著 者 柴田 よしき
出 版 角川書店 1997年10月
文 庫 396ページ
初 読 2022年4月24日
ISBN-10 4043428014
ISBN-13 978-4043428014
「聖なる黒夜」と表裏一体と言ってもいいようなテーマで、主人公の緑子(リコ)の性があまりにも奔放なので、ちょっと引いている自分と、自分が引っかかるからこそ、そこにリアルがある、と感じる自分がいて、読後感はかなり複雑。
でも、まずは登場人物を整理しておかないと、わけがわからなくなりそうなので、以下。
【登場人物】
◆新宿署
村上緑子 刑事課 警部補
円谷 刑事課長 斉藤 防犯課長
鮎川慎二 防犯課の巡査部長 緑子の恋人
陶山麻里 交通課の婦人警官 緑子の親友
松岡 暴対課 刑事
坂上(バンちゃん)刑事課 刑事 緑子の部下、というか応援団
青木(アオさん) 〃
山本(シゲさん) 〃 巡査部長
◆警視庁
安藤明彦 警部 警視庁捜査一課5係
高須義久 警部補 〃
佐々木幸弘 捜査一課5係の緑子の元同僚
柏木(通称コマさん) 警部 警視庁捜査一課7係
菅野 捜査一課長
◆被害者
桜井和貴 17歳・・・自殺
杉本宏幸 26歳・・・交通事故死
清川健太 16歳 肩に薔薇の入れ墨のある少年
鵜飼宗介・・・晴海沖で溺死体で発見 月島署に捜査本部設置
◆その他
鈴木茉莉子 東京地検の検事
神崎容子 緑子が取調べした殺人事件(心中未遂)の容疑者
劉晴明 香港マフィア
茂木鉄雄 懲戒免職になった元上野署防犯課刑事
もう、登場人物リスト作らないと、本当に頭がゴチャゴチャになる(笑)日本人の名前って苦手だ。
警察小説だけど、本当に描いているのはジェンダー。
香港マフィアが絡んできたところでバイオレンスの方向になるのかと思いきや、最初から最後まで女がどうやってジェンダーに立ち向かうのか、二人の女の闘い方が対照的でそれぞれに強烈だった。
ところどころで同性目線でもよくわからないところがあったり、強烈すぎてかえってファンタジーっぽく感じるところもあるのだが、自分の中の本来の自然な女性性と、自分の周囲から求められたり、強制されたりする「女」をどう対峙させるのかっていうのは、多かれ少なかれ、ほとんどの女がそれぞれに、生きる中で対処せざるを得ない問題だと思う。自分自身も然り。
リコは、いわばエリートの部類の刑事ではあるのだが、男女関係の陥穽に落ちて、レッテルを貼られ偏見に晒されながらも、刑事として部下も持ち、体を張って生きている。脆いのに、強くしたたかで、性的に酷い目にあっているのに奔放。このアンバランスは、小説だからこそ可能なのかもしれないが。
男社会で縦社会で男尊女卑の縮図のような警察組織(初出は平成9年。25年前とは!今もって新しいと感じるのは、四半世紀すぎても世の中があまり変わっていないからなのか、女性の職業進出や、制度的な発展はあっても、精神的にはあまり変化がないようにも思えるのだが?そういえば今は「婦警さん」って言わないかも。)が捧げもつ正体不明な「社会正義」の犠牲にされるのはのは、組織の外にも中にもいて、リコは「中」、「聖なる黒夜」の山内練は「外」。練とリコは男と女の違いはあれど、表裏ともいえる同類項だ。
正直、私はぶっちゃけ緑子が高須にアレを口移しした、アレさえなければ大丈夫なんだけど。アレは気持ち悪すぎてダメだった(笑)。もしアレやったのが自分だったら(←いや、そんなこと考えるなって(笑))、絶対アレの代わりにゲ◯を口移しすることになるのは必至。(汚い話題でゴメンな。)
リコは、「男が許されるものなら、女にだって許されるべき」って思考なんだけど、私は「女がされて嫌なことは、男にもするべきではない」のでは?とか思っちゃって、そういう意味でもリコが高須を精神的にレイプしたのはどうなん?って考えたりもする。でも、高須にとっては、ものすごい気づきになったみたいだけど。
結局上下関係を明確にすることで安定する群れ社会の男にとっては、君臨するのでなければ、服従になってしまうのか。高須は、リコの弾除けになる覚悟まで持っていて、けっこう格好良い奴だったりするので、リコとの関係がどんなふうに落ち着くのかも、ちょっと気になるのだけどな。リコの子がこの先、高須そっくりなハンサムに育ちそうな気がするし。(だって、ゴムつけてなかったのこいつじゃん?) それに、リコと明彦はこの後フィフティの関係を築いていけるのか、そんなことも気になる。明彦さん、けっこう龍太郎と似てるような気がしているのだよね。龍太郎は私の中では「ダメな奴」認定されているのだ。
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