著 者 柴田 よしき
出 版 講談社 2008年7月(単行本初版 2005年4月)
文 庫 512ページ
初 読 2022年9月6日
ISBN-10 4062761009
ISBN-13 978-4062761000
読書メーター https://bookmeter.com/books/543629
このシリーズだと、練ちゃん何歳になってるんだっけ?40代だってハナちゃんが言っているけど、あと繰り返し、ハナちゃんがあと数年で21世紀だと言っているので、作品世界では1997か8年くらい?だと思ってるのだけど、そうすると練だって40代にはまだなってないんじゃない?
ここでもう一度、聖黒のレビューで書いた時系列を掲載してみよう。
時系列(全体)
1985年夏 世田谷事件(練が麻生に逮捕される。) 練26歳
1986年4月 練・府中刑務所で服役中
1986年7月 〃
1986年10月 覚醒剤中毒者による小学生刺殺事件発生
1987年4月 練・仮釈放・武蔵小金井の保護司を頼り、印刷会社に勤める。
1987年8月 練・印刷会社の同僚に脅迫され、武蔵小金井のアパートを飛び出して新宿に。
生きるために体を売るようになる。
1988年 田村出所
1989年2月15日早朝
ブレーキの調子が悪かったため韮崎が乗り捨てた車の回収を命じられた部下が、
その車を運転し運転し、飛び出してきた赤ん坊(真子)を抱いた母親(望月
路子)をはねる。
1989年2月15日早朝
同日・小田急線参宮橋近くの線路で自殺を試みた練が韮崎に拾われる。
1989年5月 韮崎の弁護士が交通事故の示談工作。
1989年7月 覚醒剤中毒の男に子どもを殺された女が、武藤と韮崎が同席していたところを
拳銃で襲う事件発生。
1989年9月 練は韮崎の住まいに居候している。
1989年9月 北村が殺害される。
1992年 北村の娘が北村の遺骨を納骨する。
1995年10月 韮崎が新宿のホテルで他殺体で発見される。 練36歳
自分が「一代雑種」だと言う練は、やはり、ヤクザの世界にも馴染みきってはいないのよね。死んだはずの自分を生かしてくれた韮崎への思いや、先代とのしがらみが練をヤクザの世界につなぎ止め、練をヤクザに擬態させてるけど、本当は寂しいのだろうなあ。
1989年5月 韮崎の弁護士が交通事故の示談工作。
1989年7月 覚醒剤中毒の男に子どもを殺された女が、武藤と韮崎が同席していたところを
拳銃で襲う事件発生。
1989年9月 練は韮崎の住まいに居候している。
1989年9月 北村が殺害される。
1992年 北村の娘が北村の遺骨を納骨する。
1995年10月 韮崎が新宿のホテルで他殺体で発見される。 練36歳
今作は、短編3作の連作
ゴールデンフィッシュ・スランパー・・・・・アイドル歌手に送りつけられた脅迫状の送り主を探すお仕事。ストーカー事件のようでいて実は、苦しい過去が。
イエロー・サブウェイ・・・・・なんと、練が置き去りにされた赤ん坊の母親の捜索をハナちゃんに依頼。
ヒー・ラブズ・ユー・・・・・最初はストーカーの片棒担ぎのように思えた尾行だったが、実は真面目で苦しい恋につけ込まれた脅迫事件に関わる調査だったと分かり、アフターケアと称して依頼主の苦境を助けるハナちゃんが、なんとも素敵。
練の住む高級マンションの玄関先に置き去りにされた生後2ヶ月くらいの女の子の赤ん坊。置き手紙には「あなたのものなので、あなたに返す」と書いてある。疑惑の一夜には、練は泥酔していて記憶にない、と。取り巻きの斎藤などは、件の赤子を遠慮しいしい「社長のお嬢さん」扱いしているのがちょっと面白い。赤ん坊を押しつけられて困惑している練、ってのもなんというかかわいい。ここに麻生さんが居たら、「俺が育てる!」とか言っちゃいそう。いや、それはないか。。。練ちゃんに突如勃発したトラブルをがっつり押しつけられる園長ハナちゃん。今回は探偵業と保育業のフルコンボでとことん練に利用されている。
そこはハナちゃんの努力と根性で、絡んだ糸を解きほぐし、赤ちゃんの母親も、ついでに父親と思しき人物も見つけ出し、母親を説得して赤ちゃんを返し、報酬も得ることができたが、意外にも、それでことが収まっていなかった人物が一人居たわけだ。それも騒動の大本、張本人が。
いったんは母親の元に返った赤ん坊との親子鑑定をやりたい、と言い出す練。とうに家族との縁は薄くなっている練だが、一体赤ん坊の存在に何を求めたものか。この間何があったんだろうか?
その事情ってのはなんなのさ! と、ちょっと麻生さんを探して首を揺さぶって見たい気がする。「事情が変わったんだ」山内は、少し妙な表情を見せた。何か企んでいる顔には間違いないのだが、どこか、戸惑っているような目つきをしている。
自分が「一代雑種」だと言う練は、やはり、ヤクザの世界にも馴染みきってはいないのよね。死んだはずの自分を生かしてくれた韮崎への思いや、先代とのしがらみが練をヤクザの世界につなぎ止め、練をヤクザに擬態させてるけど、本当は寂しいのだろうなあ。
「それは、つまり、俺は消えた方がいい、ってことか。この世に生まれて来た痕跡は何ひとつ残さず、綺麗さっぱりと消えた方がいい人間だ、そういうことか」山内の声に怒りはなかった。ただ淡々と、静かにそう言った。
こういうときは、素の練ちゃん。ああ、切ない。こういうこういう顔を見せられるハナちゃんすごいよ。
そんな練と麻生の「聖黒」後のしがらみを描いた「海は灰色」はいつ読めるのだろうか。すでに角川のネット書店では取扱いがないようなので、書籍化を待つしかない。
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