなみに解説によれば、作者スティーブン・ハンターはベイジルを多いに楽しまれたようだ。
 まあ、たまにはハズレもあるさ、な一冊でした。
 それと、脱字を一箇所発見。119ページ7行目。


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